浩瀚 (月の影 影の海) 元麦州候。 偽王軍に最後まで抵抗を続けるも、陽子が王になってからはいわれなき嫌疑をかけられる。 慶が落ち着くまで陽子と顔を合わせることはなかったが、陽子は遠甫や桓タイを通してその人となりを知り、後に冢宰に任ずる。 「すでに偽王軍が麦洲に向かってる。 麦候の軍が三千、とうてい対抗できないだろうな。 たぶん時間の問題だ」 「月の影 影の海」に浩瀚は登場しないが、尚隆や陽子たちの会話にちらっと出て来る。 とはいえこの時は、この台詞の持つ意味に気づかず、さらっと読んだ。 ちなみに絵で見るまで浩瀚のイメージは、桓タイに少しだけ文官風味を加えた程度の勇将をイメージしていた。 それだけに端正な顔で、どこから見ても文官なイメージで出て来た時は驚いた。 浩瀚 (風の万里 黎明の空) 「麦候はどうなった?」 陽子は息を吐いて首を振った。 麦候は名を浩瀚という。 浩瀚はかつて慶国西岸、青海に面する麦州を治め、慶が偽王によって混乱した際、最後まで偽王につかず、抵抗を続けた州候だった。 今ならわかる。 浩瀚は私欲のためではなく、事情を理解して偽王に従わないためだけに戦い続けた、慶で一番優れた候だった。 しかしその様は、曲解されて陽子の元に届いている。 つまり当時、真の慶王だと信じられていた偽王を認めず、自分が王になるために闘っていたのだと。 景麒、尚隆、そして後で出て来る遠甫、誰もが陽子以上に浩瀚の事を理解しているように思えるのに何も言ってくれない。 陽子の孤独が伺える話が続く。 「麦候はどうなった?」 陽子は息を吐いて首を振った。 麦候は名を浩瀚という。 浩瀚はかつて慶国西岸、青海に面する麦州を治め、慶が偽王によって混乱した際、最後まで偽王につかず、抵抗を続けた州候だった。 今ならわかる。 浩瀚は私欲のためではなく、事情を理解して偽王に従わないためだけに戦い続けた、慶で一番優れた候だった。 しかしその様は、曲解されて陽子の元に届いている。 つまり当時、真の慶王だと信じられていた偽王を認めず、自分が王になるために闘っていたのだと。 景麒、尚隆、そして後で出て来る遠甫、誰もが陽子以上に浩瀚の事を理解しているように思えるのに何も言ってくれない。 陽子の孤独が伺える話が続く。 玉座を望んで偽王に抵抗しとおした州候。 麦州に留め置かれ、いまもって復職を許されていない。 処遇について、臣下の意見が冢宰派と大宰派とで対立したまま決着をみないからだった。 「なるほど、それが不服だったわけだ・・・・・・」 浩瀚の事をどんどん曲解して行く陽子。 どう見ても景麒が悪い。 遠甫に関しても浩瀚に関してもはっきりしたことを言わないから陽子が惑う。 でも考えてみれば、景麒も損な役回りだ。 はっきり言って陽子の誤解を解いてしまったら、物語がすんなり進み過ぎる。 悪役の臣と、王である陽子、その対立の間に曖昧な景麒が入ったことで、話がさらに複雑になり、面白みを増す。 今後は景麒の溜息も許してあげようと思う(笑)。 「何を隠している」 「・・・・・・何も。 主上はご自身で確かめたことでなければ、納得なさらないでしょう。 言うべきことはこれまでに申し上げた。 あとは主上がお考えになられませ」 「ー浩瀚か? もと麦州候、浩瀚。 罷免にあたって、景麒は頑強にこれに反対した。 言うべきことはこれまでに言ったと景麒は言っているけれど、言い方が中途半端だから陽子に怒らせる。 陽子に自分で判断しろと言いつつ、陽子が官吏の言うことを聞くと不満を顔に出す。 こんな部下がいたら正直ストレスたまりそうだ。 でもこの部分を読むと、景麒が頑強に反対したとある。 官吏に気兼ねする陽子がまた景麒のストレスの元だったか。 私も現実ではけっこういろいろあるけど、陽子に比べたらまだまだ甘いもんだと自分に思う。 「麦州候って、とってもいい方だったのに、景王が辞めさせてしまったんですって。 とても麦州の人には慕われてたのに。 それで和州候を見逃すんだから、呆れちゃう」 陽子をまだ王と知らない鈴の台詞。 玉座にいたら決して聞こえてこない、民の声。 「・・・・・・浩瀚をどう思う」 「よく出来た人物に見えましたが。 会ったことは二度ばかり。 それだけの印象では」 「景麒・・・・・・お前っ」 激高するよなあ、と思わず陽子に同情してしまう部分。 景麒の描写がはっきりしない。 浩瀚を庇うようなことを言い、自分で考えろと言い、よく出来た人物であるように見えたと言い、はっきりとは(わからない)と言い。 景麒対策、陽子と一緒に考えたい。 景麒しかいないのが一番大きな問題に見えてくる。 お互い不器用では済まされない状況が続いているが、なんとなく仲直りしてしまう不思議。 キャラとして一番罪作りなのは浩瀚か。 「麦候も松塾の出身だと聞いたよ。 麦候の存在は目障りだから、罷免させた連中がいる。 偽王についた連中と、偽王につかなかった麦候と。 麦候が正しいということになれば、偽王についた連中はみんな権を失ってしまう。 だから王にあることないこと吹きこんで麦候を陥れる。 そういうふうにね、困る連中がいるんだよ」 陽子が知らなかったことを、庶民の皆が知っている。 その事実を突きつけられる陽子。 陽子が王の座を離れて民の暮らしを知ろうとしたことが大きな成果につながる。 たとえ陽子にそこまでの意識はなかったとしても。 では、と桓タイは両脇の二人に視線を投げて陽子を見上げた。 改めて手を突き、叩頭する。 「ーもと麦州候浩瀚さまの大逆の疑いをお晴らしになり、いま一度の復廷をお許しください・・・・・・!」 「浩瀚ー」 陽子は眼を見開く。 戦いは終わり、桓タイは陽子の正体を知り、陽子は桓タイの正体を知る。 桓タイはもと麦州州師将軍、青辛だった。 いよいよ浩瀚に会えるか、とワクワクしながら読んだが、残念ながら陽子と浩瀚が出会う場面は書かれなかった。 「ー浩瀚」 はい、と声を上げた男は若い。 いかにも怜悧な三十前後の男だった。 これが、麦州候浩瀚か、としみじみと見やるものがほとんどだった。 「怜悧」と描写された浩瀚だが、アニメで見るまでイメージが全くつかめず。 アニメで見てからも、浩瀚のビジュアルイメージがいまいち掴みにくい気がする。 私のイメージはやはりその名の意味の「水の広大なさま、物多く豊かなさま、そして文章のとりとめもなく大きいさま(漢和辞典より)」かな? とてつもなく長い演説をさらっとしてのけそうな感じ。 アニメで聞きたいなあ。 「十二国記を語る部屋」に戻る ホー ムに戻る |