「うしおととら」感想 1
うしおに燃える とらに泣く〜「うしおととら」
私がアニメで「犬夜叉」に出会った頃、原作がかなり進んでいたこともあり、いろんなサイトさんの感想を読みまくった。
その時けっこう目についたのが「うしおととら」という作品との類似点の指摘。
タイトルからしてもののけなんだろうなあ、戦国時代なのかなあとずっと気になっていた。
先日たまたま古本屋さんで見つけ、1巻を見つけて立ち読み、そのまま家に駆け戻り、アマゾンで全巻+外伝+出たばかりの「画業20周年記念全集 藤田和日郎魂」一気買いの衝動買い(笑)。

土曜日に届いたこともあり、その日は徹夜で全巻読み切った。
いや〜あんなに気持ち良く泣いたのは久しぶりだ。
1つのエピソードが終わるともう一度読み直して改めて泣いて、朝になったら目が真っ赤。
ティッシュも1箱使い切ったし。

「うしおととら」の作者は「からくりサーカス」や「月光条例」の藤田和日郎 先生。
私が「からくりサーカス」を読み始めたときはもう終盤に近かったので、話は全然わからなかったが、「生と死の狭間の描写の凄い人だなあ」と思ったことを覚えている。
特にギイ、コロンビーヌ、パンタローネの死に様は印象的だった。
その藤田先生の「うしおととら」を高橋先生が意識されてる?ってことで私の中では藤田先生=高橋先生の先輩というイメージが画集を読むまでできあがっていた。
実際は高橋先生の「闇をかけるまなざし」を読んだことがきっかけで漫画家になったのだそうだ。

いざ「うしおととら」を読んでみて最初に思ったことは、「犬夜叉ととらの座り方が似てる」ってことだった(笑)。
まあ片方は犬だしもう片方は虎だし、当然なのだけど。
ただ真似というよりも意識して似たような設定にしたのは間違いないと思う。
画集で高橋先生も「うしおととら」を当時好きだったことを書かれてるし。

似ていることは承知の上で「犬夜叉」をあえて「うしおととら」にはほとんど見られないメロドラマ路線に(私は「犬夜叉」の「恋+愛=恋愛」部分はラブストーリー40%、メロドラマ60%だと思っているので)仕立て上げたのだと思う。
そういえば「境界のRINNE」で黄泉の羽織を着たりんねは普通の人には見えないことが強調されるが、「うしおととら」でも同様に「とらは普通の人には見えない」ことが同じパターンで何度も出ていた。
これなども藤田先生承知の上で遊んでるんだろう。

そんなことより度肝を抜かれたのが「うしおととら」が藤田先生のデビュー作だってこと。
あの難解にして壮大なストーリー、最後に集結する人々と見事に完結する伏線、暑くて熱くて、でも読む者を引き込まずにはいられないまっすぐな視線と燃え上がるパワー、魅力的な脇役。
何よりもとらの可愛さ愛らしさに私は夢中になってしまったのだった(笑)。

主人公は蒼月潮、潮と互いに好きなのに素直になれず、喧嘩ばかりのヒロインは中村麻子。
曲がったことの大嫌いな似た者同士のこの2人もとってもいいけど、私が大好きなのは麻子の親友井上真由子ととら、そしてこの2人?の絆。
久しぶりに感想を書きたいなあと私の気持ちも燃え上がった作品。
「犬夜叉」好きには特にお勧めかも。

さてこの「うしおととら」、OVAで10話のみアニメ化されたという。
残念ながらTUTAYAにもなくてがっかりしてたら、本当に偶然なのだけど、8月に「キッズステーション」で放映される。
(8日土曜日の夜中の12時から2時までまず4話、15日の12時から2時まで残りの4話、あと2話は来月?)
これはとっても嬉しいかも。

ところでこの「うしおととら」には「雲外鏡」が登場する。
とらにいじめられていつも涙目の可愛いじいちゃんだが、「雲外鏡」、先日「境界のRINNE」にも登場していた。
他にも京極夏彦著「百器徒然袋―風」のタイトルもそのものずばりの「雲外鏡」、畠中恵著しゃばけシリーズ「おまけのこ」より「動く影」にも出てくる。
こういった「もののけ」ごとにどんな作品に登場しているか、調べてみるのもおもしろいかも、とふと思った。

話がそれたが500年間封印されていたとらは、以前は長飛丸と呼ばれ、人を好んで喰らう恐るべき化け物とされていた。
でも人間から見て恐怖の対象だったはずのとらが意外と常識人(虎)だったりと、「犬夜叉」のもののけ感と繫がる部分もあるのがおもしろい。
たとえばライオンがシマウマを襲う時、いちいち同情したりしないだろうし、もしもシマウマに人間のような意識があったらライオンは「凶悪にして非情な、シマウマを好んで喰らう化け物」として名を残かもしれない。
けれどライオンにとっては普通のことだ。
そういったとらの性格がギャグの部分も真由子への想いも含めて、とても興味深いと思う。
でもその前にまずは大泣きしてしまうけど(笑)。
(2009年8月2日の日記)
真由子がわらう とら吼える〜アニメ「うしおととら」
「うしおととら」に夢中になって間もなくスカパーでアニメ「うしおととら」が放送されたが、待ちきれずに海外版のDVD(安かった)を買ってしまった。
アニメは10話しか作られてなくて、OVAとして発売されたらしい(もったいない・・・)。

まずはOPがかっこいい。
私は少年物、アクション物はおしゃれな曲より元気な曲が好きなので、まずはこれに引き込まれた。
なのにタイトルが「勇気のファイター」・・・。
原作読んでても感じたけど、なんか古臭さがあるんだよなあ。
登場キャラの服とか用語とか。

「犬夜叉」以前の連載ってことだけど、いつ頃だったんだろうって思って調べてみたら、なんと1990年(平成2年)から1996年(平成8年)だった。
なるほど、1996年45号で「うしおととら」が終わって、同じく1996年50号で「犬夜叉」が始まったのなら、両作品の相似性が指摘されるのも無理はないか。
というよりあえて「犬夜叉」で新連載に挑んだ高橋先生の決断こそ凄いと思う。
基本は似ていても別物になるという確固たる自信があったんだろうなあと思う。

さて本編が始まって、主人公蒼月潮の声は佐々木望(のぞむ)さん。
どっかで聞いたことある名前だと思ったら「犬夜叉」の山椒魚妖怪編に登場する「篠助」だった。
私は男の子の声は大人の女性が演じるのに慣れてるせいか、佐々木さんの声だと少年というより大人、青年に感じてしまった。

さらに2人のヒロイン、麻子と真由子、「なんだ?このぺちゃぺちゃした声と喋り方は!」ってこれもまたショック。
特に麻子はもっと凛々しい感じたと思ってたので。

でもでも一番ショックだったのがとら!
大御所中の大御所、大塚周夫さん。
確かにとらは2千年も生きてる大妖怪だし、自分のこと「わし」と言ってるおじいちゃんなんだけど、実際おじいちゃん声で喋られちゃうと凄い違和感。
アニメ化されなかったけど大好きな「愚か者は宴に集う」での真由子との婚礼(擬似だけど)が還暦のお祝いに見えてきたじゃないかあとすでに涙目。

でも声の違和感はすぐに消えて、特に大塚さんの声の迫力はいかにも「炎と雷の化生」らしく圧巻だった。
その大塚さんは「ゲゲゲの鬼太郎」のねずみ男で有名な声優さん、Wikipediaで息子の大塚明夫さんが小学生の頃「小ねずみ男」と呼ばれたというエピソードを読んで申し訳ないが笑ってしまった。

さてアニメ「うしおととら」だけど、OVAだからなのかアクションの迫力と質の高さは予想以上だった。
声の違和感もすぐに慣れ、10話で終わってしまったのが本当にもったいない。
しかも10話の中にオリジナルが入ってたり、ちびキャラの番外編が作られており、そんなの作るんだったら原作を増やして欲しかったとつくづく思う。
お馴染み声優さんも多数登場で、こちらも是非1話ごとの感想を書いてみたい。
(2009年9月14日の日記)
うしおとらとであうの縁
「妖怪」と書いて「ばけもの」と読む。
「ようかい」でも「もののけ」でも「あやかし」でもない、「ばけもの」と読ませるところがおもしろいなあと思った。
妖怪を化け物と読ませる物語、化け物と絡ませて1人の少年の成長を描くのか、どう描くのか、「犬夜叉」とはどこが似ていてどこが違うのか、期待は大きかった。
また、少年うしお(潮)と妖怪とらのネーミング「うしおととら」には「うしとら(丑寅)」の意味もあるのだろう。
そういった限りなく和的な雰囲気も全編に散りばめられているのか、それも楽しみだった。

けれど第1話を読んでそんな理屈や先入観はどこかに吹っ飛んでしまった。
まずとらが可愛い(笑)。
耳が可愛い、とかそんなことじゃなく、キャラクターが可愛い。
最初は恐ろしい妖怪として登場し、潮にたいしても上から目線でいかにも年を経た大妖怪の貫禄がある。

ところが獣の槍を手にした潮に喧嘩売る間抜けさ加減といい思いっきりギャグ漫画な表情の豊かさといい、潮に追われる逃げっぷりといい潮の命令に「はいっ。」と敬語で答えるところといい。
そして何より潮から逃げる時の足が可愛かった。
最終話まで通じてとらの足ばかり見てても十分楽しめるほどとらの足は可愛い、これは断言できる。

とらの耳も先日発売された画集「魂」で月光に突っ込まれていたが、だんだん髪に隠れて見えなくなり、やがて思い出したように時折出るだけになる。
最後の方は全く出てこなかったが、たしかに耳はないほうがいい。
そんなことより貫禄十分な大妖怪として出てきたはずが、1話の時点でもう潮と対等というか同い年の少年に見えてくるから不思議。
それだけにアニメで思いっきりおじいちゃん声で出てきた時の違和感は凄かった。

それとおもしろいのがとらを封印した侍もおじいちゃんぽいところ。
第二章の礼子編では、もう外伝に登場する蒼月家の先祖草太郎っぽい青年に代わっている。

もうひとつは真由子。
私はうしおととらだけでも100%大好きだが、真由子のキャラと運命、そしてとらとの絆があるから「うしおととら」を200%好きになった。
けれど第1話で「ハーイ。」と来るところなど、まだイメージが固まってないのかな?それとも最初は真由子はただのクラスメート設定だったのかな?とかいろいろ考えてしまう。
連載当時を知らないっていうのはこういう情報が入ってこないって物足りなさはあるな。
当時はインターネットでホームページ(ファンサイト)って時代じゃなかったろうし。

ともあれうしおはとらに出会い、2人は時には敵として、時には仲間として暮らすことになる。
古本屋で1巻を立ち読みし、そこでは全巻揃ってなかったので家に駆け戻り、アマゾンで全巻購入、徹夜で読んだ「うしおととら」。
1巻でこれほど夢中になった漫画はほんと「犬夜叉」以来だ。
そして前回も書いたけど、「犬夜叉」と「うしおととら」は確かに似てる。

根っこは同じでも違う方向に伸びていく2本の枝のように、そして全く違う色の花と違う実をつけるように。
漫画家高橋留美子という存在がいたから藤田和日郎という漫画家が生まれ、漫画家藤田和日郎が「うしおととら」を描いたから漫画家高橋留美子が「犬夜叉」を生み出した。
なんて素敵な絆だろう。
うしおととらが好きだ、とらと真由子はもっと好きだ。

第2話では真由子のイメージも固まり、うしおととらは衝撃のテレビデビュー(笑)を果たす。
(2009年10月27日の日記)
石喰い
とらがテレビに映っていた時代劇の侍を本物と勘違いして襲いかかり、テレビを壊してしまう場面から始まる「石喰い」の章。
初登場時の怖さ迫力はどこへやら、このおとぼけぶりがその後もとらの大きな魅力になっていく。

とらを連れ?獣の槍を持って登校するうしおを迎えるのは前日とらの呼び込んだ妖怪たちに襲われた麻子と真由子。
この後飛頭蛮編でとらは真由子に一目惚れ?するのだが、とらはこの時点でもう真由子と出会っているのがおもしろい。
ただ会っただけじゃなく、うしおを含めた3人の微妙な恋模様まで感じ取っているくらいだから印象は強かったと思うのだが。
まだおなかすいてなかったのかな?

今回登場する石喰いは百年生きたムカデの変化で、とらに比べたら生まれたての赤ちゃんみたいなもんだけど、今回は馬鹿にする余裕もなく、うしお、麻子、真由子共々大ピンチになる。
ムカデ妖怪への対処法として、槍に唾をつけてムカデの目を刺すように教えるとら。
元となる話があるのを先日偶然知った。

新橋にある烏森神社。
造営したのは平将門を討ち取ったで有名な藤原秀郷(俵藤太)。
近江の国で竜神の娘に三上山の大百足退治を頼まれた藤原秀郷は矢に唾をつけ、大百足を討ち取った。
百足退治のお礼に将門の弱点を教えてもらい、将門も討ち取ることができたのだとある。
ただ、なぜ百足は唾が苦手なのか、藤原秀郷はなぜそのことを知っていたのかはわからない。
また、石喰いの出展らしき絵も掲載されているが、これも元本はあるのだろうか。

こうしてうしおととらは無事に石喰いを倒すが、おもしろいのがこの事件がうやむやにならず、社会問題として公開されたこと。
映像も撮られてテレビで放映され、それがまた物語に影響を与えていくなど、「妖怪」が隠される存在ではない作品だとわかる。
他には真由子が1話とは大きく変わり、いかにも真由子らしいキャラになっている。

最初の戦いですでに身を捨てて麻子や真由子を守ろうとするうしおの姿に、それと気づかず共感を覚えるとら。
戦いを放棄して逃げるような、あるいは弱音を吐いて喰われるような人間だったら、獣の槍の所有者にもなれなかったろうが、それ以前にとらに認められる存在にもなれなかっただろう。
うしおだから、とらだから、その性格が1巻にしてすでに確立されている。
うしおの言葉を思い出してがんばる麻子の姿も印象的だった。

今回のお気に入り。
・下手な絵を指摘されて激怒するうしおの後で「ほ・・・ほんとだな」のとら。
・麻子の植木鉢投げに「あんた なかなかやるね」と感心するとら。
・「はは ブシはくわねどたかようじだってよ!」と情報収集に余念のないとら。
・石化した麻子と真由子を武器に暴れ回るとら(壊れたらどうする!)。
・結界を身体で支えようとするとらのかっこ。
・最終ページ、テレビに映る自分の姿に大騒ぎのとら。
(2009年12月7日の日記)
絵に棲む鬼 1
後に光覇明宗最強クラスの法力僧であることが判明するうしおの父紫暮だが、ここではわざととぼけてるわけでもないのに、すぐそばにいるとらの存在に気付いてないのがおもしろい。
しかもその後うしおが持ってるのが獣の槍だと気づいたらしいのにギャグキャラのまんま。
とらに関してもしばらくの間気づかない、というより関心のない様子を見せていた。
うしおの知らないところで互いに意識し合っていたことが後でわかるが、紫暮が紫暮らしくなるのはかなり先となる。

今回は画家羽生道雄が描いた「礼子像」という絵を巡って物語が展開するが、先日本を読んでいたら偶然「麗子像」という文字に気がついた。
描いたのは岸田劉生という画家で、「国立美術館のホームページ」によると、愛娘をモデルにした一連の「麗子像」が有名なのだそうだ。
その絵を見てびっくり、前に見たことある!鑑定団かなんかで(笑)。

画家の名前も何となく似てるし(羽生と劉生って名字と名前の違いはあるけど)、問題の礼子像以前に描かれた絵に似た雰囲気の絵がある。
うしおも「一人娘の『礼子像』のシリーズ」と礼子像が何枚もあると言っているので、羽生道雄が岸田劉生をモデルとして生み出されたキャラなことはまず間違いないだろう。

うしおが敬愛する羽生画伯は愛する妻と娘に囲まれて幸せな生活をしていたが、後に弟子と妻に裏切られ、精神に異常をきたす。
その狂気は娘礼子に対する溺愛という形で現れたが、最後の「礼子像」を完成させた後死んでしまう。
その作品展にやって来たのがうしおと麻子、真由子にとら。
とらだけが「礼子像」の絵に込められた憎悪、そして呪いを見抜くのだった。

ところがその礼子が実は麻子と1年生の時の同級生だったことから、うしおは礼子と関わりを持つようになる。
確かに「死にたがりの礼子」と呼ばれる少女は不思議な雰囲気を持っていて、明るく元気な麻子とは好対照をなしていた。
礼子をモデルにしたくて追いかけまわすうしおだが、礼子の背後に隠れた異形の存在に気付く。

うしおが麻子の家に話を聞きに来た時の麻子の反応が可愛い。
うしおが礼子に興味を示すのは、本当にモデルになって欲しいだけなのか、それともそれ以上の感情があるのか気にする麻子。
でもうしおはそんな乙女心が全然理解できず、全然関係のないところで必死。
ほっとしたような、あきれたような顔の麻子。

麻子や礼子の幼馴染、間崎の話や自身の体験からうしおは礼子に鬼となった礼子の父羽生道雄が憑いていることを知る。
不幸な礼子に積極的に関わろうとするうしお、ようやく心を許し始める礼子だったが、そんなうしおも遂に鬼となった画伯に襲われた。
ここまでがコミック1巻の内容。

注目すべきは、500年前にとらを封印した侍が、老人から草太郎(外伝に登場する蒼月家の先祖)に近いイメージになって再登場すること。
もうひとつは1話で「ハーイ。」なんて出て来た真由子がここではうしおの名前を呼び捨てにすること。
まだ性格設定が固まってないのかな?と思わせる。

でも何より注目すべきは、麻子とうしおが屋上で話をしている時に、スピーカーを見つけて取ってくるとら。
「五百年もたつと木にも変なもんなってんな〜」ととらは大興奮だが、最終33巻の裏表紙もスピーカー持ったとらとうしおが喧嘩している場面になっている。
とら亡き後この裏表紙で喧嘩するほど仲がいい2人の毎日を思い出して泣いてしまい、1巻からまた読んで、スピーカー取ってくるとらの場面で涙した。
2000年も生きてきて、でもこの子供のような瑞々しい好奇心や純粋さを持ち続けているとら。
老妖としての自信や貫禄とは別にこういった感性を持ち続けているからこそ草太郎にあえて封印され、うしおと出会い、共に戦うとらでいれるのだろう。

★ここまでのお気に入り。
・絵の果物にかぶりついているいるとら。
・2度のうしおと間崎の喧嘩に大喜びのとら。
・うしおに親切に忠告したのにこぶ作られたとら。
・こけしに興味を持ってはたかれてるとら。
・うしおにかじりついて顎はずしたとら。
・そしてやっぱりスピーカー見つけて張り切って取ってきてうしおに報告、はたかれるとら。
(2009年12月26日の日記)
絵に棲む鬼 2
もう何度も何度も何度も何度も一気読みしてるので、さすがにエピソードの好みにも凹凸が出てきたが、「石喰い」と「とら街へゆく」に挟まれて、ちょっと印象が薄くなってしまったのが、この「絵に棲む鬼」の後半部分。
ただこのエピソードの羽生礼子と間崎賢一はこの後も何度も登場し、特に礼子は潮に関わる重要なキャラとなる。
これって礼子が潮と同じ学校であることからと思っていたが、後に「潮ととら」に何らかの形で関わった者たちが、白面の者との最終決戦に向けて集結していくことが明かされる。

ただの通りすがりではない潮やとらとの関わりの深さ、さらに彼らが特別な能力もなく、普通の生活を送る人々であることが強い印象を残す。
その中でも礼子の強さや一風変わった性格は麻子や真由子とは違った意味でとても好きだ。

さらに死んでなお鬼と化し、礼子に関わる者を襲い続けた父でさえも、最終決戦に帰って来る、この大きな感動。
ありきたりのようでありきたりでないストーリー設定と、その泥臭さ、汗の匂い、そんな勢い(藤田先生は怒りと表現)が凄まじく汚い(これも藤田先生弁、失礼!)けれど迫力のある絵によって表現される。

★うしおととらのお気に入り台詞
・「ともだちもよろこびも・・・笑いガオもとったら・・・女の子にゃ骨だけしか残らねえじゃないか!!」byうしお
・「知ってるかい・・・?人間にゃ『潮時』ってコトバが、あるんだってな・・・・・・
  今がそいつよ!」 byとら

少年漫画の台詞って、絵なしでそれだけ抜き出すと、ものすごく恥ずかしい気がすることが多い・・・。
って「うしおととら」だけか?
(2010年2月4日の日記)
とら街へゆく
井上真由子、元気で明るい中村麻子に比べておとなしくて控え目、典型的なヒロインの友達キャラ。
潮にひそかな恋心を抱いているが、親友麻子がやはり潮に恋しているのを知っていて、自分の気持ちを抑え込んでいる。
(実際潮も異性として惹かれているのは麻子の方)。
私が男の子だったら真由子を好きになるだろうなあ、などと思いながら読んでいたのだが、真由子もまた不思議な運命に翻弄されるもう一人のヒロインだった。

後に出てくる(今回は写真と回想シーンのみ)日崎御角の子孫で、後に4代目の「お役目様」であることが明らかになるのだが、今回大切なのはとらとの関わり。
前にも書いたが、とらはすでに真由子と出会っており、その恋心まで見抜いていたのも関わらず、それ以上の関心は持っていなかった。
けれどおなかがすいた状態で出会った真由子はまさに理想のご飯!
その描写はとらの一目惚れにしか見えないが(笑)。

とらにとって現代人の香り(香水など)や金属(アクセサリー)は苦手なもの。
真由子はアクセサリーなど全く興味がないように描かれているが、これは後の重要な伏線となる。
その真由子、しかもその体は

「金気のものは身につけとらん。
 やわらかそうなからだ・・・・・・
 ニオイだってキレイなニオイしかしなかった・・・・・・
 食べやすそうな足・・・・・・」

だそうだ(byとら)。
しかしその真由子が日崎御角が封じた飛頭蛮に狙われたことから、とらは真由子救出のヒーローとなる。

ここでちょっと整理したいのが、飛頭蛮が封印されていた加神町と不知坂。
検索してみたら加神町はあったが、大阪府貝塚市で、これはあまり関係なさそうだが、不知坂は千葉県市川市に不知八幡森(しらずやわたのもり)が気になる。
Wikipediaを見ても、神隠し伝説など何やらもののけ風な雰囲気を醸し出しているし。
潮や真由子たちがどこに住んでいるかわからないが、買い物に市川に行くような環境だったらちょっとおもしろい。

もうひとつは飛頭蛮。
妖怪好きには有名な妖怪で、日本のろくろ首は首が伸びるだけ比較的おとなしいが、大陸産の飛頭蛮は首だけが空を飛んで悪さをするという。
前述の不知八幡森には平将門伝説も残っており(首があったとか)、そのことから首飛び妖怪飛頭蛮につながったのかな?なんて思ってみた。
この飛頭蛮、アニメではゲーム「真・三國無双」シリーズの曹操岸野幸正さんや「名探偵コナン」の毛利蘭の山崎和佳奈さんが声を担当していて、なぜか笑ってしまった。
ちなみに山崎さんは飛頭蛮を封印した側の日崎御角も担当している。

声と言えば今回は出て来ないが、中村麻子の父親中村米次の声は先日亡くなった郷里大輔さんだった。
やはりゲーム「戦国無双」シリーズの可愛いおじいちゃん武田信玄と共に忘れられないキャラとなった。

さて、真由子を「自分が食べるために」飛頭蛮の手から守ろうとするとら。
デパートから落ちてしまう真由子を助けた時、真由子の頭をかばっているのが泣ける。
人間の弱点を知り尽くしているとらならではの行動だが、こんなところがいいんだよなあ。

潮も駆けつけ、飛頭蛮は無事退治された。
誤解から喧嘩になった潮ととらだったが、仲介したのが真由子。
おなかがすいたとらにハンバーガーをあげる。
笑顔がいいなあ、この子は。

最終ページ、ハンバーガーを食べてるとらと見て微笑んでいる真由子にこの2人が大好きになった。
もう一人、目立たないが普通の人間でありながら、飛頭蛮退治のために必死になる老人が印象的だった。

「・・・・・・それにしても、あれが潮くんのいってた危険な妖怪か・・・・・・
 でも・・・とてもそうはみえないねえ・・・」

街に出たとらがガムと戯れ車と戯れる場面があるが、後で出てくる一鬼編よりも車社会への皮肉が痛烈に現れていたように思う。

★今回のお気に入り
・ガムと戯れるとら
・真由子に一目惚れのとら
・落ちる真由子を助け上げるとら
・ハンバーガー=半分蛾
・ハンバーガを食べてるとらと見守る真由子
(2010年2月27日の日記)
符咒師 鏢
石喰いと戦ううしおととらの映像が香港でも放映され、それを見た1人の符咒師が来日する。
彼の名は鏢。
15年前にとらによく似た妖怪に妻子を殺され、自らも重傷を負うが、復讐の念に燃えて符咒師としての修行を積んだ男。
とらを敵と誤解しての来日だった。

「符咒師」というのがよくわからなかったが、戦いぶりを見ていると、札を使い、結界を張り、呪文を唱えるなど、日本で言うところの陰陽師の意味合いが強いように思える。
さらに「鏢」を駆使してとらと互角に戦うなど、戦闘能力も高い。
誤解は解けるものの、最後までとらの天敵として、うしおをサポートしながら物語に関わり続けることになる。

鏢の登場がうしおととらの関係をある種変化させた。
協力しながら妖怪と戦うことで互いに認め合い始めたうしおととらだが、とらの根底にはまだうしおに対する殺意がある。
うしおはすでにとらを信じ切っているようなふしがあり、それだけに寝込みを襲われ、傷つけられた時の怒りは凄まじかった。
とらに「裏切られた」うしおは鏢の誤解を解くことなく、鏢ととらを戦わせてしまう。

そんな自分に対する嫌悪感から落ち込むうしおに気づいたのは麻子。
麻子の励ましで元気付いたうしおはとらと鏢の仲裁に向かう。
とらを命を懸けて救おうとするうしおの姿に、とらも遂にうしおを仲間として認め始める。

うしおよりハンバーガーの方がうまいと去っていくとらの姿が印象的なエピソード。
そして何よりうしおと麻子の絆が印象深い。
不器用な似た者同士、けれど確かに心は通じ合っている。
残念だけど、そこに真由子の入る余地はない。
でもいいんだ、真由子にはとらがいるから(笑)、そんなほんわか気分にさせてくれる終わり方だった。
とらはきっと真由子にハンバーガーを買ってもらいに行ったんだろうな・・・。

今回のお気に入り。
・にうすにうすと大騒ぎのとら。
・とらとうしをの喧嘩をハンバーガーを抱えて楽しそうに見ている真由子。
・空港で鏢に絡むも「おう、オレがふいといてやるぜっ!!」のおじさん。
・うしおが持ってきたお礼のスイカをぽんっと叩く嬉しそうな麻子。
(2010年3月28日の日記)
あやかしの海
とらと麻子の出会いの巻。
でも麻子は結局とらが潮と関係あることを知らずに終わる。
この展開がおもしろい。

冒頭から素直になれない潮と麻子の間を取り持つ真由子が好もしい。
真由子がいなければ、この2人は一生このまんまでつかず離れずで終わってしまいそうな気がする。
その真由子が実は潮が好きってところがほんと泣かせる。

けれど潮ととらが行った先で何事も起こらないはずはなく、巨大海蛇みたいな「あやかし」との対決が待ち受けていた。
しかもあやかしの中に呑み込まれてしまったのが麻子、そして海で出会った少年タツヤ。
かつての潮同様幼くして母を失った悲しみに耐えられずにいる少年だった。
麻子からのSOSを受け、単身助けに行く潮。

一方久しぶりの海でくつろぐとらには「海座頭」が、やはりあやかし退治の助けを求める。
強敵の出現に燃えるとらだが、実際に出会ってみると、その巨大さに歯が立たない。
というよりとらが笑っちゃうほど小さい(笑)。

海座頭に潮に助けを求めさせ、あやかしの体内に入ったとらが麻子たちを見つける。
ここで麻子を「あざら女」と言っているがこれがわからない、あざらし女?。
検索かけたら以前少年サンデーで連載していた作画田村光久、原案協力(「うしおととら」藤田和日郎「妖逆門」に登場していた妖怪なようだ。
私は読んでなかったので結局どんな妖怪なのかはわからずじまい、オリジナルなのかな?

もちろんとらもすぐに相手が麻子であることに気づく。
妖怪たちに襲われる麻子を助けるが、怖がられて物をぶつけられるとらが可愛い。
しかしあやかしの体内結界によってピンチに陥る麻子ととら、タツヤ。
危機一髪で飛び込んできたのが潮。

ここで一件落着といかないのが「うしおととら」のすごいところで、この後わずかの間だがタツヤが主役となって、結果的に大きく成長し、母の死を乗り越える。
あやかしを退治し、脱出した潮ととらが見たのは、あやかしが縛り付けていた海で死んだ人たちの無数の魂。
結局あやかしに関してはうやむやなまま終わるが、潮には大きな疑問が残された。
「蒼月潮」の名を聞いて激怒した海座頭、しかもその恨みは潮の母に向けられたものだという。
この後、潮は母にまつわる謎と深く関わっていくことになる。

今回のお気に入り。
・真由子の頭の上にのっかってるとら。
・麻子にとらの話をするかどうかでふざける真由子、このカットは後で重要な場面で再登場する。
・「ヤツ(潮)はわしのことを『とら』とよぶ・・・」
・とらにいろんな物をぶつける麻子と困り顔のとら。
・潮のこと(タツヤ同様母がいなかった)をタツヤに語る麻子と黙って聞いているとら。
・「とら・・・そろそろおいとましようかねえ。」
 「ああ同感だなあ・・・・・・」潮ととらの掛け合い。
・潮の涙と、困惑顔のとら。
・潮と喧嘩しながらも助けに来たのが潮なことを確信する麻子。
・母の死を乗り越えたタツヤの笑顔。
(2010年4月27日の日記)
伝承
第六章に入り、物語は大きく進展する。
これまで潮の周りで起きる事件のみだった展開から、「光覇明宗」という新たな組織と新たな人物が登場する。
こういった作品の場合、新たな組織の出現により物語のスケールが大きくなると、同時におもしろさを失う場合も意外に多い。

「うしおととら」に関しては、「お役目様」以外の僧たちが、僧としての実力はともかくとして性格が今ひとつの者ばかりで、いまいち先が読めないなあと感じた。
でもそれを押し切ってしまったのが遂に見せた紫暮の本性と、とらとの凄絶な闘い。
殺し合いではなく互いを図る戦いにおいて、とらと紫暮は互いを認め合う。

不思議なのは、ここに至るまで、紫暮はとらをほったらかしにしていたこと。
潮が獣の槍を抜いた=とらが解放されたことを知りながら、光覇明宗に報告するでもなく、とらに接触しようともしない。
その間に、潮は石喰い、鬼、飛頭蛮、海蛇と4度も妖怪との死闘に巻き込まれている。
潮が死んだと思っていた母が生きていることを知って、紫暮を問い詰め、紫暮が動き始めるのは実はここから。

最初の頃に獣の槍と封じられた妖怪に関してあれほど潮に語っていた父親の態度にはとても見えない。
かといって、とらがどんな存在か見守っているような描写もないし(本当はあったのだろうが)、一言で言うと「関心なし」と思える状態だった。
このあたりが藤田先生のデビュー作の荒削りな部分だろうか。
けれど物語そのもののおもしろさと勢いにより、そんな矛盾は些細なこととして切り捨ててしまえるほど「うしおととら」には魅力を感じた。

光覇明宗との死闘を終えた潮ととらは、母の謎に迫るべく、旅に出ることとなる。

今回のお気に入り
・紫暮がかわした獣の槍がとらを直撃「できょん」。
・窓に引っかかった獣の槍に潮ととらが激突「ガンッ」
・「とら、石(墓)の上にのるんじゃねえ・・・オレの頭にのってていいからよ。」
・「息子が無能にして妖怪が邪悪なら、その始末はわたしがつけましょう。」
・カップめんを巡る潮ととらのやり取りに紫暮までが加わって「いきなり帰ってきてやかましいコトこの上もないな・・・・・・」byとら。
・とらと僧の戦いで「人間を殺さない」約束を守ったとらが僧たちを殴る時の効果音「ぱぐ」「「ゴキン」「パキ」、特に「ぱぐ」が可愛い(笑)。
・母さんはな、きれーな人だったぞ!」潮の眉毛はお母さん似でした・・・。
(2010年5月25日の日記)

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