犬夜叉サンデー感想(第141話〜第150話)
愛しの鋼牙、愛しの神楽
原作少年サンデー1999年10月20日(47号)第141話「追跡」

     ☆     ☆     ☆

最近鋼牙のことばかり書いているが、現在のサンデー、当時のサンデー共に鋼牙登場時期であり、当時のサンデーでは、犬夜叉とかごめの喧嘩の元でありながら、2人が仲直りしたと共に、再登場する。
今回「追跡」の表紙絵は犬夜叉、シリアスな横顔が犬夜叉の中で一番好きと言えるかもしれない。

まずは四魂のかけらを埋め込まれて脳がはみ出た?大熊が登場。
これは犬夜叉たちを導く罠で、一方鋼牙たち妖狼族は四魂のかけらがある城の偽噂を聞きつける。
腕の傷の治らない鋼牙は残るが、2人の手下と狼たち以外の東の洞穴(あな)と北の洞穴の妖狼族が騙され、城に行ってしまう。

西と南と中央の洞穴があったのかもしれない、他にも。
灰と芯太はその頃どんな生活をしていたんだろうか。
女の妖狼族、最低灰と芯太の母、もいたはずだし。

この時点でも荒っぽい妖狼族の性質が表現される。
城に「人間」がいたら、皆殺しにできる性質。
これが鋼牙たち妖狼族。

しかし全ては罠、奈落の、そして神楽の罠。
今見直すと可愛い神楽だが、次回その残忍な死の舞が犬夜叉と鋼牙を翻弄する。
鋼牙の腕には瘴気のかけら。
最後のページの横顔がこれまたかっこいい。

最後は殺生丸の想いに包まれて自由な風になった神楽だが、登場してから死の間際、琥珀を助けるまで悪女を通す。
その中で自由を請い、奈落を裏切り、殺生丸に恋をする。
作品中女性では、かごめと桔梗は当然だが、他に珊瑚と楓、翠子、そして神楽と神無がメインのキャラとなる。
その中で私が一番好きなのは、もしかしたら神楽かもしれない。

他キャラにはない小気味良さが悪の面でも善の面でも気持ちいい。
当時は、鋼牙と神楽が和解して、恋人同士になるんじゃないか、そうだったらいいなと思ったことが懐かしい(笑)。
「犬夜叉」にはたくさんの敵が登場するが、その中でも神楽の「屍舞」ほど残忍な技はなかったような気がする。
この城での決戦では、神楽を撃退するものの、犬夜叉も鋼牙も深い傷を負う。

神楽もただではすまないが、なんとか逃げ延び、奈落と行動を共にする。
ついでにかごめや桔梗に変わってサービスカットも担当。
でも神楽の目に光はいらないなあと思った。
鋼牙と神楽は目が色違いで瞳がない。

カラーになった時、その焦点が定まらないような眼と、それでいてはっきりした顔立ちのアンバランスが、犬夜叉やかごめの大きな目や、桔梗の伏し目がちにはない大きな魅力を感じる。
私はカード「巫法札合戦」の他にブロマイドもかなり集めたが、一番のお気に入りはラメの鋼牙。
「写真の小部屋」の「狼くんの贈りもの♪」はそのカードから作ってもらってたりする(笑)。
 (2005年12月12日の日記) 
奈落と神楽
原作少年サンデー1999年10月27日(48号)第142「屍舞」

     ☆     ☆     ☆

先に城に着いたのは犬夜叉。
神楽の屍舞に操られた妖狼族の死骸が犬夜叉たちを襲う。
犬夜叉も闘わざるを得ないのだが、そこに鋼牙が来てしまった。

当然鋼牙は犬夜叉が仲間を殺したと思い込む。
これまでのいくらか余裕があった戦闘とは一転、仲間の敵討ちの鋼牙が犬夜叉を本気で殺しに来る。
かごめが奈落のことを話そうとしても、鋼牙は聞こうとしない。

これまで奈落と関わったことのない鋼牙は、こんなにも回りくどい罠を仕掛ける者がいるなどと思いはしない。
その憎悪は全て犬夜叉に向けられ、同時に奈落の罠と知っている犬夜叉は本気で鋼牙に向かえない。
防戦一方の犬夜叉、周りが見えなくなっている鋼牙、全て奈落の思い通りで、奈落は高みの見物。

それにしても失礼だな、奈落。
この時奈落は鋼牙の名前を知らない、妖狼族の若頭であることは知っていたらしいが、結局神楽と犬夜叉&鋼牙の戦闘を見ていてやっと覚えたらしい。
「そうか、あの者は鋼牙というのか、くくく・・・」。

今回は鋼牙も奈落の謀略をまだ知らず、鋼牙の前に神楽も現れず、戦闘中に終了。
原作で迫力のある、同時にスピード感のある戦闘は意外に少ないが、このエピソードは犬夜叉と鋼牙の本気の殺し合いに見応えがある。
鋼牙がいるからというより、ギャグの味付けがひとしずくもないからだろう。
シリアスの中のギャグは高橋先生の独壇場だが、だからといって必ずあるべきものだとは思わない。

次回は犬夜叉と鋼牙を「弄ぶ」、いけない神楽の本領発揮。
しかし、その典型的な悪女の神楽すら奈落の謀略の中でもがく一人だった。

神楽の死、神楽の最後を知ってから読み返すと、神楽の微妙な心理の変化をいっそうおもしろく読める。
奈落を憎む神楽、犬夜叉に打倒奈落の望みを託す神楽、琥珀の悲惨な運命に自分を重ねる神楽、奈落や白童子の揶揄に怯える神楽、そして殺生丸に想いを寄せる神楽。
神楽の想いは最後に報われ、神楽は舞い上がる風となって殺生丸に寄り添い続ける。

今この時点で、神楽の最後の姿を予想できた人はいただろうか。
「犬夜叉」読み返しのおもしろさに、一人一人のキャラのみに焦点を絞って読むことがある。
犬夜叉だけを読む、かごめだけを読む。
登場キャラの心理の変化の流れを探っていくには、自分ではこれが一番と思っているが、その中で一番心地よい変化を遂げるのが神楽ではないかと思う。

高橋先生の恋愛作家としての、ストーリーテラーとしての魅力を、私はこんなところに見る。
大人の恋といった部分で、「めぞん一刻」を思い出してみたり。

犬夜叉とかごめ、乱馬とあかねの恋と響子さんと五代君、神楽と殺生丸の恋は違う。
幼い恋と大人の恋。
もちろん犬夜叉たちも恋に命をかけているが、私が言いたいのは年齢的な幼さ。
その二つの恋を緻密に描き分ける高橋先生、やっぱりすごいと思う。
 (2005年12月13日の日記) 
誤解は解けたが
原作少年サンデー1999年11月3日(49号)第143「神楽」

     ☆     ☆     ☆

「犬夜叉」キャラの初登場時、みんな幼い顔をして出てくる。
高橋先生の腕がこなれるにつれて、表情豊かな美しい少女や、かっこいい少年が現れてくるのだが、この当時の神楽や鋼牙はほんとに可愛い。
特に「狼のにいさん」と出てきた神楽の笑顔や、次回冒頭、神楽にやられて「く・・・」と歯軋りまで聞こえてくるような鋼牙の悔しさと、セクシーな太腿のアンバランス。
犬夜叉やかごめも最初は顔がとてもシンプルだったが、何と言っても一番変わったのは殺生丸だろう。

「お茶目で寸詰まり」だった殺生丸、心の成長と共に、美しさと身長も成長したようである。
などと懐かしんでいはいられないシリアスな戦闘が今回も続く。

「仲間の敵」犬夜叉への怒りと腕に仕込まれた毒と瘴気のかけらで信じ難い力を爆発させ、犬夜叉に「止めを刺す」鋼牙。
そして現れた神楽。
この辺は、アニメの完成された絵と動き、松野さんとまだまだ可愛い声の大神さんで原作以上に楽しむことができる。

全てを悟る鋼牙。
怒りの鋼牙は神楽に迫るが、腕のかけらの毒と瘴気が腕に染み出し、動けなくなる。
風刃の舞で傷つく鋼牙、痛々しい。

でもコミック15巻94ページは丸ごと大好き。
傷つく鋼牙と気を失った犬夜叉を起こそうとするかごめ。
たぶん神楽に聞こえないようにだろう、声をひそめて呼びかけるかごめ。
そしてかごめの腕の中で目を閉じたままの犬夜叉。
18巻になるまでのベストページになってるかも。

ここでは非常に興味深い台詞が出てくる。
というか、今回の台詞自体はたいしたことがないのだが、かごめの

「犬夜叉に・・・ 鉄砕牙を渡さなきゃ。」

この言葉に応えるのは七宝。
次回犬夜叉に鉄砕牙を渡してくれる。
純粋な妖怪の七宝がどうやって犬夜叉に鉄砕牙を渡したのか、その場面は描写されない。

たしかに弥勒と珊瑚はその場にいないし(城の中で奈落と戦闘)、とすると七宝しかいないのだが、では犬夜叉に味方する妖怪は触ることができるということなのだろうか。
そのことを考えながら次回を読んだり、アニメオリジナル「吠えろ七宝奥義心の傷!」を見たりするのも一興かも。

このエピソードはまだまだ続くが、犬夜叉のがんばり、鋼牙のプライド、神楽に鉄砕牙の威力を試させた奈落の卑怯、神楽の怒りと屈辱、そして多くの謎が渦巻き、時には光を放ちながら物語を形作る。
そろそろ「犬夜叉」絶頂期に突入の予感が嬉しい時期だった。

当時はサンデーを買っていなかったのだが、キャラの細かい表情などは、やはりサンデーの大きな紙面で見たかったなと思う。
それでもアニメ化のおかげで「犬夜叉」に会えた、アニメに感謝、である(笑)。
 (2005年12月15日の日記) 
風の支配
原作少年サンデー1999年11月10日(50号)第144話「風使い」

     ☆     ☆     ☆

ゴオオオオ・・・、風が舞う。
ズ・・・、這いずる鋼牙、ドクン、毒と瘴気のかけらが鋼牙の身体を毒す。
パチン、神楽の扇が鳴り、ヒュン、と走り、バシ、と狼が両断される。
呆然と見つめる鋼牙。

最初の部分を抜き出して書いてみたが、私が戦闘場面に迫力を感じるのは絵や台詞もさることながら、効果音のテンポ。
「風使い」では、効果音がかなり使われるが、動けぬ鋼牙と犬夜叉に風を操る神楽のスピード感がそれこそ効果的に使われている。
ただサンデー時はカラーだったのかな?色が暗いのが残念。
がんばるかごめも的をはずしてピンチに陥る、それを救ったのは蘇った犬夜叉、気力と、そして「七宝」が渡した鉄砕牙の力で。

この時七宝がかごめの元にやって来て、かごめが

「七宝ちゃん。
 犬夜叉に鉄砕牙渡してくれたのね。」

と言う。
きのうも書いたが、どうやって妖怪の七宝が犬夜叉に鉄砕牙を渡したのか、そもそも妖怪が渡せるのか、疑問が生じる。
もしかしたら犬夜叉の味方である妖怪は鉄砕牙が見分けると言う設定があって、変化するかどうかはともかく触れることができるのかも。
そして犬夜叉一行に合流した鋼牙もいずれ変化しない鉄砕牙を振り回す日が来るのかも、来ないだろう(笑)。

鋼牙は毒と瘴気の影響で匂いを感じなかったのかもしれないが?、犬夜叉は神楽に奈落の匂いを感じ取る。
いい匂い、焚き染めた香の匂いであったらいいな。
妖怪の生臭かったり気持ち悪い匂いだったらやだな。

前回の屍舞、そして今回風刃の舞、に続いて神楽の竜蛇の舞が炸裂する、狙うのは鋼牙。
かごめが的をはずしたように、神楽も的をはずしたらしく、かごめが無事に鋼牙の元にかけつける。
実はそこに嘘っぽさを感じてしまったので、むしろアニメの屋根の上の方がリアルさとかごめの安全性の面では正解。
けれど、おかげで犬夜叉が鋼牙を助けるかごめをキッと睨む場面から、かごめの「もちろんよ!」に続く最高の会話がカットされたのは残念。

しかし、こうして読んでみると、妖怪としての強さはともかく、鋼牙は犬夜叉には結局かなわないのだなと思わずにいられない。
鋼牙は四魂のかけらに頼り、犬夜叉は己の力を信じる。
犬夜叉には鉄砕牙があるけれど、犬夜叉は鉄砕牙に頼ってはいない(この時点では)。
たとえ鋼牙にも鉄砕牙に替わるアイテムがあったとしても、頼る心があるかぎり、鋼牙は犬夜叉にはかなわない。

その鋼牙の弱さが、犬夜叉との合流、そして五雷指を得たことによってどう変わるか、興味深い。
もちろん妖怪としての強さは犬夜叉に劣るものではないことは信じているけど(笑)。

そしてかごめの出番は続く。
鋼牙のかけらを浄化しようとするも、さすがのかごめでもかなわない。
同時に神楽相手に苦戦する傷ついた犬夜叉。

神楽は風使い。
城の風を全て支配するのなら、風自体が巨大な妖気のかたまり。
ならばかごめの破魔の矢、浄化の矢で風の一部を浄化するなら、その部分は神楽の支配を断ち切る、そして一度切れた妖気がぶつかる所に、風の傷ができる。
苦戦しながら犬夜叉はその事実に気づく。

迷うかごめは犬夜叉を信じ切れるか、以下次号!とサンデーでは煽ってくれたのだろうか。
 (2005年12月16日の日記) 
神楽退散
原作少年サンデー1999年11月17日(51号)第145話「背中の蜘蛛」

     ☆     ☆     ☆

先日ちょっと調べたいことがあって1巻を読み返してみた。

かごめが百足上臈に犬夜叉共々殺されそうになり、犬夜叉の封印の矢を抜こうとする場面がある。
この時、かごめは

「こ・・・
 こんなわけのわかんないとこで・・・
 死ぬのはいや!!」

と叫ぶ。

この台詞がずっと気になっていた。
なぜかと言うと、作品が続くにつれ、「犬夜叉」キャラの感情の希薄さを感じることが増えていったから。
もちろん犬夜叉と桔梗、奈落と桔梗、犬夜叉とかごめなど、基本となる感情表現はこれでもかこれでもかと押しまくる。

しかしそれ以外の部分、たとえばかごめ自身の妖怪に対する、あるいは死に対する恐怖のなさに最初に違和感を感じたことは以前書いた。
そうして違和感を感じた最初の台詞が今にして思えばこれだった。

「高橋先生はギャグ漫画家」という筋金入りのファンのコメントをあちこちで読んで、「犬夜叉」があるのにそう言えるの?ってずっと疑問を感じていたが、今は少し納得できる部分もある。。

高橋先生のギャグ漫画の代表的な作品「うる星やつら」や「らんま1/2」は比較的長く続いた。
私がシリアス物として一番好きなのは「人魚シリーズ」だが、他作品に比べて短い。
「人魚」シリーズの中には人間の全てが美しい部分も醜い部分も全てが凝縮されていたと思う。
それらを踏まえて、高橋先生は「シリアスとギャグの混合」である長い作品として「犬夜叉」に取り組まれた。

「犬夜叉」がシリアスな短い作品だったらその中にシリアスが完璧に散りばめられていただろう。
「犬夜叉」がギャグだったら長く続いてもおもしろかったろう。
それを越えて「犬夜叉」に取り組まれた先生の作品は、「見せ場としてのシリアスな部分は完璧でありながら、その他の部分が希薄になってしまった」と私は思う。
同時にシリアスとギャグのバランスが崩れ始めてきている(と私が思う)のも、長く続きすぎた故だろう。

シリアスで短い「犬夜叉」も、長くてギャグだけの「犬夜叉」も、上記の作品を超えた物にはならないから、先生はあえて「長いシリアスとギャグの混合」作品に取り組まれた。
現在の停滞感は、先生の初挑戦の限界を超えてしまったせいではないだろうかと思う。

だからこそ私は高橋先生の「犬夜叉」と言う作品に強く惹かれるんだと思った。
私の中で「人魚」シリーズや「めぞん一刻」は感動して完結している。
「うる星やつら」や「らんま1/2」はおもしろくて終わりだった。

「犬夜叉」の連載をリアルタイムで読むことのできる幸せ(笑)。
過去の作品をコミックで読むことは、完成したものを読むことで、作品が全てとなる。

けれど、現在進行形の作品をオンタイムで読み続けることは、作品の裏側に先生の楽しさや葛藤が見えてくる。
いえ知ろうとするおもしろさが生じる。
時々「まだ犬夜叉おもしろいと思いますか?」とメールを頂くが、おもしろいから好き、おもしろくないから好きじゃないとかそんな作品じゃないように思う。

のめり込む作品に出会えた幸せを堪能したが、おかげで何を調べたかったのか忘れてしまった(笑)。

          ☆          ☆          ☆

かごめが犬夜叉を信じて放った矢は、神楽の妖気の風の支配を断ち切り、そこに流れ込もうとした妖気の風同士がぶつかる所に「風の傷」ができる。
弥勒もしっかり間に合った神楽の裸体、そして犬夜叉が見た背中の鬼蜘蛛の痣。
奈落の分身でありながら、犬夜叉たちのことを知らない神楽の謎が犬夜叉たちを包む。

読者には城に戻った神楽と奈落のやり取りによって、次回神楽の正体が明らかにされ、弥勒もあれこれ推理して神楽の正体に迫ることになる。
犬夜叉とかごめvs神楽の戦いの場所に一応鋼牙もいるのだが、倒れている小さなカットがひとつだけ。

犬夜叉の鉄砕牙のレベルアップには、いろいろな名前がつけられるがおもしろいのは「風の傷」って技の名前じゃないということ(笑)。
正確には「風の傷(見つけた)!」と言うべきところで同様に「竜鱗の鉄砕牙」なども、鉄砕牙の別名称。
技の名前として堂々叫べるのは「金剛槍破」や殺生丸の「冥道残月破」など、本当の技名の時なんだよなあ、本当は。

さて、神楽は背中の鬼蜘蛛の痣を犬夜叉に見られるが、これはもちろん奈落の分身を意味する。
人の心を捨てた今の奈落の背に鬼蜘蛛の痣はあるのだろうか。
神楽は後期、もう一度見事な脱ぎっぷりを、今度は殺生丸に見せることになるが、あまり恥ずかしいと感じる様子がないところがおもしろい。
 (2005年12月18日の日記) 
鋼牙の怒りと神楽の屈辱
原作少年サンデー1999年11月24日(52号)第146話「神楽の謎」

     ☆     ☆     ☆

仲間を殺した敵、奈落の分身神楽に騙され、傷つけられ、犬夜叉に助けられたという三度の屈辱。
かごめの破魔の矢で救われたのも、嬉しいだけではすまないだろう。
今の鋼牙ならともかく、当時の鋼牙なら犬夜叉に助けられることは、屈辱以外の何ものでもなかったろう。

一方神楽。
鉄砕牙の試し斬りとして放たれ、あわよくば四魂のかけらを取ってくることを命じられたが、想像以上の鉄砕牙の凄さに辛うじて逃げ延びる。
神楽の眼の描き方や、自分のことを「私」と言うなど、まだキャラ的に定まっていない時期だが、すでに奈落に心臓を握られており、生かすも殺すも奈落の思いのままであることが明かされる。

この速さが、憎い悪役神楽から、憎めない悪役、妖艶悪女としての神楽を形作ったと思う。
神楽は怒りに任せて奈落を罵るが、奈落に心臓を通じて苦痛を与えられてしまう。

「神楽・・・
 命は取り留めたようだな。」

神楽の体内に心臓はないのだから、犬夜叉に傷つけられても神楽は死ぬはずがないのだが、奈落のこの言葉。
神楽はまだ自分が自由ではない代わりに、心臓が奈落の元にある限り、不死であることも知らない。
後に傷ついた身体で殺生丸に救われた時、神楽は自分がまだ奈落により「生かされていた」事に気づいていた。
鋼牙の怒りは全て奈落と神楽に向けられ、神楽の屈辱は全て殺生丸への恋に向けられる。

一方犬夜叉一行で興味深いのはかごめと弥勒。
指では浄化できなかった鋼牙の毒と瘴気のかけらが、矢によって浄化できた。
初期に手だけで百足上臈の腕をもいだ時は手に霊力があったが、その後逆髪の結羅や飛天満天の雷獣兄弟に相対した時は、かごめの手から霊力が発動しなかった。
つまり、屍舞烏編でかごめが弓矢を手にした瞬間に、かごめの霊力の源が矢に移ったとか、なんて都合のいい(笑)。

もちろん手から霊力発動するためには、敵にかなり近寄らなければならず、かごめにとっては危険も増すし、かごめの矢が下手なのは、百発百中だったら犬夜叉たちの出番がない。
このように初期設定はかなり細かく作られていることがわかる。

そして弥勒の台詞がおもしろい。
「第一どのようなおなごに化けようと―」発言、神楽の身体をしっかり見ていたことがわかる。
一応傷ついた鋼牙に気を使ったか、空気を読んだか、さすがは大人。
ただ彼らは神楽の正体に気づいてきたものの、神楽が単なる分身ではなく、奈落の分身であると同時に奈落を恨んでいることまでは当然気づけない。

そのことが何の迷いもなしに殺戮をしてのける、自分たちをも殺そうとする神楽に対して理由もなく憎みきれない大甘展開につながることになる。
そして奈落が放った奈落の第二の分身、神無が登場する。
無であり白の世界を持つ神無、奈落に心臓を握られていようと、自由になれないだろうと何も感じていないように見える。
神楽に比べ、楽かもしれない。

赤子と魍魎丸騙し作戦の時以外は傷を負うこともなく。
茫洋とした姉ときりきり動く妹、あっ、なんかうちみたいだ(笑)。
 (2005年12月19日の日記) 
普通の代表小春
原作少年サンデー1999年12月1日(1号)第147話「小春」

     ☆     ☆     ☆

こちらもサンデー1号から開始。
鋼牙がひとまず去って小春と神無登場編が始まる。
この頃の絵がとても好きで、特に「神楽の謎」と「小春」の犬夜叉の色っぽさが素敵。
基本的にかごめと弥勒と珊瑚の目は同じなのだが、眉や口の描き方を変えて、素直なかごめ、厳しさのある珊瑚、余裕たっぷりの弥勒と3人ともとても魅力的。

さて、今回はごくごく普通の少女小春が登場する。
弥勒に子供を産んでくれと言われれば素直に喜ぶ小春、犬夜叉たちについて行きたいと願えば犬夜叉たちに断られる小春、おそらく全ての「犬夜叉」ファンの代表。
犬夜叉世界ではむしろ稀有な存在である小春だが、今この時期に弥勒に会ったばかりに、神無に心を囚われてしまう。

アニメではかごめばかりがもててたが、蚊男?ナマズ妖怪に続き、すけべな若殿に好意を寄せられる珊瑚が新鮮。
同時に始めて弥勒にヤキモチを焼く珊瑚も登場する。
どうやら小春は、弥勒と珊瑚の恋のキューピットになってしまったようだ。

他にも特徴的なのが14歳で子供が産めると明言する小春。
これは小春が早熟なわけではなく、この時代の常識で、むしろ現代から来たかごめや、奥手な珊瑚だから驚いているだけだろう。
これが桔梗や楓なら、動じることなく「幸せになりなさい」くらいのことは言いそう(笑)。

私が小春編が好きなわけは、この「犬夜叉」の中では異質な、私たちの世界の常識人が出てくるのがおもしろいから。

話をたどると、若殿から逃げてきた小春に珊瑚が間違えられ、襲われる。
もちろん珊瑚が捕まるわけないのだが、珊瑚のナイトとして飛び出したのが弥勒でなく犬夜叉なのがおもしろい。
珊瑚が手を出す暇がなかったこともあるけれど、完全にお姫様な珊瑚。
恋では勝ったが鼻では負けたか、弥勒(笑)。

とにかく小春を保護した犬夜叉たち。
そしてヤキモチ珊瑚登場。
珊瑚は弥勒が自分に子を産んでくれと言わなかったことにすねてたが、弥勒にしてみれば本気の恋だからこそ軽々しく口にできなかったのだろう。
いわゆる原作版「珊瑚目指してオンリーユー」か(苦笑)。

さて、神無に魂を奪われた小春の役割は次回明らかになるが、木の上の神無のアップ、口がとても色っぽくて好き。
神無は無である少女だが、神楽とはまた違った不思議な存在感というか色気があるように感じてしまう、そこが好き。

もうひとつ素敵?なのが小春を預かってくれる村長さん。
サツキの村や、犬夜叉たちが旅先で出会う人々のほとんどが優しく暖かい。
血で血を洗う戦国時代は、同時に人間が助けあい、慈しみ会う時代でもあったんだなあと思う。
厳しい時代であるからこその優しさか。

高橋先生の描く名もなきキャラ、特にお年寄りの暖かさがとても好きだ、いかにもお人よしな、その顔もとても好きだ。
そしてアニメでは西前さんや中島さん、田中さんが演じられた、その暖かさもとても好きだった。
次回は村人を人質に取られ、神無に苦戦する犬夜叉たちが描かれる。
 (2005年12月20日の日記) 
神無の鏡
原作少年サンデー1999年12月6日(2,3合併号)第148話「神無」

     ☆     ☆     ☆

きのうかごめのおすわりはいつまで続くのだろうと書いたところ、匿名希望さんよりメールが届いた。
「最終回まで続きますよ、きっと。」
なるほどと思いつつ爆笑してしまった。
頭を柔らかくする訓練、まだまだ必要だな、私。

さて今日のタイトル「神無の鏡」としてみたが、神無の鏡を魔鏡と思っていたが、考えてみると魔鏡とは不思議な物でもなんでもない。
鏡の背面に文字が記されており、光を受けると文字が浮かび上がるしくみはすでに説明されている。
神無の鏡はなんと呼べばいいのだろう。
人の魂に関する魔鏡と言えば、「炎の蜃気楼」にも出てた記憶がある。
松野太紀さんが出演されているのでちょこちょこ見たが、ほとんど覚えてない、もっとちゃんと見ておけばよかったな。

神無の鏡の裏がどうなっているか興味があるが、「鏡の中の夢幻城」も鏡の使い方がおもしろかった。
実は「紅蓮の蓬莱島」を見てからは、それまでの映画三作の絵がこれまで以上に気になって見ることができないでいる。
七人隊以降のCDドラマや全てのキャラソンもしっかり買ったが聞いてない、つくづく損な性格だなあと思う。
実は今、先日テレビで放映された「ハリー・ポッターと秘密の部屋」を見ながら書いているのだけれど、吹き替えの声に「あっ、駄目だ・・・。」

でもアニメ「十二国記」では塙王だった土師孝也さんのスネイプが聞けたのは収穫だった。

話を戻して小春を引き取ってくれる村が見つかったことで、犬夜叉たちは小春に別れを告げる。
朝まで待たずに夜旅立ったのは、弥勒と小春に「間違いが起きないように」、これも爆笑だった。
しかし、彼らを追ってきたのは神無に魂を奪われた村人たち。
犬夜叉たちも殺すわけにはいかず、苦戦する(あれでも十分痛いと思うけど)。

一方小春とかごめを任された珊瑚は複雑。
珊瑚は確かに強いが、心は普通の女の子。
かごめを守れ、小春を守れ、おまえががんばれ、となったら女扱いされてない気にもなるだろう。
けれどもこれはいつものこと、今回あえて珊瑚が気にするのは、やはり小春がいるからだろう。

七宝の慰めも役には立たなかったが、その優しさが嬉しい。
しかし、かごめ達にも危険は迫る。
現れた神無、かごめを羽交い絞めにする小春、飛来骨を投げる珊瑚。
しかし、神無の鏡は飛来骨を跳ね返し、珊瑚を直撃する。

妖怪と両断する飛来骨、いくら珊瑚が鍛えていても、それはないだろうと思ったが、現れたのが少女ということでためらいがあったのだと思うことにしよう。
本家本元の桔梗でさえも奪い切れなかったかごめの魂、いかに奈落(神無)と言えど、全てを奪うことができるはずがないだろうにと思ったが、考えてみれば桔梗が蘇った時(裏陶編)、奈落はそこにはいなかったんだっけ、というより奈落には関係のない、奈落の知らない事件なんだっけ。

またまた犬夜叉側に戻って、今度は神楽が登場、犬夜叉たちを挑発する。
犬夜叉たちが人間を殺せないのを知っていての挑発、いかにも憎々しいが、まだ顔が可愛いので、後期ほどの迫力はない。
犬夜叉のピンチ、かごめのピンチ、仲間と共にどう切り抜けるのか、かごめの大きな見せ場がやってくる。
 (2005年12月20日の日記) 
苦戦
原作少年サンデー1999年12月22日(4,5合併号)第149話「人間の盾」

     ☆     ☆     ☆

神楽と神無が合流すれば、犬夜叉は倒せる。
それが奈落が与えた策。
村人を盾にされ、戦えない犬夜叉と、魂を奪われて動けないかごめ。
犬夜叉の「アバズレ」発言に爆笑したが、それどころではなく珊瑚は動けず、弥勒は小春に襲われる。

今回珍しいのは、神無の驚く顔が見られること。
神無は無のキャラクタ−なので後には表情が変わることはなくなるため貴重なカット。

そしてここでもかごめの魂の大きさが強調される。
神無の鏡には入りきらないかごめの魂。

かごめの特殊性に関しては霊力、魂に関してなど幾度か出てきているが、それが何の意味を持つのはいまだ明らかにされていない。
かつて裏陶編でかごめの魂が桔梗に移り、それから陰の気を残してかごめに戻った。
かごめに意識があることに裏陶が驚いていたが、もしかしたらかごめの中には、かごめと桔梗の2人分の魂があるのかもしれないかな、と思った。
自分の魂と桔梗の魂のほとんどを持っていたら、そしてそれが巫女の魂という巨大な特殊なものであったなら、とか。

先生が明らかにされるのかどうかはわからないが。
最近「犬夜叉」は全ての辻褄を合わせて終わることはないような気がしているので、いくつかは曖昧のままなんだろうと思う。
先生の作品は10、000ピースくらいの巨大なパズル、そして完成形はない、そんな感じ(もちろん誉め言葉)。

さて、神楽は奈落が言うとおり犬夜叉が風の傷をなぜ放てたかを知る。
犬夜叉を怒らせ、周りを見えなくさせ、冷静さを失わせ、風の傷を放たせた瞬間が犬夜叉の最後、と続く。

これまで出てきたゲストキャラの中で印象的なのは晴海や無双などの特殊な力、けれど中途半端な力を持ったために殺された人々と、小春やなずなや志麻といった事件に直接関わる普通の人間。
私たちが仮に戦国時代に行ったとして、私たちが入るグループ。
なずなのように恐れながらも戦うか、小春のように利用されるか、志麻のように巻き込まれるか。
露姫や阿毘に襲われた城の奥方などもそうかもしれない。

彼らが犬夜叉たちや敵である妖怪に対してどのように相対するか、自分に置き換えてみることで興味は尽きない。
たとえばなずなの、たとえば小春の犬夜叉たちに出会う前と後の、それぞれの話のつながりを見つけてみたいと思う、いつか。
なずなは時には犬夜叉を思い出しながら強く生きているだろうか、小春も弥勒を想いながら、けれど付いて行くことはあきらめて、自分の幸せを見つけようとしているだろうか。

ところでアニメで志麻だった桑谷夏子さんが、現在夢中のゲーム「戦国BASARA」で忍びのかすがという役を演じておられる。
色っぽくて切なくて、でもやっぱり声は素っ頓狂な時がある(笑)。
アニメ「犬夜叉」に登場した声優さんに他作品で会えることは、嬉しいけど寂しい、寂しいけど嬉しい。

たとえば犬夜叉だった山口勝平さんはスカパーで乱馬に会えるし、鋼牙の松野太紀さんに会いたければ「真・三国無双4」で会える(凌統)。
「十二国記」には珊瑚の桑島法子さんが出ていらっしゃるし、冥加の緒方賢一さんには「名探偵コナン」で会える。
でもやっぱり「犬夜叉」で会いたいなあと思う。
ツアーもお守りもいいけどやっぱり映像で会いたいと思う。
 (2005年12月25日の日記) 
跳ね返された風の傷
原作少年サンデー2000年1月4日(6号)第150話「反転」

     ☆     ☆     ☆

今回のタイトル「反転」がちょっと不思議。
私の言葉のイメージだと、「反転」だと犬夜叉が意思を持って風の傷の力を「反転させている」ような気がする。
「跳ね返る」意味の「反転」もあるのかな?
辞書を引いてみたけどわからなかった。

さて、いけない神楽は鋼牙に続き、犬夜叉をいじめまくる。
神無はあまり考えずに、奈落の命令により淡々と攻撃を跳ね返しているが、神楽の嬉々とした表情。
こんな神楽を犬夜叉たちは「憎めなく」なるのだから本当にお人よし。
神楽は殺生丸に対しては最初から敵対していないのもおもしろい。

奈落が神楽に殺生丸を攻撃しろと言わなかったのが幸いしたか、神楽の恋。
まあ琥珀の時を考えても、神楽が奈落にがんじがらめにされている状態で殺生丸と戦っていたら見抜かれていたかもしれないし。
そうなったらもっと早まっていただろう、神楽の恋。
こういった部分に関しては周到に用意された神楽の恋。

もちろん今回の神楽は悪の固まり、情け容赦なく犬夜叉を罠にかける。
おもしろいのは、奈落がわざわざ神無を使って犬夜叉を仕留めようとした事。
神楽自身が言うとおり、神楽の技舞で十分止めをさせそうだった。
神無の鏡を使ったことで、かごめ復活の隙が出てしまう。

かごめの復活が話のメインだったんだと思う。
神楽の攻撃では犬夜叉は確実に死んでしまうから神無の出番とした。

それとも神楽の攻撃でも鉄砕牙が犬夜叉を守ったかな?
そうなると鉄砕牙がある限り、誰も犬夜叉を殺すことはできないということか、奈落でさえも、不死身の犬夜叉。

とにかく高橋先生は、じゃなくて奈落はここで犬夜叉を殺す気はなかったということなんだろう。
どこまでもいやらしく、どこまでも意地悪な奈落、人の心を弄ぶ奈落。

けれど現在に至るまで犬夜叉を倒しきれない奈落。
いつもにたにた笑いながら現れるけど、本当はすごく追いつめられている状態なんだろう。
奈落自身「ここまで長引く」予定じゃなかったりして・・・?

一方弥勒は犬夜叉も自分も気づかなかった神無の正体に考えをめぐらす。
珊瑚が倒れ、犬夜叉も倒れて弥勒は一人、奈落に立ち向かうが、風穴は開けない。
ここで弥勒は奈落に疑問をぶつけることになるが、それは次回の話。
おしゃべり大好きな奈落のこと、とりあえず話しかければ攻撃は中断するとの弥勒の策か。

弥勒の時間稼ぎにかごめが目覚める。
弥勒のがんばり、かごめのがんばり、そして犬夜叉が蘇る・・・、のだが、ちゃんと七宝も雲母もがんばっていることだけは書いておこう(笑)。
 (2005年12月26日の日記) 

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