★軽くネタバレ含みます。
以前「初ものがたり」の感想を書いた時に、続きを書いて欲しいのに書いてくれないと泣いてたら(笑)、宮部ファンのCさんからメールが届いた。
な、なんと!「初ものがたり」に続編があるというのだ!
「完本初ものがたり」、出たのは知ってたが、装丁だけ変えて中は一緒だとばかり思っていた。
宮部さん、ごめんなさい!
PHP研究所さん、ありがとう!
さて、追加されたのは「糸吉の恋」「寿の毒」「鬼は外」の3編。
あれ?読みやすくなった?
内容が軽いのではなく、文章が読みやすくなった気がする。
宮部さんの成熟がより強く感じられる。
成熟したから文が簡潔になったというのも変だけど、前よりすっきり感が強い。
・「糸吉の恋」
糸吉が恋をした。
「白魚の目」でもずいぶんロマンティストだなあと思ったが、それだけに「騙される」糸吉。
騙す方の辛さ、騙される方の切なさ。
若い2人の悲しい心を、綺麗な菜の花が癒し隠していく・・・ことができる・・・のか?
・「寿の毒」
福寿草が意外な使われ方をする。
ちょっとクリスティーを思い出した。
・「鬼は外」
鬼が悪や不幸の象徴として払われる節分。
でもかつて鬼は自分たちとは異質の存在を卑下する言葉だった。
(大江山の鬼退治で退治された酒呑童子が土着の勢力の象徴だったように)。
そうでなくても罵られ、豆をぶつけられる立場の弱い人たちに、屋台の親父が居場所を作ってやる。
目新しさはないが、宮部さんが書くとやっぱり心が暖かくなる。
新作3編の中で一番好きなのがこの「鬼は外」。
他に嬉しいのが日道こと長助が、相変わらず不思議な力を持ちつつも、親しみやすい存在として出て来ること。
痛々しいまま終わっていたので、ちょっぴり子供らしさも見られて嬉しい限り。
そして屋台の親父も謎っぽさが薄まった。
謎がないわけではないが、すっかり物語に溶け込んで、謎はもういいや、いてくれるだけでいいやっていうまったりした気分になれる。
「初ものがたり」の絵図が掲載されているのも嬉しい。
先日池波関係で取り上げたばかりの弥勒寺や、宮部さんと言えばここ、富岡八幡宮、私が大好きな亀戸天満宮など、この絵地図を
見ながらまた宮部さんの物語をたどってみたい。
2013年(平成25年)刊行だが、宮部さんがあとがきでこれからもゆっくり語り広げて行きたいと書いているので、今後も期待できそうだ。
(2015年2月15日の日記)
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