おいしい本をさがす道(九)


11月28日 「おもてうら交番 堀北恵平 EVIL」より「中里」の揚最中
「おもてうら交番 堀北恵平」シリーズを読んでいると、内藤さんは甘い物が大好きな方なんだなあと つくづく思います。

以前「喜福堂」のあんパンを紹介しましたが、他にも実在するお店のお菓子がいろいろ登場します。
スイーツというよりお菓子、お菓子というより和菓子、それもあんこもの。
どこか懐かしいお店の雰囲気が感じられる物ばかりです。

今回紹介するのは駒込 「中里」の揚最中。
ヒロインの堀北恵平巡査と、鑑識官の桃田亘が、ある女性を訪れることになり、恵平がお土産に用意したのが 揚最中なのです。

揚最中はテレビで女優さんが絶賛しているのを見たことがありますが、どちらかというと「知る人ぞ知る」名店。
恵平は中里を知ってるの?駒込まで買いに来たの?と驚きましたが、「探した」んですね。
それに東京駅そばの大丸東京店でも売っているようです。

女性が年配であることから、「年配の女性に喜んでもらえそうな品を探した。」
「油で香ばしく揚げた最中の皮は爽やかな甘さの餡と相性抜群なので、きっと喜んでもらえるはずだ。」なんて書いてます。
恵平は自分の分も買って食べてみたのでしょうか(笑)。
まるっきり内藤さんの感想ですよね、これ。

中里は私もお気に入りのお店。
以前大徳院(墨田区両国)でお話を聞いた時、芥川龍之介が大徳院の境内の縁日で葡萄餅を買った思い出を書いていることを 教えてもらいました。
その時葡萄餅を探し歩いて見つけたのが中里さんです(こちらでは「ぶどう餅」)。

こし餡を小さく丸めて、小麦粉と片栗粉を薄くまぶし、蒸しあげたお菓子です。
並べた様子がぶどうに似ていることから「ぶどう餅」。
ただし季節限定なので買える時期は限られています。
もちろん芥川龍之介が懐かしむ葡萄餅が中里さんのぶどう餅と同じか違うかはわかりませんが、とてもおいしいです。

恵平が買った「揚最中」は人気商品で、朝から行列、あっという間に売り切れてしまいます。
大丸東京店はどうかわかりませんが、恵平、気を回して予約できたかな?
(2022年11月28日の日記)
11月30日 「LASTおもてうら交番 堀北恵平」より兎屋の豆大福?
内藤了さんの小説には、「兎屋の豆大福」が2度出て来ます。

ひとつは「メデューサの首 微生物研究室特任教授 坂口信」。
主人公の坂口信が、亡くなった恩師の妻に呼ばれ、おみやげに兎屋の豆大福を持って行くのです。
「兎屋さんに電話して、豆大福を予約しておきましたよ。
明日、忘れずに取りに行ってくださいね」
坂口の妻の言葉です。
予約しないと売り切れるかもしれない人気商品であることがうかがえます。

もうひとつは「LASTおもてうら交番 堀北恵平」。
柏村巡査が「うら交番近くの老舗餅屋で豆大福を買い込んで」中野刑事課に陣中見舞いに行くのです。
豆大福を食べた刑事課課長が
「やはり兎屋の豆大福は旨いですなあ。
皮が全然違うでしょう。
そして豆の塩味がいい、絶妙だ。
一番は餡ですよ。」とまさに絶賛。

最初に坂口版を読んだ時、思わずにやりとしてしまいました。
あの「うさぎや」さんだと思ったのです。
そう、上野と日本橋と阿佐ヶ谷にお店のある、「どら焼き」で有名なあのお店です。
昭和15年にはすでに存在していたので、柏村が買っていてもおかしくありません。

私がなぜ知っているかというと、若き日の池波正太郎がエッセイに書いていたからで、私も上野に行った時は 時々「どら焼き」を買っています。
そう、「うさぎや」さんは「どら焼き」で有名なお店なのです。
時々豆大福を扱うこともあるかもしれませんが、少なくともお店のホームページには載っていません。

ではどのお店? 「東京三大豆大福」と呼ばれるお店もありますが、いずれも東京駅の近くではありません。

さらにメリーさんこと柏木芽衣子が嫁いだ家も老舗餅屋の兎屋です。
このことから、やはりモデルは「うさぎや」さんだと思います。
でもメリーさんに絡んで来るので、実在のお店は使いづらいので名前を漢字に変え、売り物もどら焼きから豆大福に 変えた、どうでしょう?
内藤さん、きっとうさぎやのどら焼き、大好きだと思います(笑)。

それからメリーさん得意の花びら餅、ごぼうが入った不思議な和菓子は、「とらや」や「鶴屋八幡」などいろいろなお店で 年末年始に期間限定で販売しているようです。
ごぼうに抵抗あって買ったことないけど、本当はおいしいんだろうな。
今度買ってみようと思います。

そして東京駅なら私のお勧めは「銀座 甘楽(かんら)」です!
普段東京駅を目指して出かけることってなくて、乗り換えや人と待ち合わせる時。
そのついでになんか食べたりお土産買ったりするくらいですが、「甘楽」は別、必ず買います。
とにかくおいしいので是非お試しください!
(写真は甘楽の豆大福です)。
(2022年11月28日の日記)
12月2日 「おもてうら交番 堀北恵平」より人形町のほうじ茶がおいしいことで有名なお茶屋さん
最近スイーツ絡みの記事ばかり載せていますが、毎日食べまくっているわけではありません(笑)。

喜福堂のあんぱんも、中里の揚最中も、(兎屋ではありませんが)甘楽の豆大福も、ちょっと関わりある うさぎやのどら焼きも、前から通っているお店です。
今回紹介するお店も私のお気に入りの店のひとつです。

堀北恵平シリーズに出て来る柏村は、恵平や平野に毎回おいしいほうじ茶を御馳走してくれます。
柏村の奥さんが買っておいてくれる、人形町のほうじ茶がおいしいことで有名なお茶屋さん。
お店の名前は出て来ませんが、私は人形町の「森乃園」だと信じています。
大正3年創業の老舗で、本当にほうじ茶がおいしいのです。

地下鉄何駅だったかな、何番出口だったかな、を登って地上に出ると、ふわっとお茶の香りに包まれます。
森乃園の店先に焙煎機が置いてあり、そこでお茶を焙煎しているので、香りがあたりに漂っているのです。
人形町、甘酒横丁が好きなので、行くたびに森乃園でほうじ茶を買いますが、さすがにブリキの急須は 見たことありません。

初めて柏村に会った時、恵平がよくブリキの急須と気づいたなと思わず突っ込みたくなりますが、藤堂比奈子 にしても、堀北恵平にしても、いやに都合良くファッションや文化的なことに関して専門的な知識を持っている 不自然さはちょくちょく感じますね。
友達に教えられたとか、たまたま参加したなどと言っていますが、教えられても関心ないと覚えられない、というか 覚える気のないキャラだと思うのですよ。
まあ他に専門的なヒントを与える人物がいなければ、無理にでも比奈子や恵平にその役を振り当てるのは仕方が ないのかもしれません。

話がそれましたが、お茶屋さんのモデルは「森乃園」と断定したいと思います。

もうひとつ、人形町と言えば、「EVIL」にペイさんお気に入りの「田川堂」も実在します。
昔の風情のあるかき氷屋さん。
これはさすがに知りませんでしたが、教えてもらうことができました。
残念ながら私が行った日は定休日なのかお店は閉まっていましたが、今度人形町に行ったら、いえ暑い夏になったら ペイさんが10杯はいけたというかき氷、食べてみたいです。
1杯で十分だけど。

田川堂ではあんみつやところてんもあるようですよ。
こちらの写真は次回紹介します。
(2022年11月28日の日記)

「言葉のかけら」へ戻る

ホームへもどる