海が好きだ。
でも、この「囀る貝」を初めて読んだ時、なぜか海にまつわる苦い思い出が浮かんでしまった。
大好きだった男の子や友達とみんなで海に行った夏休み。
可愛い水着を買って、ビーチサンダルやバスタオルまで新しく買って(笑)、気合を入れておしゃれした。
「好きです」ってこっそり言ってみようか、ふられたらどうしよう、そんなことばかり考えてドキドキしていた。
大好きだった男の子が友達の一人ともう付き合っていることを知ったのは、その直後だった。
泣けてくるのを見られたくなくて、海の中にざぶんと潜った。
可愛いアクセサリーつけてポニーテールにまとめた髪もあっという間にごわごわぐちゃぐちゃになり、塩で焼けた頬はひりひり痛くて、海水がしみた目は真っ赤になった。
大人になって、もっとつらい恋もしたけれど、なぜかこの時の失恋は特別な思い出になっている。
なぜこんなことを思い出したかというと、ミナが貝を拾って「波の音」を聞いてる場面に、あの日の自分を思い出したから。
潜って見つけた巻貝の殻。
持ち帰って机の上に飾って、そっと耳に当てれば波の音がした。
そのたびに泣いてたなあ(笑)。
今思えば恥ずかしくなるような、恋する自分に浮かれて傷ついた自分に酔いしれる年頃だった。
でもそれだけ純粋だったんだと、懐かしく思い出す。
そして「漆原友紀」という女性は、そんな純粋さを大人になっても失わない人なんだなあと改めて思う。
(2010年9月20日の日記)
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