おいしい本をさがす道(八)


4月9日風の向くまま〜ダイオウのパイ
主婦探偵ジェーンシリーズで有名なジル・チャーチルの別シリーズである「グレイス&フェイヴァー・シリーズ」、最初主人公の2人が グレイスとフェイヴァ―かと思いましたが違いました(笑)。
妹のリリーと兄のロバート、クリスティで言うならミス・マープルの「動く指」でしょうか。
あんな感じのちょっとノリの軽い兄妹が探偵として活躍するシリーズです。

舞台は大恐慌後のニューヨーク。
大金持ちからいきなり貧乏のどん底に突き落とされた兄妹に突然降ってわいた夢のような話。
遺産相続の条件は厳しいけれど、2人はその話を受けることに。
ところが、と続きます。
まだ1作目しか読んでませんが、私はジェーンシリーズよりこっちが好きかも。

まず出て来る人たちがみんないい。
いい人も悪い人もみんなリアルでいかにも実在する感じなのにおもしろい。
さらにお料理名人がいて、レシピにこだわる本ではないのに、とにかく食事の場面が(短いのに)おいしそう。
でも軽いやり取りの裏にじんわりにじむ「現実」の苦さとか、ジル・チャーチルはほんとにうまいなあと思います。

ジェーンシリーズが長く続きすぎて失速している今、6冊出てるこちらのシリーズには期待です。
といっても日本でもアメリカでも2015年(平成27年)以降新作出てないようなんですけどね。

さて、この本に出て来るダイオウのパイ。
最初読んだ時は気づかなかったのですが、ダイオウってルバーブのことでした。
日本でもちょこちょこジャムなど見かけるようになりましたが、まだまだ一般の認知度は低い?
私の回りでもコージー好きな人しか知らないルバーブ。

メルボルンのスーパーで生のルバーブを見つけたのでお願いしてお菓子を作ってもらいました。
赤いセロリ?みたいなルバーブをざく切りにして砂糖と一緒にじっくり煮つめて、やっぱりジャムになります。
これをフィリングとして使うのが一般的なようです。
っていうか、酸っぱいので生食には向かないし、他の調理法がないのだとか。
ルバーブのパイと手軽なジャムトースト風にバニラアイスを添えて頂きました、おいしかったです♪
(2018年4月9日の日記)
4月25日貧乏お嬢さま、メイドになる〜いちごタルト
私のコージー友達の中でも評判が良かったリース・ボウエンの貧乏お嬢さまシリーズ。
正確には「英国王妃の事件ファイル」というシリーズ名がついているのですが、たしかに英国王妃は出て来るけれど添え物程度。
メイドの肩書?も添え物程度でやはりインパクトがあるのは「貧乏お嬢さま」の部分でしょう。

舞台は20世紀初頭のスコットランド。
王位継承権は34番目、英国王族の1人ではあるものの、貴族の肩書ばかりで実際は貧乏なジョージー。
凍え死にそうな古城で兄夫婦と暮らしていたものの、このままでは意に添わぬ結婚を押し付けられる。
そこで城を飛び出し、ロンドンにやって来ます。

もちろん現実は甘くなく、ジョージーは架空のメイド会社を立ち上げ?メイドとして働くことになるのですが・・・。
大変そうに書いてますが、この本の中では現実は結構甘い。
頼りになる祖父や幼なじみや恋人候補は近くにいるし、仕事もなんだかんだでうまくいってます。
現実だったらあり得ない展開です。

なのでミステリでありながらどこかジョージーにコメディエンヌっぽい余裕があるし、小説としても気楽に読めるおもしろさがあります。
予想してたよりオーソドックスな小説といった印象でした。
そういえば「評判は良かった」けれど「評価が高かった」わけではなかったなあと納得。
5年間で8冊出てるってけっこう早いペースですよね。
人気あるんでしょう。
ちなみに本国では去年11作目が出たようです。

訳が古川奈々子さんで、ロマンス小説の翻訳が多い方のようです。
手慣れた感じで読みやすい。
一人称の場合特に、訳が合わないと読むのが苦痛になりますが、この作品は好印象でした。
3作目から訳者が変わるようですが、どうなるか気になるなあ。

ただ直前に「バッキンガム宮殿の殺人」を読んでしまっていたので、あのインパクトにはかなわなかったのが残念です。
良くも悪くもオーソドックス、そんな感想になりました。

ただおいしい物は、お城で女王とティータイムなんてするくらいですから豪華です。
いちごタルト、チェルシーパン、ソーセージロール、フィンガーサンドイッチ、エクレア、ベークトビーンズ、ボローバン、プチフール、 焼きりんごのカスタード添え、スパゲティ・ボロネーゼ、メルトンモーブレーパイ、シャルロットルース、ヴィクトリアスポンジなどなど。

ベークトビーンズは置いといて(笑)。
チェルシーパン、ヴィクトリアスポンジは知ってますが、実物は見たことないし。
ボローバンは小さな軽いパイケースにお料理を詰めたものだそう、見た目はタルト?
メルトンモーブレーパイはメルトンモーブレー地方が有名なポークパイ。
シャルロットルースはスポンジケーキにホイップクリームと砂糖漬けのサクランボを載せた菓子だそうですよ。

私はこちらもオーソドックスに、「いちごタルト」です。
デリ・フランスでまんま「苺のタルト」で売ってました(笑)。
(2018年4月25日の日記)
5月19日猫は手がかりを読む〜エッグベネディクト
★作品の重大なネタバレ含みます。★

リリアン.J. ブラウン著「シャム猫ココ」 シリーズ1作目。
だいぶ前に揃えてはいたのだけれど、猫物といえばリタ・メイ・ブラウンの「トラ猫ミセス・マーフィ」シリーズが好き過ぎて、あとココの表紙が あまりに古い感じでなかなか手が出ませんでした。
それにしてもこの2人の猫シリーズの作者、名前が似ててややこしいですね(笑)。

読み始めても100ページくらいでいったん止まったんじゃないかな?
何年かたって、気を取り直してそこから読んだら加速がついて一気に読み切ったように記憶してます。

ただマウントクレメンズはおもしろいキャラだったので、残して欲しかったなあ。
実は意外と小物であっさり殺されましたって展開は正直もったいない。
ミステリアスな人物としてこのまま登場して欲しかった。
クィラランの下宿先としても理想的だったので残念です。

シャム猫は優美だなあ、綺麗だなあと思って見てますが、そんな叫び声上げるとこ見たことないのでちょっと怖かった(笑)。
私は和猫が好きかな?
でもやっとクィラランとココのコンビにも慣れたので、このシリーズ、読み進めたいと思ってます。

クィラランの下宿?の主人であるマウントクレメンズは料理上手で、気が向くとクィラランを料理でもてなしてくれます。
気になったのがエッグベネディクト。
この本最初に読んだのは6年前!なんですが、当時はエッグベネディクトってどんな料理なのか知りませんでした。
でもちょうどその頃流行り始めた?のか次の年にコンビニで見つけて買ったのがこの写真です。
2012年(平成24年)頃には私もおいしい物見つけると写真撮り始めてたみたいです。

Wikipediaによると、「イングリッシュ・マフィンの半分に、ハム、ベーコンまたはサーモン等や、ポーチドエッグ、オランデーズソース 乗せて作る料理」とあります。
今では珍しい料理ではなくなりましたが、当時は結構お洒落〜な感じでよく買ってました。
ベネディクトさんが考案したからエッグベネディクトと言うんだそうですよ。
勉強になりました(笑)。
(2018年5月19日の日記)
10月16日冬うどん 料理人季蔵捕物控〜稲庭うどん
一時期コージーミステリに夢中になった時期があって、そればかり読んでいました。
簡単に説明すると、事件が起きても陰惨なものではなく、主にヒロインが友人や時には警官の力を借りて 解決していきます。
ミステリの部分以上に食べ物や雑貨、海外の日常の描写に重点が置かれ、それこそ紅茶を飲みながら気軽に読めるミステリです。

このジャンルが日本で成立しなかったのは、やはり一般人が警察を差し置いて事件に関わるという状況があり得ないからでしょう。
名探偵コナン、、金田一少年、浅見光彦は身近に警察関係者がいて、事件に関わりやすい状況ですが、コージーではないし、十津川警部のように 自身が警察関係者である方が書きやすいでしょう。
これらはとてもコージーとは言えないと思います。

日本ではミステリではなく、ライトノベル、あるいは時代小説の中で食べ物を扱う作品が一気に増えたように思います。
かつて池波さんは「物語の中に季節感を出すために」食を取り入れましたが、そうではなく料理人や料理屋など、あるいはカフェ、レストランなど 物語の半分、時には三分の二は食の描写であるような作品も少なくありません。

時代物に限って言えば、女性作家の方が修行ではなく、気軽にさりげなく食の描写を埋め込むのがうまいように思います。
男性作家だとどうしても修行だったり、いかにもはめ込みましたみたいな流れが多いかな・・・。

最近よく読むのが和田はつ子著「料理人季蔵捕物控」シリーズです。
1巻からきちんとは読んでなくて、目についたタイトルを手にとる感じでしょうか。
それでも35冊出てるのかな?
もう20冊くらい読んでいると思います。

ストーリーをしっかり押さえているわけではないのですが、食の描写を拾い読みするだけでもおもしろいです。
料理人が苦労しながら大成していく大長編もそれはそれでいいのですが、まあいろんな雰囲気の小説を楽しめるという意味では、現代物、時代物に 限らずジャンルが広がったのはいい事だと思います。

ただこの「冬うどん」に限って言えば、熱々の稲庭うどんが出て来るのがちょっと悔しい(笑)。
私、稲庭うどん大好きなのですが、家でゆでると最後に冷水で洗ってぬめりを取らなくてはなりません。
ここで冷めちゃうんですよね、つけ汁がぬるくなっちゃう、それが嫌。
もう一度熱湯にさらすと今度は歯触りが悪くなる。

私の茹で方が下手なだけですが、稲庭うどんは冷たいのしか食べません。
「冬うどん」を読んで稲庭うどんを食べたくなって、真壁屋さんに行きましたが、結局冷たいうどんにしちゃいました。
稲庭うどんでなければかも南蛮とかあっつあつのうどん、大好きなんですけどね・・・。
というわけで?「料理人季蔵捕物控」シリーズ、コージー時代小説?読みたい方にはお勧めです。
(2019年10月16日の日記)
11月26日MAO〜シベリアロール
現在週刊少年サンデーで連載中の高橋留美子さんの漫画「MAO」。
大正時代と現代を行き来する少女の物語で、今は大正時代も震災被害を受けてしまいましたが、連載初期の頃は、 凌雲閣(12階)やミルクホールなど大正時代の風物詩が楽しめました。
摩緒や菜花がミルクホールにいると、必ず菜花の側にあるのが「シベリア」。
摩緒の気遣いなのか貂子さんのサービスなのかわかりませんが、見るたびにほっこりします。
残念ながら菜花が食べるシーンはありませんでしたが。

シベリアは、サンドイッチのようにカステラで羊羹を挟み込んだお菓子で、私もスーパーでときどき見かけますが、 食べたことはありませんでした。
最近は「風立ちぬ」「いだてん」などにも登場したようですが、まだ見ていません。

でも先日、巣鴨に行った時にふと「シベリアロール」という看板を見つけました。
「とげぬき福寿庵」というお店です。
それまでもちょくちょく見かけてはいたのですが、「シベリア」と「シベリアロール」は別物だとばかり思っていたので気に留めていなかったのです。
でもあんこのロールカステラみたいなビジュアルだったので、もしかしたらと思い、入ってみました。

そしたらやっぱり「シベリア」でした。
昔の製法だと、溶かしたあんこや羊羹をカステラに貼り付ける感じになるので、どうも食感も今ひとつだし、甘さもくどいようなのです。
そこで、今の時代でもおいしく食べることができように、ふわふわのカステラで、甘さ控えめなあんこを巻いて(これが大変難しい技術なのだそうです)、 作られたのがシベリアロール。
お店で頂きましたが、本当に爽やかで口当たりの良いおいしいロールカステラあんこ巻き?でした。

菜花にも、「MAO」の中で復興した大正時代でシベリア食べた感想聞きたいな。
福寿庵さんでは、シベリアロールの他にもベビーカステラ、シベリアアイス最中など、懐かしくておいしそうなお菓子を販売しているので、今度巣鴨に 行ったらまた買って来たいと思います。

ひとりごと」 にも写真を載せてあります。

★東京都豊島区巣鴨4-26-3(福寿庵)
(2019年11月26日の日記)
6月8日待ちに待った個展の夜に〜スコーン
夫婦はクロテッドクリームとジャムを添えたスコーンを食べ、中国茶を飲んだ。

ニューリン・アート・ギャラリーまでたどりついたときは、4時をまわっていた。
これからまだ坂をのぼらなくてはならないが、自動車から解放されてかえってうれしいぐらいだった。
身体を動かすほうが健康にもいい。
熱い午後の陽射しの下で船がきらきら光っていた。
街の交通量がふえてきて、あたりには排気ガスやディーゼルガスが重くたれこめている。
道の片側がフランスの貨物トラックにふさがれていた。
市場の魚を積み込んでいるのだ。

   ☆   ☆   ☆

ジェイニー・ボライソー著「コーンウォール・ミステリ」シリーズ4作目。
主人公のローズが初めての個展を開くことに。
シリーズを通して初めて両親が登場して(2人ともとても魅力的)、ローズは幸せの絶頂に。
ところがその矢先に友人の息子が亡くなります。
とてもいい子なのに、犯罪絡みを匂わせる不審な死に方。

ミステリとしてよりコーンウォールの風景描写に読み応えがあるシリーズ。
被害者となった青年ジョーがあまりにいい子で、冒頭からきついものがありました。

(2020年6月8日の日記)
8月31日ハロウィーン・パーティ〜なつめ(デイト)
「チューニスなつめ(デイト)」と書いてあった。

「ははあ、こんどはなつめ(デイト)ですね」。
「そうですわ。なつめ(デイト)ですわ」
彼女はまた一つのなつめをとり、口の中に入れ、種をとって藪のなかに投げこみ、むしゃむしゃ食べつづけた。
「デイトか」とポアロは言った。
「これは驚くべきことです」
「デイトを食べることが、なんで驚くべきことなんですの?
誰でも食べていますわ」

   ☆   ☆   ☆

リンゴが大好きだったミセズ・オリヴァは、リンゴを使った殺人事件に巻き込まれ、リンゴはもう見たくないとまで思いつめます。
代りに食べ始めたのがデイトと呼ばれるドライフルーツ。
初めて読んだ時は、日本でよく見る小粒で固いなつめを思い描いていましたが、こちらはナツメヤシの実をドライフルーツに したもので、ずっと大きく、甘みも強かったです。

今は「デーツ」が一般的な呼び方ですね。
「ハロウィーン・パーティ」では、このミセズ・オリヴァとのやり取りが、ポアロにとって重要なヒントとなります。
「チューニス」は「チュニス」のことで、チュニジア共和国の首都の事ではないかと思います。
デーツは北アフリカでたくさん生産されているそうですが、チュニジア共和国も北アフリカに位置します。

でもこのなつめ、今風に「デーツ」としちゃうとヒントにならないですね。
「デイト」だからこそ意味がある。
その辺新訳が出ているかどうかはわかりませんが、出てるとしたらどうなっているのか、あるいは今後出すとしたらどうするのか興味はあります。
(2020年8月31日の日記)
9月16日 オンネリとアンネリのおうち
テーブルにつくと、プクティーナさんが、おさとうをまぶしたケーキと、ジュースを持ってきて くれました。
こんなにおいしいケーキ、食べたことがありません。
ふつうのケーキとおんなじに見えるのに、ひと口ごとに、味がぜーんぜんちがうのです。
ひと口目はチョコレートの味。そのつぎはバニラの味。
三番目はレモンの味、そして、アーモンドの味というふうに。

   ☆   ☆   ☆

子供の頃の方が今よりずっと読書量が多かった私ですが、好きな本は数あれど、一番 出会いのインパクトが強かったのが、フィンランドの作家、マリヤッタ・クレンニエミ著 「オンネリとアンネリのおうち」です。

不思議な名前の女の子と優しい絵。
読み始めてたちまち魅了されました。
私にとってはこれこそが「ファンタジー」で、大人になって読んだ上橋菜穂子やトールキンの 物語は厳し過ぎて、これはファンタジーじゃないと思ったほどでした。

ファンタジーは空想の世界を物語った作品で、あくまでもほんわか楽しいものじゃなければ ならないと、子供心に決めつけていたのでしょう。
それほどオンネリとアンネリに起こった出来事は、不思議で素敵な事でした。

オンネリとアンネリはとても仲良しの女の子。
2人はバラ横丁で大金を拾います。
そして2人の目の前には「小さな女の子がふたりで住むおうち」があったのです!

まあ普通に考えたら、大金を拾ったからと言ってそんな簡単に女の子2人が家を買えるわけがありません。
ところが2人は買えちゃったのです!
そこが私のいわゆる「ファンタジー」であり、同時に2人が抱える複雑な事情もあるのですが、そこは 是非読んでみて下さい。

そしてオンネリとアンネリは2人だけでこの家に住むことになるのですが、その家の素敵な事と言ったら まさに夢の世界。
さらに素敵なお隣さんや魔法?まで。

引用した文章にあるケーキが、一口ごとに味が違うのは、プクティーナさん達が飼っているニワトリが、 1個1個色も味も違う「本物のイースターの卵」を産んでいるからなのです。
他にもクリスマスの飾りやふうせんやろうそくや花火やキャンディーや、楽しい物が全部庭で育てられていました。

作品の中では「魔法」と言う言葉は出て来ませんが、まさに魔法の世界が目の前で繰り広げられます。
何て言うのかな、読者(少女だった頃の私)がオンネリやアンネリと一緒に不思議な世界を共に 体験しているかのような鮮やかで楽しい世界でした。

残念ながらそんな不思議なケーキはこの世に存在しないので、ここでは「バラ横丁」、そして2人に家を売ってくれた バラの木夫人にちなんでバラの写真を載せました。

ただこの本、私が子供の頃、すでに小学校の図書室にあって、しかも表紙絵は同じマイヤ・カルマさんだったと 思うのですが、もっと黄色っぽい背景色だったと思うんですよね。
その本を買ってもらったのに、屋根で読んでそのまま置き忘れて雨に濡れ、カビが生えたという悲しい思い出があります。

今手元にあるのは2005年(平成17年)に出たもので、違うイラストになっています。
そしてネットで探しても昔のイラストの本は出て来ませんね、廃版になったとしても全く見当たらないのは不思議です。

そして先日びっくりしたのが、このオンネリとアンネリのシリーズ、3本が映画化されてて、日本でも公開されていたのです!
それで2017年(平成29年)に2作目の本、「オンネリとアンネリのふゆ」が刊行されたのでしょう。
随分長い年月がたってからの2作目です。

その映画「オンネリとアンネリのおうち」も見てみました。
とても可愛く、不思議で素敵だったけど、私の思い描いていた世界とはちょっと違った。

本のイラストのオンネリとアンネリはふんわりしているけれど、映画の2人は映画の紹介にある通り、「ちょっぴり おませな女の子たち」なんですね。
私のイメージしてた少女たちとは別な感じでした。
もっとリアル。

これはこれでいいのかもしれませんが、ちょっと寂しいかも。
って友達にメールを出したら、「えむさんってロマンチストなんですね。」とお返事が。
そうなのかな?
自分ではよくわかりません(笑)。
映画はもう2作あるのでそのうち見てみようと思います。
(2020年9月16日の日記)
10月5日 今夜は眠れない〜氷イチゴ
午前十時から午後三時までのあいだに、僕と島崎は、それぞれに缶ジュースを 二本ずつ、氷イチゴを一杯ずつ、アイスキャンデー二本ずつを消化した。

それでも、一度もトイレに行かなかった。
全部汗になって流れ出てしまったのだ。
つまりは、それほどに歩き回り、なおかつ徒労だったということだ。
   ☆   ☆   ☆

今年は「今夜は眠れないなあ。」、いえ「今夜も眠れないなあ。」と思う日が何度も ありました。
個人的な悩みではなく、全世界が大きなストレスにさらされた中で、私自身もまた この世界に生きる1人としてストレス抱えていたのだと思います。

そんなある日、憂鬱な気分で寝ようとしてふと本棚で目についた本。
初期の宮部さんの短編には、似たようなタイトルで似たような主人公の作品が多いので、 どんな話だっけ?と思いながら再読。

眠れないのではなく、眠るのも忘れて一気に読み切ってしまいました。
その後はすとんと気持良く眠りに落ちました。
宮部小説に登場する「子供」は出来過ぎなくらい賢い良い子が多いです。
それでも鼻につくことがなく読めるのは、やはり子供の描写がうまいから。

物語は、「ぼく」の母に昔ちょっとだけお世話になったある人物が、母に5億円の 遺産を残すところから始まります。

これで「うらやましい」と思えないのが現実なんですね。
日本の宝くじは、本当に当たってる?と疑ってしまうほど秘密主義ですが、アメリカのように テレビに顔や名前を出して喜んでいるのを見ると、当選者のその後の人生が 心配になります。

「僕」の一家はまさにその状態で、突然友人知人、親戚が増え、寄付や取材の申し込みも 増え、羨望や嫉妬やありとあらゆる負の感情が一家に襲いかかり、一家は崩壊。
もともと絵に描いたような幸せな家族、ではなかったものの、みんなにとっては本当に 辛い事だったろうと、架空の人々ながら同情してしまいます。

宮部さんの初期の作品ですが、こうした「現実」の取り入れ方はやっぱりうまいですね。
それでいて後に出る重厚な長編のような重さがなく読めるのは宮部さんの若さであり、 子供描写のうまさがなせる技なのかと。

さて、かき氷はもともとそんなに食べない私ですが、最近のかき氷はとにかく量が多くて とても食べる気になりません。
暑い日など、食べたいなあと思いつつも溶けるものだからシェアできないし。
特に今年はシェアどころの騒ぎじゃなかったし。

「今夜は眠れない」で「僕」と島崎くんが食べたのは、昔ながらのこんな氷イチゴじゃなかったかな。 私もこれくらいなら大丈夫です。
これは毎年文京区で行われる朝顔・ほおずき市に行った時、善光寺だったかな?に出ていた お店で食べました。

今年は中止でしたが、これは2年前の写真です。
伝通院の朝顔市と源覚寺(こんにゃくえんま)のほおずき市、暑い中坂道を歩くとけっこうしんどいので 必ず食べる氷イチゴ。
来年は何の懸念もなく楽しくお出かけできますように。
(2020年10月5日の日記)
八朔の雪〜牡蠣鍋
鍋肌に塗りつけられた白味噌がほどよく出汁の中に溶けだしたところへ、 ふっくらと太った牡蠣が顔を覗かせていた。
これ以上火を入れると身が痩せてしまう。
今が一番良い頃合いなのに、と娘は恨めしそうに客の出て行った引き戸を見た。

   ☆   ☆   ☆

高田郁著「みをつくし料理帖」は何度も読むし、黒木華さんのドラマも何度も観てしまいます。
「みをつくし料理帖」以降のシリーズは、ちょっと読んでて主人公に共感するよりしんどさの 方が先に来るかな?って感じで再読まではしてないかも。

それほど「みをつくし」のインパクトは強かったです。
ドラマも私は黒木版しか見てないので、澪は黒木さん以外考えられないです。
元々黒木さんは好きな女優さん(「真田丸」は除くけど)なので、余計見ちゃいます。

ドラマ自体もおもしろいけど、ドラマ後の澪のまま現代のキッチンでお料理作るところが とても笑えます。
好きだなあ、こういうの。。

さて、「みをつくし料理帖」第1話には牡蠣鍋が登場します。
高田さんのお料理描写もまた見事で読んでるだけで食べたくなるのに、澪の料理は江戸の 人達には合わず、食べてみようともせずに出て行ってしまいます。
そこが江戸っ子なんでしょうが、なんてもったいないことを、と他人事ながら初読の時は いきりたってしまいました(笑)。

その頃かな?
たまたま行った「とんでん(和食のチェーン店)」のメニューに牡蠣鍋発見!
もちろん頼みましたよ、何年前になるかなあ。
実は「白味噌」も初めてで、もちろん「つる屋」の牡蠣鍋と比べたらいけませんが、それでも 熱々の白味噌仕立ての牡蠣鍋はおいしかったです。

また食べたいなあと思って、山形の物産展だったか、で白味噌を買おうと思い、料理法など 聞いてみたらとても味の加減が難しいとの事。
じゃあ無理だわと思って買うのをやめた私に、「しまった!」って顔したお兄さんのことは 未だに忘れません(笑)。
また食べたいなあ、白味噌仕立ての牡蠣鍋。
(2020年12月11日の日記)
授業の開始に爆弾予告〜ビーフシチュー
「いいにおいだな」
ビルが鍋のふたを持ち上げて、笑顔で鼻をひくひくさせた。
「ビーフシチューよ。
赤ワインとマッシュルームソース入りのね」
「これを作るのはずいぶん久しぶりだな」
「ええ。土曜日にあなたがトビーと釣りに出かけているあいだに、古いレシピを見つけたのよ」
本当は、スーの助言にしたがって食料貯蔵庫を上から下まで引っかきまわし、最上段で 長く忘れられていた電気鍋(クロック・ポット)をさがしだしたのだ。

   ☆   ☆   ☆

レスリー・メイヤー著ルーシー・ストーンシリーズ4作目。
ショッキングなタイトルの本作ですが、事件以上に気になったのが被害者となった女性。
わざと事件を起こして英雄的な行動を取り、周囲の称賛を浴びることを求める人物です。
パトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズにもルーシー物を遥かに上回る同様の殺人犯が 登場しますが、コージー・ミステリにも登場するとは。
初読の時は、登場時にすでにぞわっとしました。

このシリーズは変った料理のレシピをあれこれ載せるタイプではありませんが、「アメリカの子持ちの主婦の 日常」が丁寧に描写されています。
今回引用した電気鍋の件を読んで、意外と日本の主婦と変わらないんだなとくすっと笑ってしまいました。

写真のビーフシチューはタカセです。
洋食大好きな私ですが、ビーフシチューはタカセが一番好きかも。
味が濃厚でどこか懐かしい感じがします。
早く食べに行きたいな。
(2021年1月5日の日記)
5月11日 旅のお供に殺人を〜メキシコ料理
「アンジェラ」 キャレドニアは穏やかに言った。
「ちょっと黙んなさい!
グリュンケさんをそっとしといておやり。
そのへんのきれいな花でも見て、あの人のことはちっと忘れるんだわ。
まだあんまりあのじいさんのことを知らないけどさ、これからもっと一緒に生活していくう ちに、おいおいわかってくるでしょうが。
いいこと教えたげるよーもしチャンスがあったら、おひるごはんの時にあの人の隣に 坐ってごらん。」   

   ☆   ☆   ☆

コリン・ホルト・ソーヤー著「海の上のカムデン」シリーズ最終話。
原作も8巻、翻訳も8巻きちっと出て、全巻読めた幸せなシリーズです。
作者のソーヤーさんは、カリフォルニア州の老人ホームに入所後、このシリーズを書き始めました。
1冊目の「老人たちの生活と推理」がアメリカで出たのが1988年(昭和63年)、「旅のお供に殺人を」は 1988年(平成10年)に出ました。
今はアンジェラやキャレドニアとカムデンで楽しく過ごしてらっしゃるんじゃないかと思っています。

「老化」を意識せざるを得ない年齢、かといって真っ向から向き合うほどでもない年齢、なってみれば とても中途半端です。
だから本やドラマなども、あまりにリアルな「老化」の物語はまだ辛い。
若者中心の青春ドラマも別の意味で辛い。

「老化」の未来に向けた参考書、気軽に楽しく読めて、それでいて「老化」について学べる本、それが このシリーズでした。
老化を受け入れつつも立ち向かう(笑)、人生を精一杯楽しむアンジェラ達。
もちろん彼女たちはとてつもなくお金持ちで、だからこそ許された特権でもあるわけですが、それでも 彼女たちの人生への向き合い方には自然に学ぶものがあります。

日本だったらこのパワフルさは書けないだろうな。
アメリカでドラマ化して欲しいな。

日本だったら吉永南央さんの「紅雲町珈琲屋こよみ」でしょうか。
さりげない日常のさりげない苦さ、でも老化もさりげなく受け入れて行く。
老化に「立ち向かう」と「受け入れる」、この差は大きいけれど、どちらのシリーズもぐちぐち 考えずに気軽く楽しく読めるのがいい。
その中で老化について学べる、どちらも大好きなシリーズです。

そういえば石坂浩二さん主演の「やすらぎの郷」もちょこちょこ見てましたが、あのドラマも老後の理想形 でした。
もっとちゃんと見とけばよかったな。

ところでこの「旅のお供に〜」ですが、アンジェラたちはメキシコを訪れます。
よって今回の写真は池袋西口のメキシコ料理店「エルトリート」よりメキシカンブリトーです。
メニューに「チキンとライスをフラワートルティーヤに包み、スパイシーなソースとマイルドなサワークリームソースを かけてチーズを振り、焼き上げました。」と書いてありました。
ちなみに「フラワートルティーヤ」とは、トウモロコシ粉ではなく、小麦粉で作ったトルティーヤのことだそうです。

ところでこの写真、以前どこかで書いたような気もしますが、数年前に行った時のものです。
当時はパクチーが大はやりで、このお店でもデザート以外パクチーが入っていて、ポテトサラダにさえ刻んだパクチーが 混ざっていて、デザート以外食べれなかったという苦い思い出があります(笑)。

エスニック料理は大好きですが、パクチーの存在が気になって、なかなか新しいお店を開拓できません。
そんな私のお気に入りはロータスパレス。
パクチーは別添えですし、断ることもできます。
パクチーが好きな方にはパクチーサラダなんてのもあります。

早く食べに行きたいなあ・・・。
(2021年5月11日の日記)

「言葉のかけら」へ戻る

ホームへもどる