原作アニメ比較 8

露出度高し 家中無双
アニメ第71回放送2002年5月27日
「三つ巴の死闘の果てに 」

原作少年サンデー2001年4月11日(19号)第212話「心臓」
原作少年サンデー2001年4月18日(20号)第213話「半妖 奈落」

          ☆          ☆          ☆

無双編の3話目。
鬼蜘蛛の心臓に気がついてもなおも犬夜叉に風の傷を使わせる弥勒、やたらと多い神楽のひとりごと、七宝の爆流破提案などこまこまとオリジナルが入るが、余計な感じはなく、上手に見せてくれたと思う。
家中さんは、「やなか」さんと読むのらしい。

私はずっと「いえなか」さんと思っていたのでびっくりしてしまった。
で、おもしろいなと思ったのが、桔梗の名前を呼ぶとき他の声優さんに比べて2番目の「き」にアクセントがつくというより、しっかり発音されるんだな、ということ。
だから普通は「 きょう」と聞こえるのが、家中さんだと「ききょう」と聞こえる。

東京出身の方なので特別クセはないのだろうが、丁寧な発音の仕方をされる声優さんなのだろう。
ついでにもうひとつ、桔梗役の日高さんも奈落を呼ぶとき、「んならく」を聞こえることが多いようだ。
感情を込めると、「N」の発音が強調されるのだろうか。
気になるのではなくおもしろいということで書きとめてみた。

久々奈落のフル登場(ワイヤーワーク使用?)も楽しめたが、前半特筆すべきは無双の露出度の高さだろう。
奈落のとき全裸を見ても全く動じなかったかごめへの反省からか、かごめと 珊瑚はここで初めて置いていかれる。
それにしてもさすがは奈落の分身、ナルシストぶりもそっくりだったが、露出度もたいしたもの。
何だか家中さんの壊れっぷりと相まって、無双がお笑いキャラに見えてきたのは残念だったが、アクションシーンとしてのみ捉えるならば見応えがあったと言えるだろう。

無双が桔梗が生きていることを知るところ、いったんは逃げ出しながら、奈落を殺すために戻ってくるところなどは、ゆがんでもなお一途な鬼蜘蛛の人となりを伝えるオリジナルだと思った。
犬夜叉が赤い月をバックに鉄砕牙を振る、私の一番好きなアイキャッチの後、後半部分は半妖奈落と弥勒の会話をメインに落ち着いた展開。
原作どおりで良かったが、奈落の毛皮の狒々の頭が前にごろんとぶら下がっているのはいただけない。

風の傷を結界で阻んだ奈落は去り、原作の次話「百鬼蝙蝠」の冒頭シーンで締めくくる。
犬夜叉の手当てとかごめたちへの報告の場面。
一方桔梗にもまた、オリジナルのシーンが挿入される。
「拒んだはずなのにこんなに想いにとらわれる・・・ 私の心はどちらをのぞんでいるのだ・・・?」

青木監督、いよいよアニメの軌道修正に入ったか、と期待を抱かせる台詞。
闇を舞う死魂虫もまた、哀しく美しい。
(2003年4月27日の日記)
書くに書けない考察日記 〜ブンザ登場
アニメ第72回放送2002年6月3日
「刀々斎の珍妙な試練 」

          ☆          ☆          ☆

原作では犬夜叉一行はすぐに百鬼蝙蝠の所に向かうが、アニメではここでアニメオリジナルが入る。
前回無双の後に登場した奈落の結界を斬ることができなかった犬夜叉、鉄砕牙を強くするための方法を聞きに刀々斎に会いにいく。
刀々斎の頼まれごと(お風呂の準備)を修行と勘違いし、嬉々として水を汲み、薪を割る犬夜叉。
兄弟子として登場したブンザは山猫妖怪、ナナフシなる虫の妖怪の結界を斬るためやはり修行中。

犬夜叉の助けを借りてブンザは無事ナナフシを倒し、父親を助け出す。
描きたかったのは親子の情愛と犬夜叉の優しさ?
こういうオリジナルは正直困ってしまう。
特に後半、BGMもやけに仰々しく聞こえてしまった。

映像はともかく、話が音楽に完全に負けている。
低年齢層のファンなら大喜びするんだろうなあと自分を慰めるしかない次第、視聴率13%だし・・・。
七人隊よりずっと上だし・・・。

ただ最後の場面、奈落の結界を斬るための手段を探しに行った犬夜叉の扱いがひどすぎる。
心配はともかく1人でがんばってきた犬夜叉に対しておんぶに抱っこで自分たちはピクニック気分。
アニメのキャラは性格が本当に薄っぺらにできているなと思わずにはいられない。
「おすわり」も腹立たしかった。

内容とは裏腹に、水神のエピソードに続いて野田順子さんのブンザ役で再登場は嬉しかった。
ブンザの父親は猫鳴き声の?西前さん、ナナフシは田中さん。
次回はやっと百鬼蝙蝠に会いに行くことになる。
(2003年5月29日の日記)
半妖 〜大獄丸登場
アニメ第73回放送2002年6月10日
「紫織母子とアイツの気持ち」

原作少年サンデー2001年4月25日(21,22合併号)第214話「百鬼蝙蝠」
原作少年サンデー2001年5月9日(23号)第215話「紫織の結界」

          ☆          ☆          ☆

原作に戻り、オリジナルを挿入しながらではあるが1話とちょっとで1本分、非常に丁寧な作りである。
冒頭のオリジナルだけは好きになれないが(かごめが持ち込んだトランプで遊ぶシーン)、これは私が保守的なSFファンゆえだろうと思う。
私は「犬夜叉」自体を否定するものではないが、あまり安易に現代グッズを持ち込むのはどうかと思う。
ここは素直に「弥勒様たちとトランプできるなんていいなあ。」と目を輝かせていればすむことなのだろう。

それ以外のオリジナル、生前の月夜丸、紫織がいじめられるシーン、妖怪に追いかけられる子供の頃の犬夜叉、蹴鞠のシーンは素晴らしかったと思う。
紫織はたしかにこんな子だろうと思わせるうまい演出、犬夜叉が自分の子ども時代を重ね合わせる見せ方も秀逸。
犬夜叉を追いかける3種類の妖怪、どこかで見たことあると思っていたら、プレステRPG「犬夜叉」にしっかり出演済み。
なんだかおかしかった。

あと紫織の母を守ろうとした犬夜叉が、原作では村人を足蹴にしているが、アニメではかばっただけ、とりあえず話を聞こうとしている。
ここも良かった。

原作の部分も非常に忠実で見やすいが、不思議だったのが八衛門が登場していること。
いてもいいのだが、台詞がない。
しかもEDではしっかりクレジットされているのだ。
この頃エキストラ役でも中嶋さんはほとんど出ておられなかったので、別の仕事で犬夜叉収録には参加できなかった時期なのだろうか、などと考えるのもまた楽しい。

大獄丸、以前書いた記憶があるが「大嶽丸」と書けば、酒呑童子、玉藻前と並んで中世の三大妖怪と並び称される大物妖怪。
伊勢の国の鈴鹿山に住み、藤原俊宗によって退治されるが再び蘇る。
ただし蝙蝠妖怪ではなく、鬼である。
(犬夜叉の大獄丸にも鬼の角らしき物は見えるが)

大獄丸を演じているのは槐(さいかち)柳二さん、「天才バカボン」のレレレのおじさん。
私はバカボンは観たことがないが、なぜかあの声だけは印象に残っているのが不思議。
「めぞん一刻」では音無氏(響子の義父)を演じておられた。

紫織は水橋かおりさん、アニメで紫津と名づけられた紫織の母は山口由里子さん。
「金田一少年の事件簿」の「黒死蝶殺人事件」に斑目揚羽(まだらめ あげは)役で出演されていた。
なぜ覚えているかというと、この事件には「エロイカより愛をこめて」のエーベルバッハ少佐をモデルとした猪川警部が出ていて、声優さんが気になっていたからだと思う。

今回「半妖だからって妖怪に劣ってるわけじゃないし、人間に劣ってるわけじゃない」という言葉が大切なキーワードとして出てくる。
最初に「犬夜叉」を観た頃、どうして半妖だからという理由でそれほど差別されなければならないのだろう、と不思議に思っていた。
だが「半妖」という言葉を別の言葉に置き換えて「どうして○○だからという理由でそれほど差別されなければならないのだろう。」としてみると、答えはいくらでも出てくる。

人種問題だけではないもっと小さなことでも人を傷つける差別、意識してする差別、意識しなくてもする差別。
現実の、現代の人間の心の奥底にある根本的な問題である。
突きつめて考えなくてはならないだろう、今朝の朝日新聞天声人語を読んでそう思った。
(2003年5月30日の日記)
紫織の想い、犬夜叉の願い
アニメ第74回放送2002年6月17日
「結界破る赤い鉄砕牙」

原作少年サンデー2001年5月16日(24号)第216話「父の願い」
原作少年サンデー2001年5月23日(25号)第217話「紫織の力」
原作少年サンデー2001年5月30日(26号)第218話「赤い刃(やいば)」

          ☆          ☆          ☆

大獄丸編後半、約束を破った百鬼蝙蝠が紫織の村を襲う。
どこまでも人間と半妖を蔑む大獄丸と、どこまでも妖怪と半妖を蔑む村の人間。
その狭間で苦しむ紫織の葛藤と犬夜叉の怒りが丁寧に描かれていく。
原作どおりとはいえ、ここまで丁寧に作りこまれることは珍しいのではないかと思う。
特に大獄丸と紫織の存在感は他キャラを圧倒、月夜丸の描き方も的確だった。

今回冒頭部分で、かごめの「紫織ちゃんを傷つけずに大獄丸だけを斬るなんて・・・」とかごめが心で考える場面がある。
今まで気になっていたのが、登場キャラが心で思うことを、アニメでは口に出して台詞として言う場合が非常に多い。
声を出すのは同じだが、アニメでは口が動くかどうかで区別される。
今回のような緊迫した場面ならともかく、そうでない時はやはり口が動いていた方がいいなと思った。
今までは原作どおりに表現して欲しいと思っていたのだが。

辻谷耕史さんのHPで大獄丸の「これでいいのだ。」が出ると書いてあったので、今か今かと楽しみにしていたが、考えてみればこの口癖、レレレのおじさんではなくて「バカボンのパパ」ではなかったか?
そっくりなのがなんともおかしい。

「紫織・・・」の一言で全てを表現していらした、というよりそれしか月夜丸として台詞がなかったのが鈴木琢磨さん。
(前回は紫織をいじめる村人の一人だったりする、笑)
聞いたことある名前だと思っていたら、やはり「金田一少年の事件簿」はじめ登場作品の多い方である。
八衛門は後編になってやっと台詞が出てきた。
原作では紫織の村から帰る時に始めて出てくるのだが、アニメでは最初から登場。
とぼけた存在感がたまらなくいい。
最後の追いかけっこは正直うんざりしたが、かごめの独白(オリジナル)は良かったと思う。

不思議なところでアイキャッチが入ったが、犬夜叉は血玉珊瑚を斬り、鉄砕牙は赤く染まり、パワーアップする。

これを観て「犬夜叉の『備』に『赤い鉄砕牙』がパワーアップバージョンとして出るに違いない。」と狂喜した人は多いだろう。
かくいう私もその一人なのだが、結局赤い鉄砕牙の「備」は出たが、力は普通の鉄砕牙と同じでがっかりした。
逆に「備」の「血玉珊瑚」が戦力2までの攻撃を受け付けない「光の御供」最強の盾として登場。
今まで後に引っ込みがちだったかごめも、血玉珊瑚をつけて堂々と前衛に登場できるようになり、巫法札合戦の遊び方も大きく変わった。

ちなみに光の御供はかごめの他に桔梗、楓、弥勒、タタリモッケなど。
最新版では「お医者の睡骨さま」も光の御供である。
体力的に不安のある御供が多いので、本当にありがたい。
ついでに弥勒、紅達に続いて「霧骨」が3番目の「助平」性格の御供として登場。
巫法札合戦、遊ぶのもおもしろいが、カード設定がなんともいえずおかしいのであ る。
(2003年5月31日の日記)
豹猫族登場
アニメ第75回放送2002年6月25日
「豹猫四天王の陰謀」

百鬼蝙蝠のエピソードが終わって、完全オリジナル三部作、豹猫編が挿入される。
オリジナルの中では、出雲編、生姜編に次いで好きなエピソード、と言うより良くできたエピソードだと思う。
最初にオリジナルキャラを紹介すると、長女「冬嵐」が冬馬由美さん、次女「春嵐」が増田ゆきさん、三女「夏嵐」が鉄炮塚葉子さん、末弟「秋嵐」が高塚正也さん。

いずれも非常に出演作品の多い方々だが、ほとんどが名前を知っていても見たことのないアニメだった。
特に冬馬さんの艶っぽい声が印象に残る。
また鉄炮塚さん、茨城県出身の方だそうだが、この苗字、なにかいわれがあるのだろうか。

豹猫三部作はかなり気合を入れて作ったらしく、鋼牙組、殺生丸組もフル登場。
オリジナル4人組、キャラ設定はとても良くできていると思う。
女殺生丸のごとき冬嵐と殺生丸のわけありには、50年前の恋のもつれか、と我知らずときめいてしまったし、久々登場キュートな狼野干も懐かしい。
もちろん八衛門たぬきも大歓迎。

ただ手下の猫たちがいただけない。
怖くもなく、可愛くもなく、強そうでもない。
ブンザの時も思ったが、猫妖怪は冬嵐たちのように完全に人型にするか、雲母のように猫の原型を保った姿にしないと、どうも間が抜けて見えるようだ。
猫としての魅力は完全に雲母やブヨに負けている。
あと春嵐や夏嵐の術のかけ方が手抜きっぽいのが気になった。

話が進みすぎた。
かごめを迎えに行った犬夜叉がかごめの家でくつろぐシーンが挿入され、戦国では弥勒たちが豹猫族と遭遇する。
戻ってきたかごめが術により連れ去られるまでが1回分。
狼野干と殺生丸、冬嵐と殺生丸などの因縁は次回持越しとなる。

殺生丸の「供は(友とも取れる、笑)おまえだけでいい。」と邪見に向けた言葉、犬夜叉弥勒のキャッチボールならぬキャッチ七宝など、見どころは多いが私には何といっても鋼牙に尽きる。
夕日をバックに崖の上から「ど派手」に登場。
鋼牙のテーマも最高に映え、アニメ版鋼牙の中で私が一番好きなシーン、かっこいい。
ただ、走り方がなんだか間抜け。

犬夜叉と鋼牙は豹猫族の後を追うが、見失ってしまう。
奈落の結界のようだという鋼牙の言葉に犬夜叉は鉄砕牙を振り抜く。
次週の展開に期待を持たせる演出。

いちいちこだわるようで申し訳ないが、現代での犬夜叉とかごめには気になる部分も多い。
仲間の苦労もわかっていて戻る気のなさを露骨に出すかごめ、お約束の安易なおすわり、犬夜叉の扱いなど。

まあそんなことは置いといても豹猫族と殺生丸の因縁、どう描かれるか楽しみである。
(もちろんすでに見ているのだが)
(2003年7月11日の日記)
犬組猫組対抗戦
アニメ第76回放送2002年7月1日
「標的(ターゲット)は殺生丸と犬夜叉」

前回かごめを追った犬夜叉と鋼牙は結界に行く手を阻まれる。
犬夜叉の鉄砕牙が結界を破壊し、今週のエピソードが始まる。

アニメの現在進行形、七人隊編でちょっと前に犬夜叉一行vs七人隊の総力戦が放映されたが、今回も似たような雰囲気。
犬組は犬夜叉、鋼牙、殺生丸、珊瑚&弥勒、猫組は春夏秋冬猫兄弟。
この部分はとても見応えがあった。

殺生丸がキリキリしているのが気になったが、なにせ今宵は満月。
七人隊でさえ殺生丸に相対するのは三日月の夜を選んでいるのに、神をも恐れぬ無謀な振る舞い。
殺生丸の機嫌が悪くなるのも無理からぬところ。
殺生丸を呼び出すには三日月の夜がお約束なのだ(笑)。

犬夜叉たちの父君は妖犬モード、遺骸になっている鎧付けモード、もちろん犬夜叉の母と出会った人間モードの3パターンあるらしい。
その父君の下で戦った大昔はともかく、50年前に雑魚妖怪を引き連れて戦いに臨む殺生丸、そんなキャラではないだろう。
しかも優位に立っていたのに狼野干たちが逃げてきたために殺生丸も苦戦する?
鉄砕牙がなかったと泣き言を言う?
最初からあてにしてはいないはず。
犬夜叉に対しても同様、来ないと怒るより、はなから関心なかったのだと思う。
来たらかえって怒るだろう。
なにしろ孤高の貴公子なのだから。

アニメではどうも理解に苦しむ殺生丸の扱い。
鋼牙にまで知らないなどと言われる始末。
もっともこれは、鋼牙の方がローカル妖怪なのだろう。
狼野干を知っていたのは「オオカミつながり」?

余談だが狼野干が殺生丸の元に連れてきた雑魚妖怪、全部プレステ登場済みである。
毛現御霊、飛蛇入道、夜頭鳥などお馴染みさんとの再会に、嬉しかったと言いたいところだが、もう少し創造力を酷使して新しい妖怪を作って欲しい。
子どもの犬夜叉がいじめられる回想シーンでも使いまわしていただけに、なんだか情けない気がする。

個々の場面では腕に刺青?島帰り状態の冬嵐と殺生丸の戦闘シーン、鋼牙が森を飛び抜けるシーン、犬夜叉と邪見の会話などがおもしろかった。
春嵐、鋼牙のかけらを見切っていたな・・・。
それは別にいいのだが、殺生丸は、蛇骨と睡骨のかけらが見えていなかった。
りんを人質に取られていた時、桔梗が来なければ、りんは間違いなく殺されていた。

あれは殺生丸のミスだったろう。
このかけらを見切る特殊能力、考えてみると不思議である。
百足上臈を筆頭に満天なども見切っていたし、弥勒、殺生丸が見ることができないとはどういうこと?

困ってしまうのが豹猫族(嵐兄弟以外)とかごめ。
お間抜けな顔で棒切れ持って襲いかかられてもどうしようもないし、牢屋の中で村人の説得に回るかごめにはため息。
たしかに犬夜叉達は助けに来るだろうが、かごめ自身もっと凛々しいキャラであったはず。
犬夜叉への信頼と受け取るには無理がありすぎ。

たとえば弥勒や珊瑚なら、絶対言わない台詞だろう。
本来ならば、かごめも言わないと思う、こんな女々しい台詞は。
因縁のお館様復活はまた来週のこととなる。
(2003年7月12日の日記)
豹猫族のお館様
「豹猫族とふたつの牙の剣」

     ☆     ☆     ☆

豹猫族編第3部。
先に印象に残る部分を挙げてしまうと、見事なのが戦闘シーン(特に鋼牙vs秋嵐戦のスピード感と犬夜叉、邪見の連携?プレー)。
キャラクターベスト3は邪見、狼野干、八衛門狸。
ワースト3はかごめ、殺生丸、お館様。

鋼牙のスピード感を生かした戦闘シーンは意外に少ないが、相手が動きの鈍い大男の場面でここまで魅せてくれるとは嬉しい驚き。
特に秋嵐の隙を突いて回し蹴り?を叩き込むカット、巫法札合戦では「疾風の反撃」として使用されている。
こうして固定した絵で見ても、躍動感に満ち溢れていて素晴らしい。

それから忘れてならない邪見の名台詞、「邪(よこしま)を見ると書いて邪見と読む。」
これはオリジナルの台詞としては今までで最高だと思う。
なんだかんだ言っても犬夜叉の加勢に回る邪見の人の良さ。
犬夜叉と邪見、これも意外に?名コンビかも。(笑)
狼野干と八衛門狸に関しては説明不要、見て笑ってくれればそれでいい。

さて囚われたかごめ、弥勒、珊瑚と村人たちはお館様復活のため、生贄として引き出される。
それを一応犬兄弟が力を合わせて、それぞれの刀(殺生丸は天生牙の方)を使って戦いに勝利する。
そこで殺生丸。
ちょっと原作に登場する殺生丸と朴仙翁の会話を引用してみたい。

朴仙翁 「おぬし(殺生丸)は闘いの中でどのように追いつめられようと、心は冷めたまま・・・ 自分を見失うことはなかろう?」
  殺生丸 「ふん、私が追いつめられることなど、ありはしないがな。」
朴仙翁 「くくく・・・ そうかもしれんな。」

もちろん口先だけの言葉ではない。
たとえ闘いに敗れて死ぬことになっても、そんな自分をどこか冷めた目で見ている自分自身がいる、そんな誇り、冷徹さ(自分に対しても)があってこその殺生丸である。

鉄砕牙がないと泣き言を言う、目の前の敵を無視して兄弟喧嘩をやらかす、安易な妖犬化・・・。
ついでに書くと天生牙の意図するところも見抜けぬ小者ぶり。
私でさえ気づいたのに。
ただ私の場合は、ついでにお館様も生き返るのではないかと思ったが。
全国に何人いるかはわからないが(多いことは確か)、殺生丸ファンは泣いただろう。
私だって見たくない、こんな殺生丸。

そして助けに来た犬夜叉の前では猫かぶり姫、逃げる時はいきなり図太いかごめにも涙。
前回かごめは「凛々しいキャラであったはず」と書いたが、かごめの強さはこんなものではないはず。
満員電車に乗る時に、まだ降りる人がいるのに、待ってる人を押しのけて乗り込んで席確保をめざす、あの雰囲気に似たものがあった。
またまたついでに書くとお約束の犬夜叉と鋼牙の喧嘩の場面、どうして犬夜叉にだけ「おすわり」?
どっちが悪いとか、そんなこと全然関係なく、とりあえず「おすわり」。

ただ、ひとつだけ言えるのは、アニメ版かごめはこういったキャラとしてすっかり定着してしまったこと。
だから原作に近いシリアスな場面で、原作どおりの反応を見せても、どうも素直に共感できない。
本当に悲しいし、寂しく思う。

ところで、先日中野で犬夜叉キャラ設定資料集を見かけた。
見た限りでは、「高橋留美子原画全集 アニメ犬夜叉の世界」139ページからの部分や、日暮神社の全景などで、目新しいものではなかったが、性格や行動パターンの設定資料などはないのだろうか。

お館様は、はっきり言って蘇る前のミイラ状態の方が怖さがあったし、迫力があったと思う。
声は西前忠久さん。
こちらはさすがの快演、怪演。

あとこれはいいなと思ったのが、犬夜叉が竜骨精に勝ったのだからお館様にも勝てるといった時の、かけらを使っている分お館様のほうが手強いと言った冥加の台詞。
オリジナルにおいて、こういった正確で細かい設定がきちんとなされていると本当に嬉しい。

次回は「珊瑚目指してオンリーユー」。
私的にはより寒く、より悲しく、より寂しいエピソードとなってしまう(と思っていたのだけれど・・・)。

余談だが好評放映中の「高橋留美子劇場」、犬夜叉&かごめにコナンに刀々斎に灰原哀とあきれるほど「月曜午後7時から8時」に登場する声優さんが多い。
もちろん皆さん大好きな声優さんだし、楽しく見ているがこれは高橋先生の好みなのだろうか?

「うる星やつら」から「めぞん一刻」、「らんま1/2」 「犬夜叉」とも犬夜叉&桔梗はじめ同じ声優さんの再登場が多いようだが。
(2003年7月22日の日記)
良くできたエピソード
アニメ第78放送2002年7月15日
「珊瑚目指してオンリーユー」

     ☆     ☆     ☆

先日の「標的は殺生丸と犬夜叉」と書いて「標的」を「ターゲット」と読ませるのもそうだったが、中途半端な「カタカナ使い」は止めて欲しいと思う。
高橋先生の作品、特に「犬夜叉」を読んでいると言葉に関する感性のものすごく強い人、という印象を受ける。
それに比べ、とりあえずカタカナを使ってみればかっこいいと思っているのかとても安っぽく感じてしまう。

今回のエピソード、おもしろいと感じるかそうではないかは、かごめに対する気持ち次第だろう。
アニメ版かごめが好きな人は今回のかごめが最高に可愛いと思うだろうし、原作にこだわる人は思い切り引いてしまったのではないだろうか。

私? 私は雲母と一緒に毛を逆立てたい気分、ついでに鳥肌も立てたい気分。
ただいかにもアニメ版かごめらしいおせっかい、もとい親切心をさらりと払いのけると、実はとても良くできたオリジナルだったような気がする。
よくある話ではあるけれど。

宮本充さん、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の中川さん、よくは知らないが、たしかいいとこのおぼっちゃんといったキャラではなかったか。
「金田一少年の事件簿」の「電脳山荘殺人事件」では「乱歩」役。
出番は少ないが、やはり優しそうな好青年の雰囲気だった。

金田一シリーズの中でも電脳山荘は面白くて何度も見たので、宮本さんの声も印象が強い。
その宮本さん演じるところの武田蔵乃介、これもまたよくあるタイプのキャラではあるが、随所に見られる男気はなかなかのものだし、弥勒と珊瑚の微妙な心の綾がいかにも弥勒らしく、いかにも珊瑚らしく、丁寧に描きこまれていた。

プロらしからぬ珊瑚の八つ当たりも微笑ましく感じたし、熊妖怪が実は実体のない怨霊だったことを見抜くまでの弥勒の行動も逐一うなずける。
ちょっとわざとらしい演出も目立ってはいたが、犬夜叉、七宝、雲母のおちゃらけトリオとと弥勒、珊瑚のシリアスムードの対比も良かった。
昔懐かしアニメスペシャル「奈落の真実に迫る桔梗の魂」後半、晴海編を思い出してしまった。
あれもやり過ぎず、原作以上に笑えた部分。

あの時は七宝、妹姫と並んでおちゃらけ組だった弥勒、今回はひとり空回りのかごめに「かごめさまにもいつかわかる日が来るはずです。」と言い放つ。
成長したものである。

ここで武田蔵乃介があっさり引かず、城を捨てて珊瑚を追いかけるくらいのしつこさを見せてくれたら、鋼牙についで準レギュラーの座を獲得できたかもしれないと思うとちょっと残念(笑)。
ただしさすがは妖怪退治屋、珊瑚はアフターケアも万全で、巫法札合戦において珊瑚は武田蔵乃介が受けたダメージを軽減する技を持つ。

ただ武田蔵乃介自体普通の?人間だけに強さも体力もないので、使い勝手は良くないが。
ちなみに雨に縁があるせいか、武田蔵乃介は「水」属性、性格は「純情」と出た。
まあ純情といえば純情だが・・・。

足軽役で田中一成さん、大迫力の熊妖怪は西前忠久さんが熱演。
家臣役の石波義人さんは人見陰刀の父(人見城主)に続き、2度目の登場。
(2003年8月1日の日記)
標的(ターゲット)はお子ちゃま?
アニメ第79放送2002年7月22日
「邪見の鉄砕牙ブン取り作戦」

     ☆     ☆     ☆

邪見の邪見による邪見のためのオリジナル。
私は邪見が大好きだが、あのおもしろさは話の合間にちらっと出てくるのが楽しいのであって、ここまでされると何だかなあと思ってしまう。

だがこのエピソードは「標的(ターゲット)はお子ちゃま!」ということで、四の五の言わず、素直に見るべき。
おもしろいのは邪見は、殺生丸に使わせるために鉄砕牙を奪おうとしているのではなく、犬夜叉に使わせないために奪おうとすること。
後でその辺がうやむやになったが、一応殺生丸には使えないということで納得できる。

ただこの鉄砕牙、以前七宝が犬夜叉に渡すなど「人を想う優しさ」のある妖怪は使えるのではないかと思わせる部分がある。
また「人を想う心」はなくても「人の腕」をつけた殺生丸は変化させていた。
どうもそのあたりがあやふやで、そこがまたおもしろいところなのだが、私は今の殺生丸なら人の腕がなくても鉄砕牙を扱えるのではないかと思っている。
都合よく殺生丸は天生牙の威力を知り、闘鬼神を手に入れてから鉄砕牙に対して興味がないようだが。

邪見が殺生丸の供になるところ、なぜか滝の裏から人頭杖を出す殺生丸などおもしろい部分も多かった。
邪見は命の恩人としてもさることながら、殺生丸の美しさに惚れたらしいのが何だか可愛い。
犬夜叉弥勒の入浴シーンも新鮮。

ただ最初のじゃんけん、無女に対して無男、無男に対して偉そうな犬夜叉一行の態度など楽しめない。
子どもじゃないからか、性格が硬いのか、こういったオリジナルは苦手である。
最後のりんをかごめだけが見つける部分、ちょっと信じられない展開だがかごめの雰囲気は良かったと思う。
この後りんが神楽にさらわれる原作の話が入るので、りんは今犬夜叉たちに姿を見られるわけにはいかないのだろう。

無男は高田べんさん、邪見の手下の小鬼(邪見はどう見ても天狗だが、その手下は天狗ではなく小鬼らしい)は鋼牙の手下、白角役の岸尾大輔さん、邪見が回想シーンで戦っていた比丘尼(だそうだ)は鳥宗りつこさん、といっても台詞はなく妖怪声だけ、何かしゃべって欲しかった。
ちなみに比丘尼とは人魚の肉を食べて不老不死になった尼のこと。
人魚だの不老不死だのというと、なんとなく綺麗なイメージがあるが、日本の場合はむしろグロテスクであり、悲劇的である。
高橋先生の「人魚シリーズ」はあまりにも有名だし、「陰陽師」にも登場する。
ついでに「かまいたちの夜 2」にもご出演。
(2003年8月2日の日記)
奈落のお肉に包まれて
アニメ第80回放送2002年7月29日
「殺生丸とさらわれたりん」

原作少年サンデー2001年6月6日(27号)第219話「さらわれたりん」
原作少年サンデー2001年6月13日(28号)第220話「奈落の目的」
原作少年サンデー2001年6月20日(29号)第221話「結界を斬る」

          ☆          ☆          ☆

とんでもないオリジナルが2本続いた後は不気味なほど原作どおり(回想シーンが多いが)。
前回の鉄砕牙ブン取り作戦のことなどまるでなかったかのような(実際なかったのだが)邪見の態度にいささか唐突感は否めない。
りんがさらわれるという非常事態はあったにせよ、もう少しそれなりの反応があってもいいような気がした。

もっともこんな些細なことは不満にもならない。
珍しく楓宅に宿泊中の犬夜叉一行。
いつも旅をしているように見えるが、実際歩き回っているのは武蔵の国だけなので(この時点では火の国=九州にも行っていない)、むしろ楓の村を拠点に出かけては戻る生活をしているのだろう。
骨喰いの井戸のこともあるし。

しかしいくら鼻の効く犬夜叉とはいえ、楓の家で奈落の匂いを感じ取るなど、奈落はそんな近くにいるのか。
まあ奈落は攻撃対象の選び方にはこだわる人だから(特に年齢、顔)、楓はまあ安全圏?
はともかく、アニメではずいぶん犬夜叉の犬っぽさを強調しているなあという印象を受ける。

一方前回最後にりんをさらわれた殺生丸は奈落の城に向かう。
りんは瓜をしっかり抱えたまま(ここが大事)連れて行かれ、瓜を抱いたまま置いてかれる。
神楽は特に感想はないらしいが、そこまで瓜にこだわるりんがなんだか可愛い。
そしてりんと琥珀が初対面。

2人の会話もほとんど原作どおりで好感が持てる。
まあ変えようのない部分ではあるが。
原作と違って瓜をきちんと切り分けているのは琥珀の鎖鎌使用?

殺生丸は奈落と対面。
奈落が出来損ないの妖怪みたいな姿に変化したシーン、妙に迫力がある。
原作を知らずに見ていた人は本気で驚いたのではないだろうか。
自意識過剰、美意識過剰の奈落、途中段階とはいえよく殺生丸の前にあんな姿をさらけ出せたものだ。

奈落と殺生丸の毒気に当てられた大神神楽、相手が犬夜叉になってほっとしたのか途端に元気になる。
これはおかしかった。
森川奈落と成田殺生丸に囲まれて飄々としていれる人はそんなにはいないだろう(笑)。
その点長島邪見はさすがの余裕。

ところでこのエピソード、2つの「もし」が出てくる。
もし、犬夜叉が来なければ・・・。
殺生丸は奈落に取り込まれていたのか。
もし、殺生丸が肉片に包まれていなければ・・・。
殺生丸は風の傷にやられていたのか。
かっこつけたまま取り込まれてしまったり、かっこつけたまま風の傷にやられてしまったら目も当てられないが、実はアニメの殺生丸、ちょっとそんな危なっかしさが感じられる(特に次回のエピソードの中で)。
原作は犬夜叉が来なくても余裕でかわせそうだったが。

いつもはさんざん神楽をいじめているくせに、実は信用しまくりの奈落も可愛い。
思いっきり手抜きの神楽に対し「神楽め、仕留めそこねたか。」
神楽の頑張りに期待していたんだろうな。
もっともこれも次回のエピソードに入っている台詞。
今回は犬夜叉が殺生丸救出?間に合った瞬間まで。

(2003年8月3日の日記)
 

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