「うしおととら」感想 2
ヤツは空にいる
これまでとことん和風で通してきた「うしおととら」だが、今回はうしおととらが飛行機に乗っての初めての空の旅ということで、1話ごとのタイトルも「タキシング」「テイク オフ」といったカタカナの航空用語になっている。
そんなことより印象強いのは、気持ち悪いのに、つぶらな瞳が愛らしい衾と、初めての飛行機に舞い上がるうしおととら、そして今回のヒロイン勇の髪型!
確かに今から20年くらい前の作品で、全体的にキャラの服装や髪型が古臭いのは仕方がないが、それにしてもすごい。

それでも今回限りのゲストヒロインだからまあいいかと思っていたら、この後重要な役で再登場。
潮に関わる5人の少女の一人だが、そこでもなんとなく浮いているのが気になった。

さてこの勇が、父を殺す直接の原因になったと信じる厚沢と空港に来ることからうしおととらに出会う。
ところが彼らの乗った飛行機が衾に襲われ、勇は厚沢の言葉(勇の父親の飛行機が妖怪に襲われた)が本当であることを知る。
パイロットも殺され、負傷した厚沢が操縦するもうまくいかず、飛行機は墜落の危機に陥る。

そこで活躍するのがとら。
不思議なことにとらは依然衾と戦ったことがあるらしい。
とらが生きていたのは飛行機もない時代だから、衾ももう少し地上の近くにいただろうが、それにしても空に住む妖怪ととらがどんな出会いをしたのかとっても気になる。
ただしとらが衾についてそれ以上語ることはなく、ただ弱点が大量の炎とお歯黒と言うことから、潮は衾退治のヒントを得る。

さっきも書いたが、この衾が気持ち悪いのに可愛らしい(笑)。
その後何巻だったかキャラ人気投票の結果が載っていて、衾が結構上位に食い込んでいたのには笑ってしまった。
誰が見ても可愛い奴は可愛いのだ。
いかにも粘着質なこの体も何で出来ているのか、とっても気になる。

自衛隊まで巻き込んで、うしおととらは衾の撃退成功。
厚沢を憎んでいた勇の誤解も解け、潮と共に戦ってひとつ成長した勇はうしおととらに別れを告げる。
この後、勇ばかりか厚沢まで重要な役で再登場。
ただ去っていくだけの人物が一人もいない「うしおととら」の世界は、これまで見たことのない形で、作者のストーリーテラーとしての力量をうかがわせるに十分だが、今回は飛行機を支えて着陸させるとらの愉快な頑張りに笑っておしまいとなる。

今回のお気に入り。
・初めての空港に舞い上がるうしおととら、中でも立ち席はないと言われてカウンターに座る潮と窓ガラスに激突のとら。ついでに鼻を押さえて引きずられるとら。
・飛行機離陸時きゅううんと飛んでくとら、飛行機が空を飛んでることにパニックになるとら。
・厚沢が窓から覗いて見てしまった衾のアップ(可愛い)。
・「乗りものがおちたら飛べばいーだろが!」「人間は飛べんのだ、バカタレ!」飛行機の中をドタドタ走り回るうしおととら。 ・「わたし・・・だって泣いてる・・・ばかりじゃ・・・いやだ!」勇が強くなる瞬間。
・「でも人間は空飛べんのだろ?おちたら死ぬぜ!」とら当然の疑問。
・飛行機を支えてがんばったのに、姿を見られたことでうしおと喧嘩になるとら。
(2010年6月28日の日記)
法力外道
「うしおととら」には悪役も多く登場するが、本当に嫌いになるような悪役はいない。
けれどこの「法力外道」凶羅だけはずっと嫌いだった。
勝負がついた戦闘でもとどめを刺さず、なぶり殺しを楽しむ。
全く関わりのない人々を容赦なく傷つける。

なんらかの苦い過去があることは容易に想像できたが、それでも好きになれなかった。
その最後に涙することになるとは「法力外道」を読んだ時には夢にも思わぬことだった。

北海道に向けて飛行機に乗ったものの、衾との戦闘でやむなく仙台に降りた潮ととら。
一方紫暮に徹底的にやられた光覇明宗・総本山ではなんとも見苦しい展開に。
「お役目様」と和羅はともかく、四師僧やその他の僧たちはまさに「浅薄」。

まあ光覇明宗は、潮ととらが直接関わるようになってからもっと本格的に描かれるので今回は置いといて、仙台での潮ととら。
中学生の一人旅、ホテルに泊まるもままならなくて、野宿を決意の潮ととらだが、お店での騒ぎがまたおかしい。
飛行機を持ち上げて疲れ果ててるとらは、気を抜くとつい姿を鏡に映してしまう。
ってその前に、姿を消せる妖力を持ってる方が不思議だが。

けれど凶羅を前に2人の漫才も終了。
えげつない凶羅の攻撃の前に苦戦する潮をとら。
でもここでの苦戦で潮は獣の槍を操るこつを習得する。

「殺人者になんてなりたかねーや」
限りなく常識的な潮の言葉が凶羅の毒を流してくれた。

★今回のお気に入り
・仙台で潮の頭の上に乗っかってるとら(コミック22ページから24ページにかけて)
・スポーツ用品店でぴゅうと伸びる機械(なんだろ?これ)を引っ張ってから鉄アレイを足に落とし、店から飛び出すとら。
・「ああ・・・でもくやしいなあ・・・
一発くらい・・・とらの分くらいなぐってやりた・・・」潮の想いが獣の槍を動かす。
・「気持ちはわかるけど待てよ」の言葉と共に「ガキン」「ぴゅう」のとら(笑)。
・全てが終わり、やっと休息、でも潮の足がとらの上でげそっとなってる?とら。
(2010年7月23日の日記)
風狂い
「風狂い」、まずタイトルに惹かれた。
次に登場妖怪「鎌鼬」に惹かれた。
そして鎌鼬三兄弟、温厚な長男雷信、純粋な次男十郎、そしてひたむきな妹かがり、に惹かれた。

自然を壊され、住む地を失い、人間への恨みに狂った疾風の妖怪鎌鼬の凶行に、潮は「オレを殺せ!」と叫ぶ。
オレもおまえの嫌いな人間だと。

もしこの本を読んでいたのが潮世代の私だったら、気持ちは潮に同調していただろう。
けれど今この年齢の私の気持ちはむしろとらに近い。
「仲間の人間がこいつらからすみ家をとったからって、おめーがなんでこいつに刺されてやる必要があるんだよ!?
おめえのやり方はまちがってるぜ。」

全くその通り、と思う。
同時に潮の純粋さを失い、とらの常識を身につけた自分がちょっと寂しかったりする。
「うしおととら」は間違いなく潮世代で読むべき作品だ。
リアルタイムで読んだ読者が本当にうらやましい。

潮にも自分の理屈が合わないことはわかっていた。
潮は追い詰められた鎌鼬兄弟のために泣く。
「わるかったなあ つらかったろうなあ。」

このエピソードを自然破壊への警鐘、自然保護へのメッセージと括ることは簡単だけど、そんなしたり顔の理屈など通用しない迫力で潮の想いが迫ってくる。
この潮の想いが、最後に十郎を救い、同時に死に追いやった、これは辛い。
十郎はこうするしかなかったのだし、死が償いであると同時に救いだったのだし。

「うしおととら」の中でも特に泣けたエピソードとしても強く印象に残っている。
生き残った鎌鼬の雷信とかがりは、これからは人間の格好をして(人間の中に溶け込むようにして)生きていくことを余儀なくされる。
この兄弟、このエピソード限りのゲストキャラかと思っていたら、準レギュラーとして最後まで重要な役割を担ってくれた、これは本当に嬉しかった。
特に派手な服装と勝気な性格で登場したかがりが意外に天然で(笑)、やがてとらにほのかな想いを寄せるようになるところとか、涙が出るほど笑ったけど、これはまた後の話。

★今回のお気に入り
・槍を振り回す潮に土下座のかがりを見てかしましい見物人。
・とらの切断された左腕を見て大騒ぎする潮と痛がるとら。
・心配する潮に照れるとら。ぽかんと見ている雷信とかがり。
・潮を殺そうとする十郎を止めるために岩を蹴とばしたとらの足の裏(可愛い、笑)。
・妖怪を見て最初は石を投げるけど、最後は助けてくれる人間たち。
実は大甘な展開と思う、でも「うしおととら」なら許される。
・十郎の最後の笑顔。
(2010年8月31日の日記)
童のいる家ー1
舞台は遠野、登場妖怪はザシキワラシ、ヒロインは「普通の人がみることのできない妖(あやかし)の世界をみ、そしてその世界の声をきくことのできる白い髪の血筋」の少女、鷹取の小夜ときたらおもしろくならないわけがない。
しかも前回に続き、雷信とかがりの鎌鼬兄弟も登場する。
遠野編はこの後も章を変えてしばらく続くが、さらに天狗や雲外鏡なども登場してさらにおもしろさを増していく。

最初に雷信たちの勧めで人里離れた温泉で静養している潮ととら。
熊や猿と一緒の和やかなひととき、そこにひっそりと現れたのが白い髪の少女、鷹取の小夜だった。
「のぞき男(笑)」になってしまったショックでパニックに陥った潮のそばで、とらは姿を消しているはずの自分を小夜が見ていたことに気付く。

翌日町に出て行った潮ととらは小夜に再会、気分が悪くなった小夜を家まで送って行ってザシキワラシに会う。
ザシキワラシは鷹取家の先祖に強力な結界で閉じこめられていた。
自由になることを望むザシキワラシは潮ととらに結界を壊してくれるように頼む。

この時のザシキワラシととらの会話がいい。
「へえ・・・ ながいあいだ まった このときが・・・ おぬしの たちあいの もとで おこなわれようとはな・・・ ながとびまる。」
ここでザシキワラシがとらを知ってることに驚く潮にとらが答える。
「くくっ・・・ わしもおめーと同じに閉じこめられてたクチだからな、知名度ひくいのさ。」

潮と馬鹿やってる時は、精神年齢同じじゃない?なんて思ってしまうくらい幼く見えるとらだが、こうして見るとさすがの貫録。
そして自分もまた長い間閉じこめられていたことを思い出す、この記憶が後のザシキワラシ救出の大きな伏線となる。

★今回のお気に入り
・表紙で温泉に向かう潮ととら、とらの頭に獣の槍で困り顔(笑)。
・水でっぽうを潮がとらに教えていると、猿たちまで参加する。
・前回の件でいきなりとらになつくかがり、まじめに話をしている雷信の後ろ手「ホータイを」「いーからあっちいけよ」とまるで漫才。
・小夜の髪の白さを言うとらに潮が「人間のレーギを教えてやらあ!身体(からだ)の特徴についてガタガタゆーんじゃねーよ!!」
(2010年9月24日の日記)
童のいる家ー2
自由になりたいと願うザシキワラシの願いに自分の過去を照らし合わせるとら。
結界破壊の衝撃からザシキワラシを守るために、身を挺してザシキワラシをかばおうとする。

けれど後で外伝を読むと、とらは自らの意志で封印されているのがおもしろい。
外伝は本編終了後にまとめて出たようだが、それまでに方向転換があったのだろうか。
ザシキワラシ編当時は、とらが無理やり封印されたように描かれている。

潮ととらの捨て身の戦いと小夜の決意により、ザシキワラシは自由を得た。
そしてそのまま小夜と行動を共にすることになる、嬉しい限り。

ところでこの鷹取家、いかにも由緒ありげな名字だが、何かいわれがあるのだろうか。
Wikipediaによると、 舞台となっている岩手県の気仙郡住田町に「鷹取山」という山があるが、小夜が歩いて行くにはちょっとどころかかなり遠いようだ。
鷹匠、マタギのイメージからつけられたのかなあなんて想像するのも、また楽しい。

★今回のお気に入り
・「小さな女の子を閉じこめて何がコーフクなんだよ、ボケッ!」潮の一喝。
・「こいつも・・・閉じこめられていたんか・・・」過去の記憶をたどるとら。
・「おぬしはもっとれいこくなものだとおもっていたぞ。」ザシキワラシのとらに向けた言葉。
・ひとりぼっちになった小夜を気遣う潮にとらが一言「アホ、大丈夫なんだよ!」 ・とっても素敵な笑顔の小夜「バカね。」
(2010年10月24日の日記)
一撃の鏡
遠野編の中でも番外編に位置づけられるエピソードだが、とらと真由子びいきの私にとっては嬉しい一品。
しかも大好き妖怪雲外鏡があんなほのぼのとした愛らしい姿で登場するんだから、何も言うことがない。

潮不在の生活で元気のない麻子、そして真由子。
特に麻子はいつもの元気っぷりを装ってみても、みんなにその寂しさを見抜かれている。
そんな時、真由子の両親がヨーロッパ旅行に行くことになり、麻子が真由子の家に泊まりがけで遊びに来る。

ところが酔狂者の父親が買ってきた魔鏡の中に、麻子をかばった真由子が吸い込まれてしまう。
この魔鏡には「鏡魔」という妖怪が憑りついており、遠い昔中国である男が怨念を込めたある邪法を行ったもの。
遠野で水面に映った麻子の顔を見て異変に気づいた潮は、鎌鼬兄弟に頼んで雲外鏡に紹介してもらう。

ここで出てくる一つ目一本足で体が大きな鏡となっている雲外鏡がとにかく可愛い。
獣の槍を怖がり、とらを怖がり、大きな目から涙をぽろぽろこぼしながら潮の願いをかなえてくれる雲外鏡のおんじ、というよりじいちゃん。
さらに最初はめんどくさがっていたのに、真由子が危険にさらされていると知るや一転、潮と共に鏡に飛び込むとらがいい。

鏡を通って行った世界で、とらが見たのは裸で鏡魔に抱きすくめられている真由子。
「オレの女に何をする」状態でブチ切れたとらは、戦いの最中の潮にすら「おまえ目の色、変わっとるぞっ!」と突っ込まれるほど逆上、おかしいやら楽しいやら(笑)。
鏡魔は当然一撃の元に倒して真由子を救った潮ととら。
実は雲外鏡に時間制限をつけられてたんだけど、そんな必要もなかったくらい凄かった、とら。

ついてきた麻子と真由子を無事現代に送り届けた潮ととら。
麻子は潮の笑顔にほっとし、真由子はとらの「けっ、勝手に他の妖の食いもんになるんじゃねーや」の決め台詞?に微笑む。

でもほんとにおもしろいのが、とらのこの真由子に対する感覚。
妖怪としてはもちろん、人間としてすら真由子はむしろ「孫」といっていい世代だろう。
実は最終決戦の中で、真由子がとらの意識に入り込む場面があるが、あそこは本当に感動しつつも、ここでもしとらが人間に戻ったら大変なことになるんじゃないかと思った。
マフラーじゃなくて赤いちゃんちゃんことか、りんごもむくんじゃなくて、すってあげなきゃ食べられないとか、そんな風になっちゃうんじゃないの?って涙ぼろぼろこぼしながらも本気で心配した。
結局とらが人間に戻ることはなくて、私の心配も杞憂に終わったのだけど、ロマンチックじゃないな、私。

実際とらの中でもほとんどの部分が老練な者としての知恵と意識と常識が備わっている。
ただ、潮と共に戦う時や、真由子に関わる時だけが、まるで10代の少年に戻ったような感性を見せる。
今回も、まるで好きな子を命がけで守ろうとする恋する少年だ。
潮と比べても何の遜色もない。

結局この感覚が最後まで続き、物語もそのまま終わってしまうので、とらのこの性格は作品の中で大きな謎のまま残る。
(とらの人間としての記憶がないことは承知の上だが、妖怪になってからも生きてきた時期は長い)。
もっともこれこそがとらの一番大きな魅力なので、これ以上の考察は野暮というものかもしれない。

★今回のお気に入り。
・「麻子ー、あんぱんの中味はー?」「あーん」(笑)
・「まだいてもいーじゃない」「うるせーなー ちっ!」とらに懐くかがり。
・とらに頭の上でごろごろされて涙目な雲外鏡。
・「バッキャローッ!その女をはなしやがれぇぇ!」「とらっ、おまえ目の色変わっとるぞっ!」「うるせえっ」恋する妖怪とら。
・そしてやっぱり「けっ、勝手に他の妖の食いもんになるんじゃねーや」のとらの決め台詞。
(2010年11月15日の日記)
遠野妖怪戦道行−1
麻子と真由子を無事助け出した潮ととらは、遠野に戻り、鎌鼬兄弟に別れを告げる。
その短い間にかがりの心にはとらに対するこれまでになかった感情が生まれていた。
雲外鏡のおんじから聞いて、とら=長飛丸の正体を知ったこと、そして何より命がけで自分を守ってくれたことから生まれた恋心。
これまでとらに対しては懐いた様子で対等に喋っていたのに、急に敬語になったりしてちょっと残念なくらい(笑)。
とらも二千年も生きているんだから、その変化に気づいても良さそうなのに、そんな部分にはいたって疎いらしい。
とはいえ雪女編では「女性が男性を慕う声」に気づいていたから、自分のことに関してのみ疎いらしい。
そんなところがとららしくていい。
ここにとらを挟んで真由子とかがりの三角関係が誕生するわけだが、おっとり真由子と控えめなかがりではトラブルになることもなく、というよりトラブルになるほど関わることもなく、関わった時にはそんなのんきな状態ではなく、うやむやなまま終わってしまったのが残念だったが・・・。

さて、雷信とかがりと別れてバスに乗る潮たちだが、そこでいきなり「なぜかおめえ(潮)に悪意てんこもり」の「べらぼうに大勢」の遠野妖怪たちに襲われる。
潮に向けられたのは憎しみ。
「『ヤツ』を護る憎きあの女の息子」であり、「妖を殺すためだけに在る槍」を持っており、「その槍で長飛丸を脅している(この辺とらが知ったら激怒もの!)」少年に対する憎悪だった。
否応なしに生死をかけた戦いに巻き込まれる潮ととら。
そこへ現れたのはとらの最強のライバルらしき巨大な妖「一鬼(ひとつき)」、相対するととらがほんと笑えるくらい小さい。
とらがあまりに巨大だと、潮とのバランスが悪くなるんだろうが、衾の時といい、他妖怪がとらをそんなに恐れるのが不思議なくらいとらが小さく見える時がある。
その一鬼はとらに対して「字伏」という呼び方もする。
潮の言いなりと思われてることへの不快感を感じたとらの意外な選択と、孤独に戦う潮への思わぬ救援者と新たな出会いに関する感想は次回に書きたい。

★今回のお気に入り。
・雷信からお金を受け取ろうとしない潮を一撃のとら。
とらの方がよほど常識があるというか、旅をするにはお金が必要と、潮よりもわきまえている。
・バスに乗ってみたいと大騒ぎのとら、そのくせ乗るとすぐ飽きる(笑)。
(2010年12月7日の日記)
遠野妖怪戦道行−2
一鬼と相対したとらとはぐれた潮は、わけもわからぬまま、襲い来る遠野妖怪たちと戦い続ける。
最初はこれまで倒してきた妖怪たちの敵討ちと思っていた潮だが、途中で出会った河童が重要なヒントを教えてくれる。
この河童が可愛くていい。
「昔、いたずらが過ぎて人間たちにつかまった時、もう何もしねえって誓って許してもらった」という実際にある伝承が出てきた時点でもうにんまり。
さらに獣の槍が怖くて、潮の権幕が怖くて、でも潮に薬をつけてくれる優しい河童。
ささくれ立っていた潮の心も、河童の優しさに和んでいく。

でも肝心なところで再び襲ってきた妖怪たち。
残念だけど、潮は河童に別れを告げ、再び戦いの渦の中へ。

昔、唐からやって来た娘、その正体は「白面の者」と呼ばれる妖怪が日本の人間も妖も滅ぼそうとしたが、妖怪たちは必死で戦い、何とか撃退した。
そしてとどめを刺そうと追いかけたが、白面の者は一人の人間の女に護られており、手出しすることが出来なかった。
そのことだけは河童の話や歌からわかる。
その「女」が潮の母であることも。

では何故潮の母は白面の者を護っているのか、新たな謎が生まれたが、その恨みが息子である潮に向けられたことになる。
でも映画「ターミネーター」のように、未来に生まれる潮がさらに白面の者の側に回る危険を避けるため、といった具体的な理由もなく、ただ恨む女の息子というだけでここまで凄絶な攻撃を仕掛けてくる部分、ちょっと意外だった。
それだけ恨みが大きいと解釈もできるが、後でとらが、
「気に入らん!気に入らんなあ、一鬼。てめーらの力が弱(よえ)ーのを、人間の女ごときのせいにして!しかも直接やらねえで、そのムスコにあたる根性がよぉ!!」
と小気味いい啖呵を切るのにすっきりした。
私の頭の中には遠野の妖怪は素朴な者というイメージがあるからだろう。

その頃、前回潮ととらと別れた小夜が潮たちの近くに来ていた。
異常に気づいたオマモリサマ、さらに雷信とかがりの兄弟も異変に気づく。
  潮の母のことを知らない雷信とかがりは、潮を殺すように促す妖怪たちに戦いを挑むのだが・・・。

★今回のお気に入り。
・潮の権幕と獣の槍にいちいち怯える気弱な河童(笑)。
・「サンキュ、かっぱ!」潮のお礼に「さんきゅ?」と不思議がる河童。でも意味は通じたらしい。
(2011年1月18日の日記)
遠野妖怪戦道行−3
前回河童が曖昧に話した情報が、今回若い(と言っても400歳!)鎌鼬兄弟に年かさの妖怪が教えるという形で説明される。
それでも潮に対する信頼を変えない雷信とかがりは妖怪たちに戦いを挑む。
最初は潮を騙して十郎を殺させ、その後で潮も殺そうとする設定で登場した2人だが、その後は実に古風で仁義に厚いというか、魅力的なキャラに変貌した。

その頃とらは一鬼に対する意地から潮を助けないと宣言してしまう。
とらが嫌がる「長飛丸」の名をしつこく呼び続ける一鬼、さすが蛇妖だが、元々彼らは相性が悪いらしい。
一鬼が去った後、潮の嫌なところを一生懸命思い出そうとするとら、でも本当は潮を認め、仲間とみなしているとら。
その葛藤の中、とらが心を決めかねている頃、潮は孤独な戦いの中で一人の老人と出会っていた。

妖怪に襲われている老人を助けた後、わけを聞かれてどうやら全て話したらしい。
普通こういう話は一般人は避けて通るか隠し通すものなのに、潮は、というより「うしおととら」は実にぺらぺら良く喋る。
というより一般人を意識して巻き込んでいく。
当時は不思議に思っていたのだが、最終回まで読み通すと、これら全てが大きな布石となっていたことに気づく。
さらにオマモリサマは遠野を束ねる「長」のところに向かっていた。

危機一髪の潮に雷信とかがりが合流、さらなる危機へ。
そこに颯爽ととら登場!
かっこいいと言ったらいいのか、可愛いと言ったらいいのか(笑)。
ひとまず潮たちを連れて逃げたとらだが、そこでみんなとはぐれた潮が出会ったのはオマモリサマと遠野の長、天狗だった。

今回は登場キャラが多く、場面もあちこち飛んでの急展開。
漫画を読んでると言うよりアニメを見ている気分になるほどの迫力で進んでいくのが凄い。
この天狗こそが潮が出会った老人だった。
潮に話を聞くため、そして潮という人間を見定めるために、老人に化けて潮に会ったのだろう。

天狗の話を聞いて、やっと自分が狙われたわけを知る潮。
天狗もまた、潮を認めて潮を襲うことをやめさせると話す。
それでも聞かないのが例の一鬼、さすが蛇妖。
ほんとに相性の悪いとらと一鬼が和解するためには、一度徹底的にやり合わなければならない運命、ということでここにとらと一鬼の殺し合いが始まる。
というよりガキ大将の大ゲンカにしか見えないところがとららしい。
決着はつき、潮ととらは遠野妖怪たちと和解して、更なる旅へと向かうのだった。

★今回のお気に入り。
・高い木のてっぺんで葛藤するとら。でも遠くから見るとひたすら可愛い(笑)。
・老人(天狗)に妖怪を殺すことに慣れてきたのかと聞かれ、「たとえバケモンだって殴った手の方がイタイこともあらあ。」と潮。
・「潮サマは・・・あたしたち鎌鼬の兄弟のために・・・・・・本気で涙を流してくれた・・・・・・」潮の危機に駆けつけたかがりの言葉。
・「潮殿っ、共に死ねることを誇りに思います!」覚悟を決めた雷信の言葉。
・「こいつは『わし』が食うの!!」潮を助けに来てのこの台詞、さすがとらの意地っ張り(笑)。
・「おぬしがしぬるとさやもなく。」オマモリサマの言葉。
・天狗たちと別れの挨拶を交わす潮のそばで、「あっうごくとくすりがぬれません」「ひゃはは いてえ くすぐったい いてえ ははは」と何故が手書きのひらがなでじゃれる?とらとかがり。
(2011年2月13日の日記)
おまえは其処で乾いてゆけ
ここで潮と出会う2人組があまりにひどくて、ひど過ぎるにもほどがある。
それだけに後半詩織母娘のために頑張る姿が際立つのだが、それにしてもひどかった(笑)。
普通決してヒーローにはなり得ない人間がヒーローになっちゃうんだもの、「うしおととら」ってほんとに凄いね。

さて、遠野に別れを告げて旅を続ける潮ととら。
お金を落として旅費のない潮だったが、ヒッチハイクした?相手が、なんと潮のお金をネコババした2人組、片山と香上だった。
大学を休んで北海道へナンパ旅行、絶対成功しないよなあとすんなり思わせる2人組。
潮にネコババがばれて、強制的に旅を共にすることに。
そして青森で泊まった旅館「大谷屋」が今回の舞台となる。

今回登場するのは「なまはげ」、生まれたのは当然秋田県男鹿半島。
以前「十二国記感想」で男鹿に遊びに行った時のことを「日本に来ていた西王母」として書いた。
何故「十二国記」かというと、「十二国記」において西王母がとても重要な役割を担っているからだが、この時参考にした資料が、水木しげる氏が「山海経」の解説として書かれた「日本に渡った精霊たち」だった。

          ☆          ☆          ☆

秋田県男鹿半島に伝わる生剥(なまはげ)の行事は、武帝を祭神とする赤神神社の伝説に由来がある。
武帝は安住の地を求めて世界中に方士を派遣し、ついに蓬莱の地として男鹿半島を選び、崑崙に住むという西王母(大荒西経)と共に飛車という空飛ぶ乗り物に乗ってやってきた。
その時武帝に仕え来た五人の鬼が、後の生剥の鬼のモデルになったというものである。

          ☆          ☆          ☆

この一文につられて、はるばる男鹿まで行ったわけだが、それだけに「なまはげ」に関しては思い入れが深い。
ただし今回登場するなまはげは、猿の変化が鬼の面をかぶり、包丁を持って真似をしているだけで、当然本来のなまはげとは別物である。
実はこの猿、詩織の母史代に子供の頃可愛がられていた猿だった。
史代が男鹿出身だったため、やはり男鹿に生息していた猿がなまはげを真似たものだろう。

この猿、最初は「悪い子」を意識するようなそぶりを見せながら、すぐにそんなことはどうでもよくなって、幼子を求めるようになる。
史代と再会し、史代の事も思い出すが、改心することもなく詩織を攫って行く。
ここに潮、香上、片山の必死の戦いが始まる。
最初は傍観者のような立場をとっていたとらも、とらが見える詩織になつかれ、潮たちのサポートに回る。
とらが本気になれば、なまはげなど一撃必殺だと思うので、この辺のバランスはとてもいいと思う。

「おまえはそこで乾いてゆけ。」
最後に自ら全身の皮をはいで詩織を襲う猿を獣の槍が貫き、潮が放った言葉がこれ。
かっこいい、でも哀しい。

猿は元々は大好きだった史代に近づきたくて人間になりたかった。
でも手段を間違えたのか、手段はそれしかなかったのか。
人間を喰らった時から猿の中で当初の目的は消え失せ、人間に怪しまれず近づけるように人間を喰らってその皮を求めるようになった。
誰の皮をかぶったところで人間になれるわけはないのに、猿はわかっていなかった。

死の瞬間、猿は思い出しそうになる。
自分がなぜ人間になりたかったのか。
でもそれはかなわず死んでゆく、哀しいなあ・・・。

妖怪であってもとらや鎌鼬兄弟のように「心」を持つ者もいる。
衾や飛頭蛮のように「心」を持たない者もいる。
史代に可愛がられた小猿はどうだったのか、ただ哀しい性のまま生きるしかなかったのか。
問答無用で潮に殺されるその末路に一抹の寂しさを感じたのは私だけだろうか、その所業の惨さは別として。

余談だが、ここでは犠牲となる人間の家に赤い矢が刺さっているが、元々は神が生贄を求める時に目当ての人間が住む家に放った「白羽の矢」がモデルだろう。
そういえば白羽の矢っていい意味で使われてるけれど、元は残酷なしきたりだったという。
白羽の矢が登場する民話か物語を読んだことあるような気がするが、思い出せないのが辛いところ、調べてみたい。

★今回のお気に入り
・片山と香上の妖怪談義にドキドキしたり香上にかぶりつこうとするとら、可愛い(笑)。
・ガラス張りの建物に興奮するとらと、とらに反応する詩織、怖がってないのがいい。
・詩織を助けるために根性を見せる香上と片山、助けに入るとら、大変な場面なのにまるでギャグ。
・「おまえはなまはげにもなれなかった・・・・・元の飼い主の史代さんを襲った時、猿であることもやめた・・・。」厳しい潮の言葉。
・「なんでだろー?なんでオレは・・・・・・人間になりたかったのかな?」思い出させてあげたかった気もした。
(2011年5月27日の日記)
鎮魂海峡
「うしおととら」にしては珍しく何のひねりもないタイトルで、内容も真っ向勝負。
出てくる妖ミコンジキのグロテスクな可愛さ(衾かミコンジキか、というほど可愛い)も相まって、作者渾身の力作と見た。
(あとがきでも書いてるけれど)。
私ときたら最初に「ミジンコ」のアナグラムもどき?と読んでしまったおかげでイメージが・・・。

本筋自体は「うしおととら」の中ではありきたりで、おもしろさという面では正直乏しい。
でもありきたりなテーマとわかってて、なお挑んだ作者だからこその勢いが、ミコンジキの造形に表れているとは思った。
「自分の仕事を歯をくいしばってがんばった人たち」を描きたかったと作者は書いているが、「うしおととら」の登場人物はみんなそういうキャラクターの持ち主なので、「鎮魂海峡」が特に際立った印象を持てないのは残念だった。

構成や描き方について、難しいことをいうひとはあったとも書かれているが、難しいことはともかく、影が薄いエピソードだったというのが正直な感想。
もちろん「うしおととら」の中での話であって、私の中でうしとらレベルがめちゃくちゃ高いからそう思うだけの話。
平均点99.9点の中、「鎮魂海峡」が98点くらいの差しかない。
「からくりサーカス」や「月光条例」も一通り読んでいて、とてもおもしろいと思うし、大きな感動ももらっているけれど、感動レベル、テンションレベルが全く降下せずに最終話まで読み切っちゃうのは「うしおととら」だけ。

例の二人組は再び登場、後に片山の恋人になる歩も登場する。
この3人は後半になって意外なところで大活躍するのだが、それはまだまだ先の話。

★今回のお気に入り
・とらが見えない二人組にいたずら三昧のとらに潮のお仕置き(笑)。
・函館行きのフェリーボートに大興奮のとら。
でも知らないおじさんの頭に乗ってるけど、乗るのは潮と真由子の頭だけにして欲しいな、というのは私の密かなる願い・・・。
(2011年6月9日の日記)
汝 歪んだ夜よりきたる
正義のヒーローとして登場したとらだけど、人間を食べたい気持ちに変わりはない。
でも正義のヒーローだけに、食べさせるわけにはいかないから、そのたびに邪魔が入る仕掛けになっている。
ほとんどが潮で、「餌」であった真由子自身の事もあったが、今回の邪魔者は符咒師の鏢。
家族を殺された老人の依頼を受けて、函館に来ていた。
今回はとらと鏢が主人公の外伝的なエピソード。

とらと鏢が2人?がかりで大苦戦した敵は吸血鬼と狼男と蝙蝠男の混合体みたいな化け物。
その正体は、大昔、母の死を機に失踪した外国の詩人だったが、母自体が杭を打ち込まれて死んでいるのでやはり吸血鬼だったのだろう。
潮が出会うことなく終わる吸血鬼、最初綺麗な顔で優しそうな医師ととして登場し、だんだんグロテスクな変貌を遂げていく吸血鬼は、前半の中でも特異な魅力の持ち主だった。
途中で狼に化けたり蝙蝠の翼が出てきたりするが、人間体でいる時の異形の美しさで通して欲しかったかも。

とらと鏢の見事な連携で吸血鬼は滅ぼされたが、自分を滅ぼした鏢にお礼を言う、「母さん・・・・・・ぼくは病んでるんだね・・・・・・」と呟く姿にそこはかとない哀れを感じた。
なのにとらと鏢はまるで漫才だもんなあ。
潮とは違う意味で、まるっきり気が合わないらしい鏢ととら、タイトルにもならないや、「ひょうととら」変過ぎる(笑)。
でも敵を倒しても倒しても傷ついた心が癒されることなさそうな符咒師の鏢がとても切ない。

★今回のお気に入り。
・潮がおごってもらったイモをちゃっかり食べて、「量が足りんな!」ととら。
・お墓を見て、「なんで人間は、死んだあとも自分の証拠をこの世に残したがるんだ?」ととら。
アニメ「犬夜叉」のオリジナルで犬夜叉に、「墓を必要とするのは残された人の心」と答えた楓の言葉が蘇る。
・土は通り抜けられるけど壁は駄目、で、蹴り壊して入ってくるとらの足が可愛い。
・500年生きてきたと言う吸血鬼に「なーんだ、おめえまだガキじゃねえか。」ととら。
・鏢と決着をつけようとしたところに潮に来られたとらの百面相。
(2011年6月24日の日記)
湖の護り神
とら一刀両断!はいつものパターンだけど、今回はとらが一刀両断されちゃった(涙)。
それでも生きて動いてるところが凄いけれど、あまりに痛々しくて可哀そう。
逆にとらを本気で怒らせた蛇神オヤウカムイが最後に一刀両断されちゃったけど。

というのが今回の全て。
片山たちを取り込んで、無理矢理護り神に仕立てようとするサンピタラカムイのやり方も今ひとつ好きになれないし、例によって戦いたがらないとらもとら。
その報いが一刀両断につながるのだが、片山や香上もがんばったのに、あのショッキングなカットのせいで、そのがんばりもすっかり薄れてしまった。
「うしおととら」にもいろいろな妖が登場したけど、十八の刃状の翼を持つ、このオヤウカムイが痛さという面で一番怖い。
モテない男の代名詞みたいな存在だった片山にも香上にも無事恋人ができて、潮ととらは彼らに別れを告げる。

★今回のお気に入り
・久々登場の潮の父紫暮。
潮の事を心配してたんだかしていなかったんだかわからないようなお惚け具合がたまらない(笑)。
・人が持ってたハンバーガーを勝手に食べて、「あの女にもらった方がうまい気がするが。」のとら。
メーカーの違いじゃないよね。
とらは他にもやきとりまで食べている。
やっぱり北海道はおいしい物の宝庫、妖にとっても同じことか。
・片山たちをさらった存在と、眼前の敵の違いを見分けるとらと、気づかぬ潮。
さすが年の功。
後で潮に「いつもいつも槍さえありゃ、なんとかなると思ってんのかよ!」とお説教までする。
でも結局「とらああ!」「ひいいっ!」といつものパターン(笑)。
・とら復活!
「キサマも味わってみやがれっ!真っぷたつにされる気持ちをなーっ!!」
普通は真っぷたつにされたら死んじゃうから、なかなかとらの気持ちはわからないだろうなあ・・・。
(2011年7月14日の日記)
霧が来る
今回の主役は、霧の妖シュムナと、癌に侵されて余命いくばくもない落ちぶれヤクザ、徳野信二。
シュムナに襲われたバスに信二の母が乗っていたこと、そして必死で戦う潮ととらの姿を見て、信二も最後の力を振り絞って潮たちを助けた。
人生に対して投げやりになっているような信二と真っ直ぐに生きてる潮、そして一瞬の再会を果たした母との間に交錯する想いに泣けた。

シュムナはかなりの強敵。
霧の妖だけに、火は恐れるものの獣の槍でもとらの雷でも歯が立たない。
しかも近くには冥界の門まであり、とらが危うく吸い込まれそうになる。
結果的にこの冥界の門を利用してシュムナを退治することができたのだが・・・。

今回気になるのは、潮の傷が治りにくくなり、強い痛みを感じるようになってきたこと。
槍が潮にとって必ずしもプラスの物ではないことが暗示されているような気がした。
でも本当の主役はやっぱりとら。
笑えるところもかっこいいところも、全て含めて目立ち過ぎ(笑)。

★今回のお気に入り。
・前回両断されてから「ちょっと気ィ抜くと、すぐはなれちまうしよ〜。」なとら、それでも平然と生きてるところが凄い。
しかも「たまに姿が人間どもにみえちまうコトもあるだろうあ。」
はい、しっかり見られてました(笑)。

・公衆トイレで大騒ぎ、潮の服でぐるぐる巻きにされるとら。
「うしおー うしおー。」
「なんだよ!」
「こんなのきゅーくつだー。」
「やかましい。ちゃんと消えてやがれっ!」に大笑い、とら可愛い。

・怖いけれど、意外と美人?に見えないこともないシュムナ。
妖の中でも好きな部類だったので、後の復活は嬉しかった。

・衾といいシュムナといい、とらの博識&経験値の高さには驚かされる。
シュムナもそんなにあちこち動き回るタイプの妖には見えないし、とらも北海道は初めてのようだが。
「だからわしは火を吐いて・・・・・・逃げた!」

・嫌な奴のように見えていた信二だったが、自発的に取り残されたおばあさんを助ける。
まだ気づいてないが、二人は親子。
この後潮がおばあさんを助けるが、獣の槍の器用さには笑わされた。

・「テレピン」でやってた「てぽ」に撃たれたとら。
髪の毛で全弾受け止める、意外と器用。
仮にも自分を殺しにかかった人間無視して潮と喧嘩(笑)。
とらも性格が丸くなった。

・信二の病気を見抜くとらも凄い。
潮のまっすぐな言葉と、とらの斜めな言葉と若き日の母の言葉に、信二は最後の力を振り絞る。

・「ホントはいやなんだけどな〜。」
潮を助けるために雲を呼んで「ふーう。」と一休み。
しんどそうだけど可愛い。

・反撃に出たシャムナに止めを刺したのは信二。
死の間際にまっすぐに生き抜いた。
(2011年8月12日の日記)
婢妖追跡 〜伝承者ー1
光覇明宗では、来たるべき白面の者との戦いに備えて獣の槍を扱うための伝承者を育ててきた。
その候補者の一人、関守日輪が最初に潮の前に姿を現す。
辛い修行に耐えてきた日輪たちにしてみれば、無責任な中学生に槍を横取りされたと思ってしまうのも無理ないところ。
ただ日崎御角が思い返している写真、日輪以外は誰が誰やらわからない状態なのだけど(笑)。
あっ杜綱悟はそれっぽいかな?

日輪は光覇明宗が調べ上げた潮の軌跡をなぞってみせ、潮の未熟さをあげつらう。
読者にしてみれば、潮の「心」ゆえに成し遂げた奇跡であっても、日輪にとっては大きな失敗。
潮だから無関係な人間を巻き込み、犠牲者を出し、そして敵である「凶悪な妖怪=とら」と馴れ合うと言う。
私(日輪)ならば数々の惨状は避けられたはずと言い放つ。

「槍の声を聞け」るとの自信には恐れ入った。
というより光覇明宗は一体何なんだ?と思った。
事件の表面しか見ていない。
ここまで詳しく調べ上げながら、潮が「何をしたか」を見ていない。

百歩譲って日輪の言うとおりだとしても、「潮だから槍を扱えたこと、髪が伸びるなど潮が変身を遂げたこと」を完全に見逃している。
光覇明宗の意識では「高い法力や戦闘能力を持つ者」が修行を積めば、「獣の槍の伝承者になれる」のが当然のこととして認められているのだろうか。
日崎御角ともあろうものが、(潮が出て来るまでに)そう思っていたのだろうか、不思議に思える。
まあ日崎御角は潮が登場した時点で潮を伝承者として認めた気配はあるけれど。
育てるなら獣の槍の伝承者のサポート役、どうも頼りないなあ、光覇明宗は・・・。

それはさておき、いきなり憎まれ役になってしまった日輪だけど、気持ちはわかる。
女性であることのコンプレックス、決してゆえないことではなく、日輪は常にそうして虐げられてきた。
それを乗り越えての伝承者候補、にもかかわらず潮が登場。
真実を知るまで日輪やその他の伝承者が振り回されるのは仕方がないところだろう。

だから光覇明宗が、いえ作者がちょっときついかな?
連載当時、読者の間ではこの問題についてどんなふうに解釈されてたんだろう、知りたいなあ・・・。

しかしいったんは獣の槍を得たものの、日輪は獣の槍を使いこなすこともできず、婢妖のために危機に陥る。
救ったのは獣の槍を取り返した潮。
それでも伝承者となることをあきらめない日輪、ここまでくるとむしろ笑える。
そうすんなりと受け入れる柔軟な性格じゃないんだろうなあ。
でも私、この子が好きだ。

★今回のお気に入り
・失神した潮を「とらく」に乗せていいことした気でいるとら、可愛い(笑)。
でも到着したのはえりも岬だった・・・。
・槍を手放した潮を食べようと大はりきりのとら。
でも潮のあまりの気抜けっぷりに「づとたぺきしほ」ってなに?
・「オレだって好きで、この槍持ってるワケじゃねえやっ!」
潮の叫びになにか気づいたような日輪の表情。
・「ほらなあ・・・・・・その、待ってたような目!そして、おまえの期待どーりのコトをしちまう、わしがイヤなんだよ!」
日輪の目の前でかっこ良さ全開のとら。
・「うしおよりぎゃんぎゃんとうるせー女」に「へんな妖怪」扱いされて怒るとら。
(2011年9月6日の日記)
婢妖追跡 〜伝承者ー2
「獣の槍」伝承候補者2人目は秋葉流。
飄々とした、かっこいいんだか悪いんだかよくわからない男。
大型バイクを乗り回し、錫杖と独鈷を駆使して戦う。
バイクに錫杖くっつけてる時点で違和感おおありなのだが、初対面では潮もとらも不思議に思わなかったらしい。

流は自分の正体を隠して潮に接するが、とらが流に危険な気配を察し、1人?で会いに行く。
はたして流は潮や獣の槍よりもとらに興味を持っていた。
不思議なくらい潮ととらの軌跡は正確に、丹念に調べ尽くされているが、流はその時点で潮の特殊性に気づいていた節がある。
まあ普通に考えたら、髪が伸びたり槍が潮の意志に従って勝手に動いたりする時点で、潮こそ槍の伝承者と気づくだろう。

それに納得できないのが日輪だったわけで、その点流は大人だし冷静だ。
流の興味は、何故とらが潮に従っているかにあり、同時にとらを戦いによって推し測ってみたいという気持ちがあるのだろう。
人間は体力的な面では絶対に妖怪にはかなわない、そこで法力や結界を使って戦うが、確かに流は強い、計算された強さがある。
さすがのとらも、流の前では大苦戦。

しかも「流を殺さない」という大前提があるから、余計戦い辛いのだろう。
それでも最後は最強の「妖(バケモノ)」の凄味を持って流を打ちのめす。
あえて体を真っ二つにして、その体で流を切り裂くのだから凄い。
しかも四肢を固定した鉄杭から逃れるために引きちぎったのだから恐ろしい。

拳を合わせて互いを知りあうガキ大将のように、ここで流ととらは和解し、直後に婢妖に乗っ取られたバスに乗る潮のために絶妙のコンビネーションを見せることになる。
槍に対する執着はないようだし、精神的にまだまだ子供の潮を導く理想的なサポート役となると思われた流だが、結果的に私にとっては一番理解し難いキャラとなった。
でもそれは、この長い長い物語の最終章の事となる。

★今回のお気に入り。
・獣の槍に化けて潮をからかうとら。すぐ気付かれていつもの喧嘩(笑)。
・流のバイクもとらに言わせれば「あのてかてかしたタイヤ2個馬」だそうで。
間違っていないけどなんか変なのはいつものこと。
「おまえすぐ暴力ふるうのは、あー人間でいうとこの倫理的によくねえぞ。」
・一転、流との戦いの中で四肢を自ら引きちぎり、真っ二つに裂けた体で流を切り裂く。
「死なねーんだよ。それが妖(バケモノ)!」このかっこよさ!
・とらが潮を「喰わねーのは」、潮といると退屈しないから。
気に入っているでもない、いい奴だからでもない、いかにもとらなこの言い方!そして流を通して読者に伝えるこの見事さ!
この後とら、潮、流の大活躍が入るが、今回のクライマックスは間違いなくこのとらの笑顔?だと思う。
(2011年9月22日の日記)
畜生からくり
もう何度読み返したかわからない「うしおととら」だが、「伝承者」編の合間に描かれたサイドストーリーとでも言うべき「畜生からくり」はだんだん印象に残らなくなった。
なにしろ潮ととらがほとんど出てないのだ。
彼らのサポートなしで、あそこまでできちゃう麻子と真由子が凄すぎて、そして潮の面影が麻子を励ましたように、とらも真由子の脳裏に登場して欲しかったという気持ちもある。

最初の依怙地ともいえる麻子の態度もちょっとマイナス。
「蒼月くんのこと心配なのは・・・・・・麻子だけじゃないよ。」
どんな気持ちで真由子が言ったか、でもその場で謝ることもできないのか・・・。

麻子も心の真っ直ぐな、とてもいい子だ。
仮に麻子が真由子の想いを知ったらどうするだろう。
心を隠した真由子を怒るだろうし、潮への気持ちを断ち切るかもしれない。
でも私は、親友の恋に気づけない麻子よりも、親友の恋に気づいてなお引く真由子がより好きだ。

とはいえ今回の主役は麻子と真由子でなく、対照的な少年笹木と安西ですらなく、江戸のからくり人形師便七が作った畜生からくり。
モデルとなった有名なからくり師はいるのだろうかと思って調べてみたが、名前の似ている人物は見当たらなかった。

麻子たち人間の動きがいつもに比べてぎこちなく見えるほどからくり人形の造形や動きが見事。
からくりなので動きはのろいのに、言い知れぬ迫力と恐ろしさが迫ってくる。
藤田先生は、つくづくこういう世界が好きなんだなあ。

「伝承者」編の合間にこのエピソードを入れる意味がよくわからず、入れるからには潮ととらにも出て欲しかったというのがとらの大ファンな私の正直な感想。
その潮ととらは麻子たちのピンチも知らず(バイクのミラーにも映らなかったんだろうなあ)、恋の話で盛り上がる。
この対比もまた見事だった。
(2011年10月10日の日記)
追撃の交差 〜伝承者 1
関守日輪、秋葉流に続く3人目の伝承者の名は杜綱悟。
体術、法力、人望共に光覇明宗の中でもトップクラス。
異様な風貌で出て来るが、普段は穏やかで優しそうな青年だ。
ところがこの杜綱悟、怖いことに式神として蛭蠱を使う。
これがまた微妙に禍々しくて、後で杜綱が正気に戻っても普通に出て来るので、どうも杜綱本人共々苦手だった。

蛭蠱といえば、蛭を蠱毒の術、(高橋留美子著「犬夜叉」や小野不由美著「ゴーストハント」にも登場する呪術)で強化して作った式神だろうが、ここで「蛭子」を思い出した。
「古事記」において、イザナギとイザナミの初めての子供でありながら、問題があったため、葦の船に乗せられて流されてしまった神。
蛭子神が行きつく先に関して「えびす」信仰が生まれ、これがまた「ゴーストハント」に関連づいていくのだが、それはまあ「ゴーストハント」の感想で書くことにしよう。
要は杜綱悟は好きだが蛭蠱は苦手、よってこの話も部分的に苦手ということ。

さて、自分が獣の槍に選ばれなかった杜綱の心には、潮に対する嫉妬の念が芽生え、そこを婢妖に付け込まれてしまう。
杜綱を操るのは血袴だが、一つ目の弁慶みたいで意外とかっこいい。
獣の槍を奪い、潮を殺そうとする杜綱。
兄のために潮に八つ当たりに来た妹純や、杜綱を慕う僧たちまでもがその変貌に衝撃を受ける。

陰陽の気を操る者の気配と式神を感じ、杜綱が婢妖に憑かれたことにまで気づくとら。
杜綱に振り回される潮や純たちと歴然とした差がある、さすがの貫録。
当然のことながら杜綱は望んで憑かれたわけではなく、ただ心の闇に付け込まれただけのため、潮は純のために杜綱を救う覚悟を決める。

潮が助けを求めたのは懐かしい雲外鏡のおんじ。
鏡さえあれば日本全国どこでもOK、もしかしたら世界中どこでもOK?な便利なおんじ。
遠野の長に合わせて欲しいと頼む潮に脅すとら、相変わらずの漫才だけど、おんじがとっても可哀そう(笑)。
杜綱を助ける方法はひとつだけあった。

潮にとってとても危険な唯一の方法。
潮は常に獣の槍に選ばれた者としての使命と、出会った人間や妖怪を助けるために戦おうとする優しさの板挟みになる。
本来ならば、伝承者としての役目こそ大事、小事のために命をかけて、死んでしまったらそれが与える影響はあまりに大きい。
(潮自身はまだ自覚してないが)。

それでも相手を助け、自分も助かっても都合が良すぎるとは絶対言えない何かが潮にはある。
それが長やとらや、日輪や流たち伝承者候補をも巻き込む潮の凄さだろう。
確かに潮はこれまで生き抜いてきたけれど、それに匹敵する代償を払って来た。
そしてその最大の試練が次回始まる。
懐かしの映画「インナースペース」を髣髴させる、でもカラーで映画で見る以上にえぐい世界の描写が続く「追撃の交差」となる・・・。

★今回のお気に入り
・流のバイクの後ろで「こんなタコちびとー」とひとりごとのとらと潮が大ゲンカ、流がとっても迷惑そう(笑)。
・蛭蠱に襲われ絶体絶命の潮を助けた後のとら、人間のように立つとほんと可愛い。
・とらのおなかを「ぼす」でおにぎり→遠野の長を思い出す潮、とらは潮のお弁当箱?
・とらってばいっつも雲外鏡のおんじを泣かせるんだもんなあ・・・、でもなにげに潮の援護だったりする。
・杜綱にとっても純にとっても深い心の傷となっている過去、完璧に見える杜綱の心の弱さに同情せざるを得ない。
・「男って一生のうちになん人の女の子の涙をとめてやれるんだろう?」
潮じゃなくちゃ言えない台詞だ・・・。
(2011年10月28日の日記)
追撃の交差 〜伝承者 2
これまでの自分の感想読んできて、「うしおととら」のおもしろさが全然伝わってないのがもどかしい。
でも「うしおととら」という作品自体が、自分の目で絵を見て、台詞を読まなければおもしろさの伝わらない作品なんよなあ。
ところがどんなに勧めても、私の周りの女性陣で「うしおととら」にハマった人皆無。
一応手に取ってみたけど駄目だったって人が圧倒的に多い。

物語にハマる前に、まず絵が駄目だという。
実はその気持ちもわかるんだよなあ。
この絵じゃないと「うしおととら」じゃない、ってのがこちらの言い分だけど。
とってももったいない気がするけど仕方がないか。

さて、今回は潮が杜綱の体内に入り込む覚悟を決めた所から。
それがどんなに危険な事かはわかっているけれど、それ以上にどんなに重大な事か、潮にはまだわかっていない。
潮には実は「日本を救う」使命がある。
この段階ではまだ明かされていないから、流が「・・・そんな槍なんぞ放っときゃいいんだよ・・・」「みんな忘れて楽しく暮らせば、おめえら槍を守る連中にドロボー呼ばわりされることもねえ。」などと言っているがとんでもない。

潮が使い手としての役目を放棄すれば、潮自身を含めて膨大な数の人間が死に至ることになる。
本来ならば、1人の命を救うために無数の命を危険にさらすとんでもない行為。
遠野の長や光覇明宗クラスならその意味に気づいてもいい頃だが、ここではあくまでも潮個人を前提としているのがちょっと解せない。
槍の謎は、もっと早く明かしても良かったのではないかと思う。
でもそうなれば、潮の凄さ、作品のおもしろさが薄れてた気がしもなきにしもあらず、なジレンマが出て来るが。

そんな潮の想いを純たちもやっと理解する。
さらに長が送った助っ人が初登場のイズナ。
これがまたかっこいいやら可愛いやらでたまらない(笑)。
特にとらとの掛け合いは爆笑もので、この後時々顔を出すようになったのは嬉しい限り。

そしていよいよ杜綱の体内に飛び込んだ潮、イズナ、そしてとら。
潮のために、獣化した潮を喰らうために、とらも同行する。
でも本当は潮を心配してる、見届ける、守る、そんな想いが伝わって来てなんだか胸が熱くなる。

体内で最強の敵は血袴。
これまたかっこいい弁慶のようなキャラで、性格も豪胆で武士っぽいところがいい(悪役だけど)。
イズナやとら、それに純らの協力で血袴を倒し、無事杜綱を救った潮だが、遂に獣化が始まってしまう。
この戦闘部分は、カラーで見る「CSI」などのテレビよりもえぐい気がした、痛さを感じる描写だからか。

さらに白面の者もまたその姿を現す。
今回は可愛い?感じでちょっと笑えた。
杜綱は助かり、純も潮や杜綱に素直な態度で接することができるようになった。
ただ一番の候補者として登場した杜綱を、さらに上回る候補者の存在を予感させる杜綱の精神的な弱さではあった。

10巻では1992年(平成4年)に行われた人気投票の結果も掲載。
1位とら、2位潮、3位鏢、4位麻子、5位真由子。
ちなみに私なら1位とら、2位真由子、3位潮、4位かがり、5位麻子かな?

★今回のお気に入り。
・とらに「ぴ」とはじかれて怖いけど虚勢はっちゃうイズナ。
・一人飛び込もうとする潮に「フワ」と重なるとら。後の台詞より、このカットが心に残る。
・純に向けての流の台詞。
「・・・純、そしてほかのやつらも杜綱のコトしか頭にねえようだがよ。」から「あいつはそういう男なんだよ・・・」の部分。
動の潮やとらに比べて静の流は台詞がかっこいい。
・「ちっ!なんだよ〜 せっかく喰えると思ったのによ〜」ととら。
でもほっとしたことをイズナに見透かされてる。
・潮なら女の子の涙を望んだだけとめてやれると潮に告げる流、でもこの直後異変が起こる。
(2011年11月14日の日記)

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