過去のレポート 6

少佐とミーシャの共闘態勢〜「ノスフェラトゥ」感想 2
最初に青池先生から素晴らしいプレゼントが!
公式サイト「LAND HAUS」によると10月14日に「エロイカより愛をこめて」35周年記念出版企画となる「Z−ツェット−完全版」が発売されるんですね。
先生の日記しか読んでいなかったので気づいてませんでした。
日記で進行状況の記述があったのでびっくりです。

「エロイカ〜」は35年前(1976年=昭和51年)に始まったのですか・・・。
そういえば8月20日付の朝日新聞土曜版の「be」に「70年代の少女マンガ」という特集が組んであって、人気投票結果が掲載されていました。
そしたら「エロイカ〜」が堂々の18位!
ちなみに1位「ベルサイユのばら」、2位「エースをねらえ!」、3位「キャンディ・キャンディ」、4位「はいからさんが通る」、5位「ガラスの仮面」で、実は私、どれも読んだことないのにストーリーは知ってるという状態。
有名だったんでしょうね。

余談ですが、先日「ガラスの仮面」最新刊!を書店で発見!
こちらも「エロイカ〜」に負けず劣らずの大河漫画?なんでしょうね。
大ベテランの先生方にはいつまでもお元気で頑張って頂きたいものです。

さて感想。
舞台はドラキュラ発祥の地、ルーマニアのトランシルバニア、青池先生筆の串刺公ブラドまで登場しておいしい展開。
しかも世界情勢激変の影響で、少佐とミーシャが共闘、ついでに一緒に捕まっちゃったりして、緊張感の中にも爆笑させられる。
特に戦車の中で喧嘩する少佐とミーシャに辟易する伯爵には同情した(笑)。

伯爵も十分に変な人だと思受けど、さすがに少佐とミーシャにはさまれたら普通人に見える。
いやあ某国某飲み屋さんで伯爵にしてやられたこともあったけど、あの時の元気な伯爵はどこ行った?
それにジェイムズ君も揃えば、レギュラー組のはりきりぶりがインパクト強すぎて、肝心のノスフェラトゥがまるで空気のごとし、なエピソードだった。
お久しぶりのご挨拶には、それもまた良いかもしれない。

★今回のお気に入り
・赤の広場における少佐、仔熊のミーシャ、白クマの歴史的なスリーショット。
・少佐の飲み残しのコーヒーを律儀に飲み干す部下A君、相変わらず(笑)。
・ジェイムズ君の妄想する吸血鬼イベントあれこれと、学習能力のなさ。
・(一応)部下Gを心配して捜査からはずす少佐のさりげない優しさ。
・善良な村人と少佐の会話?「そうかね」「そうだな」「分かっとるよ」
・囚われのボーナム君を追いかける戦車トリオの大ゲンカ(爆笑)。
(2011年9月1日の日記)
少佐とパンダと青竜刀〜「熊猫的迷宮」感想
少佐が来日して日本を舞台に大暴れ、というのは少佐ファンの変わらぬ夢だと思うけど、どうやら少佐は東洋系と徹底的に相性が悪いらしい。
それでも李剣光はやり方はともかく実力は認めている気配があるけど、日本人は全然ダメ。
というより「エロイカ〜」に登場する日本人は悪い方のデフォルメばかりのステレオタイプで、これでは少佐も立つ瀬がない。

「イブの息子たち」のヤマトタケルや高杉晋作クラスなら、少佐にも十分太刀打ちできると思うのだが。
美形なだけなら伯爵が喜んで終わりだろうが、スパイじゃなくてもスケールの大きなエピソードができると思う。

ところで今回は、少佐の他にパンダや青竜刀といった私の大好きアイテムが登場する。
それともうひとつ、京劇コスプレ?の伯爵も。
物語の中では不気味扱いされてるけれど、私は好きだなあ。
伯爵の数多い変装の中で唯一好きな変装かもしれない。
20巻の裏表紙のカラーも綺麗だったし。

さて、中断再開後の「エロイカ〜」は激変した国際情勢に合わせて、おもしろさの中にも難解なストーリーが多いのだが、今回の「熊猫ー」はものすごくシンプル。
要するに、男が生まれなくなるウィルスをばらまくか阻止するか。
ウィルスを作り出した科学者と、阻止しようとする少佐、そして奪おうとする李剣光に伯爵や、ウィルスの持ち主少年ルディが絡んでいつも通りの大騒ぎ。
圧巻は中国武器展示室での少佐と李剣光の「三国志」もどきの決闘と、ウィルス感染の恐れのために隔離される少佐、李剣光、そして伯爵の戦々恐々ぶり。
少佐には青竜刀がよく似合う。

★今回のお気に入り
・「熊猫的迷宮 Part.1」の伯爵の麗しさと次のページの写生っぽいパンダの親子の愛らしさ。
・部下Zは何故いつも部下Gと組まされているかは永遠の謎。
・「おじさんいい人だね ぼくのおじいちゃんみたい」ルディに言われて傷つくボーナム君、可哀そう(笑)。
・李剣光とのカーチェイスで旧KGBとの戦いを思い出しながら、「一般民間人」を巻き込まないという暗黙のルールを守ったことを思い出す少佐。
「ハレルヤ・エクスプレス」では仔熊のミーシャ、思いっきり民間人を巻き込もうとしていたが?
・パンダvsイノシシの対決の図と竹藪に帰っていくパンダ。
(2011年9月15日の日記)
正直者のクラウス君 〜「トロイの木馬」感想
日本史では戦国時代が一番好きな私だが、世界史だと古くなればなるほど好きになる。
一番好きなのは四大文明だが、トロイ戦争の時代ももちろん好き。
子供向けに訳された「イーリアス」も夢中で読んだし、勉強嫌いで通っていたが、この時代は図書室通って勉強した。
映画「トロイ」は何度も見てるし、ゲームで「トロイ無双」なんぞもやっている(笑)。

そのトロイ戦争に出て来る「トロイの木馬」が今回のタイトルであり、キーワードである。
おもしろくないわけがない。
といっても少佐の直接の敵ブリニャックは実はたいしたことなくて、今回最大の敵はQことルイ・サンドリエ。
Qにはギャグの部分がかけらもなく、伯爵すら命の危険にさらされる。

このQは当時人気があったのか、後で「ケルティック・スパイラル」で再登場する。
そしてもう一人、愛しくてたまらないのがジャン・マリア・ボロボロンテ。
彼の伯爵に対するディープな愛は、子供の頃はむしろ苦手だったが、今は微笑ましい。
実際に目の前にいたら怖いだろうなあ、マフィアだしなあ・・・。

今回も伯爵が何かすると少佐に関わってしまうという混沌のスパイラルは健在。
でもボロボロンテの元で優雅な休暇を過ごすはずが一転、伯爵が巻き込まれた事件のせいで乗っていたクルーザーが爆破され、少佐の乗ってたNATO海軍に救出されるところとか、そこでガン無視な少佐とか、思わず笑ってしまう部分がてんこ盛り。

少佐はどこまでもまじめに事件に向き合っているのに、関わるのが変な人ばかり(Qを除く)ので、どうしてもギャグの世界の住人になってしまうのが可哀そうといえば可哀そう。
それでも喧嘩ばかりの伯爵を、いざという時には助けに行ってくれるところ、見事な連携を見せるところなど名場面は多かった。
なにげに携帯電話とかノートパソコンとか禁煙奨励とか時代の流れを感じる部分も。
逆に未だにファイルのコピーをフロッピーにしてるところも気になった。
確か「Z」ではコンピューターからレシートみたいなのが山ほど出て来てZが埋もれてた気がするけれど。

私が知らない間も「エロイカより愛をこめて」はずっと続き、中断し、また再開してたんだと改めて思う。
ちなみに今日の感想のタイトルは、少佐が自分のことを「正直者のクラウス」と言っていたから。
そういった時点でウソだろと心の突っ込みつきです(笑)。
(2011年10月1日の日記)
少佐じゃない少佐なんて・・・  〜「エーベルバッハ中佐」感想
少佐が少佐じゃないなんて、びっくりだらけの番外編。
このエピソード読んだ時、皆さんは少佐がまた少佐に戻ると思ったんだろうか。
私は実は思わなかった。
少佐はいずれボンに戻るだろうとは思ったものの、中佐のままで話が続くだろうと思っていた。

タイトルが「少佐より愛をこめて」だったら変えようないけど、中佐になっても物語自体は影響ないんだしって。
まさか降格「返品」されるとは!
ショックは大きかったけど、よく読むと責任は全て少佐にあることは確か。

伯爵やおちゃらけロレンスが画策したのは確かだけど、それに乗ってイギリス側からクレームつくようなことをやってしまったのは少佐。
ボンにいては許されたことも、慣れないこの地ではまずかったというのが正直なところ。
少佐も自覚あるようで、次の「パリスの審判」ではぐちぐち言わずにちゃんと仕事してるのはえらい。
でもこれが先日読んだばかりの「Z」のシリーズだったら大変だったろうなあ。
っていうか、Zが本編なのに過労気味だし落ち込みひどいし。

ただ私、ローデという人は間違ってもいないと思う。
こう言っちゃなんだけど、ギャグ漫画としてだけ許される話だよねえ、少佐と伯爵(とロレンス)の共存は。
だからローデはむしろこのワンダーワールドに紛れ込んだリアル星人というスタンスで読めておもしろかった。
(部下たちは可哀そうだったけど)。

今回一番驚いたのは、情報部に何の未練も残さなかった少佐だろうか。
「あほ」な上司と「無能」な部下と「おさらば」したことを心底喜んでる少佐、ちょっと寂しい。
いえかなり寂しい。
部下に関しては自分がいなくてもちゃんとやってるだろうという信頼感も垣間見えはするのだが。

なんにしろ少佐が無事少佐に戻って情報部に戻ったのはめでたい限り。
結局一番可哀そうなのは少佐だったか・・・。
(2011年10月21日の日記)
少佐だったら誰選ぶ?〜「パリスの審判」感想 1
ジョルジオーネの「若い牧人」と違ってルーカス・クラナッハの「パリスの審判」は実在するそうだ、しかも7枚も!
美を競い合っている3人の女性はゼウスの妻ヘラと愛と美の女神アフロディーテ、そして知恵の女神アテネ、審判は当然のことながら羊飼いのパリス。
この事件が有名な「トロイ戦争」のきっかけになることもあり、「イーリアス」やギリシャ神話が大好きな私としては、このタイトルだけで夢中になった。
ちょっと前に映画「トロイ」も公開されたし、ゲームでも「トロイ無双」が出た。
「エロイカー」でも今「パリスの審判」再読してると、頭の中はトロイ尽くしになってくる(笑)。
ただしパリスは嫌い、私が好きなのはオデュッセウスって関係ないか。

もし少佐がパリスだったら誰を選ぶだろう。
格からしてヘラか、賢さを認めてアテネだろうな。
間違ってもアフロディーテは選ばなそう。
パリスが少佐みたいな性格だったらトロイ戦争も起こらなそう。

さて、中佐から少佐に格下げ返品された少佐だけど、少佐の偉いところはぐじぐじ言わず、こちらに戻っても平然と仕事してること。
我慢してるというよりも、ちゃんと割り切ってのことなので、余計立派に見える。
一方で素直に嬉しさを表せない部長もそれなりに魅力的で、そんな部長の心中を見抜いている秘書も立派。
(少佐も一目置いてそう)。

入院中に伯爵からもらった「よいこの美術図鑑」はどうやら大事にしているらしい少佐。
この絵がいかにも伯爵好みなことを見抜く。
少佐に呼ばれて嬉々としてやって来る部下Aは感涙もの、少佐に熱い視線を送ってくる部下Gは・・・(以下略)。

この少佐に伯爵が絡んでくるのはいつものこととして、どうやらサバーハ、仔熊のミーシャに白クマも関わって来るらしい。
お金に飽かせて買いまくるタイプだから、贋作をつかまされることも多く、伯爵とは犬猿の仲。
同じく仲は悪くても、それなりに認めているらしい仔熊のミーシャや白クマとは対照的か。
ライバル意識を燃やす伯爵も、少佐とは別の部分で活動開始。
今回の女装は私は結構気に入っている。

ほんとにいたら嫌だろうけど、男性陣をピシピシ追い詰める小気味良さは、以前のちょっと不気味な感じとはだいぶ違う。
なんかデジャヴを感じるなと思っていたら、「グラス・ターゲット」か・・・。
結局伯爵が絵を盗み、取り返すための少佐とミーシャの共同戦線が始まるのだけど、これがまたおかしくて。
一方伯爵も盗まされたのは贋作、デムチェンコというKGBの恥みたいな男も登場して、混沌としてきたところまで。
ちなみにサバーハは話の中で姿が出たのとちらっと声が聞こえただけ(24巻の時点)。
24巻の173ページからスペインの新しいキャラが出て来るが、このカルロス君が普通にかっこ良くて、パンダ迷宮のキムタクもどきの青年は、無理に東洋風の顔にしないでこんな感じで良かったのに、と思った。

★今回のお気に入り。
・「部長秘書は見ていた」
あの少佐に冷や汗かかせた部長秘書、おそるべし!でもかっこいい。
・デムチェンコを評して「今も情報局で番を張っているミーシャや白クマとは別タイプだな」と伯爵。
ミーシャ、少佐、伯爵は仲は悪いが、時折互いを認めている台詞を吐くのが好き。
・久々のシャワー明け少佐、思いっきり今の顔だけど、この時の顔は気怠い感じで好き。
・盗聴器の存在を確かめる少佐のやり方に爆笑。聞こえていたらミーシャの頭のてっぺんアップが見れたかも。
(2011年11月6日の日記)
漫才トリオ、スペインにて〜「パリスの審判」感想 2
せっかくドイツ連邦共和国大使館、Goethe-Institut Japan ドイツ文化センター、ドイツ観光局後援の六本木ヒルズクリスマスマーケットに行ったのに、少佐に会えなかったこの悔しさを、どこにぶつけたらいいのだろう(笑)。
そんなこんなで少佐の活躍も25巻に入り、「パリスの審判」Part.2。
登場人物も多く、話もなかなか込み入っているのだけれど、もう少佐、伯爵、仔熊のミーシャの漫才がおもしろくって仕方がない。
スートーリーもゲストキャラもどっにか飛んでっちゃった、あら不思議。

さすがスペイン、情熱の国、闘牛の国。
さしもの強面鉄のクラウスも仔熊のミーシャも、スペイン人の熱く滾る魂には圧倒されている模様。
そつなくこなしてるのは伯爵、相変わらずなのはジェイムズ君。
なにげにスペイン化されてる部下たちもいいぼけっぷりで、少佐とミーシャの突っ込み全開。

部下たちも上司を怖がりながらも、いいタイミングで叱られてくれるよなあ。
まじめなA君までもがスペイン化。
今回の闘牛場での少佐の危機は、これまで少佐が体験した中でも命に関わるという意味では最大のものだと思うけど、笑って読んじゃったもんなあ、少佐、ごめんね?
元はといえば自発的にアリーナに飛び込んだ少佐の自業自得って気もするし、なんて書いたらアラスカ行きでしょうか。

今回は漫才以外にもおもしろい台詞が多く、楽しめた。
「黒髪のドイツ人は純血ドイツ人ではない」とバッサリ切られた少佐、聞かせたかったなあ。
「彼女達はいつ呼吸をするのだ」
「なぜこの男は突然踊り出す」
「自己陶酔するな 泥棒を捕まえろ お前の詩など誰も聞いておらん」なんたる喧噪 なんたる無秩序 やかんの頭(笑)。
アリーナに飛び込みながら「スペイン語分かりません」と律儀な少佐、何語で答えた?

結局骨折り損のくたびれもうけとはこのエピソードの事で、全員仲良く痛み分け。
それでも真剣に漫才やってくれるこのトリオ(特に少佐とミーシャ)が私は大好きだ。
(2011年12月6日の日記)
少佐との再会 初恋の終わり
これまでも何度か書いてきたことだけど、私が少佐を知ったのは1巻から「笑う枢機卿」あたりまでを借りて一気に読んだ時。
その後も「エロイカより愛をこめて」が続いてることは知らなかったし、長い休載に入り、奇跡的な復活を遂げたことも知らなかった。
たまたま漫画「犬夜叉」にハマってファンサイトの存在を知り、「そういえば昔エロイカって漫画に少佐っていたなあ。」などと思い出し、検索かけたらなんと青池先生の以前の公式サイトにぶち当たったのだった。

当時は今のサイトのような掲示板ではなく、人気キャラクター投票コーナーがあって、私は少佐部屋やZ部屋に出没し、投票しつつベテランのファンの皆さんと一行チャットみたいにおしゃべりを楽しんだものだった。
で、「エロイカ〜」という作品に関していろいろ学んだわけ。

そっか、エロイカはあれからも続いてたんだ。
そっかエロイカはずっとお休みしてたんだ。
そっかエロイカはその後復活してたんだ。
で、今エロイカは・・・?

そんな私の問いへの答えが「先日26巻出ましたよ!」
えっ?もう26巻?
もちろんその日は書店に直行した。
なのに見つからない。

店員さんに聞いてみたら、「そこですよ。」と教えられたのが目の前に平積みにされた26巻だった。
でも「えっ?」と思わず目が点になったのだが、確かに金髪巻き毛の派手な男性がこちらを指さして笑っている。
確かに伯爵に似ているけどどこか違う派手な男性。

伯爵だけじゃなく少佐もZもどこか顔が変わり、居心地の悪さを感じながらも読み始めたが、いきなり携帯を使い始めた伯爵にびっくりしながらもすぐに夢中になった。
さらにアマゾンで1巻から25巻まで一気に揃えた。
通して読むと、確かに復活後(20巻)でキャラの顔は激変してるが、それ以前も(休載前も)少しずつ顔が変わっていることに気づく。
なんとなくクラス会で久々に会った初恋の君の激変にショック受けてるような気分だったけど、だんだん慣れた。
そのうち「青池保子公式キャラクターガイドブック」を買った。

その172ページ、「イブの息子たち」の三人組の場面で
「ぼく達を描くのに苦労したらしいよ」
「時計の針は元に戻せない」
という会話があってそうだよなあ、長い間お休みしたんだし、変わって当然だよなあと納得してしまった。
青池先生可愛いなあと思うと同時に、私の中でキャラが成長した(老けたとも言う・・・)という設定が出来上がったのだ。
これは心地よい解釈だった。

ところがその後「『エロイカより愛をこめて』の創りかた」を読んでとても悲しくなった。
24ページ「第1章 少佐の筋肉&制服は、作者の幼児体験から」の「初期は12頭身だった伯爵と少佐」の部分。

作者は変化したキャラを否定する読者を否定してしまうのだろうか。
この作品は小説ではない、むしろ映画やドラマに近い、目で読むと同時に目で見る作品だ。
自分の好きな俳優がイメージ変わってしまったら哀しいし、それはそれで自然な感情だと思う、それと同じ。
定規で測って描いているから、変化するのが当然だからそれを受け入れるべきというのは作者の誇りかプライドか。

この本は通して読むと本当におもしろいのだけど、この部分があるために、どこか棘が刺さったような落ち着かない気分になってしまう。
さらに私の中でその後「エロイカ〜」を読む時にどこか構えてしまう自分がいる。
絵が変わったからではない、絵が変わったことに居心地の悪さを覚える私はどうなのだろうと思ってしまう。
それでも「エロイカ〜」という作品が好きだから付いて行きたいと思う気持ちに変わりはないのだけれど。
  絵が変わったことに気づいた時ではなく、「創りかた」を読んでしまった時に、私の初恋もまた終わりを告げたのかもしれない。
(2012年1月29日の日記)
ミーシャとA君目立ってる!〜「ポセイドン2000」感想 1
私にとって、少佐とのまさかの再会は前回書いたようにこの26巻から。
でも今回は、少佐や伯爵より仔熊のミーシャと部下A君が目立ってた(笑)。
今回の任務先、デンマークに新婚旅行に行ったばかりに、つい口が滑って思い出話をしては少佐に突っ込まれ、硬直するA君。
そして珍しくマイホームパパな一面を覗かせてくれるミーシャ。

デンマークでは、任務はハードなものの、超一流ホテルに泊まれる少佐たちに比べてミーシャ一行の可哀そうなこと。
しかもそれにもめげずにたくましく生きる部下たちの可愛いこと。
ゴミ奉行のおばさんにつかまって叱られる部下や、真夜中に怒鳴り散らしてクレームがつくミーシャの場面では爆笑してしまった。
ソ連崩壊をきっかけに、なんだか話がコメディ重視になったような気がしたのだが、後で作者の語る苦労話を読んでると、確かに国同士の表向きの対立がなくなったからとは言え、そう簡単に仲良くはできない少佐と仔熊のミーシャの関係には頭を悩ますところだろう。
それでも喧嘩するほど仲がいい少佐とミーシャは、この後も仲良く喧嘩して読者を楽しませてくれることとなる。

そして今回もしゃしゃり出てくるのが伯爵。
でも今回の伯爵はちょっと気の毒な面があって、若きバレエダンサー、ジリー・コスビーを追いかけてデンマークにやって来ただけなのに、少佐の任務と関わりを持ってしまい、さらにミーシャのプライベートな会話からミーシャトも関わりを持つ羽目に。
まあ日頃の行いが行いだから(笑)、めげることなく少佐やミーシャと対等にやり合うのがお約束だが。

そんなこんなで笑いながら読んでいたのだけど、後半おっと身を乗り出したのが、「でれでれの顔で安売り情報を自慢する」家庭的なシュルツ氏を演じた少佐。
演技も凄いけど、実際に少佐が結婚したらこんな生活なりそうな怖さがある。
亭主関白で妻にも厳しい少佐だろうと何となく思ってたけど、意外と妻には何もさせず、一から十まで自分で世話する(口だけは煩いけど)全く手のかからない旦那様になりそうだ。
少佐にしてみたら、あれこれ指図してやらせるより、自分で完ぺきにこなした方が楽だろうし。

以前少佐に似てると評判だったオリバー・カーンの奥さまは、きりりとした中にも華やかな女性だったけど、意外と少佐に似合うのは控えめで夫の仕事に口出ししない物静かな女性かも。
そう、部下Aの奥様のように、あれ?
これでまたA君の髪が抜けるんだろうなあ。
まあ作者を始め、少佐が結婚するストーリーを予想してる人は、全少佐ファンの中に1人もいないだろうからその心配もないか・・・。

いつものことながら、バルト三国のNATO加盟に関する任務というハードなストーリーがお笑いパートに移行しているが、バルト海沿岸のエストニア、ラトビア、リトアニアの三国、実際に2004年(平成16年)に揃ってNATOに加盟しているようだ。
ちなみに26巻が出たのが2003年(平成15年)だから、連載開始がそれより1年くらい前?
当時、バルト三国のNATO加盟がどれだけニュースバリューを持って報道されていたか、情けないことに全然覚えていないのだが、ソ連崩壊に繋がる独立運動の様子は、何度かニュースで見たように記憶している。

けれども26巻最後の方で出てきた最強のインパクトは、ネズミまみれのジェイムズ君!
後で出た「ブラックジャック」もそうだったけど、この頃からジェイムズ君の奇人っぷりが愛嬌を通り越してちょっとおぞましい。
最初の頃は「一応}美青年キャラとして出てたはずなんだけどなあ・・・。

★今回のお気に入り。
・「逃げちゃいや〜ん ジリ〜っ」値千金のボーナム君の裏声(笑)。
・少佐すら見抜けなかったかつらを見抜いた部長凄すぎ。
・デンマークで舞い上がるA君と執事さんが可愛い。
・白クマにジリーのビデオを頼むミーシャのマイホームパパっぷり。
・どさくさに紛れてじゃがいもまで持ってくミーシャの部下たち。
・そしてやっぱり少佐のでれでれマイホーム自慢。
(2012年2月10日の日記)
芸術オンチが少佐を救う〜「ポセイドン2000」感想 2
何の罪もないジリーが、ひょんなことから誤解を受けて、少佐とミーシャと伯爵の魔のトライアングルの渦に巻き込まれる。
一般人なのにミーシャに怒鳴りつけられ、少佐に罠にかけられ、なんとも可哀そうなのだけど、任務に関するシリアスな姿勢との対照がかなりかなり笑える。
なにしろ今回の任務はバルト三国のNATO加盟に関するもの、限りなくデリケートな任務なのだけど、託された相手も悪かった。
特に少佐とは徹底的に相性が悪い、爆笑するほど相性が悪い。

26巻読んでる時点では気が付かなかったのだけど、少佐のマイホームパパ演技は部下A君の真似だった。
なるほどA君ならこんな感じだろうなあと思ったけど、意外と少佐もこんな感じじゃないかしら?
A君みたいにほのぼのでれでれしないだけで、夫婦揃ってテキパキしながらもやってることは同じそう。
家事を完璧にこなす女性版少佐みたいな鉄壁ドイツ美人か、少佐が全て1人で仕切って一切手を出させない、万事がおっとり妻か。
意外と後者もありな気がする。
だって少佐の理想の妻なんてそんなにいないだろうし、だったら自分がやった方が早いとか思いそう。
私?2,3秒でアラスカまで蹴り飛ばされると確信している(笑)。

そんな妄想に浸っている間に話は進んで、コード・ネームは今回のタイトル「ポセイドン」であることが明らかになる。
私の好きな、そして少佐とすんなり意思の疎通ができる数少ない人物の1人ハンセン少佐が登場。
この人、プロレスラーのスタン・ハンセンに似てるような気がするのは気のせいか?

それにしても、少佐の目指す相手が最初からいかにも怪しかったベッツだったことは驚きだった。
ミステリーだといかにも怪しい人は大体犯人ではないのだけれど。
でもさすが屈折男のベッツ、少佐に情報をすんなり渡すことはしない。
少佐が苦戦するということは、実は的を得た人選だったのかもしれないけど、読み物的にはここからさらにおもしろくなる。

ジリーの踊りに少佐が触発?されて謎を解くところもおもしろかったが、なんといっても最後の少佐とミーシャの協力プレイが凄い。
懐かしのミレニアム問題も飛び出して、と思ったけど、考えてみれば連載当時は懐かしいどころじゃなく大騒ぎだったっけかなあ。

最後の
「つべこべいわずにわしに従え 少佐!ロシアはNATOと戦争を起こすような事態は避けねばならんのだー!」
「・・・・・・信用するぞ ミーシャ NATOはロシアとの戦争なんぞ望んどらんー!」
の珍しい少佐とミーシャの本音のぶつかり合いが印象的。

個人のレベルではいがみ合うけど、最後はプロだなあと思わせる。
しかもコンピューターのバグで助かったと思った瞬間大爆発だし。
思わず少佐にすがりつきそうになったミーシャにかなり笑えた。

なんだかんだで今回も無事任務完了。
少佐とミーシャの距離も少しは縮んだ・・・かな?(笑)。
芸術オンチの少佐にベッツは完敗、私は乾杯!少佐、可愛すぎる。
(2012年3月1日の日記)
少佐と伯爵すっきり共闘〜「メテオラな日々」感想
番外編ではあるけれど、今回の「メテオラな日々」は再開後の「エロイカより愛をこめて」の中でも特に好きな一遍。
この作品は、基本的に少佐の任務に伯爵がちょっかい出して、あるいはターゲットが重なったために邪魔になって、ドタバタ騒ぎのうちに少佐が締めて一件落着なパターンが王道だけど、私は基本的に少佐がストイックに任務に取り組む姿が好き。
そんな私には、今回の番外編は少佐と伯爵が共通の敵に向かってプロの仕事をきっちり見せてくれる清々しさがあった。

少佐本来の任務がずれてった時はどうなることかと思ってたけど、部長の写真やジェイムズ「さん」騒ぎなど、笑わせどころもしっかり押さえた上で、それに足を引っ張られることなく「交渉人」としての冴えを見せる少佐がかっこいい。
少佐と伯爵の共通の敵となる「エロイカ大王」も名前はともかく、キャラが立っててとても良かった。
Qや「魔弾の射手」で少佐と殺し合いを演じた男など、シリアス系で好きな敵はたくさんいるが、老後の少佐と老後の伯爵みたいな存在感の2人がいい。
3人目の老人が誰の老後かよくわからないのだが(笑)、久々にすっきり少佐が見られて嬉しかった。

今回の少佐をドイツのワインに例えたいところだけど、あいにくワインはあまり飲めない。
でも先日飲んだ大吟醸の爽やか感と豊かな風味と深いこく、そんなものを一気に味わった気がした。
(2012年3月18日の日記)
少佐vs大鴉〜「ビザンチン迷路」感想 〜1
「ビザンチン迷路」と言えば、「『エロイカより愛をこめて』の創りかた」で「制作現場の裏話」と称した思いがけない出会いが書かれてある。
その意味でも印象的なエピソードだが、今回は28巻の感想のみ。

最初に驚いたのがロレンス君。
おバカな会話しかできない人だと思っていたら、以前ブルガリアで起こった事件をうまくまとめてみせた。
その後いつもの変な流れに戻ったけれど、「SIS」の肩書は伊達じゃないところを見せてくれた。
しかもロレンスがへらりと喋った内容が、今回の事件の大きな伏線になっていたのだから、恐るべし、チャールズ・ロレンスである。

さて、今回の任務はまたもやロシアとの共闘。
今回は白クマ登場か、と思ったら白クマは話をしに来ただけで、実際に任務遂行にあたるのは「仔熊のミーシャ」、当然か。
でもその話の間に、少佐は部長に蹴られ、白クマに蹴られの珍しいシーンが続き、かなり笑える。

今回の最初の舞台はトルコ共和国トラブソン。
自殺に見せかけて姿を隠したテロリスト「大鴉」が潜んでいる場所。
百戦錬磨の男にしては、サッカー観戦でテレビに顔を出してしまうという大失態を犯し、その生存を知られることになる。
変わり者だがおとなしい老人で、近所に住む人たちの世話になってひっそりと暮らしている。

彼の居所を探るために少佐が頼みにしたのは「ぺケル」というじゅうたん屋のタルカンとハーカン兄弟。
目がキラキラ輝く、とってもとってもとってもいい人たち(笑)。
とってもとってもとっても可愛い人たち(笑)。
そしてとってもとってもとっても有能な人たち。

少佐を抱きしめ、頬にキス!なのに無事!うらやましい!
おっと冷静に(笑)。

その頃別行動だった伯爵たちは素敵な紳士と会う。
いえうっとりしてるのはボーナム君。
合理的な合言葉にしゃれた仕掛け、シンプルなオフィス、インターネット。
古典の風格とハイテクが同居する老人が理想らしい。
伯爵に振り回されていなければ、ボーナム君も十分に資格ありと見た。

さらに少佐と別行動な仔熊のミーシャも彼なりの手段で大鴉を追い詰める。
あわてて逃げ出す大鴉。
さらに優しい青年に見せかけて、その実うさんくさい2人組も絡んでいつもの大騒ぎが始まるのだが、それは29巻に入ってからの事となる。
あと慣れて来たのか、時折以前の顔に戻ったカットもあって、特に少佐が嬉しかった。
(2012年4月8日の日記)
脇役輝くエピソード 〜「ビザンチン迷路」感想 〜2
前巻からの続きだが、今回は主役である少佐や伯爵、ミーシャ、エピソード主役である大鴉やその周りの青年たちよりも、脇役の方がきらびやかに目立っていた印象がある。

少佐に役立つ有能なじゅうたん屋さん、ぺケル兄弟のハーカン、目がきらびやか。
トルコ人=時間にルーズと意外に偏見持ちの少佐や部下Aに「自分以外の人間はサボりだと思っちゃいけないよ」と鋭い突っ込み。
少佐が聞いてなかったようなのが残念だけど。

ハーカンの引き合わせで少佐に情報を伝えた「のどかなおやじ」ことアリフ。
思い出すのがちびちび過ぎて、「まとめて思い出せんのかね 君は」と少佐にため息つかれるところが可愛いし、ミーシャの部下に訪問されて、少佐の許可取る義理堅さがたまらない。
「エーベルバッハさんがあんたと話したいそうだよ」
「ええっ ぼ ぼくに少佐が・・・!?」
部下も悲惨、でもうらやましい。
やましいことはなくても怖がられることが多い少佐だが、絶対に少佐を怖がらない人も中にはいて、そういう人たちは大体鷹揚で愉快な人たちだ。

みんなが狙っている宝剣の預かり主アーノルド・ホープ。
ごくごく普通の常識人に見えて「魂の叫びが聞こえたような・・・ 気のせいか」

部下Gも今回はいい味出してて
「少佐 あたしはそんな軽い女ではありませんわ」
「きいきい声の女言葉の男なんぞ信用できん!」
「少佐 ぼくはそんな軽い男ではありません!」
「うわっ(電話切られる)」
のところは普通に可哀そうだった。
もともとGに女装癖がついたのは、少佐が命じた任務のせいなのだ。

CIAの若きエージェントと書けばかっこいいけど、少佐に殴られた可哀そうなミッチ君。
せっかく逃げてきたと思ったら、また少佐の元に戻らされる?羽目になったけど、その反応はなかなか硬派。
「皇帝円舞曲」に出て来たごり押しディックの部下ジョーに比べたら、気概はかなり上とみた。
もちろんジョー君もあれはあれでおもしろいけど。

そしてジェイムズ君から偽宝剣を買い取った「若者向けのおしゃれな店構え」の骨董店の若き店長さん。
いかにも怪しい人物か?と思ったら単に人がいいだけの一般人だった。
なのにジェイムズ君に関わったばかりにめんどくさい事態に巻き込まれる。

ストーリーとしては、その宝剣が怪しい転売屋の手に渡り、例によってみんなで追いかけるパターンなのだが、そこに大鴉の世話をしていた青年たちの動きが目立ち始め、少佐たちに気付かれ、と少しずつ進んでいる。
そこに少佐とミーシャ、少佐と伯爵の喧嘩など小ネタを仕込んであるが、ちょっと長すぎる気がしないでもない。
30巻に入ると話が一気に進んで盛り上がるので、そちらに期待。
(2012年4月24日の日記)
伯爵まわる、とにかくまわる〜「ビザンチン迷路」感想 〜3
30巻に入って、話が一気に盛り上がり、おもしろくなった。
理由はキャラの活躍バランスがいいせいだと思う。
大鴉とトルコ青年たちが軽く引っ込み、少佐やミーシャの部下たちやボーナム君などが活躍し始める。
特にいつもやり過ぎて引くことも多いジェイムズ君や、いつも可哀そうな部下Gもいい感じの登場ぶり。

今回限りの脇役たちも、目をキラキラさせたり、素朴に村祭りを楽しんだり、亡き父との約束を果たしたりと楽しませてくれるし、CIAもごり押しにならない程度の活躍ぶり。
そんな中で少佐と伯爵とミーシャが生き生きと活躍を始めるので、今回は本当におもしろかった。
意外と少佐とミーシャが仲がいいというか、共闘体制にも慣れて来たかな?

ところで伯爵が村の儀式に参加してくるくる回っていたが、Wikipediaで「コンヤのメヴレヴィー教団」が紹介されていて、「メヴレヴィー教団は日本語では旋舞教団といわれ、スカートをはいた信者が音楽にあわせて、 くるくると回転をし踊るという宗教行為で知られる。これは祈りの手段であり、回転は宇宙の運行を表し、回転することで、神との一体を図るというものである。」と書かれている。
画像も見ることができるが、トルコに関心の深い人以外の一般読者にとっては、全く初めて得た知識。
エロイカはほんとに奥が深い。

この舞踏もおもしろかったけど、金だらいをカンカン打ち鳴らし、笛をピョロ〜と吹き鳴らし、窓を開けて民謡を朗々と歌い・・・、行ってみたいなこの町に(笑)。
それにしても今回少佐は馬の扱いが厳しい。
こないだはあんなにやさしかったのにねえ。

ちょっと感動的な少佐の計らいと、少佐とミーシャの意外な語らいで「ビザンチン迷路」も終了。
30巻はこの後「Z」の最終話が入るが、Zシリーズは後でまとめて感想を書きたい。
今回こっちも読み返したけど、これだけハードに動いていながら、大好きなキャラが誰一人死ぬ心配のない本編は、改めて幸せだなあと思う。
まあその分本編でのZの存在感って限りなく薄いわけだけど・・・。

最後は少佐も伯爵もミーシャもみんなでじゅうたんを1枚ずつ買ってじゅうたん兄弟を喜ばせてあげたらもっと良かったのに、と思いながら読み終えた。
少佐も散々お世話になってて、その能力は高く評価してるのに、そういうところは意外と冷たかったりする。
(2012年5月10日の日記)
あなたは少佐ですか?〜「瑠璃色事件」感想
今回は少佐の出番はほとんどなかったけど、伯爵とぺケル兄弟が相性抜群で、その活躍に大笑いだった。
ぺケル兄弟、がんばったのに少佐の態度がいまいち冷たかったので良かったね、って感じ。

少佐に紹介されてぺケル兄弟の店にやって来た伯爵の目に留まったのはビザンチン文様の瑠璃色の絨毯。
残念ながら売り物ではなかったが、この絨毯、コミック31巻の伯爵の背景になっている物だろう。
残念ながら発色が今ひとつで、「瑠璃色」の美しさが出ていないが、本物も見てみたいなあ。

ぺケル兄弟と意気投合した伯爵を虎視眈々と狙うは、ライバル店の「アスラン」と「ラビリンス」。
どちらもイケメンを集めて女性をターゲットにする店。
「イブの息子たち」時代はともかく、青池作品にまともな日本人が出て来ないのは、ギャグを通り越してちょっと寂しい。

絨毯が盗まれ、調査を始める伯爵に
「まるで場なれしたプロだよ」
「奥の深い人だなあ」「底なし沼のようだ」
「こまめに働く大富豪の貴族というのも珍しいが ただ者じゃないよな」
「何をするのかな?」「楽しいなあ この人?」

全ての賞賛台詞が「エーベルバッハさんの知り合いだもの」で済んでしまうのも楽しい。
ボーナム君を虜にした(笑)古書店主といい、美形だけどバカなライバル店の店員たちといい、登場キャラがいい感じで絡みまくるので何度読んでもおもしろい。
今回ジェイムズ君が登場しないのも(最後にちょっと出て来るが)、伯爵の活躍の足をいちいち引っぱらないという意味で効果的だったと思う。
最後のぺケル兄弟との3ショット、真ん中を脳内で少佐に置き換えて、もいちどパチリ。
次回は少佐が意外な活躍怒涛の活躍、これもまたおもしろかった。
(2012年5月22日の日記)
パティシエ少佐登場! 〜「心理実験プロジェクトS」感想
このエピソードが本誌に掲載された頃、当サイトにはまだ少佐部屋専用の掲示板があって「少佐がケーキ作るんですよ〜」みたいな書き込みがあって(なぜかログが消えた模様)、まさか!まさか!とコミックが出るのを首を長くして待っていた記憶がある。
コミック派は「エロイカより愛をこめて」はストーリーというより背景になっている政治や国際問題が難しくて、切れ切れに読むと何が何だかわからないから、というのが主な理由だが、それでも31巻は出るまでが長く感じた、懐かしい。

この話のおもしろさは、少佐にケーキ作りを割り当てたことではなく、少佐がそれを完璧に成し遂げることにあると思う。
確かに「塩梅」が大切な和食と違って、お菓子作りは分量や時間、手順などを忠実に守ればまず失敗はないというのはよく聞く話。
それでも(炊飯器で)スポンジケーキを作ればどろどろの塊が底で蠢いていたり、(電子レンジで)クッキーを作れば石みたいに固くなる、私のような人間にとっては、少佐の手際は驚異的。
なぜオーブンを使わないかと聞かれそうだが、実はうちのオーブンは引っ越し当初から温度調節のつまみが壊れてて、そのうちつまみが行方不明になって、「オーブンを〇度に暖めておく」というのが不可能なため。

たとえオーブンがあったとしても私だととんでもケーキしかできないだろうけど、それでも少佐は凄かった。
もうこの実験、永遠に続いて欲しいと思ったくらい。
実際はわすか80ページで終わってしまったのが切ない、伯爵のせいかロレンスのせいか。

「ケーキとは綿密な設計の基に一定の手順で作る物なのか」
少佐究極の名台詞。
少佐にとっては戦車の修理もケーキ作りも同じ範疇にあるのだろう。

ただ最近読んだコージーミステリでシュークリームの皮は作るのが難しいとあり、プロでさえ初挑戦で失敗していたのに、「簡単そうな物」と選んで立派に作り上げてしまうのだから少佐は偉い。
なにげに花柄?のパジャマ?スウェット?で腹筋50回腕立て伏せ50回。相変わらずの少佐。

ケーキ作りがストレスになるどころか
・無我の境地でケーキ作りに没頭している
・ハナ歌まじりにケーキを作っている
だし。

そんな少佐が作るケーキの中でわからないのがみつばちケーキと黒い森のトルテ。
みつばちというからにはハチミツを使うんだろうが、検索してもお店の名前か、ホワイトチョコか何かのミツバチがアクセントに乗ってるケーキしか見当たらない。
黒い森のトルテはケーキそのものは見たことあるので、別の名前だったんだろう。

豚の耳パイ(バルミエ)は源氏パイに似てるなあと思ったら、バルミエから作られたお菓子だった、なるほど。
チョコレートケーキはほとんど食べない私だが、ザッハートルテは好き。
ザッハートルテといえば「デメル」
デメルと言えば「高橋留美子展(銀座松屋)」で「うる星やつら」のラムのザッハトルテ売り出してたなあと頭の中を食の連鎖が駆け巡る。
とりあえずデメルにザッハトルテを買いに行こう。

リンツァートルテもわからないけど、普通に売ってそうなので、これも別の名前があるのかも。
リンツァーさんのトルテという意味だが、リンツァーさんが誰かはわかっていないそうだ、笑った。

少佐はともかく読んでる方は楽しくてたまらない心理実験、伯爵はともかくロレンスが乱入したせいで、実験そのものがぶち壊し。
せめて1か月は続いて欲しかった。
(2012年6月5日の日記)
少佐のしみじみいい話 〜「少年たちの黄金伝説」感想
番外編尽くしのコミック31巻最終話の主役は執事さん。
ちょっと小心者だけど、それ以外は完璧としか言いようのない執事さんの過去が今明らかに。
少年少佐も登場で、一粒で二度おいしいグリコのお菓子みたいな見事な作品。

執事さんの事だから、必死で隠そうとする秘密も意外にせこいものだと思っていたら、とんでもない。
ちょっぴり犯罪の匂いのする、重大なものだった。
それでも捜査のエキスパートである少佐の目を逃れることはできず、少佐はその秘密を知ってしまう。
でもその対処の仕方がさすが少佐でお見事。
NATOの大岡越前とでも名付けたい、NATOのトシちゃんよりずっといい(笑)。

今回は見どころ&新しく知り得た情報が多くておもしろかった。

・休暇の過ごし方の予定表を作ろうとする少佐。
実は私もそのタイプ。
実際にできるわけはないのだけど、一日24時間を時間表通りに過ごせたら、それに勝る喜びはない。
逆に生活のリズムが崩れると、途端にどんよりするタイプでもあるけれど(笑)。

・モミの木の飾りつけをする少佐、意外な場面。
芸術オンチの少佐でも、ここは慣れで綺麗に飾り付けるのかな?
残念ながら、ツリーがちらりとしか見えないので少佐のセンスは謎のまま。

・怖い怖いお父さんに思わず「あんた」と少佐。
それより「タメ口」なんて言葉を使っちゃうお父さんが凄い。

・執事さんの本名はコンラート・ヒンケル。
出身地はアイフェル地方の片田舎。

・名前もクラウス、見た目も性格も昔の少佐にそっくりの少年クラウス。
そして少佐とクラウスのやり取りを見て涙する執事さん。

あまりにしみじみいい話なので、ボーナム君にメールで教えてあげたくなった。
もちろん秘密は秘密でそっと眠らせておくに限るけど。
(2012年7月3日の日記)
部長とハリボー〜「ケルティック・スパイラル」感想 1
最近海外のコージーミステリをよく読むのだが、そこで知らない食べ物の名前を目にすることが多い。
コブラーだのハッラーだのエンチラーダだの、お店を探して実際に食べに行くのもコージーミステリの楽しみ方だが、32巻の表紙で部長が食べているのもその一つ。
「HRIBO」と書かれた容器に入ったカラフルなお菓子だが、これはドイツ生まれのハリボー社のグミだろう。
輸入元の「三菱食品」の公式サイトによると、ハリボーの創業者Hans Riegel(ハンス・リーゲル)が、出身地であるボンに会 社を設立したのは、第一次大戦直後の1920年。
姓名と地名の頭文字「Hans Riegel, Bonn」から、社名をHARIBOと命名したのだそうだ。

日本でもアマゾンなど通販や、輸入菓子を扱っているお店で買うことができる。
(私は池袋ショッピングパークの「カルディコーヒーファーム」で買った。)
私が買ったのは可愛いクマの形をしたグミ。
ただこれ、おいしいんだけどとにかく固い。

普通に買って食べるグミを想像してると大変なことになる。
噛んでも噛みきれずに押し返される弾力性と言えばいいのか(笑)。

やはり公式サイトには

ヨーロッパの人々は昔からあまり硬いものを食べる習慣がなく、咀嚼力が弱かったため、ハリボー社の創業者 Hans Riegelはグミによってそれを補いたいと考えたのです。
あごの強化はもちろん、肥満防止に役立つ、脳によい刺激を与えるなど、近年になって「噛む」ことのさまざまな効果が医学的に認められつつあります。
Hans Riegelは、まさしく先見の明を持っていたのです。

と書いてあるが、部長の年だとかなり歯が丈夫でないと食べるのは容易ではないのでは?と思う。
食に対する部長の飽くなき情熱、実は丈夫な歯と丈夫な胃あってこそだろう。

さて本題に入って、と言いたいところだが最初は少佐もほとんど登場せず、伯爵とロレンスが楽しい?ケルトの世界を繰り広げてくれる。
でも私が気になったのは一瞬出て来た少佐にとっても伯爵にとっても因縁の深い相手、Q。
この期に及んでクラッカーとは、と思ったが、後まで読むと正体を隠す気はもともとなかったらしい。

本格的に始まったな、と思ったのは46ページになってから。
いつものことながら少佐を怯ませることができる部長が実は最強。
この巻を読んでる頃には思いもよらなかった核問題の危険性を取り上げる。
本当は「思いもよらなかった」では済まされない重大な問題であった事を考えもしなかった時代が苦い。

今回の見どころは何といっても少佐とQの共闘、そして部下GとZの絆・・・?
そこはかとなく「Z」の雰囲気を醸し出して見せるZ、でもGにほめられ落ち込むとことか、少佐に対処法を聞くとことか。
今回は木の下にうずくまってたけど、壁にゴツンはやらなくなったのか。

131ページからの少佐とQの対面は、対ミーシャに劣らぬ迫力。
Qは何歳くらいかな?少佐よりかなり年下に見えるけど。
もう少し昔の絵で見たかった場面。
ただ135ページの少佐がサングラスを外すカットは意外なほど昔の少佐で感涙もの。
「−あんた天から見とるんですか!?」がめちゃくちゃ可愛いんですけど(笑)。

こうしてケルトで歎美している伯爵、冷徹に任務をこなすQ、そして少佐が三つ巴にならないわけがない。
いつもの通り?少佐に可哀そうな展開だけど。
(2012年8月4日の日記)
少佐フル活動 〜「ケルティック・スパイラル」感想 2
33巻は理屈抜きにおもしろい。
ストーリーがどーのこーのと言うよりも、伯爵、ルコック、妄想マダムの軟弱系と、少佐、Q、シリウスのこわもて系が緩急入り乱れてフル回転、その生き生きとした動きがおもしろい。
そこに少佐の部下たち、ボーナム君、ジェイムズ君、その他もろもろ入り乱れて互いに引き立て合い、足を引っ張り合い、出番は少ないが部長もいい味出している。
私の特にお気に入りは部長秘書。
見た目はニジンスキーかドジエルかといった風情だが、あの部長にも少佐にも負けず、退散させる有能さが好き。
実は若くて美人のエリート女性でもおもしろかったんじゃないかと思う。
少佐が認める、でも女性とはとても思えない女クラウスのニックネームが似合うような女性。

少佐とQの組み合わせもいい。
どちらも硬派、どちらも有能。
「魔弾の射手」では敵対していた相手が今度は味方になったみたいなビジュアルで、互いに嫌い合ってはいても、ミーシャとはまた違ったすっきり感がある(笑)。
つまり少佐が若く見える。

ローマ法王編を思い出す働く少佐が見られると思ったら、今回はあっさり終了。
ルコック君はいつも妄想マダムの相手をしているから、少佐を華麗にスルーできるんだな、なんてなにげに笑いどころも満載で。

後半はジェイムズ君が大活躍の巻だったが、ここはやっぱりQのピンチの方が大事。
でもやはり最強は妄想マダム!
名前は知らない、というより知らなくていい。
マダムの妄想に栄光あれ!

青池先生のコメントで「マジノ線」「ジークフリート線」が描けて嬉しかったとあったが、残念ながらわからない。
で、ちょっと調べてみた。
と言ってもジークフリート線そのものについては少佐が作品の中で説明している。
気になるのはアリステア・マクリーンやジャック・ヒギンズ。

マクリーンは「ナヴァロンの要塞」を書いた小説家だそうだ。
ずっと前に映画は見たが、内容はほとんど覚えていない、情けない・・・。

ジャック・ヒギンズはどこかで聞いた名前だと思っていたら「死にゆく者への祈り」「鷲は舞い降りた 」の作者だった。
「死にゆくー」はこれも映画を見たが、ミッキー・ロークで脱力した思い出しかない。
映画も見る時はちゃんと見ないと駄目だな、私・・・。
最後に部下BとGのコンビも見てみたかった(笑)。
(2012年8月18日の日記)
少佐ドイツのロマンに浸る 〜「ケルティック・スパイラル」感想 3
34巻に入ってもスピード感が途切れることなく一気に読み切った。
「エロイカより愛をこめて」は基本的にドタバタ喜劇だが、取り上げている題材や背景は骨太な社会派漫画なので、理解しながら読もうとすると時間がかかり、時には漫画としてのおもしろさを置いて来ちゃうことがある。
よって最初は話を飛ばして会話や展開を楽しみ、2度目は題材を読み込んで理解しながら丁寧に読む、と2度読むのが基本。
もちろん全部というわけではなく、他愛ない番外編などは単純に楽しむが。

「ケルティック・スパイラル」は題材があまり難しくない上に後半ドイのツロマンにあふれ、伯爵が34巻に入って少佐のサポートに回り、Qまでも持ち前のシリアスとスピードを失うことなくギャグキャラ要員に転身するのでさらに楽しい。
冒頭「木の上の少佐代理」として伯爵が少佐の部下たちを動かす場面は、伯爵の私的名場面の中でも特にお気に入り。
少佐ですら思わず素直にほめてるくらい凄い伯爵。
いつもこうだといいのにな。

一方猿も木から落ちる、弘法も筆の誤り、Qも時には落とし穴に落ちるというわけで、少佐に罵倒され、伯爵に嘲笑されるが、ただでは出て来ない所がらしくていい。
ミーシャの重量感とQのスピード感、このまま退場しないで今後どんどん出て来て欲しいキャラがまた増えた。
直接Qには散々なこと言うのに、他の場所では「他人の失敗をあげつらうより自分の仕事をしろー!」と一喝する少佐も素敵。
怪我の功名な部長も今回はいいとこあったかな・・・?

ピンク系!まで含め、部長の購読誌を5年分全て分類保存している秘書も好き、私の憧れ(笑)。
妄想マダムもボーナム君もみんないい味出してるし、今回はジェイムズ君とルコック君は影が薄かったかな?
34巻に入ってシリウスがちょっと小物化したのは意外だった。
少佐、伯爵、Qの最強トリオの相手はシリウスにはちょっと荷が重かったか。

今回は少佐が執事さんを連れて松明式典を見に来るところまで。
これから少佐獅子奮迅かつ猪突猛進の大活躍が始まるのだが、その感想は次回。
執事さんと殊勝に松明式典を楽しむ少佐にはしみじみとした感動があった。

余談だが、Qは落とし穴からどうやって脱出したのかが気になって仕方がない。
(2012年9月3日の日記)

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