しっかりものの老女の死〜コーニッシュパスティ |
いまやフライドポテトにハンバーガー、コーンウォール名物の肉入りパイ(パースティ)など
が主食なのだ。
スケッチには、飛翔する優美なセグロカモメを描きくわえることにした。 2羽にしよう。 左右に大きく羽を広げて楽々と風に乗る姿がいい。 1時間15分が過ぎて、そろそろ背中がこわばってきた。 ローズは立ちあがって伸びをしてから、スケッチブックを手に取って検分してみた。 描きあがったものに満足して、店じまいにする。 とりたてて急いでいるわけでもなかったので、移ろう空の下でしばらくのんびりしていくことにした。 組んだ両手を枕にして防水シートに横になり、頭を空っぽにしてぼんやりと宙を見つめる。 こういうことをする機会はめったにない。 |
クリスマスに死体がふたつ〜スペアリブ |
「スペアリブを持ち帰り容器に入れてもらえるかしら?」
テーブルの向こうのニックが口をぽかんと開けた。 「犬を飼ってるのかい?」 「いいえ、わたしがいただくの。 あなたがいらないなら」 ニックの笑い声に他のテーブルの面々がこちらを向いた。 「なにもムダにしないんだね?」 「しなくてもすむときは。 それに、夜中におなかがすいて目がさめることもあるし」 |
待ちに待った個展の夜に〜スコーン |
夫婦はクロテッドクリームとジャムを添えたスコーンを食べ、中国茶を飲んだ。
ニューリン・アート・ギャラリーまでたどりついたときは、4時をまわっていた。 これからまだ坂をのぼらなくてはならないが、自動車から解放されてかえってうれしいぐらいだった。 身体を動かすほうが健康にもいい。 熱い午後の陽射しの下で船がきらきら光っていた。 街の交通量がふえてきて、あたりには排気ガスやディーゼルガスが重くたれこめている。 道の片側がフランスの貨物トラックにふさがれていた。 市場の魚を積み込んでいるのだ。 |
渚の忘れ物〜ブラックフォレストケーキ |
しかし、まともなカプチーノ、ピザ、ワイン、チーズ、アイスクリーム、
ブラックフォレストケーキ、サクランボ、こうした文明社会にふさわしい品物は
どこを探しても見当たらない。
多文化の大都市で育った女にとっては厳しい環境だ。 わたしは波止場にある古びた製氷工場の前に車を駐めた。 氷を粉砕する音がやかましく鳴り響いている。 わたしはここにたどりくまでに道を訊かねばならなかった。 袋小路の手前にある人目につきにくい脇道に工場はあった。 車で町に入ってくると、道路橋から港が見える。 いい写真が撮れるところだ。 陽の光が海面にきらめき、漁を終えた船が意気揚々と戻ってくる。 |
ムーアに住む姉妹〜チキン・キャセロール |
「おなかすいてる?チキン・キャセロールがあるわよ。」
「うん、腹ぺこ。食べるよ」 ジョエルはレザージャケットをぬぎ、椅子の背に掛けると、広いキッチンの片隅にある 朝食用のカウンターについた。 「とうさんは?」 「会議よ」 ジョエルはため息をついた。 それぐらい予測しておくべきだった。 父親は各地にトレーラーハウスのキャンプ場を持っている。 キャンプ場はそれぞれの支配人に管理を任せてあるため、父親自身はほとんど キャンプ場に行く必要がない。 |
雨の浜辺で見たものは〜アンコウのオーヴン焼き |
オレンジを搾った果汁とフェンネルに漬けておいたアンコウの切り身が、
オーヴンでじゅうじゅう焼けている。
ローズはテーブルに料理を並べた。 父娘は食事を楽しみながら、あれこれと話をした。 食事がすむと、ふたりはラジオのニュースに耳をかたむけた。 アナウンサーの重重しい口調を聞いただけで、ニュースの内容を推測できた。 「本日の午後、母親といっしょにマラザイアンの浜に来ていた4歳のベスことべサニー・ ジョーンズちゃんが、22,3歳の男に連れ去られました。 べサニーちゃんはまだ見つかっていません。 警察はボランティアの助けも借りて、全力をあげてべサニーちゃんの行方を追っています」 アナウンサーは一般の協力を要請し、なにか情報があればここに連絡してほしいと、専用の 電話番号を告げた。 |
パイは小さな秘密を運ぶ〜カスタードパイ |
「ええと。わたしと大佐とこのフレーヴィア嬢さんがキッチンにいたんです。
ちょうどおいしいカスタードパイをオーヴンから出して、冷ますために置いたところでした。 いつものように、そろそろ家に帰らなくちゃ、と思いかけてた時間でしたよ。 亭主のアルフが家にいましてね、お茶の時間にわたしが外でうろうろしているのを いやがるんです。 時間が狂うと胃がへんちくりんになると申しまして。 胃の調子がおかしくなると、そりゃもう大変。 バケツだのモップだのなんだのって」 |
人形遣いと絞首台〜ベーコンエッグ |
だからー彼はいまこの瞬間、ビショップス・レーシー唯一の宿屋「13羽の雄ガモ亭」で
ベーコンエッグを食べている。
幸い、あたしはもう服を着ている。 家は地下霊廟のようにひっそりしていた。 あたしは忍び足で東の階段をおりた。 ゆうべの騒ぎでみなエネルギーを使い果たし、回復期の吸血鬼みたいにそれぞれの部屋で またいびきをかいているだろう。 でも、キッチンのドアをそっと抜けたところで、あたしははたと足を止めた。 ドアのそばの木のスタンドに、牛乳配達車が明け方ドアステップにとどけていった2本の牛乳瓶に 挟まれて、包みが置いてあった。 |
水晶玉は嘘をつく?〜レモネード |
「やあ、フレーヴィア」背後で声がした。
セント・タンクレアウス教会の司祭、デンウィン・リチャードソンだった。 「ひとっ走りキッチンに行って、女性陣から作りたてのレモネードの入った水差しをもらってきてくれたら ありがたい、とダービー先生がおっしゃってるよ」 あたしが顔をしかめてちらりと見たから、彼はうしろめたくなったに違いない。 どうして11歳の女の子は、いつも小間使い扱いされるんだろう? 「わたしが取りに行ってもいいんだが、先生はあの気の毒な女性がわたしの聖職者の襟を 見ない方がいいと思っていらっしゃるし・・・・・・」 |
春にはすべての謎が解ける〜シムネルケーキ |
「とても香りのいいシムネルケーキ(復活祭などに作るフルーツケーキ)ね」
アンティゴネー・ヒューイットは言った。 「レシピを教えていただかなくちゃ、マレットさん」 あたし、お皿がまわされているあいだにいろいろな合図で彼女に警告しようとした。 たとえば寄り目にしたり、舌をだらりと垂らしたり、怒った犬みたいに上唇をめくって歯をむいたり。 でも無駄だった。 「いつも復活祭のためにつくるんですよ」 マレットさんは言った。 「でも、今年は誰もおなかがすいていないんだね。 ホットクロスバン(砂糖衣の十字つき菓子パン。 復活祭の前の四春節に作る)を食べておくれ。 そうじゃないと捨てなきゃならないから」 |
サンタクロースは雪のなか〜ラーディケーキ |
「どうぞおかけになって。
もうじきお湯がわきますし、おいしいラーディケーキ(ラードやドライフルーツの入ったケーキ)を オーヴンから出しますから」 「ラーディケーキですって!」 フィリス・ワイヴァーンあ歓声をあげ、両手を目に当てて指のあいだからのぞいた。 「まあ!ラーディケーキをいただくなんて、髪をお下げにしていたころ以来よ!」 マレットさんはにっこりした。 「クリスマスのために作るんですよ。 以前は母が作ってましたし、その前は母の母が作ってました。 ラーディケーキは、いわば家族の伝統なんです」 |
不思議なキジのサンドウィッチ〜クランペットケーキ |
警部補とあたしはクランペットケーキを食べながら愛想よく笑みを交わし、お茶にクリームや
砂糖をいれるかどうかおたがいに訊いたりするけれど、甘美な真相については
ふたりとも知っていながら口にしないだろう。 「祈祷書」を朗読する司祭の声であたしは現実に引きもどされた。 「女から生まれた人間は、命が短く、心がかき乱されることでいっぱいです。 花のように咲き出ては切りとられ、影のように飛び去ってとどまりません。 わたしたちは命の半ばにも死に臨み―」 諸般の事情から、異例な事ではあるけれど、棺を教会内の墓所におさめるのは葬儀の一部と することになっていた。 いずれハリエットは、地下霊廟のなかのわが家の納骨所に安置される。 棺はのちに、司祭の言葉を借りれば「哀悼者がまばらになった」ころ、そこへ移されるのだ。 |
桃のデザートには隠し味〜ピーチ・コブラ― |
フェスティヴァルのハイライト、すくなくともフィリスにとってのハイライトは、料理コンテスト
だった。 ここでも桃が主役なのはいうまでもない。 ピーチ・コブラ―、ピーチ・パイ、ピーチ・アイスクリーム、ピーチの砂糖漬け・・・・・・。 桃が使えそうな料理なら、かならず誰かが試すのだ。 そしてフェスティヴァルが最高潮に達するころ、コンテストの審査員たちが勝者の名前を 発表する。 勝者には、地元の業者がつくったささやかなトロフィが授与され、そこには「桃のレシピ 最高賞・パーカー郡ピーチ・フェスティヴァル」の銘と、年度が記されている。 フィリスはトロフィがほしかった。 |
かぼちゃケーキを切る前に〜かぼちゃケーキ |
フィリスはひとりきりになるとすぐ、雑誌をめくった。 派手でかわいいハロウィーン用のかぼちゃ型ケーキがのっていたのだ。 側面が波型のパント・ケーキ(白やチョコ色、かぼちゃ香料を入れたものなど)をふたつ、平らな 面どうしを重ねて丸形にし、オレンジ色のフロスティングでかぼちゃらしく見せている。 口、鼻、目はチョコレートだ。 写真では、てっぺんのかぼちゃのへたはアイスクリーム・コーンだけど、フィリスはカップケーキを 緑色にしてのせたほうがかわいいように思った。 つくるのはさほど手間ではなさそうだし、できあがったら人目をひくことまちがいなし。 最近では学校のお祭りをハロウィーンと呼んではいけなくなったが、ラヴィング小学校の秋祭りは 愉快な休日のほんの数日まえだから、かぼちゃ型ケーキはタイミング的にいい。 |
クッキー交換会の隣人たち〜ドゥールドゥルクッキー |
「ジンジャードゥールドゥルクッキーってなに?」とキャロリン。
「聞いたことないけど」 「わたしもおなじ質問をしたらね。 スニッカードゥールドゥルにショウガをコーティングしたようなものらしいわ」 アグネス・シモンズはフィリスの家の隣に住んでいる。 30年以上のつきあいで、それなりに親しいけれど、親密というほどではない。 アグネスはフィリスより20歳以上も年上の80代後半で、家が隣であること、 同じ教会に通っていることくらいしか共通点がないからだ。 そのアグネスがひと月まえ、ころんで腰の骨を折り、フィリスはできるかぎり力を貸した。 親しさの程度はさておいてそれが隣人の務めだからだ。 |
休日には向かないクラブ・ケーキ〜クラブ・ケーキ |
「夕食のクラブ・ケーキはすこし余ったの。
いま思い出したけど、マッケナさんあコンスエラにとっておいてほしいって頼んでいたわ。 きょうの朝食でも食べたいからって。 そうね、マッケナさんは朝ごはんに冷たいクラブ・ケーキを食べるのが好きだといっていたわ・・・・・・」 フィリスは背筋が寒くなった。 誰にでも残りものを食べる可能性があったように思える。 ただ自分は、朝食に冷たいピザを食べるようなタイプじゃない。 そういうことをする人がたくさんいるのは知っているけれど。 たとえばサムも、そう。 |
焼きたてマフィンは甘くない〜パンプキン・マフィン |
「パンプキン・クリーム・マフィンよ、砕いたペカンをトッピングして」
「あら、いい感じね。 ウェザーフォードにはお料理やお菓子づくりの名人がたくさんいるから、コンテストの作品を 試食しに来る人も多いと思うわ。 エントリーもひとつの大きなボランティアよ」 「ほかにも何かしたいわ。 あなたあ感謝祭の日に、缶詰やターキー料理の配達ボランティアをするつもりなんでしょ?」 「ええ、配達役に手を挙げたわ」 「だったらわたしも協力する」 |
フラワークッキーと春の秘密〜ショートブレッド |
「寝る前にチョコアイス添えのショートブレッドを食べるのはやめなきゃ。
あなたもよ、おにいさん。 かけらをなめてたでしょ。 ちゃんと見てたんだから」 スパンキーはくーんと鳴いて抗議した。 オリヴィアは枕に頭を戻したが、暗闇を見つめながら、店にあるものをひとつひとつ思い浮かべていった。 まずはなんといってもクッキー型(クッキーカッター)だが、価値のあるアンティークのものは、 一日の売り上げといっしょに毎晩金庫にしまっている。 |
野菜クッキーの意外な宿敵〜ジェリードーナツ |
「あら、わたしはあなたのために容疑者を確認しにいったのよ―
そのためにデコレーションクッキーを2ダースも使ったんだから」 デルはくすっと笑った。 「そうだね、クッキー代は払うよ。 その代わりと言ってはなんだけど―」 「何、ジェリードーナツ1ダースとか?」 「今夜夕食でも。 新しいレストランの<ボン・ヴィヴァン>で。 ぼくのおごりだ」 |
お菓子の家の大騒動〜ジンジャーブレッドクッキー |
「ご存知かもしれませんが、マディーは町でもっとも古くて重要な建物をジンジャーブレッドクッキー
で再現するという、香り高くおいしい計画を進めています」
オリヴィアの親友で、ビジネスパートナーでもあるマディー・ブリッグズは、芸術的かつ独創的な クッキーを作ることで知られていた。 「現在、最後の建物であるチャタレー邸の仕上げにかかっているところです。 室内の様子もクッキーで再現しています。 とても見事なものです」 「週末いっぱいもつのかしらね」 町長は感じの悪い笑みを浮かべて言った。 |
幽霊探偵からのメッセージ〜ウィスキー |
ミルナーがウィスキーと紙コップを何個か持ってくると、サディが少しずつ注ぎ分けた。
「あんなにショッキングな出来事があったんだもの。 みんなちょっとずつ飲んだほうがいいわ」 わたしは加わりたくなかったが、揉み絞っていた手に無理やり紙コップを持たされた。 「ほら、ペネロピ―。 年寄りの言うことは素直に聞くものよ。 お飲みなさいな」 私は飲んだ。 喉が焼けつくようだったが、今は伯母の言う通りにしていれば間違いないのだと自分に言い聞かせた― 少なくとも、彼女はわたしよりもはるかに落ち着いて見えた。 |
幽霊探偵の五セント硬貨〜シャンパン |
小さな大理石のテーブルにつくと、ジャックはシャンパンを注文した。
銀の容器に入ってやってきたそれは、黒い上着と白手袋のウェイターによって、浅い クリスタルグラスに注ぎ分けられた。 「さてと、受けて立とうか」 一口目のシャンパンをゆっくり味わったあと、ジャックが口火を切った。 「と言っても、戦いじゃないぜ。 知りたいことがあれば訊いてくれって意味だ」 「まず、話を最後まで聞かせて。 あなたとジョーイとエミリーはあれからどうなったの?」 |
幽霊探偵とポーの呪い〜オートミール |
わたしはスペンサーにオートミールを作ってやる前に、髪をざっととかしてジーンズと
パウダーブルーのセーターに着替えてはいた。
けれど、昨夜の騒動のおかげで・・・・・・それからもちろん、ニューヨークシティでジャックが 人探しをした件を夢に見たおかげで、頭はまだ朦朧としていた。 「待って!」 駆けだすスペンサーをわたしは呼び止めた。 「わたしも一緒に行くわ」 スペンサーはくるりとふり向いた。 |
幽霊探偵と銀幕のヒロイン〜ポップコーン |
「悪くないね」
彼はポップコーンをひとつかみ口に放り込むと、音を立ててかみ砕いた。 「七十何年前だかに、ここで『ジョーズ』を観たんだ。 そりゃあもう、ひどい映画館だった。 隣り合った座席がどっちも壊れてないってことがないんだ。 床はべたついてた―キャンディが落っこちでべたついてるっていうんじゃない。 おまけに柱は、茶色だったな?」 |
幽霊探偵と呪われた館〜バナナマフィン |
あいにく、ミルナー・ローガンのふわふわドーナツも、いつもなら見るだけで唾の湧くメープルグレーズド・
バナナマフィンも、どんなにおいしそうな「クーパー・ファミリー・ベーカリー」のお菓子も、わたしの胃は
受け入れてくれそうになかった。
かろうじてコーヒーが飲めるくらいだった。 だからわたしは、テーブルにセットされたコーヒーメーカーの前へ行き、自分のための一杯を作った。 二杯は必要だぞ、ベイビー。 ジャックのアドバイスがあった。 昨夜はさんざん飲んだ挙げ句にお化け騒動だ。 そうやって立って歩けてるのが不思議なくらいだ。 |
スリー・パインズ村の不思議な事件〜グミベア |
そのカウンターには、パイプ型や捩じり型の甘草(リコリス)キャンディー、シナモンスティック、
鮮やかな色のグミベア(熊のグミキャンディー)を入れた広口瓶などが、シリアルの一回分の
小箱とともに並んでいる。
その二部屋の奥にあるフレンチドアの向こうが、ベン・ハドリーがいっていた個室にちがいない、 とガマシュは思った。 「いらっしゃいませ?」 顔色の悪い大柄な娘が完璧なフランス語で訊いてた。 「ああ。店主と話したいのだが。 オリヴィエ・ブリュレさん、だったね」 「おすわりください、呼んでまいります。 お待ちになる間、コーヒーはいかがですか?」 |
スリー・パインズ村と運命の女神〜カプチーノ |
人々が店員とにこやかに微笑みをかわしながら、カフェでカプチーノを受け取ったり、生花や
バゲットを受け取るのをよく見たものだ。
秋には子供たちがコンカーズ(紐に通したトチの実をぶつけて相手の実を割る英国の 子供の遊び)をするために、落ちたトチの実を集めているのをよく見たものだ。 年配の女性同士が腕を組んでメイン通りを歩いていくのを見たものだ。 もちろん、彼は愚かではないから、ホームレスたちにも気づいたし、酔いや疲れの残る 顔を目にしては彼らのむなしく長かった夜を思い、さらにはこれからのもっと長い一日を 思いやった。 しかし心の奥底では、この世はすてきな場所だと思っていた。 そして彼の写真はそれを反映し、光と輝きと希望をとらえていた。 そして当然ながらその光に挑む影も。 |
スリー・パインズ村の無慈悲な春〜イースターエッグ |
「どういうふうにイースターを祝うんだい?」
老詩人は詰問し、クララからピーターのスコッチをひったくり、ぐびぐびと飲んだ。 「イースターエッグを探して、ホットクロスバン(砂糖衣の十字形の模様をつけた菓子パン)を食べるだけじゃないか」 「わたしたちは聖トーマス教会へ行くよ」 ムッシュー・べりヴォーがいった。 「境界に向かう人よりサラのパン屋に行く人のほうが多いよ」 ルースがぴしゃりといった。 「そして拷問の道具、つまり十字架、のついたパンを買う。 みんなはあたしのことを頭がおかしいと思ってるらしいけど、たぶんこの村で正気なのはあたしだけさ」 そういってみんなを面食らわせてから、ルースは足を引きずってドアへ行き、そこでふり向いた。 「チョコレートエッグを子供たちのために外に置くのはやめるこった。 悪いことが起きるから」 |
スリー・パインズ村と警部の苦い夏 |
ラコステはエッグベネディクトを注文し、ボーヴォワールはメニューにある一番ボリュームのある
料理を頼んだ。
クレープ、卵、ソーセージ、バックベーコンを盛った皿が彼の前に置かれた。 ボーイはクロワッサンの入った籠と自家製の野イチゴとブルーベリーのジャムとハチミツを のせたトレーを置いていった。 「誰かがいやがらせでやったのです」 ラコステのフォークからオランデーソースが滴った。 「女の子にはひどい打撃だろうな」 |
なぜ、エヴァンズに頼 まなかったのか?〜サンドウィッチ |
牧師館の家政上のきりまわしをしていて、その夫と奉公している家政婦の
ロバーツ夫人に、ボビィはサンドウィッチをつくってもらうと、マーチボルトで
買ったビールを1本ぶらさげて、たったひとりでピクニックに出かけたのだ。
この数日間というもの、ボビィには、フランキーがひどく恋しくてたまらなかった。 年寄りはもうご免だ―老人というやつは、いつもおなんなじことばかりくりかえしているんだから。 彼はシダの生えている土手に手足をのばすと、ランチを食べてからひと眠りしようか、 それともひと眠りしてからランチを食べようかと思案した。 そのうちに彼は、いつの間にか眠りこんでしまったので、この問題はおのずから解決したと いうわけだ。 ボビィが目をさますと、もう3時半じゃないか! 彼はこんなふうに一日をつぶすことを、オヤジがどんなに嫌がるか、それを考えると思わず ニヤリと笑ってしまった。 12マイルかそこらだったが、山野をたっぷり歩きまわることは、健康な青年にとって書くべかざる 運動ではないか。 思わずしらず、あの有名な文句が口から出た。 |
アクロイド殺し〜卵とベーコン |
食堂へ行くと、いつものようにキャロラインの頬に軽く接吻し、卵とベーコンの皿の
前に腰をおろした。
ベーコンは少し冷めている。 「はやばやと往診だったのね」 キャラロラインが言った。 「ええ、キングズ・パドック荘へね。 ファラーズ夫人のところです」 「知ってますよ」 「どうして知ってるんです?」 「アニーに聞きました」 |
ハロウィーン・パーティ〜デイト(なつめ) |
「チューニスなつめ(デイト)」と書いてあった。
「ははあ、こんどはなつめ(デイト)ですね」。 「そうですわ。なつめ(デイト)ですわ」 彼女はまた一つのなつめをとり、口の中に入れ、種をとって藪のなかに投げこみ、むしゃむしゃ食べつづけた。 「デイトか」とポアロは言った。 「これは驚くべきことです」 「デイトを食べることが、なんで驚くべきことなんですの? 誰でも食べていますわ」 |
ひらいたトランプ〜フォアグラのムース |
フォアグラのムースをスプーンにたっぷり取りながら、オリヴァ夫人が陽気に相槌を
うった。
「医者にも機会はあるようだね」 シャイタナ氏は、何かを考えているように、また言った。 「とんでもない」 ドクター・ロバーツが甲高い声をあげ、「医者が患者に毒をもるのは、うっかり手違い した時だけですよ」 そして彼はおかしそうに笑った。 「しかし、僕が何か犯罪をやるとすれば・・・・・・」 シャイタナ氏はそこで言葉を切った。 |
ポアロのクリスマス〜ポートワイン |
彼は最後に、ポートワインをもって、テーブルをまわった。
ハリー氏は、今夜は少し放心しているように見えた。 そしてアルフレッド氏のほうばかり見つづけていた。 この二人は、昔から仲が悪かった。 子供のときでさえ、そうだった。 もちろん、父親はいつもハリー氏のほうを可愛がっていたので、そのことがアルフレッド氏を 苦しめたらしかった。 リー氏はアルフレッド氏のことを、あまりかまわなかった。 お気の毒に―アルフレッド氏はいつもお父様に対してあんなに献身的でるのに・・・・・・ |
チョコチップ・クッキーは見ていた 〜チョコチップ・クッキー |
彼の白い帽子は床に落ち、クリップボードにはさんだ注文書は風にはためき、
シートの上にはハンナの店のクッキーの袋がひとつ、口を開けた状態で置いてあった。
チョコチップ・クランチがそこらじゅうに散らばっていた。 ロンがクッキーのひとつをまだ手に持っているのがわかって、ハンナは目を見開いた。 視線を上げていくと、それが見えた。 ロンの「コージー・カウ」の配達用シャツの真ん中に、粉のついた丸い焦げ跡を残す、醜い穴が。 ロン・ラサールは射殺されていた。 こういうやり方で新しいお客を引き寄せるのは不本意だったが、ロンの死体を発見したことで 店が繁盛したのは認めざるをえなかった。 「クッキー・ジャー」は客であふれかえった。 立ったままクッキーをむしゃむしゃやっている人も何人かいて、みんなロン・ラサールになにが 起きたかについてのハンナの意見をききたがった。 |
ストロベリー・ショートケーキが泣いている 〜ストロベリー・ショートケーキ |
今夜カメラの前で作ることになっているストロベリー・ショートケーキ用の台は申し分なしの出来だ。
「スポンジの密度に気づいてくれたのね。 このケーキは冷蔵庫に入れておくと日に日にどっしりとしてくるのよ」 「ニュースキャスターたちにすごくウケると思うわ」 リサはケーキを食べ終えて立ちあがった。 「そろそろ時間よ、ハンナ。 ドアを開けて来ましょうか?」 「わたしがやるわ。 あなたはドーカス・サークル(貧しい人に衣類を供給する教会の婦人会)のクリスマスパーティ用の クッキーにデコレーションを済ませちゃったら」 |
ブルーベリー・マフィンは復讐する〜ブルーベリー・マフィン |
「最高。ブルーベリー・マフィンって大好き」
「わたしもよ。 生のブルーベリーがあったらよかったんだけど」 「冷凍でもおいしさはほとんど変らないわ」 リサはもうひと口かじると、考えるように味わいながら言った。 「わたしが作るブルーベリー・マフィンは、たまたまブルーベリーのところにあたらないかぎり、 バニラの味なのよね。 あなたのはどこを食べてもブルーベリーの味がするわ。 どうすればそうなるの?」 「ブルーベリー・パイ用のフィリングを使ったのよ。 冷凍ブルーベリーを入れる前にそれを少し混ぜ込むの。 生地がちょっと紫色になるけど、出来上がりは悪くないでしょ?」 |
レモンメレンゲ・パイが隠している〜レモンメレンゲ・パイ |
オーブンの中には12個のレモンメレンゲ・パイがあり、パメラとトビーのための
オールド・ファッションド・シュガー・クッキーはすべて焼いてある。
彼女は携帯用魔法瓶から最後のコーヒーをカップに注いで、ステンレスの作業台の前の スツールに座り、傷物としてより分けておいたオールド・ファッションド・シュガー・クッキーを 取ろうと手を伸ばした。 傷物といっても、わずかに円形がいびつになっただけのものだ。 結婚披露宴のためのクッキーは完璧なものにしたかった。 味見をしようとしたところで、現実が割りこんできた。 クッキーを食べるわけにはいかない。 ダイエット中なのだ。 |
ファッジ・カップケーキは怒っている〜ファッジ・カップケーキ |
「そう。ファッジ・カップケーキのレシピなの。
テッドの大好物で、とてもおいしいのよ。 レシピを教えてくれって、それこそ何度もたのんだんだけど、義母は教えるのをずっと忘れていてね」 「ようやくそれが見つかったのね。うれしいわ」 ハンナは同情するように微笑みながら言った。 「どうしても自分のレシピを教えたがらない人がいるけど、テッドのお母さんはきっとそういう人だったのね」 「わたしもそう思ってたんだけど、テッドが言うにはそうじゃなくて、うちに来るたびにほんとに持ってくるのを 忘れていただけなんですって。 まあ、あの義母ならありそうなことだわ」 |
ダージリンは死を招く〜ダージリン |
「ダージリンはみなさんご存知のように繊細で風味が豊かですから、3分以上
蒸らしてはいけません。
これは絶対に守ってください」 そう言って彼は鼈甲縁の半眼鏡ごしに一同をじっと見つめた。 眼鏡は高いわし鼻をしょっちゅう滑り落ちてしまい、そのせいでどこかフクロウのような顔になる。 「15秒よけいに蒸らすだけで、ダージリンは苦くなってしまいます。 ですが、台湾産の烏龍茶、それも特に茶葉がきっちり丸まっているタイプとなれば、話はまったく別です。 怖がらずに思い切って7分蒸らしてください」 |
グリーン・ティーは裏切らない〜グリーン・ティー |
銀のピッチャーを手に取り、クラッシュ・アイスを満たしたグラスに黄褐色のアイスティーを
注ぎ入れた。
ひとくち含み、中国産のガンパウダー・グリーンという緑茶と生のミントをブレンドした、 喉の渇きを癒してくれるさわやかな味を楽しんだ。 セオドシアの右腕でありティー・ブレンドの達人ドレイトン・コナリーが、きょうのヨットレース・ パーティーのためにと考案したお茶だ。 このガンパウダー・グリーンの名は、小さな茶葉を乾燥させると丸まって小さく固い粒状になり、 この外見が火薬(ガンパウダー)にそっくりなことに由来する。 生のミントはきのう、ここサウス・カロライナ州の低地地方(ロー・カントリー)にある リビーおばさんの庭で 摘んだものだ。 セオドシアはこの新しいお茶の名を、ここホワイト・ポイント庭園でお披露目したことにちなんで、 ホワイト・ポイント・グリーンにしようと決めていた。 |
アール・グレイと消えた首飾り〜ショートブレッド |
定評あるブラックベリー・スコーン、クリーム・マフィン、ジンジャーブレッド・ケーキ、
ショートブレッドを嬉々として焼きあげてくれるのは、インディゴ・ティーショップにとって
大きなプラスだった。
やがてヘイリーは、サウス・カロライナ名物の揚げクッキーを、オリジナルにアレンジした レシピを考案するまでになった。 これらの要素がすべてひとつにからみ合った。 みごとなまでに。 またたく間にインディゴ・ティーショップは小さいながらも人気ある名店の仲間入りをはたし、 チャールストンの歴史地区にあるレストラン、店舗、美術館、歴史的建造物が織りなす、 優雅なつづれ織りの一部となったのである。 店の内装は、かつてあったコルクの天井パネルもドアマットも取り払われ、いまは木釘で とめた木の床、むき出しの梁、赤い煉瓦壁などでまばゆいばかりに生まれ変わった。 リビーおばさんの農園の納屋で見つけた古いヒッコリー材のテーブルと椅子が、長居 したくなるほど温かな雰囲気に一役買っている。 |
イングリッシュ・ブレックファスト倶楽部〜ガンボ |
炎は赤ちゃんガメを怯えさせるほどの明るさはないが、龍井茶をわかしたポットと
ガンボが入った鍋を温めるには充分だ。
ほんのり花の香りがするお茶と、スパイスの利いたアヒルとチキンのごった煮のにおいを 嗅ぎながらセオドシアは思った。 湯気を立てているこのふたつの鍋が、みんなの英気を養い、夜の肌寒さを追い払って くれるだろうと。 残り火に流木を何本か積み上げる。 銃声にも似たはじける音がしたかと思うと、またたく間に乾燥した木に火が燃え移り、 緋色と金色の炎がダンスを始めた。 |
カモミール・ティーは雨の日に〜カモミール・ティー |
ほんのりリンゴの香りがするカモミールは、まろやかな味と自然な甘みが魅力の
とてもおいしいお茶だ。
セオドシアはひとくち飲んで、至福のため息をついた。 まったく、おいしい一杯のお茶以上に癒されるものはないわね。 気分を引き立て、イライラを静め、穏やかなひとときを味わわせてくれる。 そのときふと思った・・・・・・ ロジャー・クリスピンにお茶を持って行ってあげようかしら。 どうしよう? うん、持っていってあげよう。 ドレイトンのお友だちなんだし、かわいそうに、たったひとりでバルコニーに缶詰に なっているんだもの。 きっと、音響や映像の機器が並ぶ例の古いデスクに身を縮めるようにして張りついて いるにちがいない。 |
猫は手がかりを読む〜スコッチの水割り |
「スコッチの水割り」
アーチが注文した。 クィラランは言った。 「ダブルのトマトジュースをロックで」 「トムトム・オンザロックね」 バーテンダーは言った。 「ライムをひとしぼり、ウスター・ソースをひとったらし、いかがです?」 「いや、けっこうだ」 「わが友人の市長がここに顔を出した時には、そういうやつをこしらえてやるんです」 得意気な笑顔になった。 |
猫はソファをかじる〜キャヴィア |
キャヴィア、エビ、チーズフォンデュ、マッシュルームのマリネ、つめものをした
アーティチョークの芯、ディル・ソースをかけた香りのよいミートボールが山盛りになっている。
3回目のおかわりを皿に盛りながら、クィラランは台所をのぞき、プロの料理人の大きな ステンレススティールのオーヴンを見つけた。 にこにこしている東洋人が彼の視線をとらえ温かくなずいたので、クィラランはおいしい、と いう仕草をして見せた。 そのすきに大柄でぶざまな体つきの、いかつい顔をした男がビュッフェに近づいてきて、 口にいろいろなものを放りこんでは、ハイボールをがぶりと飲んで流しこむ、ということを やり始めた。 「わたしは、この連中―デコレイターが好きでしてね」 彼はクィラランに話しかけてきた。 「彼らのパーティーにはしゅっちゅう招かれている。」 |
猫はスイッチを入れる〜スィートロール |
彼は自分の朝食用にインスタントコーヒーとスウィートロールを、猫たちのためには
牛もも肉のかたまりと缶入りコンソメを買った。
それからチーズも選んだー 自分にはチェダー、ヤムヤムにはクリーム・チーズ、ココには小さなくさび形に切った ブルーチーズ。 国内産のもので気に入るだろうか、と不安に思いながら。 なにしろ、ココは本物のロクフォールの味に慣れているのだ。 新聞記者が店を出ようとしたちょうどその時、ひと晩じゅう頭の中から離れなかったまなざしが、 目の前で現実になった。 青白い磁器のような肌は雪で濡れ、まつげで雪片がきらめいている。 |
猫はブラームスを演奏する〜ハネデューメロン |
ハネデューメロンひと切れ、オムレツ・フィーヌゼルブ、チキン・レバー・ソテー添え、
チーズマフィン、それにコーヒーを3杯。
昼食は旧友のアーチ・ライカと、2人のお気に入りの店、記者クラブでとる予定だった。 正午に、クィラランは石灰岩でできた陰気で馬鹿でかい建物の階段を駆け上がった。 ここはかつて郡刑務所だったが、現在は働く記者連中に食べ物と飲み物を提供する場所になっていた。 古びた鋲が打たれた玄関ドアに近づいたとき、どこかおかしいコトン気付いた。 塗りたてのニスの匂いがする! 彼の鋭い耳は、どっしりしたドアの蝶番がもはやキイキイきしまないことに気づいた! |
猫は殺しをかぎつける〜ポテト・パンケーキ |
「おや、ポテト・パンケーキがメニューに載ってるぞ」
クィラランは相変わらず緑の紙きれをにらみつけたまま、新調したての読書用眼鏡の位置を調節した。 紙に書かれていることが、どうしても本当とは思えなかったのだ。 「フラクション」のカメラマン、オッド・ブンスンが葉巻に火をつけた。 「おれは豆のスープにショートリブのステーキ、それにハッシュド・ブラウン・ポテトにしよう。 だが、まずはマティーニを一杯といくかな」 無言のまま、クィラランは信じられないような書類を読みおわり、もう一度リストの最初に目を戻した。 |
ディミティおばさま現る〜ブラウンブレッド |
「・・・・・・家に帰って暖炉の前で温まり、バターを塗ったブラウンブレッドとお茶を
楽しみ、動物園で過ごしたすてきな1日を思いかえして、静かに微笑むのでした」
わたしの心を奪ったのは、辛いことがあってもそれを笑いとばすことができる、おばさまの 能力だったと思う。 たとえば、「ディミティおばさまトーチを買う」ではこうだ。 おばさまは「よりにもよってハロッズ」に懐中電灯を買いに行く。 おばさまはクリスマス前の週末に行くという間違いを犯した。 店には買い物客があふれ、店員たちはクリスマスのために増員された臨時雇いばかりで 誰も懐中電灯の売り場を知らないし、そもそも大混雑のせいで案内する時間など店員にはなく、 おばさまは懐中電灯を買えずじまいになってしまう。 おばさま以外の人だったら、うんざりするような間違いだったと思うだろう。 だが、ディミティおばさまにとってはこれも冒険のひとつで、その冒険はデパートの階を 上がるごとにどんどん愉快になっていくのだ。 |
ディミティおばさま旅に出る〜紅茶 |
ネルが戻って来て、デレクのために紅茶を注いでから、バーティーといっしょに
オットマンに座り直した。
デレクは紅茶を一気に飲み干し、空のカップを名残り惜しそうに見つめてから、脇に置いた。 「よし、覚悟はできた。 はじめてくれ」 経過を3人で説明する間、デレクは口を挟まずに聞いていた。 話が終わると、わたし、エマ、ネル、そしてまたわたしを、順番に見やる。 「つまり、こういうことだろうか。 つまびらかではない事情によってきみのお義父さんは長い間音信が途絶えていた、 かつよこしまであるかもしれない親類に会うためにディミティおばさまと、その・・・・・・ レジナルドを連れて、大急ぎで出かけてしまった」 |
ディミティおばさまと古代遺跡の謎〜レモン・バー |
「もちろん、フルーツ入りフランとレモン・バーもね!
校舎が使えなかったら、これ全部をどこでやれるっていうのよ?」 「校庭にテーブルを出しては?」 やんわりと言ってみる。 「場所が足りないでしょう!」 ペギーは声を荒げた。 肩越しにちらりと家を振り返ってから、押し殺した声でつづける。 「ニワトリやウサギ、ヤギやヒツジ、それにポニーがいては無理よ。」 |
『プーアール茶で謎解きを』からナシレマ |
アジアン・カフェ1『プーアール茶で謎解きを』の主人公はお料理名人アンティ・リー。
そのため作中は美味しそうなから食べ物が沢山出てくるんですよね。 その中でも私の印象に残ったのがシンガポールの朝ごはんの定番ナシレマ。 舞台になっているシンガポールに行って食べるか専門店に行って食べられれば いいんですがなかなかそうもいかないので出来る範囲で作ってみました。 とたんに、ナシレマの香りが広がった。 つややかなバナナの葉に包まれた手づくりのココナッツ・ライスだ。 続けてニーナは湯気の上がる包みを開いた。 目玉焼きと魚のフライ、キュウリのスライスに煮干し(イカンピリス)とピーナッツのサンバル和え。 『プーアール茶で謎解きを』から引用させていただきました。 ね、なんだか美味しそうでしょ。 写真で見る限りはなかなかいい雰囲気出てるんじゃないかなーと思っています。 (手前に添えてあるのは前回の記事でご紹介したアチャーです) 本当は小さ目のお魚の丸揚げが入るのですが丁度いいかんじのものが手に入らなかったので 鶏肉で代用させてもらいました。 あとバナナの葉はここ雪国にでは無理でした。 沖縄の離島住まいの友人に送ってくれ!と言ってみるか迷いましたがいい迷惑 なのでやめておきました(笑。 で、味はどうかというなかなかと美味しかったです。 (味が正解なのかは若干謎ですが) 揚げ物とココナッツミルクで炊いたご飯なのでかなりこってりの組み合わせなのに 以外とギトギトしてないと言う不思議。 ただの薄切りきゅうりがさっぱりしていていい箸休めなんだと気が付きました。 元気が出そうな朝ごはんです。 |
『プーアール茶で謎解きを』からアンティ・リーのとっておきのアチャー |
アジアン・カフェ事件簿1『プーアール茶で謎解きを』からアンティ・リーのとっておきのアチャー
お手軽バージョンを作ってみたいと思います。
アチャーというのは漬物かピクルスみたいなもののようで、シンガポールでは 食卓に欠かせない一品なのだそう。 シンガポールの料理に初挑戦! 代用品ありでの再現ですがさっそく作っていきたいと思います。 詳しい手順や注意書きは本を見て下さいねー。 はい、まずはお野菜の下ごしらえをしましたよ。 ちなみに私が使ったお野菜は 赤い皮の大根・紫白菜・ししとう・カリフラワー・にんじん 紫玉ねぎ・きゅうりです。 お野菜を(きゅうり以外)茹で汁で茹でていきます。 ここでちょっと疑問。 シンガポールの1カップは何mlなのか。 レシピには特に注意書きがなかったので検索したみたところどうも240ml〜250mlらしい。 (違ったら教えて下さい (/ω・\)チラッ ) 甘酢みたいな汁でお野菜を茹でるのってなんだか斬新。 どれくらい茹でるのかよくわからなかったので私は少し歯ごたえが残る程度にしておきました。 次はルンバという香辛料のペーストを作って行きます。 本当はブラチャンというエビ(アミ)と塩を合わせて発酵させたものを使うのですがなかなか売ってない。 なので今回は中華材料のお店で見つけたえびみそで代用したいと思います。 ↑このえびみそもブラチャンもアミエビを塩漬けにして発酵させたものなのでほぼ同じもののはず。 レシピにはアンチョビで代用する方法が載っているのでそれでもいいんですけどねー。 あと、材料に本当は「ウコン」があったんですが生のウコンて事ですよね? 手に入りそうもなかったので同じショウガ科の植物って事でターメリックパウダー入れときました。 画像右がえびみそです。 美味しそうには全く見えない色ですね〜。 私は手抜きでルンパの材料全部をフードプロセッサーで混ぜちゃいました。 そして炒めてペースト状になったらピクルス液の材料と合わせます。 耐熱ボウルに移してパイナップルとゴマとバタピーと合わせます。 本当は炒った生の皮付きピーナッツが理想なんでしょうけど近所に売っていないので代用です。 ありそうでないないですよね味付けされてないピーナッツって。 パイナップルと野菜を合わせるって不思議な感じです。 最後に茹でたお野菜たちを加えて混ぜたら完成でーす。 私は少し冷蔵庫で休ませてからいただきました。 できました。 アンティ・リーのとっておきのアチャーお手軽バージョンです。 いただきます。 おや、今まで食べた事のない不思議な感じのピクルスというか和え物と言うか… ピリ辛かと思えば甘味を感じるところもあるし複雑な味のする食べ物ですね。 ちょっと不思議ではありますが美味しいですね。 酢豚のパイナップルは反対派ですがこれはお野菜だけのせいか良いアクセントに なっていて有りだと思います。 エスニックなお料理にすごくあいそうです。 今回私は作中に出て来た「ナシレマ」に合わせてみましたがぴったりでした。 ナシレマについては次の記事で。 |
下準備編 アメリカの缶詰風? ポーク&ビーンズ |
今日はお菓子探偵ハンナシリーズのおまけレシピの「ポークアンドビーンズ・ブレッド」
を作るための材料作りをしまーす。 何をつくるかと言うとずはり「ポークアンドビーンズ」。 しかもヴァンキャンプの缶詰風(笑)。 ポーク&ビーンズのレシピは日本語でも色々あるんですけどイギリス風だったり 給食風だったりベイクドビーンズとかBBQビーンズとかのレシピでどうも 「アメリカの缶詰風ポーク&ビーンズ」とは別物っぽい。 (ヴァンキャンプもベイクドビーンズとポーク&ビーンズとは別製品として販売しています。) それで英語で検索して見ましたらヴァンキャンプ風ポーク&ビーンズのレシピが有りました! なのでそれを参考にしつつ量と方法をちょっと変えて作ってみましたよ。 という事で完成しました。 ヴァンキャンプ風ポーク&ビーンズです。 今回の作った量でだいたい一缶分強くらいできました。 ちょっと味見してみまーす。 うん、なかなか美味しいです。 チリビーンズのようなパンチはありませんが甘さと酸味があってほっくりした豆と なかなかあっています。 ベイクドビーンズとかBBQビーンズも似たような感じなんですが何が違うのかと いえば断言できる訳ではありませんがお肉の割合が少なく調味料もやや少なめ みたいですねー。 では、明日はこれを「ポークアンドビーンズ・ブレッド」を作ってみたいと思います。 |
おいしい本 |
ロータスパレスとエビ炒め
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