「MAO」感想(第191話〜200話)
6月30日 第191話「修復の代償」
原作少年サンデー2023年6月28日(31号)「MAO」 第191話「修復の代償」

☆   ☆   ☆

摩緒も長い間生きて来て、いろいろあったことだろう。
それでも人を手にかけることに葛藤はあるはず。
それでも菜花のためなら。
その想いが短い答えに集約されている。

そして夏野にもその覚悟はある。
「闇に負けず、心を壊さず、その手は血に濡れていないからこそ、希望があるー」
それが菜花なら。

そしてその対比が双馬。
獣は強くなっていく、その体は蝕まれていく。
でも妖化する前に、死ぬ前に、双馬はすでに心を失っている。

白眉がそれほどの力を持つとは思わない。
双馬にほんの少し力を加えてやれば、勝手に壊れていく。
この展開が双馬のために怖い。
(2023年6月30日の日記)
8月1日 第192話「人の心」
原作少年サンデー2023年7月5日(32号)「MAO」 第192話「人の心」

☆   ☆   ☆

双馬と対決する菜花。
でもその決意は双馬を救うことにある。
だからこそ血赤丸は菜花を守る。

それでもそこに限界はあり、救おうとしてもあえて心を壊していく双馬にはかなわない。
かなうはずがない。
双馬は菜花を殺すことにためらいがないから。

それでもこの少女は本当に凛々しくて清々しくて。
摩緒が惹かれるのもこんなところにあるのだろう。
以前はかごめに似てると思ったけれど、もっと幼い感じ。
だから摩緒が精神的に大人な設定になったんだろうな。

菜花の危機に動いたのは摩緒。
「もういい 菜花。
あとは私が・・・。」
摩緒の言葉は菜花に届いているのか。

でも本当に危険なのは双馬の方。
本当の願いは白眉に認められること。
白眉は双馬がそこまで慕うほどの相手なのかと思ってしまうが。

表紙の双馬と菜花、瞳が同じ。
でも大切な「心」の部分は対照的。
双馬が闇に堕ちるにつれ、彼には申し訳ないが、エピソードのおもしろさも増して来たように思う。

次回摩緒は、菜花をここまで追い詰めた双馬を、獣と共に殺すのか。
それとも双馬を救うのか。
そこが気になる。
(2023年8月1日の日記)
8月4日 第193話「憧れの その先」
原作少年サンデー2023年7月19日(34号)「MAO」 第193話「憧れの その先」

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「憧れの その先」
その先には、獣があった。
そしてさらにその先には、白眉がいた。

「悪しき獣へと変わり果てた少年」は、白眉に命を救われ、白眉への憧れを胸に、さらなる闇を突き進む。
双馬が闇に堕ちれば堕ちるほど、その魅力が増すのは皮肉。

どうしても双馬を殺したくない菜花。
双馬を殺すことにためらいを感じる摩緒。
そして容赦ないのが夏野。

このエピソードでは、それぞれの個性が際立つだけに、白眉の変わりなさがちょっと物足りない。
意外と白眉が奈落ポジなのかもしれないか?

ただここで、双馬を人として死なしてやることが、本当の救いになるとは思えないのが恐ろしい。
救われることでかえって恨みを残しそうな。
(2023年8月4日の日記)
8月7日 第194話「祓う力」
原作少年サンデー2023年7月26日(35号)「MAO」 第194話「祓う力」

☆   ☆   ☆

芽生は不知火には無条件の忠誠を誓っているが、白眉に対してはどうなのだろう。
基本的には優しい少女で、仇や悪人以外は救おうとする。
双馬の体を実験に使い、その心を弄ぶような白眉の態度にはうっすらとだが、受け入れにくいものを 感じているように見える。

御降家が崩壊するとしたら、今回後半登場する幽羅子と共に、芽生が重要になったらおもしろいと思う。
蓮次は芽生と気が合うようだが、理由にこだわらず暗殺を請け負う彼には、芽生のような形の優しさはない。
(不幸な子供たちを救おうとする優しさはまた別の部分)。
最後に芽生と蓮次の対決があったら、とても辛い展開だろうけど、「MAO」の中では読んでみたい。

一方、巨大化しても六文ちゃん、猫の姿で歩く可愛さと相まって、いまいち悪役感がなかった猫鬼が遂に幽羅子と対決。
対決?
幽羅子は紗那と双子の姉妹でありながら、(理由はともかく)紗那を殺した。
猫鬼は灰丸として紗那に可愛がられていた猫。
蟲毒の術によって猫鬼にされたことになっているが、懐かなかったはずの藻久不に手によって猫鬼にされる。

しばらく忘れていた設定だが、灰丸はたまたま猫鬼にされたわけではなく、何者かの意志によって、もしかしたら 灰丸自身の意志で?猫鬼になった。
その猫鬼と幽羅子の再会。
「幽羅子」と呼ぶ猫鬼に対して、幽羅子は「灰丸」と「猫鬼」、2つの名前を口にする。
この展開はとても興味深い。
次回が楽しみ。

サブタイトル「祓う力」は菜花の血赤丸に対してつけられたのだろうが、とりあえず菜花はいい子だ、だから血赤丸を使って 祓えるんだという、これまでの繰り返しに過ぎず、芽生と幽羅子の間でとても影が薄かった。
(2023年8月7日の日記)
8月11日 第195話「猫鬼と幽羅子」
原作少年サンデー2023年8月2日(36・37合併号)「MAO」 第195話「猫鬼と幽羅子」

☆   ☆   ☆

猫鬼と幽羅子、対決ではなく共闘?だった。
今回が初対面なのはちょっと意外。
摩緒と幽羅子が「二人きりで」会うのも900年ぶりというのもちょっと意外。

猫鬼も幽羅子もあちこちに出て来るし、なんとなく会ってた印象があった。
でも猫鬼がよく会ってたのは、幽羅子ではなく顔が同じ紗那で、幽羅子も摩緒と何度も会っているけど 2人きりではなかったあ、そういえば。

菜花は中間テストでお休みで(表紙のお夜食うどん?がおいしそう♪)、猫鬼と夏野、摩緒と幽羅子が相対する。
猫鬼は夏野の死を望んでいる、単純明快。

幽羅子は普通に摩緒と2人きりで会いたかったらしい。
愛の告白?
でも摩緒は顔が同じだからと言って紗那と幽羅子を同一化して愛することはない。
同情はあっても恋愛はないだろう。
これは菜花がいようといまいと関係ないと思う。
幽羅子もそれはわかっているはず。

あるとすれば、紗那の心臓を使って幽羅子が紗那を魂ごと取り入れ、紗那になった時、か。
幽羅子は自分が紗那として愛されるのは厭わない、そんな危うさも感じる。
「MAO」でそこまで展開させるかとも思うけど、なって欲しいという要望かな?

こんな話なのに笑いどころもしっかりあって、摩緒と夏野の
「・・・にしても静かだな。」
「ええ?私がこんなにしゃべっているのに。」のところと、猫鬼と夏野の
「以前おまえは偽の幽羅子の気配で私をおびき出したけど・・・」に対して
「今度は本物だよ。」の「だよ」に笑った。

おかしくない?
でも猫鬼が「だよ」って可愛すぎる。
(2023年8月11日の日記)
8月19日 第196話「幽羅子の望み」
原作少年サンデー2023年8月16日(38号)「MAO」 第196話「幽羅子の望み」

☆   ☆   ☆

たまたま「MAO」コミック17巻を先に読んだ。
ちょうど夏野の秘密が明かされる部分で、今週号の話にうまくリンクされてたなあと思った。
夏野に関して今回大事なのは、猫鬼が夏野に与えた大五の魂を、取り戻そうとしていること。
幽羅子は大五の復活を望んでいないので、猫鬼はそのことを幽羅子に伝えていないこと。

でも今回は、摩緒と幽羅子の相対。
とても深い会話で興味深く読んだけど、最後の摩緒の「救って・・・やりたい・・・」の想いに引っかかった。
以前幽羅子は菜花に対して摩緒への想いを打ち明けたことがある。
あの時は言葉を操り、菜花が身を引くように仕向けた、言霊による呪いだった。

今回は幽羅子は、純粋に自分の気持ちを摩緒に語る。
そこには何の打算も計算もなく、摩緒への溢れる想いだけがある。
なのに菜花と同じ結果になってしまった。
菜花は身を引こうとし、摩緒は幽羅子を救おうとする。

幽羅子を救うとはどういうことか。
紗那や菜花の存在に関係なく、摩緒が幽羅子を愛することはないだろう。
摩緒が幽羅子を救う究極の形はそういうことだ。
幽羅子もそれがあり得ないことは知っている。

ならば御降家を倒し、幽羅子を解放したとして、それは幽羅子にとって救いになるだろうか。
救うべきは幽羅子の立場ではなく、心。
御降家から解き放たれた時、幽羅子はどうするだろうか。
ある意味、安らかな死だけが幽羅子の救いとなりかねない。
そうなると、摩緒の気持ちもある意味残酷。

摩緒が結果的に幽羅子に操られてはいけないし、摩緒が幽羅子に中途半端な結末を与えてもいけない。
今回の美しいシーンと美しい会話を今後どのように広げ、まとめていくのか、読み込んで行きたい。

今回ネットでも発表されたし、コミックにもチラシが入っていましたが、12月13日に「高橋留美子原画集 COLORS 1978−2023」が発売されます!
400ページにロングインタビューなど充実の内容で6800円。
早速予約!
何といっても「MAO」が楽しみです。
(2023年8月19日の日記)
8月26日 第197話「魂の在所(ありか)」
原作少年サンデー2023年8月23日(39号)「MAO」 第197話「魂の在所(ありか)」

☆   ☆   ☆

幽羅子は大五の復活を望んでいないはず。
それでも幽羅子は、猫鬼が夏野を殺して大五の魂を取り返す手伝いをするのか。
夏野の問いに、そのことは幽羅子に伝えていないと猫鬼は答えた。

でも夏野は後で摩緒に、
「幽羅子は猫鬼が私(夏野)を殺そうとしている事を知っていたはずだ。」
と告げている。

この言葉は夏野の言葉か、夏野の言葉を借りた、大五の言葉か。
それとも猫鬼の嘘を夏野が見抜いたのか。

摩緒に嫌われるのが一番怖い幽羅子が、摩緒の仲間である夏野を殺すことに簡単に手を貸すとは思えない。
薄々感づいていたとはしても、逃げ場くらいは用意していたと思う。
だからここは幽羅子の側につきたいな。

そうなると夏野(大五)の意志がわからなくなる。
さらに大五の復活が、なぜそんなに幽羅子にとってマイナスなのか、そこが気になる。

それから摩緒の甘さが露呈した言葉、
「御降家を捨てることはできないのか?」
言っちゃった・・・。

捨てて自分はどうしたらいいのか?
普通に生きることはできない幽羅子。
摩緒は自分のそばにいてくれるの?

愛せないのに救いたい。
救いたいけど責任は持てない。
確かに御降家を離れれば、悪事から離れることはできるけど、それだけでは幽羅子は救われない。

たとえ嫌っていたとしても、今は不知火や白眉がいる。
御降家を離れた幽羅子は孤独だ。
そして離れた所から摩緒や菜花の事を思うしかない。
摩緒の優しさは時に残酷。

幽羅子の機微に太刀打ちできるのは、華紋くらいか。
だから出て来ないのかもしれないけど。
夏野の言葉が摩緒にどんな影響を与えるのか、今後が楽しみ。

あと今週号は、「うる星やつら」45周年のお祝いということで、漫画家先生のイラスト多数。
ラムはやっぱり御本家高橋先生一択だけど、個人的には「銀魂」の空知先生のパンダとエリザベスが一番のお気に入り。

もう一つ、今週の下絵で、12ページの夏野が杖を振るところ、本のイラストと振りが逆になっていた。
私は下絵の方が好きかな、ちょっと摩緒っぽいけど。
(2023年8月26日の日記)
9月2日 第198話「暗い影」
原作少年サンデー2023年8月30日(40号)「MAO」 第198話「暗い影」

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はい、やられました。
私も幽羅子を信じてました。

そう思って見ると、着物姿で足を組んで座っている姿がやさぐれているようにしか見えない(笑)。
それはともかく、猫鬼と幽羅子の会話がおもしろい。
紗那に似てるから摩緒が受け入れるとしたら、それは嫌。
当然だ。

でも猫鬼は「摩緒が幽羅子を受け入れ、ともに御降家を継ぐ」ことを示唆する。
菜花を人質にして脅迫するなり、操るなりして、強制的に摩緒に御降家を継がせても幽羅子は 喜ばないだろう。
もし、猫鬼が摩緒の体を乗っ取ってなり代わったらどうだろう。
猫鬼がほのめかしているのは、そのことではないだろうか。

仮にできたとして、見た目は摩緒で、中身は猫鬼、そんな摩緒を幽羅子は愛せるだろうか。
幽羅子が求めているのはありのままの摩緒。
でも猫鬼の言葉に揺れるのは幽羅子の女心か。

後半登場するのは綾女。
摩緒が治療しているが、左目を失明してしまう。
猫鬼に似てる・・・。
かがりは今回出て来ないが、姉を失明させたことをどう思っているのだろうか。

最初は摩緒をライバル視しているように見えた綾女だが、今はその力と性格を見極めて接している。
この2人の関係は好もしい。
呪いと言っても、相手を呪うのではなく、親友を救うという思いを込めて使うようにと指示しているし、 摩緒もかがりのような相手なら依頼も受けないだろうが。

でもその結果が今回描かれることはなく、綾女の依頼人は戻っている。
次回彼女の窮地?を摩緒が救いに現れるの?
間に入るのは、現代で追試を受けて戻って来た菜花の愚痴。
のんきでいいなあと思いつつ、この単純さが摩緒の救いになっているようで微笑ましい。
乙弥もまたかわゆし。 最後に綾女の依頼人の女性。 以前出て来た華紋の「婚約者」に似ててちょっと笑った。
(2023年9月2日の日記)
9月14日 第199話「呪った理由」
原作少年サンデー2023年9月13日(42号)「MAO」 第199話「呪った理由」

☆   ☆   ☆

今週号は199話、次回が200話記念の巻頭カラー。
200話予告には
「『親友を助けたい』と語る優しき令嬢。
その心に巣食う、暗い闇が露わに・・・!!」

物語としては佳境に入っておもしろそうなのに、いまいち気持ちが盛り上がらないのは、今回の 2人の少女がキャラとして普通過ぎるところかな。
これまでにちょっとした被害者で出て来たような雰囲気の2人で、逆にそれだけ巣食う闇の大きさを 期待できればいいのだけれど。

謎は多い。

まず、綾女が寒鳥(依頼人・美和子の親友澄子を騙したとされる男)が、澄子から「身を引くように」と 念を込めて渡した針を使って、美和子は寒鳥を殺すための呪いをかけたように見えること。
でもそれが、美和子の本心からなのか、何者かに操られているのかわからないこと。

摩緒が美和子を罠にかけたように見えること。
美和子が呪いの事を、澄子に知られたくないのは当然としても、呪いの小物を返すのを一晩待つことにより、 何かをしようとしているのではないかと思われること。

呪いの証拠を消すならともかく、寒鳥への呪いを完遂しようとするのではないかと思えないこともない。
美和子の意志によって、あるいは何者かの意志によって。

さらに寒鳥が本当に澄子を騙しているのかわからないこと。
もし寒鳥が澄子を騙しているのではなく、本心から澄子が好きだったら。
摩緒はその事態も考えているようだ。

もちろん美和子の嫉妬も考えられるが、そんな単純なものでもなさそう。
だからこそこんな「普通の」少女たちにしたのか。

「暗い影に憑かれた少女・・・
その本性に摩緒はー!?」

だからこそ期待したい。
(2023年9月14日の日記)
9月26日 第200話「呪う覚悟」
原作少年サンデー2023年9月20日(43号)「MAO」 第200話「呪う覚悟」

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200回記念巻頭カラー、終わってみれば普通の少女による普通の嫉妬の話だった。
そこに関わって来るのが綾女の呪物と幽羅子の存在。

普通の少女である美和子が恐ろしいのは、呪物のせいで寒鳥の顔が獣のように変わったのに、 それをさらに澄子に渡そうとしたこと。
これほど強い呪物でなければ、ここまで大ごとにはならなかったかもしれない。
呪いの強さが美和子を狂わせたとも言える。
人を呪わば穴二つ。
でも美和子は最後には許された。

今回大事なのは事件そのものよりも、嫉妬、あるいは一途過ぎる想いが人を狂わせることもあるという 摩緒の幽羅子に対する懸念の布石。

ここで興味深いのが、摩緒と綾女の関係。
2人は互いに実力を認め合う好敵手としての立ち位置だったのが、いつの間にやら協力関係。
でも本来宝生家は呪いを家業とする家。
今回は恋の話だったから摩緒も手を貸したし、綾女の治療もやぶさかではないだろう。

でも綾女初登場時の時のような、呪い関連の問題が持ち上がった時に、摩緒と綾女の関係はどうなるか。
敵となるのか、そのような事件は起こらず、摩緒とは当たらず触らずの関係が続くのか。
もちろん恋愛関係はなく、時には敵として、時には味方として、さらに幽羅子を巡るごたごたにも関わりのない 綾女、興味深い存在だ。

むしろ感情が揺さぶられにくい大人の女性として、幽羅子に絡んで来たらおもしろいと思う。
御降家に関わりのある摩緒達も、逆に白眉達も、幽羅子なしに話は立ち行かないだろうし。
芽生や蓮次は綾女の敵にはなっても、幽羅子の背景には関わりないし。
是非綾女と幽羅子を会わせて欲しい。
幽羅子に全く動じない存在、おもしろいと思う。
(2023年9月26日の日記)

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