お気に入り資料室(懐かしい物語)

「物語のおやつ」(松本侑子・WAVE出版)

たまたま手にとって、思わず読み切ってしまった本。
「ぐりとぐら」のかすてら、「小公女」のぶどうパン、「あしながおじさん」のレモンゼリーに「赤毛のアン」の木いちご水。
食べたことあるのもあったけれど、アンやセーラが食べたんだってだけで特別なお菓子に感じたあの頃。

いろいろ想像したり、母にねだって作ってもらったりした懐かしい思い出が蘇ります。
私はこんな本で育ちました、「物語のおやつ」掲載本や、掲載されていないけれど、大好きだった本を紹介したいと思います。
「ぐりとぐら」(なかがわりえことおおむらゆりこ・福音館書店)

ぼくらの なまえは ぐりと ぐら
このよで いちばん すきなのは
おりょうりすること たべること
ぐり ぐら ぐり ぐら


私のホームページに来て下さる方には、ただいま子育て真っ最中とおっしゃる方も何人かいらっしゃいます。
そんなお母さんも、子供の時はきっと読んでもらったのではないでしょうか。

私は大好きだった保育園の先生に読んでもらいました。
「ぼくらの なまえは ぐりと ぐら」
この部分になると、みんなで声を合わせて先生と一緒に読みました。

今変換せずに、ひらがなだけで打つことがむしろ難しい、頭の固い大人になってしまったことを意識せずにはいられません。

本当に大きかった、本当にふんわりしておいしそうだった、ぐりとぐらのかすてら。
お店で売ってるカステラが、みんな四角いことが悲しかった子供の頃。

「物語のおやつ」に掲載されているかすてらの写真は、色がもう少し茶色くて、ふんわりと盛り上がっていないのが残念、今度挑戦してみようかな?

「ぐりとぐら」の物語は、シリ−ズ化されていますが、私はやっぱり「ぐりとぐら」が一番好きです。
「赤毛のアン」(ルーシー・モード・モンゴメリ・金の星社)

アンはびんとグラスをテーブルの上に置いた。
「さあ、どうぞめしあがって、ダイアナ。」
ダイアナはグラスにたっぷりつぐと、その赤い色を感心してながめ、それから上品そうに少しずつすすった。

「とてもおいしいわね。
 イチゴ水がこんなにおいしいものだなんて、思わなかったわ。」


ところがそのイチゴ水は実は・・・と相変わらず大失敗のアンに大笑いしたり同情したり共感したり。
かなりデフォルメされてるけど、子供の頃はアンって私の分身だと信じてました(笑)。

私が馴染んでいたのは村岡花子版ですが、残念ながら家がなくなる時に全て母に処分されてしまいました。
古風で丁寧な文体と、独特な挿絵は未だに頭の中にはっきり残っています。
本もハードカバーの立派な本で、アンとギルバートの子供たちの人生と短編集2冊を合わせて全10巻。
私はやっぱり最初の「赤毛のアン」が一番好きです。

赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」は是非一度行ってみたい場所です。


「この二日間は、てんてこまいだったわ。
 チキンのゼリーよせに、コールド・タンでしょ。
   ゼリーは赤と黄色の二種類があるの。
 ホイップクリームにレモンパイ、それにチェリーパイとフルーツケーキ。 
 クッキーが三種類に、マリラご自慢のプラムのさとう漬け。

    〜(中略)〜

 ほかにパウンドケーキやあたしのレ(イ)ヤーケーキ、さっきいったビス ケットもあるでしょ。
  パンは焼きたてのと古いのと、両方あるの。」


5人で本当に食べきれるの?ってほどの驚く量と種類。
全てが手作り、でもなんて豪華なんでしょう。
こんな本を読んで育った私はすっかりくいしんぼうになりました。
(常にダイエットとの戦いです・・・。)

シダと野バラをたっぷり使い、独特の芸術センスを生かして美しく飾ったテーブル、こがね色のあわのように、ふんわり軽く焼きあがったレイヤーケーキにルビー色のゼリーをはさんで。

このゼリーはジャムのことかもしれないと「物語のおやつ」では解説しています。
こんなに素敵なテーブルセッティングとお菓子が並んで、でもアンはやっちゃうんです(笑)。

さすがの私もここまではしないだろうと思ったほどの大失敗。
私の一番大きな失敗は、小学生の時、チーズスフレを焼こうとしてチーズなら何でもいいだろうとピザ用の粉チーズを一瓶丸ごと入れて、チーズ臭くて食べれなかったことかな?
「あしながおじさん」(ジーン・ウェブスター・講談社青い鳥文庫)


かりに、体育館のプールに、レモンゼリーがいっぱいになっていたら、泳ぐ人は、ういていられるでしょうか、しずんでしまうでしょうか。
わたくしたちが、食後のレモンゼリーを食べているときにこの問題がもちあがりました。

  〜(中略)〜

サリーは泳げるといいますが、わたくしはどんなにじょうずな人でもしずんでしまうと思います。
レモンゼリーの中でおぼれるなんて、おもしろいではありませんか。


「物語のおやつ」で作られているお菓子は、本を読んだ時のイメージと違ってがっかりするものもありましたが、レモンゼリーはイメージどおりでとても素敵でした。

固いゼリーだと沈むどころか潜ることもできないでしょうが、こんなぷるぷる(ジェルと書きたい)だったら泳げそうですね、もぐったら琥珀に入った虫のように見えるかなあって子供の頃思いましたもん。
ガラスの器に入れて、きらきら光る陽射しの下に置いたら、陽が透けてどんなに綺麗でしょう。

残念ながら、「あしながおじさん」も私が子供時代に読んだ訳者でも挿絵でもありません。
全く違う本みたいで寂しいです。


 先週の金曜日は、ファガースン寮の舎監の先生が、ほかの寮にのこっている人たちのために、キャンデー=パーティーをしてくれました。

  〜(中略)〜

わたくしたちの体も、台所もドアもすっかりべとべとになってしまったとき、みんなはならんで、エプロンのまま、手に手にフォークやフライパンを持って職員室に更新いたしました。


私が読んだ本では、先生方が食べたものの、あまりにべとべとして口が開かなくなり、ジュディたちが逃げ出したというオチがつきます。
水飴を固めたような感じかな?などといろいろ想像したことが思い出されます。

私は蜂蜜が大好きで、専門店でいろいろ試してみるのが大好きですが、ジュディたちが作った糖蜜の飴ってどんな感じでしょう。
基本的なアカシアの蜂蜜でいいんじゃないかなあと思いますが。

「あしながおじさん」のロマンティックなところは、ジュデイが恋する男性こそ「あしながおじさん」だったという大どんでん返し。
ジュデイの性格、あしながおじさんに頼りすぎることを良しとしない性格の強さは、数ある小説の中でも大好きな少女でした。
サリーを主人公にした続編もあるそうですね、読んでみたいな。
「はるかなるわがラスカル」(スターリング・ノース、小学館)

インディアン・フォードの釣り客休憩所で、ぼくはイチゴのソーダ水を一びん買った。

〜(中略)〜

ぼくは、びんの底に一センチほどになるまで、おあずけさせてから、ちびの、ものほしそうにあけた口のなかへ二、三滴たらしてやった。
するとラスカルは、びんの首をつかんで、仰向けにひっくり返り、両手両足でがっちりびんをささえて、最後の一しずくまで飲んでしまった。


アニメのオープニング、カレンダー、グッズなどによく登場する有名なシーンです。
アニメ「あらいぐまラスカル」は以前から知っていましたが、さほど興味がなく(ハイジやフランダースの犬と絵が違ったし)、ハマったのは3年前。
スカパーでたまたま見て、「なんて可愛いの♪」って舞い上がってしまいました(笑)。

原作「はるかなるわがラスカル」はずっと廃刊の状態が続いていて、古本屋さんを捜し歩いても見つからず、半ばあきらめていた時の復刊。
やっと読むことができました。
でもアニメに慣れているせいか、あまりのさっぱり感に物足りなさも。

また、大人として見る(読む)ラスカルに対する人間たちの態度(スターリングも含めて)には首を傾げる部分もありますが、何よりも雄大な自然の中でいかにも子供らしく生きていく子供たちや、優しく見守る大人たち、そして何より可愛くてたまらないラスカルにはもう夢中です。
「オンネリとアンネリのおうち」(マリヤッタ・クレンニエミ、プチグラパブリッシング)

テーブルにつくと、プクティーナさんが、おさとうをまぶしたケーキと、ジュースを持ってきてくれました。
こんなにおいしいケーキ、食べたことがありません。
ふつうのケーキとおんなじみ見えるのに、ひと口ごとに、味がぜーんぜんちがうのです。

ひと口目はチョコレートの味。
そのつぎはバニラの味。
三番目はレモンの味、そして、アーモンドの味というふうに。


おもしろい名前だなあと、たまたま手に取り、あっという間に読みきってしまった本。
仲良しの女の子二人が、たまたま大金を拾い、そしたらお金が落ちていたのは、売りに出されている小さな女の子がふたりで住むおうちの前。

もちろんふたりは家を買います。
そのおうちがとても素敵で、とっても不思議なお隣さんもいて。
なぜ女の子ふたりで住めるかというと、アンネリの両親は別居中で、どちらも相手がアンネリと一緒だと思って旅行に行ってしまったから。

オンネリのうちは、半ダース以上の子供を抱えて目の回る忙しさのお母さんが、オンネリの話をちゃんと聞くことができません。
そんな複雑な家庭事情の二人だけど、夢みたいな素敵なおうちで暮らします。

引用したケーキだけでも不思議ですが、他にもふたつに割ると、シューシュー光る花火が空へ向かってとびだし、それが地上に向くとパーンと音がして、本物のキャンデーが雨みたいに降ってくる「ばくはつキャンデー」、中から絵本やゴム長!、本物のテントなどが出てくる「びっくりたまご」など不思議がいっぱい。

初版は黄色を基調にした表紙でしたが、実家の低い傾斜の緩い屋根にラグを敷いて寝転がって読んでるうちに、それを忘れて雨でぐしょぬれ(涙)。
次に買った時には、挿絵は同じマイヤ・カルマさんですが、表紙絵が変わってしまってちょっと残念。

4冊のシリーズですが、日本で出版されているのはこの1冊目だけなようです。
他のも読みたいなあ。
「しろくまちゃんのほっとけーき」(わかやまけん・こぐま社)

ぽたあん どろどろ ぴちぴちぴち ぷつぷつ やけたかな まあだまだ

しゅっ ぺたん ふくふく くんくん ぽいっ はいできあがり


こぐま社から出ているこぐまちゃん、しろくまちゃんシリーズの中で一番好きな本。
シンプルで、でも可愛くて上京する時持ってくることに迷わず決めた一冊です。

この絵本を読むと、必ずホットケーキが食べたくなって、母にねだったり、こっちに来てからは自分で作ります。
どんなに大事にしていても、ホットケーキの粉やバターのちっちゃなにじみがついているのも私の歴史。

そういえば母は共稼ぎでいつも遅かったので、母と一緒に何かを作った経験はないです。
そのせいで今の料理下手があったりして?
やる気は満々なのですが、どうしても上手にできなかったり(苦笑)。

しろくまちゃんは、そんな私の強い味方です。
日曜日の朝はなんとなくお洒落に、ホットケーキやフレンチトースト、カフェオレか丹念に入れた紅茶、手作りのバナナヨーグルトにしたいですね、気持ちだけは(^_^;)。
「秘密の花園」(フランシス=ホジソン=バーネット・岩波書店)

ディコンが大きなバラのしげみのかげにいって、二つのブリキの手おけをもってきました。
見ると、いっぽうのにはクリームのういた濃い新しい牛乳が、もうひとつのほうには、青と白のせいけつなナプキンでくるんだ、いなかふうのブドウパンがはいっていました。
(*引用は他の出版社より。)


仕事柄児童書に接する機会の多い私ですが、絵本はともかく小学生対象の本がだんだん華やかな挿絵になってきているような気がします。
本離れが問題になっている昨今、絵で子供を惹きつけようとしているのでしょうか、ちょっと寂しい気がします。

あまりにも色彩のはっきりした、鮮やかな表紙や挿絵だと、読んだ時に想像の入る余地がありません。
最近よく見かけるのは、漫画家さんの描いた挿絵。

たとえその漫画家さんの漫画を知らなくても、漫画はやっぱり線がはっきりしていて、キャラクターをきっちり形作ってしまうので、あまり好ましくないような気がします。

「秘密の花園」は「小公女」や「小公子」で有名なバーネット女史の本ですが、登場する男の子と女の子があまりにもわがままで傲慢でひとりよがりで・・・。
見た目もあんまり可愛くなくてという児童小説には珍しいキャラクターです。

そんな二人が、人生を根底から揺るがすような大事件に出会うわけではありません。
素晴らしい自然と、秘密の花園と出会った人々のおかげで健康で明るい子供らしい二人になっていく過程が描かれます。

なのになぜこんなに心を躍らせられるかといえば、やっぱり秘密の花園、悲しみを閉じ込めた立ち入り禁止の花園に、主人公メアリーと同様に惹かれるせいでしょう。

他の二作品のように、主人公が完璧すぎると、子供はあまり感情移入できなくなるものです。
「小公子」はほとんど素通り、「小公女」は、セーラが不幸な境遇に陥って、それでもなお気品を保ち続ける姿にやっと共感できました。

ディコン、ディコンのお母さん、ベンじいさん、コリンのお父さん、みんながとても人間的で現実的です。
コリンはお金持ちのお坊ちゃんなので、いろいろなご馳走の描写もありますが、やはりコリンやメアリーと同じように、ディコンのお母さんが作ったブドウパンの方がずっとおいしそうに感じます。
「ドリトル先生航海記」(ヒュー・ロフティング・岩波書店)

その時私は、ほんとうにじぶんは夢を見ているのだと思いました。
なぜかというに、そこの階段の曲がり角から一羽のまっ白なアヒルがあらわれてきたのです。
アヒルは首をのばして、下を見ながら、片方の足に、火のついたローソクを持っていました。


全12巻のドリトル先生シリーズの2巻目が「ドリトル先生航海記」ですが、実質的にはトミー・スタビンズとドリトル先生が出会う一番最初のお話です。
動物の言葉が話せる、とても優しくて楽しくて賢いドリトル先生の家に連れて行ってもらったトミーは階段をろうそくを持って降りてくるアヒルのダブダブにびっくり仰天。

左ページには、物語を書いたヒュー・ロフティング氏の楽しい挿絵。
犬のジップや、「らんま1/2」の良牙=子豚のPちゃんそっくりなガブガブや、賢いオウムのポリネシアや、たくさんの動物たちが登場。
大人になってもおもしろい本の代表作です。

特に映画のドリトル先生しか知らない方には、是非読んで頂きたいと思ってます。
その他取り上げたい本。

「てぶくろ」「むくどりの夢」「ぐるんぱのようちえん」「だるまちゃんシリーズ」「十五少年漂流記」「ロビンソン・クルーソー」「はらぺこあおむし」「ひさの星」「大きなかぶ」「あのね、サンタの国ではね…」「松谷みよこの絵本」「ねないこだれだ」「不思議の国のアリス」「偉大なる王」「ああ無情(レ・ミゼラブル)」「若草物語」「三銃士」他・・・。
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