一陣の風


一陣の 風が吹く
あたしの中で 何かが変わる
あいつの真似して伸ばした髪を 無造作に束ねる
あいつにもらった毛皮をまとう
もう日焼けも枝毛も関係ない

あたしのそばで あいつが笑う
あたしはあいつと 生きていく

この世界に放り込まれた あたしはもう戻らない
あたしはあっちの世界を 捨てた
あたしはここで あいつと生きる

だけど あたしはあいつと違う
ひとりで先に年老いて ひとりで先に死ななきゃならない
そんなの嫌だ
だからあたしもかけらを狙う者になる

四魂の力を身につけて
あいつと一緒に 風の中を駆け抜ける
あいつと一緒に 生きていく

あいつと一緒に 年老いて
あいつと一緒に 死んでいく



短いおはなし 目次へもどる

ホームへもどる