その他の話題を語る道(三)

12月22日 ミス・マープルとインテント
長いことかかってミス・マープルシリーズと「LAW & ORDER:犯罪心理捜査班(クリミナル・インテント)」見終わりました。
ゴーレンさんにもう会えなくなるのは寂しいけれど、いい終わり方でしたね。
その後、「LAW & ORDER:性犯罪特捜班」にエイムズさんが特別出演して、ゴーレンさんが辞職、エイムズさんも転職したことが語られます。
ゴーレンさん、今幸せだったらいいなあと思いますが、さてさて、これまでこの2つのシリーズはなかなか最後まで見る気にはなりませんでした。

海外ドラマが好きな方はご存知かと思いますが、ミス・マープルシリーズはジョーン・ヒクソン、ジェラルディン・マクイーワン、ジュリア・マッケンジーと3人の女優がミス・マープルを演じます。
インテントでは主役がロバート・ゴーレン(ヴィンセント・ドノフリオ)とアレクサンドラ・エイムズ(キャスリン・アーブ)でしたが、途中で主役が交代、マイク・ローガン(クリス・ノース)、 ザック・ニコルズ(ジェフ・ゴールドブラム)と回って最後にまたゴーレンさんに戻ります。
パートナーの女優さんも変わって行きますが、やはり最初の2人が好きでした。

マープルはヒクソン、インテントはドノフリオ&アーブコンビが好き過ぎて、他のキャストでは見たくなかったんですよね、ずっと。
こんな人、意外と多いんじゃないかな?

でも見るのがなくて、仕方なく見始めたミス・マープル。
シナリオも改変(というより改悪)されてる部分が多くて、結局挫折。
その後ずっとほったらかしだったんですが(ヒクソン版だけ何度も見てた)、たまたまスカパーでマクイーワン版を見て、「マープルと思わなければおもしろい」ことを発見。
さらに若い女性に、「どうすればあなたみたいな素敵な女性になれますか?」って言われて「それはね、歳をとることよ」って言ったマクイーワン版マープルがとても素敵でした。

どうしても年を取ることに恐れを感じてしまうのですが、こういった番組を見ることでこんな風に年を取りたい、こんな風になりたいって憧れ、目標ができます。
マッケンジー版も、もしかしたら一番マープルっぽいかもしれないと思って見ました。

うるさい、ガチャガチャかき回す、危なっかしい(笑)。
ヒクソン版が一番好きなことに変わりはないけど、3人は3人とも魅力的なマープルでした。

インテントも元々ジェフ・ゴールドブラム好きだし(「ザ・フライ」とか「ジュラシック・パーク」とか)。
これもインテントだと思わずに見るといいのね。
いつの間にかインテントじゃない別ドラマを見てるつもりになって、知らないうちにインテントに戻ってる。
あまりこだわらず、時間を置いて見るのがいいのね。

せっかくの良いドラマ、先入観に囚われるのはもったいないかも。
(2017年12月22日の日記)
1月12日 邪悪
★パトリシア・コーンウェル著「邪悪」に関してネタバレ含みます。

クリスマスにはクリスティならぬコーンウェルを、がお約束だったが、2017年(平成29年)は出なかった。
本国では2016年(平成28年)に24作目「Chaos」が出ているので、通常ならばもう日本でも出ておかしくない時期。
ただ翻訳が間に合わないだけならいいのだが。

なんだかんだ言って全作読んでいるけれど、現時点での最新作は「邪悪」。
再読して、やはり冒頭11ページから25ページまではおもしろい。
昔のシリーズに戻ったような緊張感を感じた。

ところがそれからが長かった。
事件現場で携帯電話に気を取られ、揚げ句の果ては職務を放棄して別の場所に向かう。
もちろんやるべきことはちゃんと手配したとケイなら言うだろうが、突き放してみれば公私混同と言いたくなる。
ケイほどのプロがなぜそんな事をしたか、ルーシーが関わっているから、キャリーが関わっているから。

検屍官シリーズに限らず、海外のドラマや小説を見たり読んだりしていると、プライベートへの比重の掛け方が 日本では考えられないくらい強くてびっくりすることがある。
日本だと職場に家庭は持ち込まないのが定説で、それが良いか悪いかはともかくとして私も慣れるまでしばらくかかった。

この本は評価が驚くほど別れているようだが、それは

1、ルーシーに対してどう思っているか。
2、作者の癖である過去を変えることをどう思っているか。

によって感想が変わって来るからではないだろうか。
小説、ミステリとしての出来不出来より、私はコーンウェルにいつもそれを感じている。

たとえばベントン、たとえばフィールディング。 作者がいくらこれは作者のはかりごと、と宣言していても、私はベントンは死んだと思っていたし、フィールディングは良い仲間だと 思っていた。
後になって実はベントンは生きていたのよと、実はフィールディングは良い仲間の仮面の下で、こんな奴だったのよと言われても、 どうももやもやしたものが残る。

前作でも死んだはずのキャリーが生きていて、さらに超天才と化して登場するのにはうんざりした。
何よりも天才でありながら人格的に問題のあるキャリーが、人とうまく付き合える設定は出来過ぎ感が強い。
エキセントリックなルーシーの性格も、度が過ぎると物語のおもしろさを削ぐものでしかなく、ジャネットもあまり存在感がないのは辛かった。

でも今回はいつもより「心理戦」がおもしろく、ネットの恐怖を押さえて読み応えのあるものなのは嬉しかった。
総体的に私の評価は★を4つはつけたいところ(昔にくらべると甘いかも)。
さらに日本の「TBSコメディドラマ」や「貝印のシュン・フジ三徳包丁」が出て来たのも嬉しかった(笑)。
料理のプロ、ケイが認め、ルーシーにプレゼントした包丁、これは日本が誇っていいですよ。
ただサイトで見た限り、「フジ」はなくて、「Kaji」「Hana」「Nagare」などがあったので、「Kaji」の間違いか、当時は「Fuji」もあったのか、詳しい事はわからない。

TBSのコメディドラマは201年か2015年に執筆しながら見たのだろうか。
私は日本の現代のドラマは「相棒」と「科捜研の女」しか見ないので(逃げ恥は見た)、リストを見てもどれがコメディだかわからないが知りたいな。
もひとつおまけ、ハイド巡査がダンキンドーナツに行く場面。
日本にもダンキンドーナツがあったと思っていたら1998年(平成10年)に日本から撤退していたらしい。
そういえば名前は知ってたけど、実物も店舗も見たことなかったことに今気がついた。

とにかく新作出てくれますように。
(2018年1月12日の日記)
1月31日 出世花
「みをつくし料理帖」が有名な高田郁(かおる)さんのデビュー作。
私は「食べ物を扱う→死を扱う」と作品を昇華させていったのだろうと勝手に解釈して、みをつくしの方を 先に読んでしまいました。
馬鹿ですねえ。
でも未熟な時代の作品に戻ってがっかりするのでは、なんて心配は無用。
デビュー作からしてさすがの高田作品でした。

流れで言えば、「出世花」でデビュー。
「みをつくし料理帖」完結。
「出世花 蓮花の契り」出版となっているので、デビュー作からみをつくしをはさんで7年後に続編を出した形になりますね。
デビュー作の「出世花」でストーリーもきっちり完結しているので、あらかじめアナウンスしておかない限り、2作目が出るとは 読者も思っていなかったのではないでしょうか。

みをつくしがタイトルからして料理人の物語であることは想像できましたが、「出世花」は読み始めるまでどんな人物のどんな物語か 全く予想がつきませんでした。

数年前に「おくりびと」という映画が公開されましたが、その納棺師の仕事を江戸時代に持ってきた形です。
遺体を湯灌して清め、衣装を整えるなどの儀式を行って亡くなった人をお送りする。
本人はもちろん、残された家族にとっても心を慰められる高潔な仕事でありながら、世間では蔑まれることも多い。
この物語をよくデビュー作に持って来た、そして見事に書き上げたものです。

高田さんの作品はみをつくしと出世花しか読んでいませんが、共通するのはその清冽な雰囲気。
出来過ぎでしょっていうくらい主人公や周りの人々に出来物が多いのですが、それが上滑りしないのは彼らが抱えている悩みも迷いも きちんと描き切っているからでしょう。
特に正念と正縁の関係は出世花において見事でした。

そんな感想を持っていたので、続編「蓮花の契り」は読まなくても良かったかな?という気もします。
清冽さも、悩みも救いも前作と変わらないのに、どこかこなれてしまった感じが残念でした。
たぶん高田さんじゃなかったらそうは思わなかったと思います。
蓮花もまた良い作品、だけど・・・と出世花で与えられた結末がいかに素晴らしかったかを認識する結果になりました。

ただ高田さんはこの後も良くも悪くも「気の抜けないはりつめた物語」を書き続けていくのでしょうか。
新シリーズ「あきない世傳 金と銀シリーズ」はまだ読んでいないのでわかりませんが、このまま突っ走るのではなく、ふと気の抜けた 物語も読んでみたい、そんな気がしました。
(2018年1月31日の日記)
2月18日 あきない世傳 金と銀
★「あきない世傳 金と銀」に関して重要なネタバレあります。

「出世花」「みをつくし料理帖」に続く高田郁さんの長編3作目。
4巻まで出ています。

おもしろいです、怒涛のおもしろさ。
とりあえず1巻買ったものの、1巻を読み終える前に残り3冊注文していました。
まずね、1巻読み終えた時点で幸は3人と結婚するなってピンと来ました(笑)。
私が鋭いわけじゃなく、誰でも気付くと思います。
だってこの本は幸のための物語なんです。

風景の美しさ、着物の美しさ、あきないのおもしろさを語る上でも絶品。
私には着物、というより美しい物に関する感性も語る知識も全くないのですが、高田さんの描く着物が美しいんだろうということはわかります。
もう一度書きます、この本は幸のための物語なんです。

で、作品としてはおもしろいけれど、何かが引っかかる・・・。
何て言うのかな、たとえば重箱に隙間なく美しいご馳走がが詰め込まれた豪華な花見弁当、そんな感じ。
綺麗なんだけど、おいしそうなんだけど、お箸突っ込む隙間もないほど完璧で手が出ない。

ふと思い出したのがジョアン・フルーク著「ピーチコブラーは嘘をつく 」。
いわゆるコージーミステリーで「あきない〜」とは全く違うタイプの本ですが、ヒロインハンナの親友が結婚するので、ハンナはウェディングケーキを作ります。
もう1人、別の友だちもケーキを作ります。
でも友達の作るケーキはまるで「装飾用」で、あまりに綺麗で完璧なケーキだから誰も食べようとしないだろう、だからハンナは食べておいしいケーキを作ってね。
ハンナと友達はそんな会話をするのです。

そうなんです。
完璧すぎて共感や感情移入や、そういったことができない。
物語に?じゃなくて幸に。

幸を囲む人物たちも幸のために作られ、ストーリーも幸のために作られ、幸自身はあまりに完璧で近寄りがたい、出来過ぎ感が強いのです。
もちろん幸は優しい人だし我慢強いし、そう言った意味では「みをつくし〜」の澪や「出世花」の縁もそうでした。
主人公が立派でそれが作品に良くも悪くも独特の清冽さを与えているのは高田さんの特徴だと思います。
主人公を中心に人物設定やストーリーが練り上げられていくのも普通のこと。

でも澪や縁はもっと恋に振り回されたり、心に迷いができたりもっと人間味があった気がします。
幸の場合、揺るぎがなさ過ぎて、さらにあえて?心情描写がされないので何があっても全く影響を受けない。
怒涛のおもしろさは、幸の回りを駆け巡っているだけ、そんな気さえします。

そんな幸のキャラクターを小気味良いと見るか近寄りがたいと見るかでこの本の評価は変わって行くと思いますね。
私は澪や縁の方が好きかな。
もちろん最終話まできっちり読み切るつもりですけど。

ところでこのシリーズを読んでた頃に、ちょうどスカパーで十朱幸代さんの「芸者小春姐さん奮闘記」が放映され、録画しました。
芸者さんや着物について少し勉強しようと思ったからですが、着物の美しさもそうですが、十朱さん始めとした女優さんたちの立ち振る舞いの美しさには ため息が出ますね。
着物を着こなす、難しいなあ・・・。
私には無理です。
(2018年2月18日の日記)
2月25日 〆切本
一般人は「〆切」という言葉に縁はないけど、遠い昔の受験の前の日、面接の前の日、さらに遡れば期末テストの前の日など、それぞれに葛藤はあった。
いっそ開き直って最後の夜は寝て、すっきりした頭で臨むべきか、1分1秒を惜しんで備えるべきか。
最近でもそこまで追い込まれはしないものの、なんやかやと切羽詰まることは多い。

それが作家(漫画家)と来たら、作品として世間に出す、しかもお金で売るから評価もされる、批判もされる。
それを前提として書くなんて、考えただけでも胃が痛くなりそうだ。

しかも書いているのは錚々たる顔ぶれ。
読んで感動し、「こんな作品を書ける人は人間じゃない!」とすら思わせた大御所ばかり。
それが書けない言い訳、説明、悩み、想い、葛藤の羅列羅列・・・。
吉川英治さんの手紙を読んだ時は涙が出そうになった。

私がよく読むエッセイは池波正太郎さんだし、人として関心あるのは高橋留美子さん。
池波さんはこの本でも書いているが、〆切に決して遅れない、むしろ早い。
小説ではないが、年賀状に取りかかる早さでも有名だった。

高橋さんは、「漫画と結婚した」人だから、これも早い。
そんな人ばかり知ってたから、この本での書けない作家と、待つ編集者の告白は、だんだん胃が痛くなってくるほど悲惨である。
でもこの本を読んで、これまで神様のように思っていた日本文学の大家の人間味を知ることができた。
私は日本文学、純文学のジャンルはあまり読まないが、これからは作者の裏の想いを意識しながら大切に読ませて頂きたい、そうとすら思った。

不思議なのが、作家はどうしてそんなに注文を受けるんだろうということ。
仮に、だが私が作家になっても一度に2冊も3冊も書く自信なんてない。
1冊書いて、できたら出版社に持ってって引き受けてもらう。
そしたら次に取りかかる、そんな書き方をする人はいないのだろうか。

連載?とんでもない。
書けなくなったらどうするの。
途中で中断、連載中止になる未来しか見えない。
書けなくても書けるのがプロの作家なのだろうが、なぜそこまで、とは思う。
私が思うような書き方をしている作家は実在するのだろうか。
と思ったら、出版社の依頼を断ったら、もうそこから仕事が来なくなるのだそうだ、そうだよなあ・・・。

とにかくこの本はお勧め。
〆切に限らず、世の中辛いのは自分だけじゃない、ということを切実に教えてくれる。
人によっては自虐のユーモアを交えて教えてくれる。
(2018年2月25日の日記)


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