過去のレポート 2

仔熊のミーシャ登場 3巻NO.7「ハレルヤ・エクスプレス」感想
3巻の見返しの青池先生のコメントに

「そのうち『ミーシャ』も主役になったりして・・・。―こわい。」

と書かれてあるのが現実となって、今ではすっかりお笑いキャラになった仔熊のミーシャが登場する。
私はミーシャがけっこう好きだが、「キャラクターガイドブック」をひっぱり出して以前の公式サイトの人気投票報告をチェックすると、とっても微妙な12位をキープ(笑)。
当時Z部屋メインで時々少佐部屋にお邪魔し、ほんの時たまボロボロンテ部屋を覗いて熱気に当てられて戻ってくる私だったから、残念ながらミーシャ部屋のコメント集は読んだことがない。

このサイトが諸事情で急遽閉鎖されてしまったため、コメントなど保存しておく暇もなかったのがかえすがえす残念だが、私のミーシャのイメージは最初から「歩くやかん」だった。
伯爵、ミーシャと並んで少佐の天敵ベスト3を上げるなら間違いなく少佐の上司、情報部部長だろう。
(ベスト5にするならロレンスと某J君が ランクイン?)

嬉々として部長が迫るは伯爵とのデート、もとい伯爵への協力要請。
この時点で少佐が?NATOが?国際的大泥棒エロイカの住所を把握しているのもすごい。
ターゲットはヴァチカン法王庁の大金庫に持ち込まれたアメリカ軍事衛星の情報。
世界にも、もちろんソビエト側(懐かしい!)にも気取られず、それを盗み出すのが伯爵の仕事となる。

前回のパーレビ国王の宝剣(ソ連の軍事情報付き)を盗み出す時の手際の良さからして、少佐でも十分できそうな気がするけど、さすがにNATOとしてはそこまでは踏み込めないか。
殉教者の表情で部下たちの前に戻ってくる少佐が可愛い。
そんな少佐が気になってしょうがない部下たちは仕事が手につかない様子。
後に少佐が入院した時も大騒ぎだったが、その時は騒ぎにも加わらず淡々と仕事をこなしていた部下Zも、今回は仕事よりも部下Gとおしゃべり中。

いえ部下Gにつかまって一方的に話を聞かされてるの図か。
余談だがZの髪、初登場時のロングヘアより今のNATOカットより、その中間、この頃の長さが一番好きだ。
嫌々ながらも任務のためと割り切ったか、少佐は正式な手続きを取らず、あえて伯爵が興味を持つようなミステリアスな招待をする。
女性に興味はなくてもひと目見ただけでスリーサイズを当ててのける少佐、伯爵が大嫌いでもその性格や好みはちゃんと把握してるところがすごい。

少佐から伯爵に送られたのはアムステルダム発TEE(国際特急)「イル・ド・フランス」一等乗車券2枚―行き先はパリ。
当時はたくさんいた部下の中から伯爵はあえてジェイムズ君をお供に乗り込む。
部下Gのことはすっかり忘れ、Zには早速目をつけた伯爵が遂に少佐と対面。
そこに少佐暗殺をもくろむ仔熊のミーシャも絡んで三つ巴の戦いが今始まる。

少佐としても認めざるを得ないのが伯爵の能力で、泥棒としてもさることながら対ミーシャ、対爆弾においても名アシストぶりを見せる。
こんな硬派の漫画がほんとに少女マンガのジャンルに入るわけ?なんで?どうして?ドキドキしながら読んだ。
少佐のごつさに似合わない?しなやかな指の描き方も好きだった。
漫画に登場するキャラ全体をかっこいいとか可愛いとか騒ぐことはあっても、骨格の美しさとか体のラインの美しさなどに目覚めたのもこの頃だったように思う。

どうでもいいことだが、少佐が牧師と話す場面で「あんたの説教の声の長さは」って誤植だよね?
「声や長さ」だと思うんだけどって当時鬼の首でも取ったように威張ったことも懐かしい思い出。

お気に入りのカットは部下たちの前で煙草を手にぼんやりしている少佐(「・・・・・・・・・」がいっぱいあるとこ)と時限爆弾を撃つ瞬間のカット。
少佐と共に死ぬことを端然と受け止めているミーシャにもすごいなあと思った。
ミーシャと白クマのさりげないやり取りも好き。
お気に入り台詞は「ズボンだけはしっかりはいておけ」だったりする(笑)。

「ハレルヤ・エクスプレス」は今回で終わりだが、少佐と伯爵ローマ編はまだまだ続く。
これを書きながら、以前録画したおいた「世界ふしぎ発見」のモーツァルト編見ていたが、なんとモーツァルトが父親に送った手紙に「あなたに千のキスを贈ります。」と書いてあったという。
伯爵がシーザーに贈ったキスは千のうちひとつだけ。

映像でモーツァルトの父親の手に何度もキスする姿を見たが、千回ともなるとかなり大変そうだ。
一瞬唇タラコの伯爵を思い出してしまった私は少佐並みのリアリスト?かも。
(2007年2月3日の日記)
水もしたたるいい少佐 4巻NO.8「来た 見た 勝った!!」感想
新しくタイトルがついているけれど、話自体は前回の「ハレルヤ・エクスプレス」から続いている。
ヴァチカン法王庁の大金庫に持ち込まれたアメリカ軍事衛星の情報を盗み出すために伯爵に協力を要請する少佐。
匿名で招待された伯爵が「イル・ド・フランス」に乗り込み、少佐と対面したのだが、そこに仔熊のミーシャが登場し、とドキドキハラハラの展開になったわけだが、実は話はほとんど進んでいない(笑)。

今回はやっと?ローマに到着した少佐の朝から始まる。
のんびり朝風呂を楽しむ伯爵に堪忍袋の緒が切れる少佐、と少佐にはストレスのたまる展開ながら漫画的にはひたすらおかしい。
とはいえ当時は少佐に同情、少佐の迷惑顧みず好き放題な伯爵が苦手だったりする。
ついでにジェイムズくんもあまり好きじゃなかった。

怒りのあまりとはいえ、伯爵の入浴中に乗り込んでくるとは「飛んで火にいる夏の虫?」。
おまけに伯爵に浴槽の中に連れ込まれて「水もしたたるいい男」に。
でもコミック12ページの濡れ羽色の髪の少佐は確かに色っぽい(笑)。
初期だけにけっこう気弱な表情をすることも多く、可愛いというか、今ではほとんど見られない若さも感じる。
ちなみにこの後の顔はほとんどヒースだし。

伯爵に翻弄されまくりの少佐はイタリア警察の「かんおけ刑事」ことフランコ・ジュリアー二と衝突するが、小物扱いで意にも介さない。
ところがこの刑事が少佐に恨みを持ったこと、ジェイムズくんの奇癖から後で伯爵がひどい目に会うことに。
世界を股にかけて活躍する少佐と伯爵だけに様々な組織の様々な人物(スパイなど)と関わるが、この2人の印象が強すぎるせいか、あまり魅力的な人物は見当たらない。
(唯一の例外はイギリスSISのロレンス)。

それだけにローマでの大騒ぎも目立っているのは少佐と伯爵だけという(おっと忘れてたボロボロンテは登場する、笑)展開。
よってこのエピソードもストーリーを追うよりは2人のやり取り(女風呂に入ってしまったり、いろいろ変装したり)を楽しんでいた。
状況が一変するのは?伯爵が「あるもの」を盗んだ時から。
今でも具体的には書けないくらいあの時の衝撃は大きかった。

今なら描くのはたぶん無理だろう、当時でさえ伯爵の、というより青池先生の度胸の良さに血の気が引いた記憶がある。
本当はここで笑うべきだったんだろうけれど。
同時に物語も一気にシリアスモードに突入、ボロボロンテの策略が炸裂したり、伯爵とジェイムズくんの漫才に笑ったりしながらも、最後は少佐の凄さを見せつけられる。
黒髪のジュリアス・シーザー、鉄のクラウスに太刀打ちできるのは、やはり伯爵ぐらい癖のある人物なんだろうなあとだんだん納得させられていく自分がいた。

当時のローマ法王ヨハネ・パウロ2世も昨年亡くなり、現在のベネディクト16世が選出される時の様々な儀式をテレビで見ることができた。
しかもベネディクト16世がドイツ人であることなども印象深かった。
最後の最後に仔熊のミーシャはいないがKGBが登場し、次回「アラスカ最前線」への伏線となる。

他にもなにげに少佐の行動を読み切っている部下A、さりげなく少佐を励ましている部下Z、少佐の思い出や美術観なども楽しめる。
ちなみに伯爵がシスターに化けて少佐に会いに来た時、少佐は記憶の中にあるシスターの顔を思い浮かべているが、そこに初恋のシスターの顔はなかった。
伯爵の正体には気づかないままでも、どこか否定感を持っていたのだろうか(笑)。

この時期の絵が好きなだけに、少佐のお気に入りカットも多い。
川で手を洗い始める少佐、伯爵に真後ろに降りられた瞬間の顔、伯爵に銃を向ける少佐、伯爵にベルトを盗まれたことに気づいた瞬間の少佐の顔、などなど。
でもなんといってもお気に入りは、追いかけてくるKGBへの痛恨の一撃、だろう。
先生もお気に入りなのか人気が高かったのか、特集番組「エロイカより愛をこめての創り方」でもオープニングで使われたカットである。

次回はいよいよ少佐自身がアラスカへ行く羽目になる。
(2007年4月2日の日記)
少佐自身がアラスカへ 4巻NO.9「アラスカ最前線<PART・1>」感想
少佐の日常生活を見てみたい、そんな読者のささやかな夢をいきなりかなえてくれるとは。
「アラスカへ行け!」が口癖の少佐が自らアラスカに行く羽目になるとは。

そんな驚きが「アラスカ最前線」の特徴か。
もっとも今回は任務のため。
後でへまをした部下A〜Yが改めてアラスカ送りにされるが、アラスカでの彼らの生活を見てると、そんなに大変そうには見えなかったのが意外だった。
たしかにドイツからは遠いけど、シベリア送りにされた仔熊のミーシャに比べたらずっと楽しそうじゃない、みたいな(笑)。

前回NATOに協力した伯爵だが、空からばら撒かれた一億マルク、しかしジェイムズ君は1枚だけ未回収で足りない100マルクが悔しくてならなさそう。
安眠妨害の伯爵と共に少佐の家(城)に盗みに行くことに。
ちなみに1999年よりユーロにとって変わられた(ドイツ)マルクだが、当時は大体1マルク80〜90円くらいだったそうだ。
伯爵の報酬が約80〜90億円で、足りなかったのが8、000〜9、000円くらい?

せこいといえばせこいが、どっちにしても伯爵はこれだけの金額を手にしたわけで。
それでも少佐の城に来たばかりに、伯爵と部長の陰険漫才、そして現在でも有効なナチスの偽造紙幣の原版、そして美術コレクターとして有名なゲーリング空相のコレクションの情報を嗅ぎつける。

広大なアラスカで少佐、伯爵、そして仔熊のミーシャの熾烈な戦いが始まろうとしている。
もっとも今回は前哨戦、少佐のために伯爵がKGBに下剤を飲ませて病院に足止めするところまで。
少佐自身は城に忍び込み、「部長の」100マルクを盗んで行った、そして情報を嗅ぎつけた犯人をKGBと勘違い。
仔熊のミーシャも実際にアラスカに来てるから、その推察もまんざら的外れとはいえないけれど。

今の少佐ならすぐにジェイムズ君を連想するだろうけど、当時はまだ少佐の脳にジェイムズ君はそれほど刷り込まれていなかったらしい。
Zに姉がいるのも新発見、少佐が「メリーさんの羊」を口ずさみながら眠りにつくのも嬉しい発見。
けれど何よりコーヒーに砂糖を10個入れて飲む部長、以前私がいた職場の上司もそうだった・・・(遠い目)。

さてアラスカではアメリカFBIと協力することになった少佐(モルダーとスカリーがいないのがとても残念、モルダーと気が合いそうなのに)。
軽薄なFBIの新人フォードが気に入らない少佐は珍しく部下Zにねぎらいの言葉をかける。
戸惑うZ。
「おまえなにかヘマやったのか?」
「よく考えろ
 少佐の顔見て笑ったとか」
先輩部下AとBの言葉には涙が出るほど笑った記憶が。

もうひとつ忘れてならないのが少佐家の執事さん。
この頃はそうでもなかった(印象になかった)けど、巻を重ねるごとにどんどん好きになっていった人物の1人。
そしてこの頃はまだ痩せてたボーナム君も。
次回は少佐と伯爵に最大にピンチが訪れる。
(2007年5月11日の日記)
ぺーぺー対決 5巻NO.9「アラスカ最前線<PART・2>」感想 1
「アラスカ最前線<PART・2>」は5巻1冊分なので、分割感想でいってみたい。
先日ニュースか何かで実際に湖かどこかから紙幣か何かの原版か美術品が引き上げられたのを見たような気がする。
国もドイツだったかオーストリアだったか記憶にないという体たらくで情けないけど、なんだったのかな?
それから「ぺーぺー」ってエロイカ専用用語だとずっと思っていたのだけれど、普通に使われている言葉なことも最近知った。

さて本題。
冒頭Zがいきなりサービス9カット。
露出&恋愛封印(この段階ではそう思ってた)少佐の代わりに脱ぎまくりの恋愛しまくりのZに当方母性本能さらにくすぐられる予感大。
NATOのぺーぺー部下Zに対抗するは、FBI代表フォード、その実体はKGBのカリンカ。
肩書きだけならZを圧倒してるけど、あまりのお間抜けぶりがむしろ興を削がれるほど。

後で少佐が「わざとらしい」と言ってたけれど、今描かれる話ならZが不審を抱くにしてももっと微妙な失言になるんじゃないかな?と思う。
少佐やZへの擦り寄りぶり自体はいかにもお軽なアメリカンって感じで自然だった。

この時フォードはZの銃創を見つけるが、これは番外編「Z」シリーズで撃たれたもの。
「DIE FRAW AUS DER DDR」、レナーテ・ヴェルナーへの恋は1980年6月に掲載されたらしい。
同じ’80年6月〜11月に掲載された「アラスカ最前線」ではアラスカのタズリナ湖に潜っているのだから少佐が厳し過ぎるのか、部下Zの若さが凄過ぎるのか。
もちろん各ストーリーの設定時期と描かれた時期が一致しないことはわかっているけど、Zだったら7月退院8月アラスカ9月はダイビングとかやっていそう(笑)。

Zにはなんとか太刀打ちできたぺーぺーフォードも御大少佐の登場ではかなうはずもなく、コードネームと任務を白状する羽目に。
最初から軽かったが最後まで情けないKGBフォード。
さすがにのんきな?FBIもフォードの正体に気づかぬはずもなく、その上で泳がせていたのだという。
さりげない縄張り意識なども垣間見せるFBIだが、最後の最後に大きな仕返しをされるところがとっても哀れ。
少佐の意識的な仕返しじゃないところがさらに哀れ。

それでもフォードやFBIのおかげで、さしてすごむことなくフォードに白状させる少佐のかっこ良さを堪能できる。
少佐笑顔だし、背景銃だし。
ありがとう、フォード。ありがとう、FBI。
それにしても、「Xファイル」ではあれほどかっこいいFBIも青池先生にかかると形無しだな、愛嬌者のFBI。

その頃、無事?仔熊のミーシャたちを病院送りにした伯爵は、ミーシャが欲しがっていたタズリナ湖周辺の山荘でくつろぎ中。
突然の電話と突然の侵入者で物語はここから急展開を迎える。

ちなみにこの頃の「エロイカより愛をこめて」には、モブシーンなどで他の漫画家の方が描かれた絵が掲載されている部分がとても多かった。
これが気になって仕方がなかった。
他の先生の絵が嫌いだったわけじゃないのだが、青池先生の絵が好きで読んでいるのに、全然タッチの違う別人の絵。
もう何度も読み返しているから慣れては来たものの、未だに好きではない。
青池作品に限らず、当時は普通にあったらしいけど。

もちろん「いまごろなぜか真夜中のカレーライス・パーティー」みたいに最初から合作と銘打っている作品は別。
特に少佐の胡坐に子ネコがちょこんと座っているイラストなんてとても好き。
少佐、いいパパになれそうです。
(2007年6月12日の日記)
狼vs猪対決 5巻NO.9「アラスカ最前線<PART・2>」感想 2
フォードを名乗っていたKGBのコードネーム「カリンカ」からその使命を聞き出した少佐たちは、伯爵のいる別荘へ、それとは知らずに向かう。
伯爵の元へは「ヴォルガの舟歌」の電話が。
踏み込んだ少佐が捉えた(抱きしめたとも言う)相手は伯爵。
その驚きっぷりが笑えるけど、少佐の怒りが爆発。

しかも伯爵が病院に閉じ込めた仔熊のミーシャが脱走とあって、少佐の部下たちもフル活動。
後で少佐に可愛がられる?ボーナム君も、この時は少佐のことを「NATOのおっさん」呼ばわりしたために、根に持たれる羽目に。
たしかに少佐の言うとおり、伯爵たちが関わらなければ、ここで一気に仔熊のミーシャとシリアス対決になだれ込むはずだった。
この時期もまだ伯爵が少佐の障害物にしか思えず、「邪魔だなあ、伯爵。」とぶつぶつ言ってた記憶がある、ごめんね?伯爵。

作品そのものがギャグコメディを意識しているものだったが、当時私が「エロイカより愛をこめて」に求めていたのは、「魔弾の射手」のようなシリアスなストーリーだったのだろう。
未だに一番好きなエピソードは「魔弾の射手」だし。

さて、少佐たちは無事に輸送機を発見、引き上げに成功するが、今度はミーシャに捕まってしまう。
助けに来たわけではないのだけれど、結果的に助けに来たのは伯爵たち。
少佐ごと荷物を運び去るが、結局は少佐は車もろとも湖に墜落。
普通ならここで凍死、のはずだがさすがは少佐、無事に湖から上がってくる、ずぶ濡れになって(おいたわしや・・・、涙)。

可愛く怪我などしている少佐だが、その実態は鋼鉄のボディ。
寒いのなんのと震えつつも、偶然見つけたあばら家で火と煙草とスコッチで生き返る。
しかしその家は狼に襲われ、住人が狼に食い殺された後の廃墟だった。
少佐の血の匂いにつられた狼たちが再び集まり始める。

さすがにこういった場面になると少佐の方がサバイバリストとしては上。
うかつに火の側から離れた伯爵を守ろうとするなど、一般人?を守ろうとするなどNATOの心意気、表彰したいくらいかっこいい(笑)。
伯爵も意外に場慣れしていてパニックに陥ったりしないのはさすが。
ただの派手な泥棒だと思っていたのだけど、実は大物だったんだ、とは当時の感想。

それにしてもアラスカって怖い所だ。
部下たちが行きたがらないのもわかるなあなどと感心していたのだけれど、後になってアラスカに飛ばされた部下A〜Yが健康的に丸々太って帰ってきたなあと思い出し笑い。
何回読んでも「エロイカ〜」はおもしろい。

野生の獣(狼)に太刀打ちできるのは猪ゆえか?
さすがの少佐も弾を撃ちつくし、万事休すとなったところで助けに現れた?のがまたまた仔熊のミーシャ。
一難去ってまた一難。
前門の狼、後門の仔熊、どっちを選ぶか、仔熊だろう。
けれどこの仔熊、野生の熊よりタチの悪いヤカン熊。

それでも一応人間だから、少佐に逃げ出す隙はできるのか。
「仔熊のおじさん 今晩は」
満面の笑顔でミーシャを迎える少佐だが、猪vs仔熊の新たなる対決が、今始まる。
(2007年7月12日の日記)
8月17日 仔熊vs猪対決 「アラスカ最前線<PART・2>」感想 3
連日の猛暑で凍てついたアラスカの少佐たちがうらやましくさえ思える今日この頃。
それでも前門の狼後門の仔熊では仔熊の方がまだ愛らしいか?
命の危険に変わりはないものの、話が通じるだけましだろう。

この時は伯爵の機転でミーシャを撃退したものの、少佐はミーシャに12発殴られてしまう。
(正確には11発+1回自分で転んだのだけど。)
オリンピックの拳闘選手で、ヘルシンキ大会では金メダリストだったというミーシャ。

ヘルシンキ大会は1952年フィンランドで行われた15回目のオリンピックでソ連が始めて参加したことでも知られている。
私はまだ生まれてもいないので受け売りだけど(笑)。
ただしソ連のボクシングで金メダルを取った選手はおらず、各階級中5人がアメリカ、フィンランド、チェコ、イタリア、ポーランド、ハンガリーから各1人。
注目のヘビー級金メダリストはアメリカのエドワード・サンダース。

ちなみに仔熊のミーシャは1980年のモスクワオリンピックのマスコット。
ミーシャ初登場の「ハレルヤ・エクスプレス」は1979年12月から連載開始となっている。
モスクワオリンピックといえば、アメリカや日本のボイコットが印象的だが、なぜボイコット問題にまで発展したかはほとんど記憶にない。
今回調べてみたら、ソ連のアフガン侵攻が問題となり、当時のアメリカカーター大統領がボイコットを表明、近隣諸国に波及したもので、50ヶ国近くがボイコットを決めたのだそうだ。

そっちのミーシャは愛くるしいが、こっちのミーシャはやかん頭のごっついおじさん。
いくら少佐がたくましくても、たまるまい。
顔も誇りも傷ついた少佐にときめいてしまったのは内緒。

原版と美術品を持って撤退するミーシャたちを追いかける少佐と伯爵は今度こそつかまってしまう。
原子力潜水艦に乗せられる2人、馴れ合っている、もとい協力し合っている少佐の部下とボーナム君他伯爵の部下たちはその痕跡を発見、パニックに。
夢が叶った?伯爵は少佐と同室で休むことになるが、ここでまたまた(当時の)乙女の心をくすぐったのが「メリーさんの羊」を口ずさみながら眠りにつく少佐。
熟睡する少佐と悪夢にうなされる伯爵の対比がほんと、おもしろい。

伯爵救出に乗り出したジェイムズ君も無事合流したところで再び仕掛けたのは伯爵。
ミーシャに美術品を見たいとねだり、少佐が嫌がり、ならば見せようとミーシャが承諾するのも計算のうちか。
そこで一悶着の後、少佐と伯爵は無事拳銃と一丁ずつ入手する。
当時は2人の連携に拍手したものだが、今読み返してみると、拳銃を奪われて気づかない警備員がいる方がおかしい。
今だったら絶対にあり得ない設定の甘さか。

シベリアの空軍基地で浮上したのは少佐。
奪った拳銃で司令官を人質に取り、第一級戦闘機ミグを奪って脱走を図る。
ついて行くのはヘリに乗った伯爵とジェイムズ君。
爆破したはずの原版と美術品を伯爵が持っていることを知り、やむなく援護に回る少佐。

この辺の緊迫しながらも笑える展開や逃走劇のスピード感、そして最後の最後の大団円につながる海の上での嵐の戦闘?など息もつかせぬまま最終ページになだれ込む。
少佐って確かに有能だし任務はきちんとこなすしかっこいい。
だけど可哀そう・・・、そんな印象を持ってしまうのが「エロイカより愛をこめて」の特徴だけど、それでも律儀に世話をする面倒見の良さに、またまた乙女の母性本能はとくめくのであった(笑)。
(2007年8月17日の日記)
少佐の初恋 「特別休暇命令」感想1
子供の少佐、青年少佐、サッカー少佐、服脱ぎ少佐@喧嘩中、少佐の初恋想い人まで堪能できるおいしいおいしい番外編。
少佐の上司の部長と人事部長と経理課長が3人揃えば、華麗な「アンノン」的「ハーレクインロマンス」花開く。
さすがにこんなエピソードだと、仔熊のミーシャや伯爵の出番はないか。
(伯爵もどきは出てくるけれど)。

名づけて「少佐を学生時代をギムナジウムで過ごした南ドイツの森あり湖あり古城ありの静かな保養地に休暇旅行に出し、旅情に浸ってややメロウな気分になったらクラス会に出席させて旧友たちの家庭を持った姿にしみじみと己の人生を考えさせ、旅情と感傷でメランコリックになった少佐の前に心やさしき美女一人登場させ、旅の開放感で恋のアバンチュールを楽しませ、暖かい家庭を持たせることによって少佐の仕事に向ける精力を分散させよう」大作戦。

うまくいきっこないのはお約束だが、少佐がどんな反応を見せるか、ドキドキしながら読んだっけ(笑)。
今時「メランコリック」なんて言葉も変換されず、「目蘭子リック」なんて出たのはご愛嬌。
そこにKGBから派遣されたコードネーム「緑のたぬき」なんて間抜けなスパイも絡んで来て、話をいっそう盛り上げる。

ちなみに「赤いきつね(マルちゃんのお揚げが乗ったきつねうどん)」と「緑のたぬき(同じくマルちゃんの小エビたっぷりの大きな天ぷらが乗ったたぬきそば)」って今もあるのかな?って「東洋水産のホームページ」を覗いてみたら、なんと「黒い豚(カレーうどん)」とか「紺のきつね(きつねそば)」なんてのもあってびっくりした。
そっか武田鉄矢さんが出演しているCMはこれだったか。
武田さんのインパクトが強過ぎて、何のCMだったか忘れていたよ。

この「緑のたぬき」が勝手に盛り上がっては少佐に置いてきぼりにされ、「さすが鉄のクラウス」と感心する場面が好き。
結局無能がばれて、シベリア送りになったけど、少佐の部下Bとロレンスとジェイムズ君と緑のたぬきを3で割った性格の私としては好感度大なキャラ。
この後、「笑う枢機卿」では有能な「赤いきつね」が登場するが、先に緑のたぬきが出てきたのはとっても変だと思ったあの頃。
(私は蕎麦よりうどんが好きだったので、赤いきつねの方がメインのキャラ=商品だと思ってたし、売れてるに違いないと思ってたし。)

さて、部長たちの「少佐を学生時代をギムナジウムで過ごした―(以下略)」大作戦、改め「少佐のマイホームパパ大作戦」を立ち聞きしてしまった部下A&B。
少佐が落ちるか否かの賭けを、するわけもなく(今ならきっとやっているはず)、見て見ぬふり、聞いて聞かぬふりを決め込むことに。
なにしろアラスカ帰りだし。

何も知らない少佐は「任務」と心得て休暇旅行に出発する。
さりげなくシスター・テレサと「揚げたジャガイモ」に関する会話が執事さんとの間で交わされるのがいい。
さりげないふりをしながらドキッとしたかな?少佐。
でも一応ポーカーフェイス。
少佐が尼僧に弱い理由が、今明かされようとしている。

少佐の休暇はサバイバル。
長いドライブの翌日は売ってる新聞全部買い込み、一日ジョギング、さすが鉄のクラウス。
でもここでマナー違反しちゃうあたりが、まだのどかな時代だったのか。
少佐に最後までついてったKGBがちょっとだけ部下Hっぽいのもご愛嬌。

美しい古城も「ガキの頃から住んどる」から「見あきた」ってさすが鉄のクラウス。
こうして少佐の休暇の2日目も無事終わるのであった。
(2007年10月5日の日記)
シスター・テレサ 「特別休暇命令」感想2
「任務」でクラス会に出席する羽目になった少佐、行きたがらない気持ちもわかるが、迎える方も大変らしい。
恐れられつつも好かれていると思っていたのだけど、それはそれ、か。
「特別休暇命令」では少年クラウス、青年クラウス+サッカークラウスとおいしいカットが盛り沢山。
特に6巻29ページの「西館のクラウスといえば」のカットが素敵。

案の定クラス会でも浮きまくりの少佐だが、普段普通に接している部下たちや部長、伯爵の凄さも再認識。
実際目の前にいたら怖いよ、きっと。
「戦車が服着てすわってる」少佐だもん。

執事さんにかこつけてクラス会から逃げ出す少佐、でも本音を言えば初恋の女性、シスター・テレサに会いたいんだなあと胸がきゅんとなったところで無情な?現実が少佐を待ち受ける。
「初恋は思い出のままがいい・・・。」
「初恋のお姉さん」は長い年月を経て「初恋のおばさん、いえおばあさん」に変化。
だるだる体型も好きな女性(ひと)なら許せるらしい、私は?駄目(涙)。

それでも内面は昔のままのシスターに、少佐も切なげな表情になる(42ページ)。
それを見るこちらも再び胸がきゅんとする。
お土産の揚げたジャガイモ(それも山ほど)を食べつくし、そっちも切なげな少佐だけれど、それでもやっぱり初恋は大切。
シスター系には「異常に」優しい少佐の過去が、今明らかに。

ホテルに帰って通常モードに戻った少佐は電話した部長の言葉におかしなものを感じる。
見てはならないものを見て、聞いてはならないものを聞いてしまった部下Aを締め上げて、遂に暴かれる部長たちの陰謀。
被害者は少佐を落とすために緑のたぬきが放った美女とエロイカもどき。
超特大のジャガイモ付き「フン」と一緒にぼこぼこに。

確かにシスター・テレサとは真逆な派手系美女も嫌いだろう。
これが仔熊のミーシャなら、憂いを含んだドイツ系美女をシスターに化けさせて送り込むところだろう。
そんなところがいかにも間抜けな緑のたぬき、「さすが鉄のクラウス」と感心したところで「無能!」と罵られてシベリア送りに。
でもなんとなく愛嬌があって好きなキャラだった。
また出て来て欲しかったのだけれど。

陰謀の張本人の部長にも怖い怖い後日談が待っているのだけど、それは次回「グラス・ターゲット」にて。
今回の騒ぎもうやむやになるほど強烈な個性の「あの人」が遂に登場する。
しかも緑のたぬきとは異なり、未だに登場し続ける。
明るく、煩く、おちゃらけて(笑)。

初登場時「かっこいい」と思ってしまった私、脳の中でその時何が起こっていたのか。
ジェイムズ・ボンドに脳内変換されてたのか。
未だに謎である。
(2007年11月2日の日記)
グラスファイバーの思い出 「グラス・ターゲット」感想1
昔々の話、心ひそかに憧れていた先輩は陸上部で棒高跳びの選手だった。
当時はまだ「エロイカより愛をこめて」を知らなかったが、後で読んだ時に胸にきゅんと蘇った甘酸っぱい想い出、それがグラスファイバー、「グラス・ターゲット」。
幸いその先輩は図書委員で私も図書委員、それなりに可愛がってもらった記憶もある。
卒業後は一度も会うこともなかったけど、今頃どうしているんだろうか。

ちなみに体型は棒高跳びより柔道着が似合いそうな、首から下は仔熊のミーシャ、やたらごつい人だった。
残念ながら、少佐はこの「事件」を機に、グラスファイバーが大嫌いになってしまったのが哀しいけれど(笑)。

さて、今回の伯爵&ジェイムズ君のターゲットは英国王室秘蔵のビクトリア女王の宝冠。
しかもそれが西ドイツのケルンで行われるEC博で展示されることに。
少佐の縄張りにあえて踏み込むエロイカ一味だが、同時にKGBより白クマ、SISよりチャールズ・ロレンスが邪魔?しに現れる。

本来ならば、軍事機密専門の少佐は管轄外。
しかし、宝冠の写真にエロイカの気配を感じたのと、後に出てくる大変な事態のために、否応なしに関わる羽目になる。

最初は「特別休暇命令」に関する部長たちの企みがばれ、少佐と顔つき合わせての陰険漫才。
なんだかんだで負けてない部長も凄い。
さりげな〜くもててる少佐も凄い。
試写とはいえ、「カリギュラ」見ている少佐はもっともっと凄い。

そしてロレンスと少佐の初対面。
少佐の感想は「こいつも相当アナクロっぽいぜ」ですんでいる、まだ。
ちなみに、この「アナクロ」の意味がよくわからなくて調べてみたら、「時代錯誤」の意味だった。
後で「こいつ(ロレンス)と伯爵のおかげでジョン・ブルはもっときらいになりそうだ」と言ってるが、この「ジョン・ブル」もわからなかった。
調べてみたら「擬人化された典型的イギリス人像」だそうだ。
「典型的なイギリス人」とでも思えばいいのだろうか。

「エロイカ―」ってけっこう難しい政治用語や知らない言葉がバンバン出てくるので、きちんと読まないとストーリーが把握できず、少佐の面白いとこだけ読み流していた気がする、当時は。
でもこのエピソードは単純明快、しかも伯爵を毛嫌いしつつもその性格を知り尽くしている少佐がロレンスを通じて罠にかけることから話はさらに混乱する。
偽の情報を流し、KGBまでが協力して伯爵を送り込んだのはイラク。
戦火のイラクで騙されたことに気づいた伯爵の仕返しが、またえげつない。
こちらも少佐が一番嫌がることを知り尽くしているようだ。

「そいつは私の趣味や性格をよく知った上で私が引っかかりそうなエサを作れる人間だ
 そしてうあたらと大がかりな事が好きで あくどいいやがらせを平気でやれる歪んだ性格の持ち主」なんて言っている。
見事に当たっているところがまたおかしい。
そのまま伯爵にも返せそうだけど。

ところが、伯爵を追い払って一安心の少佐にまた新たな難題が勃発する。
宝冠のショーケースに、軍事目的に開発中のグラスファイバーが使われてしまったのだ。
宝冠狙いの伯爵、KGBはもちろんSISにも隠し通さなければならない極秘事項。
今度こそ生粋のドイツシェパードに番犬としての任務がやってくる。
(2007年12月3日の日記)
人気のない森の中、少佐と車で二人きり 「グラス・ターゲット」感想2
「グラスターゲット」後半もサスペンスありアクシデントありで盛り沢山の内容だけど、なんといっても見所はタイトル通り「人気のない森の中、少佐と車で二人きり」。
夢のようなシチュエーション(笑)。
実際は車の中で一緒にいるのは「EC博」に爆破予告を送りつけてきたネオ・ナチスの一味。
のらりくらりと追及をかわすしぶとい男も寝不足で殺気立ってる少佐の前では形無しだ。

コミック7巻67ページ、くわえ煙草で取調室に入って来て
「ほう えらそうな兄ちゃんだな」に始まり、70ページ「さてぼうや・・・・・・(ボキッ)」までの少佐に目がハートで何度読み返したことか。
硬派な男の硬派なストーリーで一番気になる部分がこことは我ながらミーハーだ。

ネオ・ナチスの存在に気づかない伯爵も絶好調で少佐の邪魔に走り、その気がなくてもロレンスの邪魔っぷりも見事。
白クマもちょこちょこ出てきて少佐や伯爵をつつき回るうちに、4人は狙われた宝冠に引き寄せられて行く。
当時の伯爵の部下が多いことにも注目だが、ジェイムズ君のどケチぶりも今読み返せばまだ可愛いまだ清潔。

偽の爆破で失敗した伯爵が宝冠に仕掛けをし、修理に呼ばれてやって来たのはネオ・ナチスの一味と女装した伯爵。
互いに知らない者同士が協力して無事に爆弾がセットされてしまう皮肉。
正直言えば、この頃の伯爵は私にとっても敵だった。
作品として楽しむよりも、少佐のために怒りまくっていたような。
若かったな、当時の私。

そしてクライマックス。
軍事機密のグラスファイバーのケースに入った爆弾付きの宝冠と共に地下の金庫に閉じ込められた少佐と伯爵、白クマにロレンス。
上ではエリザベス女王とシュミット首相が世界中の注目を浴びて宝冠登場を待っている。

イギリスとドイツ両国国家の吹奏を真っ白になって聞く少佐。
「伯爵 爆弾を取れ!」
少佐の命令に伯爵が爆弾をはずそうとするがかなわず、少佐に交代。
ドイツを支える露英同盟の図は麗しいが、よくよく見ればおじさんばかり、狭い部屋。
密着度も最高だが、さすがに喜ぶ余裕も嫌がる余裕もないらしい。

やっとのことではずした瞬間、少佐はガラスケースに乗ったまま上昇し、世界が見守る中シュミット首相とご対面。
この後の首相と少佐のやり取りもかっこ良くて、さすがは少佐、さすがは首相。
少佐の中ではシュミット首相の株もさらに上がったに違いない。
「情報部の人間は公の場に出るべきではないのだが」って思いっきり目立ちまくりのいい男。
見たかったな、私も(笑)。
首尾よくその場を取り繕って退場した少佐だが、地下に残っていたのはロレンスだけ。
白クマと伯爵はとっくに逃げた後だった。

疲れ果てた少佐が自宅(お城)で休んでいる時、大嫌いな「グラスファイバー」でできた花の鉢植えを持ってやって来たのは伯爵とジェイムズ君。
燃え盛る火に油を注ぎに来たとも言えるが、この続きは次回「ミッドナイト・コレクター」で語られることになる。

ちなみにシュミット首相の在任期間は1974年(昭和49年)から1982年(同57年)まで。
「グラス・ターゲット」が発表されたのは1981年(同56年)となる。
風貌に似た硬質な政治家としての顔と愛妻家で芸術を愛するロマンティストな顔を合わせ持ち、ヘビースモーカーとしても有名だったらしい。
1918年(大正7年)生まれで現在90歳!だそうだ。
(2008年1月15日の日記)

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