犬夜叉ワイド版21〜30感想
犬夜叉ワイド版21巻感想
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「犬夜叉」ワイド版21巻は、第373話「姉弟」から第391話「一心同体」まで。
コミックだと38巻第5話〜40巻第3話まで。

今回は何といっても神楽の死。
最終回を含め、全ての「犬夜叉」の中で一番心に残る場面が私にとってはここだった。
来てくれた殺生丸、けれども天生牙では救えない。
「・・・いくのか。」
「ああ・・・もういい・・・最後に・・・会えた。」
神楽の笑顔。

今読み返してもこみ上げて来るものがある。
神楽のして来たことがこんなに美しく許されていいのか。
琥珀を救ったことで、「ただそれだけで」で全ての償いになり得るのか。
鋼牙がいたらどう思うだろう。
思うことはいろいろあるけれど、やはり最高の退場の仕方だったと思う。

この後は桔梗と琥珀が最後の覚悟を決め、翠子が意思を持ち始め(たように見え)、鋼牙が五雷指を手に入れるために戦いと話は 続くが、このあたりまでは正直ふぬけ状態で、読んでて頭に入らなかった頃。
目が覚めたのはムジナ編に入ってから。
これも本編に関わる大事なエピソードなんだけど、導入部分の「おっさんムジナ」物語に3話も使って、それがあまりに馬鹿馬鹿しくおもしろいんだもの(笑)。
七宝にはちょっと可哀そうだったけどね。

その後あの地獄絵師を思い出させる「奪鬼」の使い手刀秋との戦闘が入り、犬夜叉は鉄砕牙に新たな力を加えるが、ここではまだ名前はつけられていない。
次回はほのぼの現代物の「平和な食卓」から始まる。

余談だが、ワイド版裏表紙、及び中表紙にはコミック38巻の表紙が使われている。
笑みを浮かべた神楽の横顔で、これも綺麗なのだが、私は「風」の表紙の神楽が一番好きなので、これを使って欲しかったなあ。
といってもモノクロなので使いようないけれど。
構図は同じで笑みを浮かべた神楽の横顔だが、こちらはややうつむき加減でカラーよりはっきりした表情なのが好き。

今回の概論&犬夜叉語りは「かごめの守るフィールド」、つまり現代の生活、家族と友達について。
私はこの部分をだいぶ誤解していて、現代物はあくまでも「犬夜叉」のサイドストーリー(家族と過ごす、リラックスした犬夜叉が愛らしい面を見せるなど)と捉えていたように思う。
もちろん肉づきの面やタタリモッケは別だけど。
だから家族や友達が何の違和感もなく犬夜叉を受け入れてくれたと思っていたし、「あの」最後の3年間、高校生としての3年間をとってつけたような気がしてた。
そうじゃなかったんだな、とインタビューを読むと改めて思う。

かごめは現代生活に適応できなかったわけでもないし、高校受験もあきらめていなかった。
自分の守る普通の生活=現代を大切に持っている人だった。
まじめに考えると、休んでばかりのかごめを心配しない学校や、単なるコスプレではすまない犬夜叉の姿形に違和感持たない友だちとかあり得ないわけだから、この部分は 多分にファンタジー要素もあったのかなと今は思う。
いちいち驚くところから描いていたら、確かに「犬夜叉」のおもしろさは半減しただろうし。

もうひとつおもしろかったのが、かごめのお父さんについて。
私は全く出ない事からかごめが小さなころに亡くなってたと思っていたらそうじゃなかった(笑)。
お父さんの存在を曖昧にして、いつか出せるかなと思っていたら結局出せないまま終わってしまったって、可哀そうなお父さん・・・。
タイミングもあったし、物語が始まる時にはいろんな可能性を残しておきたかったのであえて出さなかったとあるが、確かに途中でぽんと出てきたら唐突感もあったかも。

ちなみに概論ではお父さんには触れてない。
たしかに推測では書けないしね。
描き下ろしはかごめのうちでの団欒風景。
なんとなく犬夜叉とかごめの里帰りに脳内変換してしまう。
(2014年9月19日の日記)
犬夜叉ワイド版22巻感想
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「犬夜叉」ワイド版22巻、今回の目玉は何と言っても夢幻の白夜登場だろう。
「目玉」なだけに(笑)、なんてくだらないギャグを「飛ばして」いた時代も遠い昔。
(ちなみに夢幻の白夜は目玉を最猛勝みたいな偵察機もどきとして飛ばしていた。)

でも22巻を見て笑い出しそうになった。
表紙がうっすら笑みを浮かべているかっこいい犬夜叉と色っぽい夢幻の白夜、そしてなぜか毒蛟。
裏表紙は犬夜叉一行となぜか冥王獣。
毒蛟と冥王獣には失礼ながら、その小物感がハンパないと言うか、そのせいで表紙のバランスの悪さに 妙なインパクトがある。

22巻に掲載されているのは392話「平和な食卓」から409話「分岐」まで。
コミックで言うなら40巻第4話から42巻第1話まで。

流れは刀秋との戦いを終えた犬夜叉とかごめが現代へ戻ってのほのぼのドタバタ話。
尼寺での化け猫退治は弥勒と珊瑚が微笑ましい。
毒蛟編には夢幻の白夜が登場、奈落と神楽の息子のような不思議な色気を感じるな。
と思ったけれど、分身だから当然か。

小者感満ち溢れつつも結構がんばった毒蛟、白夜はちょっと蛇骨っぽさもあるね。
鉄砕牙の暴走に傷つけられた犬夜叉、この辺りは今回のインタビューが「鉄砕牙」なので、読み合わせるとおもしろい。
毒蛟に続いて出て来たのは冥王獣。
彼もそれなりにがんばったけど(魍魎丸のおかげで?)、殺生丸と夢幻の白夜の初対決の前には印象が薄いか。

結局賢いのは弥勒と殺生丸、夢幻の白夜であることがわかったところでクライマックスへ。
ここはさりげなく桔梗、犬夜叉&殺生丸vs魍魎丸という異色の組み合わせ。
最高だったのは、神楽を馬鹿にされた殺生丸の静かな怒りだったと思う。
もうひとつ、痛々しいほど悟りきった琥珀の今後も気になるところで次巻へ続く。

インタビューを読んで初めて知ったのが、父君の骸の牙が一本折れてるところ。
鉄砕牙が父君の牙から作られていることを表しているのだが、たぶん私、気づいてなかった。
「あの日の犬夜叉」のイラストにはちゃんと父君の骸の牙が欠けているところが見えるけど。

鉄砕牙は進化する刀。
RPGのようにレベルが上がったり属性がついたりする、なるほど(笑)。
鉄砕牙が成長(変化)することによって犬夜叉も成長していく。

重くなればそれをどう振り回すか。
今回のように鉄砕牙が犬夜叉の能力を上回る力を見せ始めたら犬夜叉は当然傷つく。
負けずに使いこなすためにはなんらかのスキルが必要で、犬夜叉は次の闘いに寄ってそれを得て行く。
そうするうちに、父の形見だった鉄砕牙を自分の物にしていく、とても論理的。

「刀は鍛えれば強くなるわけではない、何かを悟らなければ育たない」
この言葉を高橋さんの言葉で読むのは私は初めて。
でも肉体的にだけではなく、精神的に成長することで何かを得て行く、少年漫画の冒険活劇王道とも言える爽快感は確かにあったと思う。
(2014年10月20日の日記)
犬夜叉ワイド版23巻感想
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「犬夜叉」ワイド版23巻は第410話「冥道斬月破」から第428話「妖穴」まで。
コミックだと42巻第2話から43巻全部となる。

「冥道斬月破」で殺生丸の神楽への想いと吹き抜けた風に感動し、「やさしい彼」でほのぼのしながら同時に爆笑するが、ストーリーとしては このあたりから、どうしても「引き伸ばし」という言葉が頭をよぎっていたような気がする。
今読み返していても、二枯仙、金禍銀禍、沼渡などは覚えていても印象が薄いというか、流れがあまり把握できていない。
妖霊大聖はキャラや話がおもしろかったので記憶にあるけど。

それと「二枯仙」「妖霊大聖」などの固有名詞、単語登録してたけど、今はもう別のパソコンになってるのに時の流れを感じたり。
ちなみに「冥道斬月破」はりんねの感想で使って登録し直したので今のパソコンにもちゃんと入っている(笑)。

ところどころに入るくすっと笑える会話は健在で、優しい弥勒を珊瑚が怪しんでお尻を撫でるところ(七宝じゃないかと疑っている)や、 犬夜叉とじいちゃん、邪見とりんなどさまざまなやり取りを楽しんだ。
神無に関して気になるところがあるが、それは次巻で。
今回は妖霊大聖編の途中で終わるが、感覚重視の犬夜叉に鬼教官の殺生丸が教えに?来るところが一番かっこ良かったと思う。

概論は「白童子、赤子、魍魎丸」でインタビューのテーマは「奈落の心臓を巡る思惑」。
タイトルは違うが、インタビューの内容を概論で復習している形になっていて非常にわかりやすい。

奈落は心臓をその地出すことによって無敵になった=大切な何かを貸金庫に預けた=印鑑と通帳を別々に→預け先が悪徳銀行だった(笑)。
赤子と白童子は奈落自身に非常に近い「心持ち」の存在であるために、いつか奈落自身になり変わろうとするだろう、奈落にもそれはわかっていた。
だから奈落は彼らの心を読んで、最終的には殺す(犬夜叉達に殺させる)ことになるのだが、「それはそれで悲しい人」であると表現している。

ただ奈落の場合、そういった感情を最後の最後まで見せることはなかったので、読者にとって「悲しい人」と感じられないのはどうだったのか。
だからこそ死の間際に桔梗の事を口にした時の喪失感が大きかったのか。
「犬夜叉」は犬夜叉とかごめの心情は100%語りつつ、桔梗と奈落は自分の胸の奥の気持ちというものをほとんど語ることなく作られたキャラなので それが結果的にどうだったのか、は読者の「心持ち」次第だろう。

最終話からこれだけ長い年月がたった今、私の中では犬夜叉かごめに比べ、奈落と桔梗に思い入れが強かった当時に比べ、今ワイド版を読み返すと5分5分になっているような気がする。
「あの日の犬夜叉」は犬夜叉と赤子、白童子と魍魎丸。
魍魎丸がやけにスマートで笑える。
(2014年11月19日の日記)
犬夜叉ワイド版24巻感想
★「ひとりごと」で写真を紹介しています。

「犬夜叉」ワイド版24巻は第429話「本当の敵」から第447話「加護」まで。
コミックで言うと44巻全部と45巻9話目まで。

妖霊大聖編が終了し、犬夜叉は妖霊大聖の仕掛けた罠を全てクリア、またひとつ成長した。
次は灰が健気で芯太が可愛い妖狼族編。
当然鋼牙がメインとなり、男気とかっこ良さと貫録を見せてくれる。

「(鋼牙が灰の)話を聞いてやるって優しい雰囲気出さねえから・・・」や、夢幻の白夜の「(四魂のかけらを)本人(鋼牙)ごと持って 来たってことか。」「あらら、邪魔者(犬夜叉たち)がぞろぞろと・・・」などシリアスなのについ笑ってしまう台詞が懐かしい。
灰と芯太はまた見たかったなあ。
珊瑚が芯太を抱きとめた時の顔も好き。

さらに鋼牙と桔梗、奈落と魍魎丸(赤子)、奈落の偽装死?犬夜叉と鋼牙のコンビも強化版魍魎丸には歯が立たず、鋼牙は 妖狼族の魂の加護も失ったか、そこへかごめが矢を放ち、鋼牙を救う。
そして奈落が赤子と魍魎丸を吸収して復活を果たす。
今読み返すと息もつかせぬ展開だが、奈落を中心になかなかえぐい描写が続く、夢に見そう・・・。
次回は弥勒と凄絶な戦いと桔梗の命をかけた浄化から始まる。

今週のインタビューは翠子、これは興味深かった。
翠子という存在は、四魂の玉の本当に元みたいなもの、それはわかる。
四魂の玉を説明し、その由来を語る上で生み出されたキャラ。

翠子の顔を最後までちゃんと描かなかったのは、過去の情報は必要最小限でやりたかったから。
犬夜叉達の父君も同様で、掘り下げればそこから過去エピソードを作れるけれど、犬夜叉達の物語が脱線してしまう。
犬夜叉達が動くための本筋が進まなくなってしまう、そういうのは好きじゃないと。
過去話は、もう本当にこれから起こる事のための伏線であり、それ以上でもそれ以下でもないという考え方。

なるほど、と思う一方で無女という形で犬夜叉の母君、現役ということで殺生丸の母君が登場したのだから、たとえば父君だったら 竜骨精の話に絡めるなどして出せたんじゃないかなあとも思う。
たとえ思い出話程度でも2人とも重要なキャラなので語って欲しかった。

生意気な言い方だけど、「めぞん一刻」では成功した手法が、「犬夜叉」では必ずしもそうではなかったような。
父君はともかく、翠子は中途半端な存在に終わってしまった気がする。
もし出すとすれば、意外と最初、犬夜叉と桔梗の戦いのさらに前、だと犬夜叉のインパクトが薄れるか。

ただ桔梗に匹敵するか、それ以上の霊力の持ち主であり、翠子に想いを寄せていた男の人は、一方的な邪な心・・・。
この男に関しては複雑。
奈落とある意味被るのだけれど、奈落のように翠子に害を与え得るほどの大物だったとはとても思えず、にもかかわらず、 邪な性格だっただけで、結局は被害者となる。

ある意味純愛とはいえ、スケールが違う奈落でさえ救われて逝ったことを思えば、存在自体いらなかったような気もする。
私が「犬夜叉」においてもっとも引っかかるキャラの1人。
まあこうして語られただけでも良しとしようか。
彼もまた、最後に翠子と共に成仏したと思いたい。

翠子が妖怪たちと四魂の玉の中で戦い続けている期間は、概論では約千年、インタビューでは何百年。
小さなことだけど今回は概論の方が早かったのかな?

同じ巫女でありながら、かごめは人として生き、翠子は孤高の人だった。
桔梗も孤高の人ではあったけど、翠子よりは人として生きた。
インタビューではかごめの名前は出てこないけど、つまりはそういうことだったのだろう。
そしてそこに「巫女としての」力(翠子>桔梗かもということ)もあったのかも。

翠子の生涯に想いを馳せつつ「あの日の犬夜叉」を見たら、翠子がまんまのっぺらぼうで笑ってしまった。
ごめんなさい、翠子さん。
(2014年12月20日の日記)
犬夜叉ワイド版25巻感想
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「犬夜叉」ワイド版25巻は第448話「瘴気の傷」から第466話「別れの想い」まで。
コミックで言うと45巻最終話と46巻全部、47巻8話目まで。

この25巻はいろいろと複雑で重い。
桔梗の死と鋼牙との別れ、そして死の間際にいる弥勒。
珊瑚は弥勒と琥珀の死が現実味を帯びてくる中怯えている。
そしてかごめは梓山で桔梗への一方的な柵に決着をつける。

この部分は当時読んで微妙な気持ちになったものだが、かごめにしても何らかの形で決着をつけないと、桔梗の死にいろいろと 引きずることになったからだろう。
インタビューで高橋さんが「犬夜叉の胸に抱かれて亡くなるわけですけど、やっぱり描いててもそれくらいは報いてあげないと申し訳なかった」と 語っているが、梓山のかごめもまた、ここで解放されたのかな、と思う。

「瘴気の傷」では弥勒が死を覚悟して風穴を開くが、表紙の弥勒の横顔は個人的に「犬夜叉」における弥勒のベストカット。
憂いや悲しみ、それを乗り越えた男としての覚悟。
この時期の絵で描かれたことが本当に嬉しい。
幸い桔梗が浄化してくれたことでこの場は生き延びる弥勒。

一方で鋼牙が犬夜叉たちに同行し、和ませてくれるというか空気を読まずにかき回してくれるというか。
シリアスとの対比が楽しかった。
七宝とはいいコンビだなあ(笑)。
この後の別れがいっそう寂しくなったけど。
琥珀は珊瑚といるよりも、桔梗や殺生丸といる方が落ち着いて見える。
珊瑚にはショックだったが、なんとなくわかる気もする。

桔梗の死を迎えて全ての誤解が解け、皆が桔梗の死を悼み、桔梗もまた笑顔で死に逝く。
あり得ないはずの桔梗の涙は奇跡か作者の優しさか。
奈落を滅する使命は今犬夜叉とかごめに託された。

今回のインタビューはその桔梗。
オープニングから出て来るが、当初細かい設定は全然決まっていなかったらしい。
彼女が物語の核になるだろうということで作っていったキャラ。
物語を引っぱる大きな存在なので、最初から生き返らせるつもりはあった。

結構彼女なりに企んでいたりとか、そういう部分もあったので、出て来ると描いていても緊迫する。
そもそも緊迫した状況にしか出てこない、お笑いの要素がないという存在。
最初はずっと怒っていたし、最後の方は指導者みたいな存在。
「指導者」、この言葉はぴったりな感じがする。

当時私は桔梗が「自分も犬夜叉と一緒にいたい」なんて言わないのは都合が良すぎる、といって我慢しているようにも見えない みたいな不満を書いたが、なるほどすでにそういった部分を越えたところが立ち位置だったのか・・・。

騙されたまま死んだけど、生き返ってからいろいろなことがわかり始めて、そんな中で「自分が何をすべきかと考え始めた」桔梗。
それでいて奈落との戦いは「使命感もあるし、やっぱり私怨もあったと思う」。
確かに桔梗と奈落の間にある緊張感、ある意味での絆は犬夜叉すら入り込めない激しいものではあったと思う。
最終的には「奈落の前に力尽きて、本当はもうちょっと粘りたかったんだろうけれども、でもほぼやり残す事なく、頑張った」。

桔梗は作者自身もかなり気に入っているキャラ。
良かったね、桔梗。
かなり感動しながら読んでいたが、最後の最後に噴いた。
「私の中の存在感的には、『あしたのジョー』の力石くらいのレベルでしたね!」

今後「犬夜叉」を読んでて桔梗が出て来るたびに力石が被りそうですよ、高橋さん・・・(涙)。
「あの日の犬夜叉」は寄り添う犬夜叉と桔梗。
あの頃よりずっと大人っぽくなった2人。
本編とはまた別のエンディングのような、穏やかで幸せそうな表情をした2人がいる。

こんな素敵な「未来」を描いてもらったよ。
良かったね、桔梗。
(2015年1月20日の日記)
犬夜叉ワイド版26巻感想
★「ひとりごと」で写真を紹介しています。

「犬夜叉」ワイド版26巻は第467話「冥道」から第485話「薬老毒仙」まで。
コミックで言うと47巻第9話から48巻全部、49巻7話目まで。

「犬夜叉」ワイド版も残り少なくなってきて、とっても寂しい今日この頃。
物語も終盤にさしかかり、今回は神無が退場する。
神楽、桔梗、鋼牙(鋼牙は死んだわけではないが)、神無と大好きなキャラがどんどんいなくなる。

でも、ここで桔梗に別れを告げて鬱々している犬夜叉たちではなく、おもしろい所に話を持って行った。
殺生丸の母君登場である。
なんとまあ、おそらく全「犬夜叉」読者が想像し得なかった、前代未聞のキャラだった。
殺生丸が人間(母から父を奪った)をこれほど憎んでいたことからして、もっと因縁どろどろの「源氏物語」のような過去と、 殺生丸の前で涙くらい見せてただろう母を私は想像した。
犬夜叉の母が月の静けさならなら殺生丸の母は炎の激しさみたいな。

こんなあっけらかんと出て来た母君があまりに魅力的というか女王様気質というか、ファンにならなかった人はいないのではないか?
殺生丸との会話、冥道冥界の解説、そして泣かせる邪見との会話がひとつひとつツボにハマって、何度も読み返した。
その中で母君は殺生丸に命の尊さ、慈悲の心に気づかせることに成功する。
ただ(いつも思うことだが)全ての脚本がまるで父君によって描かれたような都合のよさは何とも拭いがたいものがあるけど。

殺生丸が180度、どころか990度くらい大回転して性格変更、りんへの想いを吐露してファンを泣かせてた頃、犬夜叉たちにも 大きな試練が降りかかる。
でもこれは作者として、犬夜叉たちに必要なエピソードだったろう。
桔梗をあっさり忘れても困る。
桔梗をいつまでも引きずっていても困る(物語的に)。

花皇編で桔梗の死をいい形で乗り越えた犬夜叉たちが次に遭遇したのは神無の死。
神無は死んだけど、かごめにある大切なメッセージを託した。
神楽を思い出し、死にたくないと、奈落を倒して欲しいと、心を覗かせた神無。
最後まで心がないと思っていたのなら、奈落は哀れだ。

次の骨抜き妖怪編は、普通の妖怪退治と思わせて、珊瑚にとっての大きな転機となる。
弥勒を守るために飛来骨を犠牲にした珊瑚。
でもその中にもさまざまな漫才的なやり取りが散りばめられていて笑わずにはいられないのが困ったところ。

今改めて「犬夜叉」を読んでて思うことは、もうらんまや「うる星やつら」の時代じゃない現在、高橋さんには ギャグ漫画よりも、こういったストーリー物にギャグを散りばめた方が、よりおもしろいものになるんじゃないかな?ということ。
りんねのまったりギャグも、それはそれでほのぼのとしたおもしろさはあるけど。

使い物にならなくなった飛来骨を直してもらうために一行が向かった先は薬老毒仙の元。
これまたシリアスとギャグの兼ね合いが楽しい話だが、今回は1話しか入ってないので感想は次巻で。

今回の概論とインタビューは「冥道」、正直これは意外だった。
殺生丸の母君じゃないの?
カラーがあるのに表紙にも出てこないし。
母君にすれば、冥道や殺生丸についてもまとめて語れるだろうに。

しかもなぜ母君をこんなキャラにしたのか、前設定みたいなものも読みたかった。
きっと高橋さんがそれを語りたくなかったんだろうな。
犬兄弟の親の部分は謎として残して、読者の想像に任せる。
母君もキャラとしてはぽんと浮かんだ気もするし。
次巻で出ないかなあ・・・。

「冥界」や「冥道」は、作者自身も曖昧だけど「死に切っていない人々の世界、生者と死者の世界の境目」なのだそうだ。
犬兄弟の父君のお墓があるのは本当の死の世界(ゾウの墓場みたいな感じ、笑)。
冥界、冥土(なぜかここで冥土になる)の中でもそういうエリア。

冥界は宇宙みたいな風景をしているが、それ自体に大きな意味はなく、たまたま「そういうスクリーントーンがあった」だけ。
殺生丸が泣いてるよ(笑)。
スクリーントーンが足りなくて、それで殺生丸の冥道がいつまでも円にならなかったとかだったら笑う。

冥界の話は殺生丸の成長、天生牙の成長に必要なエピソード。
犬夜叉にとってかごめと桔梗が大切な女性だったように、殺生丸にとっても神楽とりんは大切な存在だったんだろうな。
そんなところも親譲り。
で、結局ここでも母君に関する話はなし。

「あの日の犬夜叉」、犬夜叉が冥道斬月破で斬られてます(笑)。
(2015年2月20日の日記)
犬夜叉ワイド版27巻感想
★「ひとりごと」で写真を紹介しています。

「犬夜叉」ワイド版27巻は第486話「甕の中」から第504話「冥道の光」まで。
コミックで言うと49巻第8話から50巻全部、51巻6話目まで。

今回表紙で驚いたのが、主役の犬夜叉はともかくとして、表紙、裏表紙、中表紙の全てに殺生丸が登場していること。
普段あまり感情を見せない殺生丸が「父の裏切り」に傷つき、怒り、それを越えるという確かに「殺生丸主役編」ではあるが、 同時にこの27巻は弥勒と珊瑚にとっても互いの覚悟と気持ちを確かめ合う大切な巻でもある。
1カットくらい出して欲しかったなあ。

もうひとつ今回印象が強いのが、2008年(平成20年)に「高橋留美子展」で放映された「黒い鉄砕牙」のエピソードが入ってること。
アニメ新シリーズは無理だろうなあと思っていたのに、これが見れた!その感動は大きかった。
かっこいいけど(若作りby邪見)印象薄い死神鬼が冒頭登場した時の感激、そしてアニメで見ることはないだろうと思っていた夢幻の白夜の 声を聞いた時の衝撃、が蘇る。

ちょっと先走ったが、最初は薬老毒仙編。
26巻に1話だけ入っていたが、珊瑚が飛来骨に毒を塗り、飛来骨を「傷つけてしまった」ことにより、薬老毒仙の元を訪れる。
飛来骨を「直し、癒す」ために珊瑚が戦い、同時に弥勒は苦痛を感じなくなる毒を飲む。
弥勒の珊瑚への想い、珊瑚の弥勒への想いがひとつに合わさった瞬間、奇跡が起こる。
感動と酔っぱらう犬夜叉や七宝との対比がおかしくて、いろんな涙にじませながら読んだっけ。

死神鬼編では、殺生丸が父君の「裏切り」を知る。
作者が犬夜叉に与えた試練はストレートで、元々単純な性格の犬夜叉は、仲間を守るためにがんばることでどんどん強くなる。
殺生丸の場合は、精神的な面での試練が次々と来るのでかなり辛い。
元々強く完璧な妖怪、ゆえに傲慢な殺生丸。

そこに父君が自分をないがしろにして犬夜叉を大切にしているという錯覚に陥り(そのように仕向けられ)、さらに父君は実の母を捨てて? 人間の女の元に走る(殺生丸的にはそう見えるだろう)。
さらに斬れない刀天生牙をやっと癒しの刀、さらには斬れる刀として使いこなせるようになったと思ったらその技を犬夜叉に奪われる。
もしかしたら母君は、父君が人間の女性を選んだことは、殺生丸にとってもそれほど大きな傷じゃなかったんだよという作者の説明のために出て来たのかもしれない。

でも強い妖怪ゆえに人間に対して無関心であるはずの殺生丸があれほど憎しみを持っていたことの説明にはならないかも。
まあ犬夜叉限定の憎しみだとすれば、人間は憎しみの対象ではなく、単なる邪魔者に格下げされるかな?
犬夜叉への憎しみなら、母君のこと、半妖であることに加えて父の扱いへの不満などいくらでも出て来るし。
それらを全て清算してくれる、実はとてもありがたい鬼教官が死神鬼、鬼だけに(笑)。
わざわざ生き残って殺生丸を鍛え直してくれた、そんな立ち位置のいいキャラだった。
殺生丸がびっくりしたり、これまでにないほどいろんな表情見せてくれるし。

27巻はこの2つをメインに、かごめの現代話や、新生飛来骨のエピソードを挟んで収める。
笑いどころでいいキャラだったのは相変わらずの邪見、七宝、意外なところで犬夜叉、弥勒、夢幻の白夜。
悪役なのにそんなに嫌われていない(特に殺生丸)夢幻の白夜のキャラはおもしろい。

今回のインタビューは「天生牙と殺生丸」
天生牙は鉄砕牙とは真逆の刀、殺生丸が最も望まない刀として出したってさらりとひどいこと言う(笑)。
癒やしの刀でありながらその先を行っちゃう、死者を生き返らせる(そのためにあの世の使いを斬る)のはビジュアル的なことを考えた。

そんな刀を殺生丸に残した「お父さん」の真意は「もうちょっと優しくなれよ」「心を育てろよ」ということ。
なんか急に普通の日常(六畳一間みたいな昭和の風景、笑)が浮かんで来たが、天生牙は元々鉄砕牙に吸収されるべき物で、殺生丸が持っていなくても 成立するって、殺生丸とことん可哀想。
でも捨てずに持ち歩いたのは殺生丸の想いゆえ、でもそれは父への想いじゃなく、なんか使えるんじゃないかくらいに思ってたと。

殺生丸の父君への想いはこの巻をのぞいて、あまり明かされることはなかったが、特に初期、行動で示していたと思う。
奈落との共謀などいろいろやらかしてた頃から。
りんと出会い、神楽の死、さらに七人隊あたりから大きく変わって行ったように思う。
琥珀や桔梗の存在もあったと思うし、もちろん癒やしのお供邪見の存在も大きいだろう。

殺生丸は孤高の存在ではあったけど、最後まで1人を貫いていたら、天生牙の真の使い手にはなれなかったと思う。
「犬夜叉」における殺生丸=孤高の存在は冷や汗かかないとか声を出して笑わないとか、その程度のこと。
最初は犬夜叉のライバルだった殺生丸、いい立ち位置に育て上げたと思う、そしていいキャラに育ったと思う。
母君の跡を継いで殺生丸が妖怪たちを治めることになるのか、このまま放浪の一生を貫くのか、作品内では明らかにされていないが、今の殺生丸なら 立派に母君の跡を継げそう、放浪しながら(笑)。

犬夜叉はやっぱり次男坊、末っ子だな。
父君としてもそういう責任みたいなものは負わせなかった。
犬夜叉は鉄砕牙、殺生丸は天生牙、逆ではいけなかった。
まあ殺生丸が最初から鉄砕牙を持っていたら、物語に登場しなかったんじゃないかというくらいいけなかったんじゃないかと私は思う。
犬夜叉も最初から天生牙を持っていたら、妖怪とほとんど戦えないくらいいけなかったんじゃないかとも思う(笑)。
「あの日の犬夜叉」、今回も殺生丸は犬夜叉を斬る気満々です(笑)。
(2015年3月24日の日記)
「犬夜叉」ワイド版28巻感想
ひとりごと」で写真を紹介しています。

「犬夜叉」ワイド版28巻は第505話「狐の宿」から第523話「珊瑚の願い」まで。
コミックで言うと51巻第7話から52巻全部、53巻5話目まで。

辛い話が続いた後の癒し系、七宝ががんばる「狐の宿」から再びシリアスに戻って瞳子登場。
瞳子の残した謎に答えるように曲霊登場、殺生丸がとことん傷つけられる。
でもその後に左腕が復活して遂に自身の刀、爆砕牙を得る。
邪見と殺生丸の心の絆に笑いながらもほろりとした(笑)。

かごめはいったん現代に戻って受験、曲霊に四魂のかけらを穢された琥珀は意識を失い、風穴が限界の弥勒、 そして覚悟を決めた珊瑚、物語は確実にクライマックスに向かいつつある。

私は「犬夜叉」ワイド版はいつも「犬夜叉語り」から読むが、今回読むまで曲霊のことをしっかり忘れていた。
アニメで見てないし、もう10年たってるし、と言い訳してみるが、やはり暗記するほど読みこんだ前期に比べ、 関心が薄かったのだと思う。
後期は気になる部分を読み返すことはあっても、通して読むことはあまりなかったように記憶している。
そんな私に大打撃(笑)なインタビューは後回しにして、まずは本編。

「狐の宿」は本当に楽しいお話だった。
桔梗や神無の死、殺生丸とのごたごたが続いた後の清涼剤。

七宝が可愛くて狐たちもおもしろくて、弥勒が良くて珊瑚が楽しくて。
振り回される犬夜叉や「薄ら笑い」のかごめや(笑)。
でもこの話が最終回に再び出て来た時は、我知らずジーンと来たっけ・・・。
今頃みんなどうしてるかな。

犬夜叉とかごめにも子供できたかな?
弥勒と珊瑚は何人目が生まれてるかな?
七宝も可愛いお嫁さん見つけたかな?
鋼牙は?殺生丸は?

以前吉田秋生さんがインタビューでかつての人気作について

「別れた男。
…昔、愛したコトもあったわ。
でももうあたしたちは終わったのよ。
お互いいい思い出にしましょう。…なーんてな。(笑)
でもずっと言われンだろーな「昔あいつとつきあってたろ?」ってな。」

と答えてるけど、高橋さんも同じようなこと言ってたな。
(見つけれなかったので吉田さんのインタビューを参照しました)
逆に過去作にばかりファンが囚われていたらむしろ困るのかも。
でもやっぱりその後の「犬夜叉」読みたいなあ。

話がそれたが次は瞳子編。
この話はかごめが大きな転機を迎える話で、それだけにかごめの顔が男前で、高橋さんの気合いが感じられる。

「境界のRINNE」であやめを見て「桔梗と似てる」と思ったけど、今「犬夜叉」を読むとやっぱり違うな。
顔や巫女服は似てるけど、あやめの方がひ弱な感じ。
まあ世界が違うけど(笑)。

そして初期からの謎、かごめの霊力を封印していたのは何者か、に話が移る。
かごめは桔梗と思っていたがそうではなく、遂に曲霊が登場する。
物語がクライマックスに向かうにつれ、楓の出番も増えて嬉しかった。
楓と邪見の囲炉裏端漫才も束の間だけど楽しかったし。

私が曲霊にあまり思い入れがないのは、曲霊が実体化して出て来てしまったからだと思う。
ホラー映画でも、怖い物がいて、それが見えないうちの怖さと、姿を見ちゃったあとの怖さはちょっと違う。
姿を見ずに怖い怖いと思っていた方がずっと怖い。
それと同じで、曲霊が実体として出て来た時は拍子抜けした。

長い長い年月、これほど恐ろしく、これほど有能で、これほど捉えどころがなかった謎の存在が、妖怪の1人になっちゃったみたいな。
かごめの霊力を封じ、犬夜叉、弥勒や珊瑚、殺生丸を追い詰め、かつてないほどの強大な力を持ちながら、どうしてもゲスト妖怪の1人としてしか 見ることができない。

それだけに興味を持って読んだ「犬夜叉語り」。
とても納得できたのが、「曲霊は、うまく立てられなかったキャラクターの筆頭かも。」のコメント。
奈落以上の絶対悪でありながら、目的がよくわからない人、大きなコマでバーンと出て来たわりには、そんなに活躍もさせて やれなかったなどと言われてるし。
作者にそこまで言われる曲霊、ある意味哀れ。
でも今だからこそ言えるコメント、こうしたコメント読めるだけでもワイド版買った甲斐があったと思う。

最後に笑ったのが、「ただ、曲霊が出て来たおかげで、殺生丸の左腕が復活し、爆砕牙が生まれました。」って。
何その縁の下の力持ち的な(笑)。
「そう思えば、曲霊はすごい意味のあるキャラクターですね。
うん、曲霊はそのためにでてきたんですよ!」

こぶしで手のひらポンと叩く高橋さんが目に見えるよう。
るーみっくギャグを本人が演じてるみたいに笑えた。
「あの日の犬夜叉」はその曲霊と犬夜叉、殺生丸。
犬夜叉がとてもやんちゃな顔しててとても可愛い。
(2015年4月21日の日記)
「犬夜叉」ワイド版29巻感想
★「ひとりごと」で写真を紹介しています。

「犬夜叉」ワイド版29巻は第524話「目覚め」から第542話「飲みこまれる光」まで。
コミックで言うと53巻第6話から54巻全部、55巻4話目まで。

長丁場の後半戦も、曲霊が登場し、奈落が最後の変化を遂げて、大戦闘場面のクライマックスに突入する。
その中でも、あくまでも心理戦にこだわる奈落がさすがと言うべきか。
今回ワイド版を読み返して、失礼ながらこんなにおもしろかったっけ?と驚いた。
今思えばコミックが出た時、そのたびに1巻から読み返していたのが悪かったのかもしれない。

このあたりに来るまでに少し飽きてたような状態になっていて十分楽しめなかったというか。
サンデーの頃は、楽しむ以前に理解がなかなか追いつかない状態だったような、かなり混乱していたような記憶がある。

今読み返して、全体を通して一番悲惨だったのは珊瑚かな?と思う。
全キャラの中で最初から最後まで苦しめられた、良くも悪くも一番人間的なキャラだった。
今巻では、一時的にとはいえ琥珀が死に、弥勒のためにりんを殺す覚悟を決める。
琥珀が蘇ったのは普通に嬉しいのだが、物語としてはどうなのだろうと思うこともある。

全ての人をハッピーエンドに、という作者の気構えだけではない何かがあると思うのだが、もしかしたら琥珀もまた償いの必要な 人物であったのかもしれない。
(キャラ語りで琥珀についても語られているが)。
そんな時でも邪見と七宝のささやかな漫才はおもしろくて愛らしい?

でもこんな話の流れでかごめの受験や卒業が挟み込まれるのは未だに違和感がある。
確かにかごめはがんばったけど、それとこれとは次元が違う気がするのは私だけだろうか。
当時「一刻を争うのでは?」という言葉が頭から離れなかった。

奈落が巨大蜘蛛化して、四魂の玉ならぬ巨大蜘蛛の玉になったのは正直驚いた。
人としての奈落を司る象徴であった背中の鬼蜘蛛の火傷の跡が、最後の最後に究極の奈落となる。
ある意味最後の蜘蛛の姿は、究極の「人間としての」奈落の妄執の姿だったのかもしれない。
作者は「人間的な妖怪」と断じてはいるけれど。

今回のキャラ語りはその奈落。
「奈落の本質は結局は人間だった」のはいいとして、「・・・・・・駄目人間というか・・・・・・」には笑った。
奈落が仕掛ける嫌な攻撃(心理的に堪えるという意味か)は、奈落が人間だからこそ、どうすれば嫌がられるかを理解しているから。
奈落の発想は全てそういう部分から出ているから、「世の中を悪に染める」といった野望はない。

桔梗に対する執着と、それに伴って(桔梗の想い人である)犬夜が究極の相手であって、この2人を苦しめるためならどれだけ周りが傷ついても いい位のレベル。
そういう意味ではわかりやすい。

奈落の残念なところは仲間がいなかったこと。
自分の分身にすら裏切られるその駄目さ加減が作者は好きとか。
ただ私が思うに、裏切る心を持った分身を作ったのは奈落自身なのだが。
その意味でも夢幻の白夜にちょっとは触れてほしかった。

でも裏切られて寂しいかというとそうではなくて、結局は桔梗が全て。
桔梗を殺した後の奈落は「なんかもうどうでもい
いやってなってたんだろうな。
みんな嫌いだ!とかいうくらい。」 この辺のわかりやすくすねた奈落も見たかった(笑)。

奈落が四魂の玉を欲しがったのは、やはり本当の妖怪になりたかった、心を捨てたかった。
本当の妖怪になった心を捨て得るのか、最後までそう思ってた私だけど、もしかしたら奈落なら捨て得たかもしれない。
あれほど人の心を捨てたがっていた奈落だから、四魂の玉は、もっと早い時点ならその願いを叶えていたかもしれない。

「犬夜叉」は奈落がいないと成り立たない物語。
奈落が倒れて大ボスが、といった発想は一切なく、最後まで敵は奈落。
結局「犬夜叉」は桔梗と奈落のところから出発しているので最後はそういう事かなって、と最後にまとめる。
確かに最後は犬夜叉とかごめで終わったが、2人の絆の中には桔梗と奈落の、奈落の純粋な想いの部分だけは残っていると 願っている。

本当は「私と奈落」というタイトルで本1冊書いて欲しいくらいだったが、さすがにこのスペースで奈落をきっちり語ってもらえた。
私も満足奈落も満足(たぶん)。
「あの日の犬夜叉」は奈落の首と犬夜叉と桔梗。
奈落が木彫りみたい(笑)。

次がいよいよ最終巻。
これまで語られてきたのは

「犬夜叉」、「日暮かごめ」、「骨喰いの井戸」、「戦国時代」、「七宝」
「弥勒」、「殺生丸」、「鋼牙」、「珊瑚」、「琥珀」
「鬼蜘蛛」、「りんと邪見」、「蛮骨と蛇骨」、「残り5人の七人隊」、「人間達」
「四魂のかけら」、「犬夜叉の父と冥加」、「現代」、「神楽」、「神無」
「かごめの守るフィールド(友たちや家族)」「鉄砕牙」、「白童子と赤子と魍魎丸」、「翠子」、「桔梗」
「冥道」、「天生牙と殺生丸」、「曲霊」

だけど最後は何だろう。
最後まで謎の多かった夢幻の白夜?個人的には楓もありかな。
後日談「あれから」で最終回後の犬夜叉たちの様子が少し語られたが、それも含めて「その後の犬夜叉たち」でもいい。
でも最後は「原作者としての高橋留美子」を希望したい。
(2015年5月22日の日記)
「犬夜叉」ワイド版30最終巻感想
★「ひとりごと」で写真を紹介しています。

「犬夜叉」ワイド版30巻は第523話「消える矢」から最終回第558話「明日」まで。
コミックで言うと55巻第5話から56巻最終話まで。
そして大震災からの復興支援と「3.11を忘れない」ためのチャリティー企画参加作品「あれから」。
当時私は奈落の死で燃え尽きてたなあ、懐かしい。
最終話「明日」で泣けたけど、「井戸の異変」から「明日」まではあまり覚えていなかった。
奈落の死までがいわゆる「少年漫画」としてのクライマックスで、その後は伏線の回収と心理戦に入る。
今ワイド版で読み返して、夢幻の白夜の死、帰れなくなったかごめなどああそうだっけ・・・と思い出している。

珊瑚が弥勒のためにりんを殺そうとする、その覚悟と悔恨、許す殺生丸。
弥勒の風穴からの解放、死の間際での戦いですら笑わせてくれる邪見と七宝
そして何より嬉しいことに、奈落が死に場所を桔梗の村と定めたことで楓の出番も増えた。
何もかもが奈落の死へと向かい、奈落の死と共にふっと気が抜けた。

その後の展開、特にかごめについて最後のインタビューで高橋さんが語っている。
前に何度も書いたけど、私は作者がかごめの高校生活にあれだけこだわる意味がわからなかった。
初期は戦国時代の息抜き(かごめとしても、物語としても)にしか見えなかったし、話が佳境に入り、大事な時にあえて現代に帰る 心情にはあまり共感できなかった。
むしろ話が進んだら自然消滅するだろうと思っていたくらい?

でも作者として高橋さんは
「かごめをちゃんと、高校に行かせてあげられましたし。
それは何としてでも実現させてあげたかったんですよ。

長いお話の中で何度も受験だとか試験だとかの話があって、それだけやっといて、『行きませんでした』ではちょっと困りますからね。
最終的に、かごめが現代と戦国時代とを行ったり来たり出来るっていう結論だけはないなと考えていたので、戦国時代を選択する 妥協案として、高校には行かせようと思ったんです。」
と答えている。

ここで初めて納得できた。
作者として、と同時に高橋さんはかごめにお母さんのような気持ちを持ってたのかもしれないな。
「がんばったね、かごめ、ご褒美よ。」みたいな?
そこまで行くと甘いかな?
でもとてもすっきりした。

そして特別編「あれから」。
ヒーローズ・カムバック」企画参加作品。
震災復興のためにどんな形でも参加したい、できることは少ないけれど、出来る事だけでも参加したい、そんな想いに応えてくれた企画だった。
桔梗に封印されたために、桔梗の死も四魂の玉の消滅も知らずに眠っていた妖怪「根の首」が復活、桔梗と勘違いしたかごめを狙う。

楓の出番も多く、りんを大事に思う殺生丸の仁王立ちも笑え、琥珀と弥勒珊瑚夫婦の微妙な(笑)関係も楽しく、ファンには嬉しいサービスだったが、 同時になぜこの特別編が描かれたか、その理由を忘れてはいけないと思う。

インタビューで、他には「犬夜叉」は子供の頃に憧れていた少年漫画を描きたかったと答えている。
舞台を戦国時代にしたのは、いろんなものが出しやすい世界観だから。
現代で妖怪と戦うよりも印象がソフトで、御伽話的な世界みたいな時代設定にした。
高橋さんは鎧や着物を描くのが大好きなのだそうだ。

「犬夜叉はストーリー漫画として、ちゃんと描ききれた。
描き残した事はない作品になりました。
本当に描いていて楽しかった。
きちんと終われて良かったな。」と繰り返す高橋さん。

余談だが、最後の概論は「奈落之二」。
見出しのひとつに「コマを多用する狡猾さ」とあるのだが、これを一瞬高橋さんのコマ割りのうまさと勘違いしたのは内緒・・・。

「あの日の犬夜叉」最後のイラストはかごめを背負って走る犬夜叉、2人ともいい笑顔。
私ももう一度「犬夜叉」に出会えて良かった。
ワイド版読んで、感想も感動も全く色褪せていなかった。
本当にありがとうございました。
(2015年6月19日の日記)

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