景麒(月の影 影の海) 慶国の麒麟。 陽子を見つけ、慶国に連れ帰ろうとするが・・・。 「・・・・・・見つけた」 声と一緒に微かに海の匂いがした。 景麒初登場シーン。 二十代後半、裾の長い着物に似た服、能面のような顔、膝裏に届くほど長く伸ばし た薄い金色の髪。 「言葉の足りない」性格がすでに見られる。 本人は陽子を王と認めて満足しているが、急に王に祀り上げられた陽子の方こそいい 迷惑だったろう。 「命が惜しくないのですか。 ー許す、とおっしゃい」 危機迫る場面とはいえ、仮にも王に向かって僕が発する言葉ではないような。(笑) それにつられて「許す」という陽子も陽子だが。 この2人、本当にうまくかみ合わないのだが、そこがまた慶国の魅力のひとつにも なっている。 「私としてもこんな主人は願い下げだが、これ ばかりは私の意のままにならない。 主人を見捨てることは許されない。」 後になって景麒はこの時、陽子に失道した予王舒覚と同じ雰囲気を感じたと告白して いる。 たしかに、これまでの陽子は王たるにふさわしい人物とはとても思えな い。 「・・・麒麟」 これが、麒麟なのか。 雌黄の毛並みの一角獣。 鹿の類ならではのほっそりした脚には鉄の鎖が巻かれていた。 麒麟は深い色の眼で陽子を見る。 私は麒麟のイメージとして、なぜか白馬ペガサスを想像していた。 実際に原作やアニメで見た麒麟はもっと丸っこい顔をしていて愛嬌があった。(笑) もちろんキリンビールの絵とも違う、独特の雰囲気がある。 私は黒麒泰麒が一番好きかも(見た目)。 「ありがたい」 声は懐かしい音をしていた。 「・・・景麒?」 麒麟はわずかに眼を細めて陽子を見あげる。 「いかにも。 ご苦労をおかけしたようで申しわけございません」 陽子は微笑う。 少しも悪びれない口調がただ懐かしかった。 ここではただおかしくて嬉しくて、涙にじませながら読んだけど、景麒のこの性格、後々になっても陽子にとって枷となる。 互いをわかりあえず、苦しみながら成長していく2人の姿が描かれるのは、「月の影−」以降。 「ぶじだったんだ」 「無論」 麒麟はうなずいてみせる。 そのほんとうに悪びれない声がおかしかった。 「角を封じられると、使令も封じられる?」 麒麟が気まずそうに小さく唸った。 結局陽子のおかげで助かった景麒。 鈴の例を見ても、やはり選ばれた者は違う。 「図南の翼」の翼でも感じたが、やはり並のものではここまでできないのだろう。 行き倒れても楽俊に出会い、救われ、尚隆に出会う。 実は陽子をこの運命に巻き込んだだけで、ほとんど出番のなかった景麒。 しかし、冗祐をつけたこと、最後の陽子との会話によって確固たる印象を読み手に与える。 麒麟は陽子を見つめて二、三度瞬きをする。 「ずいぶんとお変わりになった」 「うん。景麒にもお礼を。 賓満をありがとう。 ジョウユウにはほんとうに助けてもらった。 お礼も言いたいし、聞きたいこともあるから」 冗祐を使令にしていたのは景麒の先見の明? 陽子の試練を予測していたかのような・・・。 「人の形にはならないの?」 裸で御前にはまかりかねる」 その憮然とした声がおかしくて、陽子は小さく笑った。 では景麒は1人で出かけるときは、背中に衣服をくくりつけているのか? 爆笑・・・。 |