「うしおととら」感想も残すところ33巻1冊となったが、最終回の感想書いてからではとても外伝感想書けなそうなので、
先に外伝の感想を書いておきたい。
外伝は全部で6篇。
ダークなとらと、無明と吹雪の純愛の妙が冴える「妖今昔物語」。
「桃影抄〜符呪師・ヒョウ」では、優しい普通のお父さんだったヒョウが符呪師になるまでの過去が描かれる。
ミンシアに心惹かれつつも復讐のために去って行くヒョウ。
これも美しく悲しい物語だが、本編でヒョウが潮をここに連れてくる気になったのには首を傾げた。
結果的に2人がここに来ることはなかったが、潮の修行のために来るような場所ではないだろう。
ところでこの外伝、連載終了後に描かれたのだろうか?
このヒョウの過去編はずいぶん絵が甘いというか、昔、連載の合間のまだ絵が完成されていない頃に
描かれた作品のように見えるのだが。
「妖今昔物語」のとらには耳あるし。
「里に降る雨」では紫暮と須磨子の過去が描かれる。
2人が出会い、須磨子が「お役目」の務めを果たすため去るまでの物語。
実力がありながら獣の槍に認められず、荒れる紫暮が新鮮?で意外。
ただ「うしおととら」を読んでいてずっと思っていたのは、「獣の槍」は実力があれば誰でも持ち主となれると、全ての人が
考えていたのかということ。
最後まで読み切ると、「伝承者」という言葉は、正しい持ち主(蒼月潮)にたどり着くまでに槍を受け継いでいく、あくまでも
通過地点に立つ者という印象を受ける。
光覇明宗が、あくまでも「獣の槍」の所有者足る実力が身につけば、日輪や流でも扱えると考えていたのなら、それは無駄だったし、
「伝承者=正当な所有者まで引き継ぐもの」として育てていたのならそれは彼らにとっても残酷な話だ。
まあ実際に何人も使い手は現れているから、日輪たちにも100%無理とは言い切れなかったろうが。
今回の外伝を読んで、二代目のお役目様日崎御角はジエメイとの関わりによって、「獣の槍の正当な持ち主は蒼月潮である」ことを
知っていてもおかしくないのに、その辺は未だによくわからない。
ただコンプレックスに悩んでいた日輪や、取り憑かれた悟などはその時点でもしかしたら獣の槍の持ち主になってもおかしくなかったかも。
正当な持ち主ではなく、伝承者には、実力能力よりも、ある意味「負の心」が必要だったから。
私が一番好きなのが巴御前が出て来る「雷の舞」。
ストーリーもさることながら、あの頑ななまでに人間の名前を口にしようとしないとらが潮や真由子など、現代関わりの強い数人を除き、
唯一口にしたのが「巴御前」。
以前「犬夜叉」感想で書いたかな?
人間は妖怪に好きに名前をつけたり、気軽に名前を呼んだりするけれど、妖怪は人間の名前を呼ばない設定が多いようだ。
それだけ人間は妖怪に親しみを持っており、逆に妖怪は人間と関わらない、あるいは「餌」としか見ていないという前提があるのかなと思っていた。
それを決定した作品(小説など)があるなら読んでみたいが、未だにわからずにいる。
それだけに「仲間」として認めた時、初めてその名前を口にする。
実際真由子の名前を最初は言いづらそうだったので、人間の言葉、名前は言いにくいのかな?と思ったが。
私の記憶に間違いがなければ、麻子ですらとらに名前を呼んでもらったことはないのではないか(女潮とか呼ばれてたが、笑)。
巴御前は切ない恋に身を焦がしながらも凛々しくかっこいい女性だが、巴御前ととらの関わりは、巴御前の心にとらが強い印象を残すものの、
それほど深いものではない。
とらにしてみれば、自分の目的に都合がいいからちょっと利用したくらいのものだったろう。
それでもとらと巴御前の「雷の舞」は清々しい余韻を残す。
とらが巴御前を襲わずに「いつの間にか消え」、でも名前をうっすらと憶えているという設定はこの巴御前が大好きな私には嬉しいことだった。
本編で名前だけ出て来た巴御前をこんな形で読めるとは。
でもとらの目に点を描くだけで急に小者に見える不思議、これには笑った。
とらは「白目」なのだが、それだけでいかに様々な表情を表現していたかがわかる。
「プレゼント」は潮と麻子が可愛い佳作。
最終話「永夜黎明」はとらが封印された時の話。
獣の槍の使い手は草太郎。
これまでとらが戦ってきた人間の中では最強で、とらも大苦戦。
ところが草太郎は戦うことが怖くて仕方がない気弱で優しい青年だった。
そんな草太郎を好いてくれるみさを。
けれども草太郎は獣の槍の所有者となってしまう。
すでに妖怪化が始まり、人として生きることを諦めた草太郎は、人身御供にされていたみさをを助け、再びとらと戦おうとする。
おんな草太郎を見て、とらの脳裏に「ラーマ姉弟」の面影が浮かぶ。
あえて獣の槍に貫かれ、草太郎を解放したとら。
眠りにつくとらに、草太郎は「おまえにもいつか、背後を守る者が現れるかもなァ」と言葉をかける。
とらもいつかたった一人ではなく、ふたりで一人と言える存在が現れる、その予言。
そして永い眠りの後、とらは潮と出会う・・・。
ここまで来るとまた1巻から読み返さずにはいられない。
(2014年9月26日の日記)
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