「うしおととら」感想 5
4月19日 「昭和50年男」より「うしおとら」
以前書店に行った時、雑誌コーナーで突然潮ととらのイラストが目に入りました。
思わず買ってから、「昭和50年男」というタイトルなことにびっくり。
Wikipediaによると、昭和50年生まれの男性が夢中になった漫画やゲーム、アニメやおもちゃなどを 紹介する雑誌のようです。
現在46歳くらいの男性が、昔夢中になったということですね。

私が知っているのは「ドラゴンボール」「シティーハンター」「ドラえもん」、そしてもちろん「らんま1/2」。
「うしおととら」は、藤田先生自らがインタビューに答えているので、とても読みごたえがあります。

私は「犬夜叉」を読んでから「うしおととら」を読んだので、どうしても「犬夜叉」が先に出たような気がして しまうのですが、「らんま1/2」と同時期ということは、「うしおととら」が先なんですね。

藤田先生は高橋留美子先生の「闇をかけるまなざし」に強い影響を受けたことが知られています。
これまでコメディ作品を描いていた高橋先生が初めて発表したホラーであり、人間が妖異に負けず、 打ち勝つという衝撃的な結末を迎えたことに強い感銘を受けたのだそうです。
私は「犬夜叉」が最初だったので、その後読んだ初期作品にそれほど強い衝撃を受けた記憶はないです。

むしろ「犬夜叉」後に読んだ「うしおととら」に強い衝撃を受けました。
藤田先生には申し訳ないのですが、「からくりサーカス」以降はほとんど読んでいません。
絵の勢いに疲れてしまうようになり、作品として入り込めなくなってしまいました。

私が一番好きなのは、真由子が本当に奇麗で、とらとの恋がストレートに描かれた頃の、最終話に近い頃の 描写です。
「おっとりのんびり、芯は強い」と表現される真由子ですが、彼女はもちろん、「うしおととら」の登場人物は、 性別問わず戦う者たち。
その圧倒的な存在感が好きでした。

全てのエピソードが大好きです、と言いたい所ですが、私が唯一読み飛ばしてしまうのが流の裏切り。
形の上では裏切りでも、流の心情はそんな簡単なものではない。
今回のインタビューでも、藤田先生が説明されていますが、それでも辛くて読めないです。
私のメンタルの弱さなのかもしれません。

今回のインタビューを読んで、久々に出してきたコミック「うしおととら」。
こんなに黄ばんでいたっけ?とびっくりしました。
そっか、買ってからもう20年近くなるんだなあ・・・。
(2022年4月19日の日記)
9月16日 「漫勉〜藤田和日郎」感想
9月11日に放映した「漫勉〜藤田和日郎」見ました。
冒頭の藤田さんの、「漫画で一番重要なのは暇つぶし。
それに凄い時間をかけるのが漫画家。」という言葉、響きました。
ただ私の場合、暇つぶしで漫画は読まないなあ。
気合入れて読むか、最初から読まないかのどちらか。

テレビなどもそうですが、何となく見ることができないタイプ。
興味があったらしっかり見るし、興味がなければ最初から見ない。
中途半端に見ちゃうと、後で気になったりするし、テレビ見ながら何かするってことができないんでしょうね。
テレビから音や声聞こえて来たら気になるし。

さてこの番組は、やはり漫画家の浦沢直樹さんが、「漫画家の創作の秘密に迫る」をコンセプトに作った番組。
今回は「黒博物館 ゴースト アンド レディ」を描く藤田さんに4日間密着し、その後その映像を見ながら対談するものでした。
私は漫画も絵も全く描けないので、プロとしての藤田さんの凄さって言うのは正直わからないのですが、それでも 下書きをほとんどせずにがしがし描いて行くその勢いには圧倒されました。

しかも修正液も使いまくって、線を消すというより修正液自体がまさにペン。
あんなに重ねて厚くなったりしないんですかね?
私は修正液ほとんど使ったことないのでわかりませんが。
でもこの現場、潮の伸びた髪やとらの鬣などで見せて欲しかったなあ。

あと、藤田さんが表紙絵のキャラの「眼」が気に入らず、何度も描き直す場面。
私は実は最初の絵が一番好きでした。
キャラの激しい感情がそのままむき出しになった「綺麗な」絵だったと思います。
でも藤田さんはそれが気に入らず、何度も何度もペンで描く、修正液で消す、ペンで描く、修正液で消す。
描く消す描く消す描く消す、その繰り返しに感じる藤田さんのこだわりの凄まじさ。

結果的にキャラの激情が内にこもった絵になりましたが、毎日あんなことしてるのかと思いましたよ。
「白紙が怖いのでとりあえず描く」「下書きなしで勢いで描く」「音楽やおもちゃ(資料としての剣や銃)を使って とにかくテンションを上げる、なので消費カロリーが凄い」って・・・。
これを毎週やってた(やってる?)わけですからねえ・・・。

仕事場がまたなんていうか、普通の家の台所っぽくて笑えました(笑)。
窓が昔懐かしい感じで、流しがあって冷蔵庫があって。
これまで漫画家の仕事場といえば、高橋留美子さんと青池保子さん見た事ありますが、あちらは本当に仕事場用に作った感じ?
雰囲気はむしろオフィス、個人の家で言うなら書斎に近かったような気がします。

でも藤田さんの仕事場は、「自分ちの台所をとりあえず仕事場にしてみました」感が凄い。
浦沢さんが「男の仕事場」って言ってましたが、浦沢さんの仕事場はもっと洒落た感じに思えます。
でもそこがいかにも「うしおととら」が生まれた場所って雰囲気で良かったなあ。
いえここで「うしおととら」が描かれたかどうかわかりませんが、他の場所だったとしてもきっとこのような暑苦しく、生活感 満載の場所だったろうと思います。

浦沢さんで印象的だったのが、潮が槍を持つと髪が伸びて、髪の間から目が見えるが、それがこの世のものならざる目であり、 あの目になると、とらをも超える恐ろしさとなるという言葉。
ほとんどの場合、髪が伸びても潮は正気を失いませんが、それでもとらすら怯える恐ろしさというのは確かにあった。
うまく表現するもんですねえ、浦沢さん。

でもその時出ましたよ、衾っ!
目が大きくて愛くるしい衾っ!
たいした役じゃないのに大人気の衾っ!

藤田さんが昔から御伽話や伝承が好きだったのは有名な話ですが、いつも人間が負けるのが嫌だったそうです。
でも高橋留美子さんの「闇をかけるまなざし」を読んで、人間が勝ってもいいんだと思ったことが始まりだったとか。
さらに腑に落ちた表情を浮かべるスポーツ漫画やラブコメに喧嘩を売りたかったって、確かにそんな憤りや気合や藤田さんの想いの 全てが「うしおととら」という作品には詰まってましたね。

詰まってるだけじゃなく爆発してましたね、紙の上で。
だから絵が汚い、表情も凄まじい、台詞も凄い、効果音も巨大、凄まじい作品になってましたね。
でも藤田さんは読者に哀願もしてるって。
藤田さんが紙上に叩きつけた絶叫、むき出しの激情を体を張って受けとめて欲しいんでしょうね。

話しているというより喋りまくっている藤田さん自身に「うしおととら」を読んでいる時と同じ勢いを感じました。
なんていうか、凄い人だと思いました。
私がリアルタイムで読んでいたら、人生変わっていただろうなあ・・・。
でもなにげに壮大なネタバレしてた気が・・・。

浦沢さんには、是非高橋留美子さんにもお願いしたいです。
漫画家ならではの視点と深さ、鋭さで、単なる仕事場紹介に終わらない番組をお願いしたい。
(2015年9月16日の日記)
6月4日 アニメ第9・10話「風狂い」
原作第九章「風狂い」
・佐々木望さん(蒼月潮)・天野由梨さん(中村麻子)・冬馬由美さん(井上真由子)
・大塚周夫さん(とら)・速水奨さん(雷信)・矢尾一樹さん(十郎) ・鶴ひろみさん(かがり)・郷里大輔さん(麻子の父)・掛川裕彦さん(よっさん)

          ☆           ☆           ☆          

そういえば10話しかないOVAなのに、OPとEDが変わってる、なんでだろ。
最初のOPは特に好きだったのでちょっと寂しい。
新しいEDは流に憧れてた潮の夢がかなった形と言えば言えるけど。

「風狂い」はその名の通り鎌鼬兄弟が登場。
潮が旅に出ていないので、麻子や真由子が出て来たりと、ちょっと改変はあるけどそれ以外は原作通り。
真由子、麻子に続く第三のヒロイン(私的にね)といえるかがりだけど、やはり今見ると顔や体型が昭和過ぎる。
あまりスタイリッシュになると「うしおととら」の泥臭さからかけ離れてしまうけど、アニメではもう少しあか抜けて欲しいかも。

今回の話が重要なのは、初めて妖(自然)にとって人間が時には悪になり、毒になり、害になるその問題と真っ向から向き合ったこと。
餓眠様編などでも人間社会を皮肉ったような描写はあったが、あそこはむしろ笑いに変えるゆとりがあったが、今回は違う。
人間のしでかしたことに対する十郎の怒りが強ければ強いほど、その所業は残虐になり、それをきっちり描写しなくては成り立たない。
そこがOVAだけにきちんと描いてくれたが、新しく始まるアニメはどうなるだろう。

綺麗事で仕上げるくらいならアニメ化して欲しくないが、おそらく当時と比べて規制も厳しいだろうし、そのあたりに一抹の不安が残る。
でもやはり素晴らしいと思って見た「うしおととら」OVAも、原作よりおもしろいと評判のアニメ「境界のRINNE」も私にとっては原作を越えるものではない というのが正直な感想。

どんなに素晴らしくてもその素晴らしさの上には天井があってそこを越えるものではない。
原作がどんなものであれ、その凄さは上に蓋もなく、下に底がないこと。
原作とOVAを比べて改めて思った。
それを認識した上で新しいアニメを迎えたいと思う。

今回の鎌鼬兄弟は声優さんも豪華で、速水さんは「戦国BASARA」の明智光秀、矢尾さんは「犬夜叉」の花皇や「金田一少年の事件簿」の猪川将佐 (「エロイカより愛をこめて」で人気の鉄のクラウスことエーベルバッハ少佐をモデルとしたキャラ)、鶴さんは「犬夜叉」鬼の首城の姫とお馴染みの声優さん。
目立たないけど人のいいよっさんが、「真三國無双」シリーズの張飛・太史慈こと掛川裕彦さんなのも嬉しかった。
(2015年6月4日の日記)
6月3日 アニメ第7・8話「あやかしの海」
原作第五章「あやかしの海」

・佐々木望さん(蒼月潮)・天野由梨さん(中村麻子)・冬馬由美さん(井上真由子)
・大塚周夫さん(とら)・丸尾知子さん(たつや)・郷里大輔さん(麻子の父)
・上村典子さん(祖母)・佐藤正治さん(祖父)・江川央生さん(たつやの父)
・八奈見乗児さん(海座頭)

          ☆           ☆           ☆          

★「あやかしの海」も前後編ですが、「アニメうしおととら」が7月3日には放送開始 なので感想まとめます。★

今回も全くと言っていいほど原作通りで普通に楽しめる。
原作もそうだが、やはり不思議なのがメインヒロインと言える麻子より先に真由子メインの「とら街編」が入り、真由子は とらの存在を知るのに、麻子は今回とらに会うのに、そのまま終わってしまうこと。

でもおかげで潮ととら、麻子と真由子とダブルヒーロー、ダブルヒロインの物語となり、潮ととら、真由子ととら、麻子ととら、 潮と麻子、潮と真由子といった様々な組み合わせの妙を楽しめることになった。

とらでさえ吸い込まれるほど巨大なあやかしの迫力、海座頭のちょっと気持ち悪いけどいい人っぽいところもアニメならではの 表現だったと思う。

今回のゲスト声優さんも豪華で、何より海座頭の八奈見乗児さんと、とらの大塚周夫さんの掛け合いが楽しかった。
佐藤正治さんは最近「家庭教師のトライ」のCMでハイジの祖父(おんじ)の声をよく聞くが、宮内幸平さんそっくりでびっくりした。
江川央生さんはもちろん無双シリーズの島津義弘や曹仁、「犬夜叉」でおなじみ。

内容としては、麻子がたつやとかつての潮を思い比べてみるところや、事件の重大さに気づいている真由子を原作通りに丁寧に 描いてくれてるのが良かった。
(2015年6月3日の日記)
4月24日 アニメ第6話「餓眠様〜とら街へ行く(後編)」
・原作第三章「とら街へゆく」
其ノ四「とら推参!」
其ノ五「とらの濡れ衣」

・佐々木望さん(蒼月潮)・天野由梨さん(中村麻子)・冬馬由美さん(井上真由子)
・郷里大輔さん(麻子の父)・松井摩味さん(麻子の母)・大塚周夫さん(とら)
・野本礼三さん(老人)・山崎和佳奈さん(餓眠様)・岸野幸正さん(餓眠様)
・太田真一郎さん(餓眠様)・萩森侚子さん(餓眠様)・置鮎龍太郎さん(餓眠様)

山崎和佳奈さんが餓眠様に変わりました。

          ☆           ☆           ☆          

原作だとつい忘れちゃうんだけど、この頃ってとら、まだ耳があるんだね。
アニメでしっかり描かれてるので、怖い姿に老けた声との対照がかなり笑える。
耳、可愛過ぎ(笑)。

餓眠様(飛頭蛮)編後半は、とにかく殺戮と破壊の描写が凄い。
デパートに逃げこんだ真由子を追って来る場面など、下手なホラーよりも迫力がある。
飛頭蛮、顔も怖いが目も怖い。
殺戮描写を遠慮なくやってるけど、これはOVAだし、今この時期にアニメ(テレビ)で作るとなると、かなり規制されそうな気がする。
そしてやっぱり迫力が失せる気がする。

原作でこの話から真由子が一気に綺麗になるけど、残念ながらここはそんなに変わらない。
その代り、前のぺちゃぺちゃした感じから、ちょっと大人っぽい落ち着いた声になった。
私の好きな冬馬さんのイメージ。

でも襲われる真由子を助けるのは、まずとらでしょ?
なぜかアニメでは潮が先に来た。
しかも落ちる真由子を助けるとらが、真由子の頭をしっかりガードしてて、この気遣いがたまらなく好きなのに、アニメでは 普通のお姫様抱っこ(涙)。

結局助かった真由子も最初に潮に抱きついて泣きじゃくるのは、真由子っぽくないかな?と思った。
最後のハンバーガーは原作通り。
とらがちまちま食べててなかなか減らないハンバーガーに笑ったけど、いいシーンだった。

このシリーズは毎回違うアイキャッチが入っててとても楽しい。
たとえば今回は屋根の上でお月見しながら月見団子を食べてる潮ととら。
最後の1個をめぐって喧嘩になりかけた時、紫暮が食べちゃったってオチ。
もちろん怒った潮ととらは紫暮にダイビング。

余裕のある作り方、やりたい放題な雰囲気がいい。
(2015年4月24日の日記)
4月8日 アニメ第5話「餓眠様〜とら街へ行く(前編)」
・原作第三章「とら街へゆく」
其ノ壱「餓眠様」
其ノ弐「街の中は危険がいっぱい!」
其ノ参「とらと文明あれるぎい」

・佐々木望さん(蒼月潮)・天野由梨さん(中村麻子)・冬馬由美さん(井上真由子)
・郷里大輔さん(麻子の父)・松井摩味さん(麻子の母)・大塚周夫さん(とら)
・野本礼三さん(老人)・山崎和佳奈さん(日崎御角)・岸野幸正さん(餓眠様)
・太田真一郎さん(餓眠様)・萩森侚子さん(餓眠様)・置鮎龍太郎さん(餓眠様)
・小林俊夫さん(警官)・田中一成さん(作業員)

・EDには(たぶんスペースの関係で)記載されていませんが、山崎和佳奈さんは餓眠様も演じています。
自分で自分を退治したわけですね(笑)。

          ☆           ☆           ☆          

餓眠様編はとらと真由子の大事な出会いの話なのだが、アニメに限って言えばストーリーよりもとらの街での表情豊かな 一人芝居?と餓眠様の怖さとグロテスクさの方が印象が強い。
何といっても岸野さん(三國無双の曹操!)、山崎さん(蘭ちゃん!戦国無双のねね!)、置鮎さん(三国戦国の司馬師やら 長宗我部元親やら!)と、当時夢中になってたゲームの声優さん登場で狂喜してた。

太田さんも「犬夜叉」で「石の花」の七宝の初恋の相手サツキの兄だったし。
荻森さんは「金田一少年の事件簿」で文月花蓮だった声優さん。

原作の3話を30分でうまくまとめたけれど、潮がトイレで襲われるシーン、紫暮が獣の槍発見のショックで家出するシーン、 真由子の着替えのシーンはカット。
先日アニメ「境界のRINNE」見たけど、りんねで声優さんが語ったナレーション部分はこちらは使わず、絵やとらの語りで見せる。

原作との違いは細かい所では、とらが襲おうとした男性が、絶妙のタイミングでスプレー使うところとか(笑)、麻子の台詞で 「ファミコン」が消えてるところとか。
この頃でももう古かったのかな?ファミコン。

でも一番大きな相違点は、とらが真由子を潮の友達として認識しているところ。
原作では1話目から会っているにもかかわらず、初対面のようなひとめ惚れをしているが、アニメでは「これまでなぜ気づかなかった」と 台詞が入る。
どっちにしてもこれまでは、おなかがそこまですいていなかったから、真由子に関心がなかったという解釈でいいだろう。

あと目の錯覚かもしれないが(笑)、とらの目に映る真由子が突然綺麗になる。
アニメの真由子は可愛いけれどちょっと野暮ったくて、原作でどんどん綺麗になる真由子をどう描いて行くのか心配だったが、体型まで 変えた?と思えるほど。

でも餓眠様の殺戮は原作通りのエグサで、これからアニメになる場合、ここまで思い切りできるだろうかとやっぱり不安になる。
でもそこを抑えれば、「うしおととら」のおもしろさは確実にそがれる。
多くのファンが、「うしおととら」今のアニメ化に不安を感じているのではないかと思う。

郷里さんのとぼけた演技も楽しくて、やっぱり悔しい。
こんな素晴らしい演技ができる声優さんだったのに。
(2015年4月8日の日記)
3月31日 アニメ第4話「転輪疾走」
・佐々木望さん(蒼月潮)・大塚周夫さん(とら)・天野由梨さん(中村麻子)・冬馬由美さん(井上真由子)
・塩沢兼人さん(つぶら)・田中和実さん(先生)・嶋方淳子さん(保険の先生)・田中宏幸さん(生徒)

          ☆           ☆           ☆          

アニメ第4話はオリジナル。
出来は素晴らしいのだが、10話しかないOVAの中に何故オリジナル?
「うしおととら」という作品は一気に読むものだと思っている。
ひとつひとつは独立してても、最後にそれらが大きなうねりとなって最終決戦に押し寄せて行く、その疾走感を味わうものだと思っている。
だからここでオリジナルが入ると、その疾走感が途切れてしまうのが辛い。

制作側もそれをわかっていても入れたかったんだなと思う、単作として見れば本当に素晴らしい。
原作の「一撃の鏡」の麻子版?といった雰囲気だろうか。
登場妖怪は「つぶら」。
Wikipediaによると、「水車やタイヤなど回転する物に潜む妖怪」だそうだ。

子供の頃、麻子が回した古い水車に潜んでいて、麻子が好きになり、連れ帰って水車を回してもらおうとした。
名前の「つぶら」、よく「つぶらな瞳」に使うよね、でもつぶらな瞳って丸いよね、でもつぶらの目は細いよね、なんで?
と思っていたが、「つぶら=円ら」と書いて、つぶらは円、丸い物、つまりタイヤや水車と関わりあるという意味だった(笑)。
正直、ものすごく和風なとこから出て来たわりには洋風の妖怪(道化師に似た部分もある)なんだけど、これで目がまん丸だったら笑っちゃうかも。

声は大御所塩沢兼人さんだけど、紫の外見に長い髪、細い目、喋り方などから子安武人さんの「十二国記」景麒を思い出した。
たくましい景麒という感じ。
眉毛が立派だけど、そこはほら、うしとらキャラだから(笑)。

でも潮と麻子の水車遊びを見ていると、確かにこの2人にはずっと培って来たものがあって、そこに友だちとして以外に真由子が入る隙はないなあと 思えてしまう。
オリジナルなのに、原作の部分をちゃんと汲んで作っているのがいい。
オリジナルになると、途端にキャラが変わってしまうようなのは、正直苦手。

扇風機ととらの場面から、とらがつぶらについて言っちゃうとことか、戦闘時のチームワーク、最後のけじめのつけ方とか、いい話だった。
でも高い所から落ちる真由子を助けるのはとらの役目でしょ?とここだけは突っ込みたい(笑)。

今回のゲスト声優さんの中で気になったのが嶋方淳子さん。
そう、ゲーム「真三國無双」シリーズの二喬、大喬小喬姉妹を1人で演じている声優さん。
青二プロダクションの協力とのことで、無双声優さんが今後も続々出て来るのが嬉しい。
ただ田中宏幸さんがわからない。

俳優、プロデューサーなど3人いるのだけど、Wikipediaを見る限り、どの方も「うしおととら」には関わっていないようだ。
ところでつぶら、オリジナル妖怪だけど後の原作最終決戦に出ているらしいので探してみた。
コミック33巻75ページにちゃんといた、ちょっとじんわり来てしまった。
「うしおととら」はほんと泣けるよね。
余計なことを考えずに気持ち良く泣きたい時は「うしおととら」、これに限る。
(2015年3月31日の日記)
3月25日 アニメ第3話「符咒師 ヒョウ」
・佐々木望さん(蒼月潮)・大塚周夫さん(とら)・天野由梨さん(中村麻子)・冬馬由美さん(井上真由子)
・若本規夫さん(ヒョウ)・郷里大輔さん(麻子の父)・小林俊夫さん(父)・田中一成さん(ヤクザA)
・江川央生さん(ヤクザB)

          ☆           ☆           ☆          

石喰い編の後、何故か絵に棲む鬼編(礼子登場)と、餓眠様編(とらと真由子運命の出会い)を飛ばして符咒師 ヒョウ編に入る。
話数が限られているのにオリジナルを入れてみたり、このOVAはいろんな意味でやりたい放題。
ヒョウは若本規夫さん、私のイメージだと「戦国BASARA」の織田信長とか、「銀魂」の松平片栗虎しか知らなかったので、真面目でシリアスな声は 初めて、びっくりした。

若本さん、あんな太くて深みがある意味恐い声なのに、写真を見たら温和で笑顔が素敵な方でまたまたびっくり。
普通に話す時はどんな声なんだろう。

このヒョウ初登場編は2つの違和感がある。
お金をもらえば悪党でも許すヒョウと、とらへの恨みでヒョウに嘘を教える潮。
作者が今「うしおととら」を描き始めるとしたら、この部分はぶれてるとして変えるだろうか、このままにするだろうか。
ヒョウの多様性と、潮も普通の中学生という部分を見せる効果はあったと思うが。

でもヒョウが若本さんだとちょっと年齢が上がったように見える(笑)。 何歳設定なのかな?30代後半?

相変わらずキャラの表情が豊かで(今回は特にヒョウと麻子が際立った)おもしろいが、とらとヒョウの戦闘で静止画っぽいカットが多かったかな?
あと槍が原作以上にアクティブで笑った。
アイキャッチも潮ととらの追っかけっこに麻子がお邪魔(笑)で可愛かった。
ただ麻子を横から見ると、なぜか「出没!アド街ック天国」の「あしたのジョーほう」を思い出してしまう。
麻子と真由子はもっと可愛くお願いします。
麻子と潮の心の交流は原作通りでほのぼの。

新しく作るアニメ、あまりスタイリッシュにならなきゃいいなあ、泥臭ければいいなあ。
でも戦闘面でいろいろ規制がかかりそうだなあ。
この時OVAじゃなくアニメできっちり作れなかったんだろか、もっと早く。
アニメを見るたびにそう思う。

餓眠様編を飛ばしたために、最後のとらが潮を襲わず去るシーン、「あーのはんばーがーっての、うまいよな・・・」の台詞がカットでとても残念。
この後真由子の所に買ってもらいに行ったかと思える素敵な台詞だったのに。
ちなみに餓眠様はアニメ5,6話の前後編で作られてはいる。

前回石喰いだった江川央生さんがヤクザで再登場、もう1人は「犬夜叉」で懐かしい田中一成さん。
ヒョウがトイレでからまれたヤクザのカットは残念だった。
「おう、オレがふいといてやるぜっ!!」
(2015年3月25日の日記)
3月8日 アニメ第2話「石喰い・百足変化」
・佐々木望さん(蒼月潮)・大塚周夫さん(とら)・天野由梨さん(中村麻子)・冬馬由美さん(井上真由子)
・平野正人さん(先生)・江川央生さん(石喰い)・中村尚子さん(女子生徒A)・南場千絵子さん(女子生徒B)
・丸山みゆきさん(女子生徒C)・加藤謙吾さん(男子生徒)

          ☆           ☆           ☆          

アニメ第2話も原作の第一章「石喰い」を忠実に、迫力満点に再現している。
残念なのは、潮の絵の下手っぷりがカットされたところくらいかな?(笑)。

潮はもちろん、とらも細かい表情の動きが原作通りで可愛かったり怖かったり。
戦闘場面の「痛さ」も何の遠慮もなく豪快に作っているが、今作るアニメでここまで忠実に豪快に作れるだろうか、ちょっと心配。
昨今の社会事情を考えて規制が厳しくなるかもしれないが、だからといって「BLOOD-C」みたいな作り方は絶対嫌だ。
このアニメは、OVAとしてじゃなく、当時きっちり作るべきだった。
今この迫力で作るのは無理な気がする。

潮の泥臭さはこのままでいいけれど、やはり女の子はもう少し可愛くしてほしい、特に真由子。
麻子のヘアスタイルもこんなとこまで原作に忠実にしなくてもいいのに。

石喰いは潮ととらが初めて協力して倒した名前付き妖(変化)だけど、意外に強敵だった。
ここでおもしろさが一気に広がったし、後でこの「鎧」が重大な役どころを与えられる。
鎧が次に出て来た時、あまりの意外っぷりに笑ってしまった記憶がある。

この話でテレビの侍にかかって行ってテレビを壊すとらや、日本史の授業(関ヶ原の闘い)をおもしろがって聞くとらも見られるが、 2度もテレビを壊すのは調子に乗り過ぎだろう、とらはそこまで馬鹿じゃない。

今見ると(あるいは原作を読むと)、獣の槍の使い手は、最初から潮に決まってるのが改めてわかる。
後の継承者候補、潮が槍を手にした時点で継承者教育をやめるべきだったな、彼ら自身のためにも。
結果的に継承者達の葛藤と潮との対立、和解、共闘が中盤から後半にかけての大きなアクセントになったのはうまい調整だったと思う。

今回気になる声優さんは江川央生さん。
私にとっては「犬夜叉」の銀骨やゲームの曹仁(真三國無双シリーズ)、島津義弘(戦国無双シリーズ)他でおなじみの声優さん。
こういう大物悪党声がまた似合う人だなあと思った。
(2015年3月8日の日記)
2月18日 OVA第1話「うしおとらとであうの縁」
・佐々木望さん(蒼月潮)・大塚周夫さん(とら)・天野由梨さん(中村麻子)・冬馬由美さん(井上真由子)
・青野武さん(蒼月紫暮)・郷里大輔さん(麻子の父)・松井摩味さん(麻子の母)

          ☆           ☆           ☆          

原作「うしおとらとであうの縁」そのままの世界が、OVAならではの遠慮のなさで画面いっぱいに展開される。
これもまた、原作漫画をアニメ化する上でお手本のような作品。
OPがいきなりえぐいが、これが「うしおととら」なんだよなあ。
むしろこれから出るアニメが規制が多そうで心配。
局や放映時間帯にもよるんだろうが。
某アニメのようにみっともないぼかしを入れて、「あとはDVDで見てね♪」みたいな作り方は絶対しないで欲しい。

「勇気のファイター」、なんとも恥ずかしいタイトルだが、OP曲も素晴らしく、本編中に入る劇伴や効果音も素晴らしい。
潮(変化後)やとらの髪の流れるような動きも美しく、アクション映画としても絶品。
OPに飛頭蛮が出て来たのも嬉しかった。

原作と違うところと言えば、獣の槍の説明を、最初に紫暮がしっかりしちゃうところだろうか。
もちろん原作未読のファンのための優しい設定。
1990年(平成2年)に連載がスタートしたが、今この瞬間まで、私は「うしおととら」は昭和の漫画だとばかり思っていた。
というのは、絵が古臭く、キャラの顔や服装も野暮ったく、設定がいつなのか、とにかく何とも言えない泥臭さを感じる絵なのだ。

それがこの作品に限って言えば、妖怪が跋扈する世界であることの説得力、不器用ながらがんばる潮の存在感、そして作者の うしとら愛ががんがん伝わってくる作品に仕上がっている。
アニメもその部分を下手に変えずにそのまま作り込んでいるので、まさに「カラーで動く原作」。
潮やとらの表情も豊かで、合間に入るアイキャッチも楽しい。
スタッフさんはそのままで作って欲しいくらい。

潮の佐々木望さんは「犬夜叉」の篠助、「BLOOD+」のカール、「蒼天航路」の霊帝くらいしか知らないが、意外とクセのないイメージ。
潮役当時はまだこなれてなかったのか、まだごつい感じが潮らしくていい。
なぜかEDを歌ったりしてるが、OPの迫力に比べてこちらはあまり印象にない。

とらの大塚さん、先日亡くなってしまった、とても惜しく、寂しい。
大塚さんなくしてとらを演じきれる人はいるだろうか。
凄んだ時の迫力と、お茶目な面と。
井上和彦さん・・・かな?

とても残念だったのが麻子と真由子。
古臭い絵とはいえ、少女達、特に真由子は大好きなのに、冬馬さんもジャンヌ・ダルク(無双OROCHI)で大好きなのに、顔も体型も演技も古臭い。
最初の頃は、真由子のイメージが固まってなくて、麻子共々きゃぴきゃぴした(これもまた死語だ・・・)女の子だったが、ある役割を 与えられてから、どんどん綺麗になり、性格も変わっていく。

でもキャラデザインを1話の段階で決めちゃったんだろうな。
「愚か者は宴に集う」までにはあの雰囲気にしてくれないと私が泣く。
かといって最初から特別な存在っぽく出て来ても困るだろうし。
アニメの中で少しずつ変化させること、できるかな、声も顔も演技も。 麻子も髪をもう少し何とかしてあげないと可哀そうだ。

麻子の父、郷里さんも亡くなってしまった。
ゲーム「戦国無双」シリーズの武田信玄も愛される役だっただけに、今でも惜しむ声は多い。
郷里さん、ファンの声が聞こえてますか?

OVAでアニメとして第五章「あやかしの海」 まで完成されてしまった部分があるので、それを越えてどこまでできるか。
古臭すぎても今の時代にそぐわないだろうし、スタイリッシュにしすぎても「うしおととら」の世界観が失われてしまう。
名作だけにファンも多いこの作品、今になってのアニメ化はある意味危険な冒険でもあると思う。

人気作品だからと映像化されて、大反発を喰らった作品は数知れず。
「うしおととら」はそんなことありませんように、期待したい。
(2015年2月18日の日記)
11月2日 最終話 うしおととら
数えきれないほど多くの人や妖と絆を築いてきた彼らだが、やはり最後はうしおととら。
何度読んでも気持ち良く泣ける。

究極の悪役で、それがむしろ魅力だった白面の者が最後の最後に見せた本当に望んでいたこと、 全てが終わった時、とらはどうなるのか、潮はそうなるのか、全てにおいて完璧だった。
失礼ながら、これだけ汚い絵柄で(褒め言葉)大風呂敷を広げて(褒め言葉)、最後にここまできっちり 話をまとめて世界を終わらせた、これがほとんどデビュー作と言ってよいのか、漫画家のなせる業かと 思った。

私はたしか、「からくりサーカス」を読んでいた頃に「うしおととら」を読み始めたから、藤田さんの経歴や 「うしおととら」の評価などすでに知っていたが、そんなこともうっかり忘れて読みふけった。

力技ながら全ての伏線を回収し、無理なく終えた技術もさることながら、驚いたのはこれまで出会った人や 妖が「うしおとらに影響を受けた者」として2人のために、日本のためにしっかり協力してくれたこと。
その時々はうしおととらに感謝しても、たいていはその後登場することはまずない。
勇や小夜など、何人かは準レギュラーとして登場するのは当然としても、各話で出て来たタツヤや詩織など、 恐怖に怯える人々の中で潮ととらを信じ続ける。

十郎や礼子、勇の父、流やヒョウは冥界の門を抜けて彼らを助け、九印や凶羅は戦いに命を落とす。
とらや白面の者も含め、みんな悔いなく生きたなあと思う。
最後は潮は獣にならずにすみ、日本は救われたが、とらは消えた。
思わず前半ページのとらと真由子の会話まで読み戻ってしまう、そしてまた泣く。

もうこれだけ泣かせられた漫画は初めてだった。
いえ漫画と限定しなくても、気持ち良く泣きたくて手に取る作品はそんなにない。

たとえば人生の辛さを描いて、親子の愛を描いて感動する作品は無数にある。
でもこんな、問答無用で気持ち良く泣ける作品を私は他に知らない。

読み終えて本を閉じれば裏表紙にスピーカーを珍しがって取って来て潮に叱られるとらがいる。
思い出して読みたくなり、読んではまた泣く、その繰り返しだった。
「犬夜叉」が教えてくれた「うしおととら」の存在。
高橋留美子、藤田和日郎両氏には感謝したい。
(2014年11月2日の日記)
10月11日 太陽に 命 届くまで
「うしおととら」も遂に最終巻。
全てのエピソードが感動に満ち溢れていた、とは言い過ぎか。
でも全てに外れがなかった、おもしろい読ませるエピソードだったとは書いておきたい。

その中でも2つの感動のしどころがあった。
1つは潮ととらの物語。
そしてもう1つは真由子ととらの物語。

麻子の付き添いで出て来た頃は、ぽや〜んとしてこれといって特徴のない少女だったが、真由子には2つの大きな設定があった。
1つはお役目様、もう1つはとらとの関係。

時には麻子を喰うほどの大きな設定と、とらとの関わりで見せる可愛さ、健気さ、優しさで最後まで強い印象を残す。
私がもし好きなエピソードアンケートに投票するなら、「とら街へゆく」 (とらとの出会い、飛頭蛮編)、 「愚か者は宴に集う」(とらとの婚礼?たゆら、などか編)、そして今回の「娘 静かに舞い降りぬ」(とらとの別れ)に 投票しちゃうかも。

潮ととらのコンビはストーリーを大きく進め、人としての感動を残すが、真由子ととらは、何て言うのかなあ、心が とっても暖かくなる、そんな感じ。
潮といる時の少年のようなとらも好きだが、真由子といる時の青年のようなとらも好き。
ちなみにかがりといる時の老成したとらも好きだ。

潮に心を傷つけられたとらを救いに来る真由子。
例によってとらの言う事を聞かないそのずれた言動が、とらを癒していく。
とらには戦って欲しくない、人間になってもらって一緒に過ごしたい、そんな願いを口にする真由子。
もしも真由子の願いがかなってとらがシャガクシャに戻ったら、束の間でも、そんな風に思ってしまう。

同時にもしかしたら肩の抉れた老人に戻るのではないかと、別の意味でドキドキしたこともあった、情けない・・・。
真由子の想いはとらを癒し、同時に鼓舞する。
今一度、潮の元に戻ろうと飛び出すとら。
微笑みと共に見送る真由子。

結果的にこれが二人の別れとなる。
この時点でとらの消滅が予想されるように描かれており、もうこの2人の会話は読むたびに泣ける。

潮と合流、改めて白面と対峙するとら。
一方苦戦していた人間、妖達にも大きな味方が現れた。
これまで潮ととらが出会った者達、そして冥界の門から戻って来た者達が力を振り絞って共に戦ってくれている。
中でも雪妖と、次回感想の分だが、凶羅のところが一番泣けた。

だが究極の悪役として君臨している白面の者もまた強烈なキャラクターでいい、一気に読ませる。
それが最後に唖然とさせられる、あんな結末になろうとは夢にも思わなかった。

最後にまた真由子に戻るが、真由子は潮や麻子に対しては結局自分の想い(潮に対する)を隠すための遠慮があったが、 とらには、本当に素直に自分の気持ちを吐露しているなあと思った。
最初は潮への想い、そして最後にとらへの想い。
私はそんな真由子ととらの関係がたまらなく好きだった。
(2014年10月11日の日記)
2月17日 黒博物館 ゴースト アンド レディ
藤田さんには申し訳ないことながら、「月光条例」のあたりからストーリーよりも絵の迫力について行けなくなり、「双亡亭壊すべし」は途中で挫折してしまいました。
そんな状態だったので「黒博物館 ゴースト アンド レディ」にもしばらく手が出ませんでしたが、「漫勉」 を見て 読みたくなり、買ってはみたものの、またしばらく積読状態。
年が明けてやっと読み始めました。

私がテレビで見て「ゴースト アンド レディ」を買ったのは、その絵がとても洗練されて見えたからなんですね。
藤田さんは良い意味で「洗練」という言葉が似合わない漫画家さんだと思いますが、とにかく私が好きな藤田さんの絵に戻っていました、そう見えました。
前にどこかで書いたことがあると思いますが、私はレイアウトに凝った雑誌や広告、イラストマップなどが苦手です。
直線上に絵や文章が並んでいないと、どこから見れば(読めば)いいのか、どれまで見たのか(読んだのか)わからなくなってしまうんです。

藤田さんの最近の作品はそれに似たところがあって、私の眼には見づらかった。
でも「ゴースト アンド レディ」は綺麗だったなあ・・・。

ストーリーも知らなかったので、史実の人物が出て来たのには驚きました。
私には彼女ではなく、架空の人物が出ていたら普通のファンタジーで終わっていただろう、彼女が出て来て絡んだからこそ「リアルなファンタジー」に昇華し得たのだろうと思えました。
読んでる間、彼は本当に存在していて、だからこそ彼女はこの偉業を成し遂げることができたのだと素直に思いましたもん(笑)。

彼女に関わる人物も実在しており、その行動や性格に全く違和感がないのにも驚かされました。
子供の頃読んだ伝記の偉人はみんな聖人君子で、ある程度の年齢になると「子供用にあえてきれいな人物として描かれていることに気付き、失望」するものです。
さらにその年齢を超えると、「そのきれいではない姿こそが実像であり、だからこそその業績は偉大なのだということに気付く」のです。
でも彼女はおそらく知る人誰もが子供の頃描いたイメージを損なうことなく抱き続けることの出来る稀有な人物ではないかと思います。
そして藤田さんの描く彼女はそのイメージを数ミリたりとも裏切っていない。

素晴らしい作品だと思います。
結末が「うしおととら」に似ているところも好き。
異なる魂を持つ者は共に生きることは出来ないけれども、その魂の結びつきは決して失われることはない。
彼と彼女がまた会える日は来るのでしょうか。
続編も書いて欲しいけど、これは望んじゃいけない作品かと思いました。
傑作です。

ミステリアスな黒衣の学芸員も素敵でした。
最初は彼女の生まれ変わり?と思いましたが、そんなおかしな役回りじゃなくどんどん可愛くなっていく。
彼女を登場させて新たなキャラで続編は描いて欲しいなあ・・・。
(2018年2月17日の日記)

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