おいしい本をさがす道(五)


1月19日 サイズ12はでぶじゃない〜クリスピー・クリーム・ドーナツ
★作品に関してネタバレ含みます。★

タイトルと表紙のインパクトで(笑)、しばらく手が出なかったこの本。
図書館で見つけて読んでみようと思ったのは、翻訳者が中村有希さんだったからです。
コリン・ホルト・ソーヤー著「海の上のカムデン」シリーズがあんなにおもしろかったのは、中村さんの訳のおかげもきっとある! そう信じる私でした。

そしたらこれ、おもしろかった。
恋愛モード炸裂!妄想モード爆発(妄想では終わらないとこもある)!食欲モード全開!
最後はともかく、普通に読んだら私の一番嫌いなタイプのヒロインだったかもしれません。
でもいい子なんだよなあ。

この時点で28歳だっけ?
そんな女性つかまえて「いい子」はないだろうと思うかもしれませんが、文章で声高に正義の味方アピールしなくてもにじみ出る ヒロインの性格の良さ、とても自然です。
これは訳もいいけど原作もいい?と思って調べてみたら、メグ・キャボットってあの有名な「プリンセスダイアリー」を書いた人でした。

サイズ12は日本で言えば15号くらいだそうです。
大柄というよりぽっちゃり型。
今でこそ学生寮の服寮母してますが、元は「ポップ歌手でティーンのアイドル」。
でも自分の言葉で、自分で作った曲を歌いたいと宣言してクビになった過去があります。

今でもその夢を捨てておらず、こっそり曲を作ったり、恋してる同居人にふさわしい女性になろうと涙ぐましい努力をしたり。
とにかく可愛い。
そしてたくさん出て来るアメリカのジャンキーフーズやおいしいグルメ。
「でぶ」は気にしてるけど、そのためにダイエットする気はないらしい(笑)。

そんな中で2度も出て来るのがクリスピー・クリーム・ドーナツ。
池袋東武にできた時は連日長蛇の列でしたが、いつの間にか閉店してしまいました。
まだエチカ池袋にあるので、近くに行ったら必ず買います、その理由は・・・。

以前オーストラリアから帰る時に初めてシドニー空港で乗り換えた時の事。
シドニー空港は国内線から国際線に乗り換えるのに、ターミナルを移動しなければならないのになんと、迷ってしまったのです。
しかも時間の都合で乗り換え時間が30分しかない!
聞く人によって教えてくれる場所が違うのは、移動するのにバスと電車と二通りの方法があるから。

落ち着いて表示を見ればわかることなのに、パニックになって半泣きになって駆け込んだのがクリスピードーナツのお店。
夜中なのですいてたこともあり、お店のお兄さんが電車の改札まで走って連れて行ってくれたのです。
切符まで買ってくれた(汗)。

電車に乗れば2分で到着。
最後に搭乗ゲートが変わってたというオチはあったものの、何とか間に合い、無事帰国。
直接お礼を言うことはかなわないので、せめてものお礼の意味でドーナツはクリスピー・クリーム・ドーナツで(笑)。
あっ、ミスドもときどき買いますけどね。

話を戻すと、とにかくこのシリーズはおもしろいです。
ああ好き嫌いは分かれるタイプかも。
今のところ日本で3冊、アメリカで未翻訳が2冊あるようですが、これは日本でも出してほしい。
えーと東京創元社さんですか、よろしくお願いしますね。

話はそれますが、コージーミステリって本全体で見ると、熱狂的に好きな人は好きだけど、かなりマニアックなジャンルであると思います。
それだけにどれだけ売れるてるかを考えた場合、「このシリーズつまんないから買わなくていいや。」なんて思った人が出た場合、あっという間に 打ち切りになる怖さがあります。

うん、説明しますと、100万冊売れてるシリーズが100人買わなくてもそれほど影響ないけど、1、000冊売れてるシリーズで100人買わないと危ないみたいな。
だからコージー新作が出るととりあえず買うということになってしまうのですが・・・。
東京創元社さんは選ぶ作品が良いのか、安定した経営なのか、比較的続けてくれますが、と書いてたらそういえばレスリー・メイヤー著ルーシー・ストーン シリーズが打ち切りだった!
なぜ?地味だから?

浮ついたコージーが多い中、地味だけどしっかりした品、ファンも多いと思います。
これは復活してほしいです。

★東京都豊島区西池袋3-28-14 Echika池袋グルシュー・マルシェ B1F
(2016年1月19日の日記)
2月2日 ピーナッツバター殺人事件〜ピーカンパイ
★作品に関してネタバレ含みます。★

「老人たちの生活と推理(海の上のカムデン)」シリーズ第4弾。
相変わらず殺人事件に大活躍?のアンジェラ&キャレドニアコンビ。
ホームの仲間たちのおとぼけぶりも相変わらずだし、今回登場するカルメラ、コントレラス&ダンロップも いいキャラしてます。
ダンロップがキャレドニアに会いに来た時の会話は、いかにもな雰囲気で、何度読み返してもおもしろいです。

今回の事件は、ホーム入居者の「婚約者」が被害者ということで、マーティネス警部補の方から調査を頼まれる? 珍しい展開。
はしゃいで、張り切って猪突猛進する2人。

ただ今回アンジェラがエドナにライトフット(被害者兼エドナの婚約者)の正体を「意気揚々」と告げに行ったくだりで、 アンジェラが少し嫌いになりました。
どう言い訳しようと、アンジェラ自身の楽しみでしかないですからね。
キャレドニアの方がもっと常識人です。

さあ今回もシュミット夫人が丹精込めて作ったおいしい料理がたくさん登場します。
今回紹介するのはピーカンパイ。
ペカンパイともいいますが、日本ではあまりなじみがないのではないでしょうか。
脂肪分の多いナッツの一種で、アメリカテキサス州の州木となっているそうです。

私はこれを、品川に行った時、ウィング高輪にあるアンナ・ミラーズで買いました。
いつも混んでるお店なので、テイクアウト。
ところでアンナ・ミラーズって聞き覚えのある方も多いのでは?
制服が可愛いというニュースで一時有名でしたよね。

って私もすっかり忘れてて、実際にお店に行って気づいたくらいなんですが。
今は日本にここ一店舗しかないのだそうです。
品川はあまり行きませんが、駅前で行きやすいのと、いかにもコージーに出て来そうなアメリカンなパイやランチを楽しめるので お気に入りの一件です(でもいつも混んでる・・・)。

ピーカンパイは、コーンシロップを使ったフィリングに、表面をピーカンで覆って作ったパイだそうです。
でも私はこの時食べて、あっ、苦手だって思いました。
フィリングのジュレみたいな感じが好きじゃないのと、ナッツをもともとそんなに食べないので飽きてしまいました。
好きな人は好きだろうと思いますよ。

他にタルトやケーキでコージーでは見かけることの多いピーカンを使ったお菓子。
アンナ・ミラーズの王道パイをお試しあれ!

★東京都港区高輪4丁目10−18
(2016年2月2日の日記)
2月15日 ニューヨークの魔法使い〜アップルパイ
★作品に関してネタバレ含みます。★

コージー友達が勧めてくれたシャンナ・スウェンドソン著「(株)魔法製作所」シリーズ。
コージー好きに人気のシリーズだけど、実はミステリじゃなくてファンタジー、との言葉に「へっ?」。
しかも「魔法?」、正直あまり読む気にはなれませんでした。
でも図書館で読む本探してる時にふと見つけ、これかあと思って借りてみたところ、おもしろかったんだよなあ、これが(笑)。

私の苦手なカタカナファンタジー、しかも魔法が出て来るし、コテコテのラブコメ満載、なのにおもしろい。
ヒロインが恋する男性はイケメンの魔法使いなんですよ、まさに王子様。
ヒロインは彼に会うたびに腰が抜けたり心臓止まったり、もうやめて!と普通だったら悲鳴を上げて投げ出すパターン、なのに おもしろい。

どこにおもしろさがあるかと言えば、まず訳がいい(これ大事)、次に確かに魔法は扱ってるけど、現代社会における ビジネスの一つと捉えているところがおもしろい。
そして何よりヒロインがいいんですよ。

前にも書いたような気がしますが、地味で冴えない女の子がもてもてだったり、素敵な王子様を恋人に「できる」鉄板物は 正直好きじゃありません。
でもこのヒロインケイティは「普通」、さらに私が気に入ってるのは「堅実」なところ。

この本じゃなくて2作目だったかな?
デートでワインを飲んだ感想が「だいたい、ぶどうでできているのに、なぜパッションフルーツの味がしなきゃならないの?」とか。
また、やはりデートで

「彼の悪戯っ子のような表情に、思わず笑ってしまった。
この感覚は何かに似てる。
ただの舞い上がりではない。
これまで男性といるときには感じたことのない気持ちだ。
そうだ、兄たちと冗談交じりの言い合いをしえいるときの、あの感じだ。
ああ、なんてこと。
ありがたくて涙が出る。
またひとり兄貴が増えてしまった。」

とか。
なんていうか「異性を感じさせない」女性なんだけど、それでいて読んでるとたまらなく魅力的でユニーク。
人間は誰でも「魔力」を持っていて、そのために魔法にかかってしまうけど、ケイティには魔力がみじんもなくて、ゆえに魔法にかからない、魔法を見抜く という設定もいいと思います。

ファンタジーとしてだけじゃなく、田舎から出て来たケイティがニューヨークという巨大な街でがんばって生きてる部分も共感を持ちやすい。
私はストーリー以上にケイティのキャラで楽しんだので、2作目以降はすーっと興奮が薄れて普通におもしろい本になったけど、 このシリーズ日本では大人気で、本国アメリカでは出版が止まっているのに、日本では7作目まで出しちゃったという異例の扱いです。
実は私、「魔法にかけられて」という映画が出ると知った時、いよいよケイティ映画化か、って期待しちゃいましたよ(笑)。

訳している今泉敦子さん、他の作品は読んだことありませんが、ファンタジー系がお得意なようです。
「カエルにちゃんとキスをする」には笑っちゃいました。
ケイティシリーズ読破してる人にはわかりますよね、カエルにキス。
全く別のお話なのに。
今泉さんも訳してて楽しかったんじゃないかな?

今回紹介するのはアップルパイ。
料理上手なケイティは自分で作っちゃいますが、こちらはコージーコーナーです。
でも私、素材の味を大事にした、りんごがしっかり形残ってるのは、実はあんまり好きじゃない。
そうするとシナモンも独立して強いんですよね。

もうシナモンもりんごもぐちゃぐちゃになって、ペーストみたいになってる、いかにもお菓子なアップルパイが食べたいです。
しかもパイ側はあんまり厚くないのがいい。
でも主流は素材大事派なのかな?

私の好きなアップルパイ、残念ながらあまり見かけません。

ブログなどで、本に出てるお菓子やお料理再現してる人、たくさんいますよね。
不器用な私には本当にうらやましい話です。

★東京都豊島区南池袋1-29-1 池袋ショッピングパーク内
(2016年2月15日の日記)
2月19日 恋するベーカリーで謎解きを〜スロッピージョー
★作品に関してネタバレ含みます。★

ジェン・マッキンリー著カップケーキ探偵2作目は「恋するベーカリーで謎解きを」。
ランダムハウスから出ていたシリーズなので、4年前にこの2作目が出てからは中断したまま。
あとがきによれば3作目も出る予定だったので、ランダムハウス破産は本当に痛いニュースでした。
ヒロインメルと親友アンジー、その恋人?2人よりも、脇を固める濃いキャラが好きだったな。

訳がクッキー探偵ハンナシリーズの上條ひろみさんなので、ヴィレッジブックスで拾ってくれることを 期待してたんですが、当時はこのシリーズそれほど浸透してなかったように思います。
カップケーキも最近はあちこちで見かけるようになりましたが、2012年(2作目が出た時期)は あまり見かけませんでした。

私の感覚ではマグノリアベーカリーが日本上陸してから一気に(でもないか)扱うお店が増えたように思います。
カップケーキ屋さんじゃなくて、ケーキ屋さんでカップケーキを扱うみたいな。
このマグノリアベーカリー、レッドベルベットケーキが食べたくて、何度も行きましたが、いつ行っても長蛇の列。
根性なしなので(笑)あきらめましたが、そろそろ落ち着いたかな?

でも今年のバレンタインフェアで池袋東武店に出店したので無事買うことができました。
すごい色だったけどおいしかった。
新発売の板チョコバージョンも買ってきましたよ。
もちろん自分用に(笑)。

この「恋するベーカリーで〜」にもレッドベルベットケーキ出て来ますが、紹介するのはたぶんハンナの最新作になるかも。
今回紹介するのはスロッピージョー。
作品内に「ミートソースをハンバーガーバンズにはさんだもの」と注釈がついています。
自分でも簡単に作れそうですが、外食が多い私、お店でコージーミステリで見た名前のメニューがあると、つい食べたくなるので、 今回も食べちゃいました。

横浜みなとみらいランドマークプラザ内の「Bubby's」というお店で見つけました。
まさにミートソースをはさんだハンバーガーでした。
お料理苦手な私でも気軽に作れそう、味はともかく。

いかにもアメリカ〜みたいなメニューでしたが、付け合わせをサラダをポテトに変えたら多すぎました(汗)。
でもおいしかったですよ。
ちなみにスロッピーとは汚いとかまずいと言った意味だそうです。
アメリカのダイナミックなハンバーガーだと食べるのにてこずりそうなイメージ。
でもここのは奇麗でおいしかったです。

って作品のこと全然書いてませんが、あまりおもしろいと感じるシリーズじゃないんですよね。
でも今回の破産騒ぎはともかく、コージーミステリはどんどん出て欲しいです。

★神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1
横浜ランドマークプラザ内「Bubby's」
(2016年2月19日の日記)
2月24日 ブルーベリー・マフィンは復讐する〜ブルーベリーマフィン
★作品に関してネタバレ含みます。★

ジョアン・フルーク著クッキー探偵第3弾。
久しぶりに初期のハンナを読み返して、おもしろいなあと改めて思いました。
ミステリにも恋愛にもまだ緊張感がある。

もともと(特にお菓子の)蘊蓄目当てに読んでるとはいえ、やはりおもしろいおもしろくないはあるもので、その点 ハンナはおもしろいコージーでした。
三角関係はともかく二股は大嫌いな私ですが、まあコージーのスパイス程度に考えとけばいいかと。
正直16巻になってまだやってることになるとは夢にも思わなかったです。

これをいつまでもだらだらと、とうんざりするか、これがこのシリーズの持ち味と楽しむかで好き嫌いは分かれる作品とは 思いますが、残念ながら私は前者。
なのにしっかり全巻揃えているんですからね(笑)。

理由の一つは図書館にないことが多いから。
もう一つは、このジャンルは、売れなくなればあっさり新刊出版停止になる怖さがあるので、ささやかながらも寄付のつもり。
本国で出たらやっぱり読みたいから。

ストーリーは相変わらずのハンナが死体を見つける→事件解決の流れなので、今回はドラマの話を。
公式サイト」 を初めて見た時、ハンナの背後のクッキーの大きさにびっくり!ってこれどう見てもパンですよね(笑)。
クッキージャーじゃないじゃないかと思いました。

ハンナが予想以上に素敵です。
作者はいかにハンナを女性としての魅力が乏しいか、なのにもてることの素晴らしさに描写を費やしてるようですが、本来ハンナはドラマのような 生き生きした、素朴だけどダイナミックに奇麗な女性でいいと思うんです。
母ドロレスのゴージャスな美しさとの対比がドラマは本当にいいです(なぜかブロンドだけど)。

意外だったのがドラマはマイク押し?
キャストにマイクはいるけどノーマンはいない。
フォトに出て来る小柄な方がノーマンかと思いますが、普通にノーマンの方がかっこよく見える(笑)。

マイクはもっと西部劇に出て来る若い保安官みたいなビジュアルだと思ってました。
リヴィア・J・ウォッシュバーン著フィリスシリーズのフィリスの息子のあっちもマイク(笑)がもっと成長して女たらしになったみたいな。
なんかアメリカだとこういう人がかっこいいのか・・・。

マイクはどんどん悪い面が出て来て、早くノーマンと結婚しちゃえば?なんて思ってたのですが、ドラマ化予定があったなら、三角関係を 壊すわけにはいかなかったんでしょうね。
うん、でもドラマは見たい、日本でもやって欲しいです。
第1話では是非ハンナに卵の殻入りコーヒーをおいしそうに飲んでほしい・・・?
あれが誤訳なのか本気なのか未だに悩むところ。

コージーってミス・マープル以外は「ジェシカおばさんの事件簿」でしたっけ?有名なの。
一度見ましたが、あれは悪くないけど続けて見たいとも思いませんでした。
でもクレオ・コイルのコーヒーや、ローラ・チャイルズの紅茶などは、舞台(お店)も映えると思うし、ドラマ化してほしいです。
あともちろんカムデンも!

さて今回はタイトルまんまのブルーベリーマフィン。
最近はあちこちのお店でマフィン売ってますが、当時はほんとエリザベスマフィンしかなかった。
なのに今では横浜と博多と2つだけ。
頑張って下さいね〜。

写真は右下がブルーベリーマフィンです。
ブルーベリーはつぶして練りこんであるそうです。
特別好き!ってわけじゃないけど、必ず買っちゃう定番商品です。

★「ひとりごと」でも写真を紹介しています。

★神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1
横浜ランドマークプラザ内「ミセスエリザベスマフィン」
(2016年2月24日の日記)
3月15日 掘り出し物には理由がある〜ガスパッチョ
★作品に関してネタバレ含みます。★

最初にちょっとだけ寄り道を。
先日友達から「えむさん食べ過ぎ、大丈夫〜?」ってメールが届きました(笑)。
そこでちょっと言い訳しますと、「おいしい本をさがす道」はかなり前からやりたかったので、写真を見て もらえばわかるかもしれませんが、5,6年前から撮り続けています。

それと、カフェはともかくランチは1人で行くことはめったにないので、写真撮りたいメニューを頼んでもらって シェアしたり味見させてもらったり。
まあそれでも食べ過ぎになる事は間違いないのでどこかのダイエット特集で見かけた300円以内のスイーツは 食べないルールを実践中。
安い物を10回食べるのを我慢して高くてもいい物を1回食べる、できたら理想です(笑)。

さてシャロン・フィファー著「掘り出し物には理由がある」、これおもしろいです。
ミステリとしてどうというより雰囲気がおもしろい。
でもアンティーク雑貨探偵というのはちょっと違うと思います。

今はなき(泣き)ランダムハウスから出てたエミール・ジェンキンスのアンティーク鑑定士シリーズを 意識して読み始めましたが、全然違った。
ピッカー探偵と名づけるべきでしょう。
ピッカーという言葉が日本ではあまり馴染がないのでアンティーク雑貨探偵にしたのでしょうが、もったいない。

まず「ピック(pick)」の意味は「選び取る、拾う、摘む、採集する」といった意味があります。
なので「ピッカー(picker)」で「拾う人、選び取る人」になるわけですが、早い話が「ガラクタを集める人」と言いたくなるくらい 不思議でごちゃごちゃした世界です。
たとえばある家に1人で住んでいた女性が亡くなったとします。

遺族が家を壊す前に家の中にある物を売りに出します。
ピッカーのジェーン(ヒロイン)が探すのはアルバムや手紙の束やボタンやドアノブや植木鉢やとにかく何でもかんでも。
もちろんその中にアンティーク、ヴィンテージとして価値ある物を見つけることもありますが、ジェーンの楽しみはそこじゃなく。
かつての持ち主の想いを共有することかな?と私は勝手に思っているのですが。



コージーではほとんどの刑事がヒロインを邪魔者扱いしますが、オー刑事は違います。
ジェーンの職業にも興味と理解を示します(理由があります)。
さらに離婚の瀬戸際にいる夫チャーリーとの関係も不思議に心地よい。
息子ニック、親友ティム、両親ドン&ネリー他何て言うのかな、読んでて気持ちいい。

ジェーンの家ってソニープラザみたいな感じなのかな?
浮ついてないし、無用な正義感や好奇心を振りかざさないし、事件に顔を突っ込まずに自然に巻き込まれていくし?
雰囲気的には リタ・メイ・ブラウン 著「トラ猫ミセス・マーフィ」に似てるかも。
ロマンスもなく、物足りない人には物足りないかもしれないけど、私は大好きです。
でもヒストリーチャンネルでピッカー番組見たけど私には無理です。
喘息になりそうです・・・。

さてガスパッチョと言えば思い出すのは「東京ガス」。
こっちのガスパッチョってなんだろって調べてみたら「ガスでパッと明るくチョッといい未来」という スローガンなのだそうです。
一つ勉強になりました(笑)。

でもこちらで紹介するのはもちろんお料理の方。
最初私はカルパッチョとごっちゃに覚えていたのですが、カルパッチョは生の肉や魚にソースをかけた前菜? ガスパッチョはトマト味で辛い冷製スープ。
私はこれを銀座びいどろ 池袋店でいただきました。

西武池袋本店の8階ですね。
銀座なんて肩書が付くとそう気軽には入れませんが、デパートならお安く気軽に入れます。
お安くと言っても値段は高いですけどね(/o\)。
気持ちが気軽に入れます。

なかなかの人気店でいつも混んでますが、パエリアのランチもあるので、「今スペイン料理を食べてる私」 を実感できる(笑)お気に入りです。

★東京都豊島区南池袋1丁目28−1
西武池袋本店8階

(2016年3月15日の日記)
3月23日 検屍官〜キーライムパイ
★作品に関してネタバレ含みます。★

「検屍官」シリーズをコージーリストに加えることは、羊の群れに狼を投げ込むような無謀なことではありますが、 まあこの狼は他の作品を襲ったりしないので良いとしましょう(笑)。
残虐な殺人事件、人を人とも思わぬ狂った殺人者、そんな題材を扱いながら、このシリーズはおいしそうな料理もまた たくさん出て来ます。

主人公のケイ・スカーペッタ=作者のパトシリア・コーンウェルが「ストレスがたまった時は料理する」と言い切るほどの 料理好きで、しかもその腕前はプロ級。
「パトリシア・コーンウェルの食卓」なんてレシピ本を出したほどの人ですから、パイやパスタも生地を作るところから 始まるという素晴らしいシェフ。

忙しすぎてなかなか料理する時間が取れない、せっかく作っても新たな事件が起こって食べずに終わるなんて気の毒なことも 多々ありますが、それにしてもこのシリーズ1作目「検屍官」の登場は衝撃的でした。
私のミステリベスト3はドイル、クリスティ、横溝正史、それは動かないにしてもNO.4に迷わず据えたミステリです。

料理と共に魅力的なのが相棒マリーノとの関係。
粗暴で差別的、有能だけど嫌な奴、初めは敵対していた2人が唯一無二の相棒になって行き、漫才みたいな会話をしたり、 命がけで相手を守ろうとする様は必見です。
ケイの恋人とはいつもワンパターンで魅力のないタイプが多いので、マリーノはほんとにいいキャラしてます。

でもそのキャラ性ゆえにケイがマリーノを愛することはなく、残念ながらケイに恋したマリーノがおかしな方向に突進し、 同時に物語としてのおもしろさも失っていったのが残念。
ファンとしてお勧めできるのは9作目「業火」までですね。

さて今回のお勧めキーライムパイ。
ケイはバージニア州リッチモンドで働いていますが、出身はフロリダ州マイアミ。
事件や帰省でフロリダが時折登場しますが、実は私もフロリダ大好き。

まあ将来の心配など目もくれない若き日(つまり独身時代)あひたすらお金をためては海外旅行してましたが、アメリカでは常に テキサスとフロリダを必ず訪れました。
フロリダの海、テキサスの土、その美しさと広さに憧れたなあ。
そしてフロリダで必ず食べたのがキーライムパイ。

ホテルのプールでキーライムパイ頼んだら、なんとそれがフローズンカクテルで、仕方がないので隣りにいたおじさんにあげたら、 ナンパと勘違いされて冷や汗かいたなんて、若気の至りな思い出もあります。
怖いもの知らずだったあの頃、キーライムパイを食べると懐かしく思い出すんですよ。

ただ日本では残念ながらほとんど見かけない。
あるのかもしれませんが、唯一私が知ってるのは、ピーカンパイでも紹介した高輪のアンナ・ミラーズ。
高輪行ったら必ず寄りたいお店です。

余談ですが、1作目「検屍官」の表紙がイラストに変わってしまいました。
なんかものすごく違和感。
講談社の海外ミステリならではの濃い青、好きだったんだけどねえ。

そういえば実写化の話、どうなったんでしょう。
デミ・ムーア、アンジェリーナ・ジョリーなど話は出たけど未だ実現せず。
逆にいかにもテレビの為に書きました、みたいなガラーノをドラマにしたけど、案の定狙いが見え透いててつまらなかったです。

今では当時最先端だった科学捜査もCSIなどに押されて古臭く思えるほどなので、残念ながら機を逃したのかもしれませんね。
私のイメージだとデミ・ムーアが最高だったので、1993年(平成5年)の4作目「真犯人」のあとがきで名前が出た時は嬉しかったんだけどなあ。

★東京都港区高輪4丁目10−18

(2016年3月23日の日記)
5月25日虎屋 和菓子と歩んだ五百年
★作品に関してネタバレ含みます。★

ちょうど一年前の話ですが、朝日新聞の朝刊に、赤坂の虎屋本店が建て替えのため休館、 その前に休刊前の最後の展示会が開かれているとの記事が載りました。

虎屋といえば、送ることはあってももらうことのない高級和菓子。
でもチューインガムくらいの大きさの小形羊羹もあって、それだといろんな味がお手軽に 楽しめるので、たまに買います。
1本250円くらい。

味が濃厚なので、小形羊羹1本食べるともう満足なんですね。
がっつりみんなで食べるなら、大きな羊羹の方がお得なんですが。
特に、父の日の頃限定(5〜6月頃)で出る珈琲羊羹はお気に入り。
1年もつので毎年買っては前の年に買った珈琲羊羹を食べています。

虎屋は和菓子だけでなく、資料もとても充実しているという話を聞いていたので、 この「虎屋文庫のお菓子な展示77」に行って来ました。
予習として十七代目である黒川光博氏の著書「虎屋 和菓子と歩んだ五百年」を 読みましたが、この本がまた素晴らしかった。

虎屋の御主人が虎屋を語るわけです。
ちょっと違いますが、自伝のような体裁です。
自伝、あるいは伝記を書くのは難しいんじゃないかといつも思います。
自賛になれば鼻につくし、謙遜し過ぎれば疲れます。

他人が書くにしても、現在生きてる人、存在する店なので、持ち上げ過ぎれば興ざめだし、 書く方も書かれる方もいろいろ大変じゃないかと。
でもこの本は違います。
控え目ながらも誇り高く、そんな印象でした。

休館前の社長の御挨拶も素晴らしいとネットで大評判になったのを覚えてる方もいるんじゃないでしょうか。
しかもその評判を聞きつけたマスコミが取材を申し込んでも、語るべきことは挨拶文で語りつくしたからと きっぱり断ったその姿勢が、またまた評価されました。

この本は、虎屋の歴史の他に、資料としても価値ある本ですが、この展示会ではそれらの資料の実物を 見ることができるのです。
残念ながら、展示会場の写真は禁止ですが、たとえば明治天皇に名前を頂いた「若紫」など、本で読んだ 和菓子屋、お菓子の木型、菓子木などその古さと美しさと、使い込まれた美の共存が、本当に素晴らしかっです。

さらにこれまでの虎屋文庫での展示の集大成という事で、今まで行われた展示のパンフや葉書ももらえたり。 そしてもちろん虎屋菓寮でもお食事もお目当ての一つ。
こちらも奇麗で上品なお味、でも私には足りなかったです(笑)。
とても混んでたので、そのまま別の場所の虎屋菓寮で冷やし汁粉、大満足の一日でした。

新しい本社ビルは2018年(平成30年)に完成予定とか。
また展示会があったら見に行きたいと思います。

★「ひとりごと」でも写真を紹介しています。

★東京都港区赤坂4-9-22(予定)

(2016年5月25日の日記)
6月10日 笹乃雪
以前正岡子規絡みで紹介したことのある笹乃雪です。
最近これまで全く知識も関心もなかった幕末に興味が出て来て、いろいろ調べるようになりました。
すると、北白川宮能久(よりひさ)親王、さらに赤穂浪士などが関わる逸話も残されていて、前に 行った時はちゃんと見て来なかった資料も気になり(店内に展示されている)、再訪しました。

格式が高そうに見えて親しみやすいお店の雰囲気は前と変わらず、今回もそれほど混んでは いなかったので、他のお客様のお邪魔にならない範囲で写真もOKとのこと。
これは嬉しいです。

寛永寺の座主である輪王寺宮に、豆腐好きの公弁法親王(こうべんほっしんのう)が就任した時、 その随行を命じられた、宮家出入りの豆腐職人であった玉屋忠兵衛が創業したとのこと。
さらに彰義隊に担ぎ出された後、敗れた能久親王が下賜した香盆、高橋是清の書などがガラスケースに 納められて、自由に見ることができます。

他にも逸話は多いのですが、豆腐料理も又絶品です。
そうそう、「腐の字は料理にふさわしくないという事で、こちらでは「豆富」と書くのでした(笑)。
前も書きましたが、豆腐はあまり好きではない私でさえぺろりと食べてしまうおいしさ。
名物のあんかけ豆富は、「笹乃雪」を命名した公弁法親王の好物で、いつもおかわりしたことから 二杯ずつ出されることが定着したそうで、もちろん今回もそうでした。

部屋から出て写真を撮っていたら、お店の方が「二階にもありますよ。」と教えてくれて、その後いろいろな 質問にも気軽に答えてもらいました。
見た目はちょっと敷居が高いけれど、「笹乃雪」は本当にお勧めです。
もちろん正岡子規が愛したお店としても、ですよ。

★「ひとりごと」でも写真を紹介しています。

★東京都台東区根岸2-15-10

(2016年6月10日の日記)
6月15日 羽二重団子
最近の「おいしい本をさがす道」は江戸の老舗シリーズみたいになっていますが、こうしてお店って「食べログ」などの、いわゆるネット情報 とは、本当に対極にあるなあと思います。
今時記載されないお店などない御時世でしょうが、実際にこうしたお店に来てみると、そんな周りの喧騒など我関せずといった、 緩やかな雰囲気が心地良いです。
(ホームページがあってFacebookがあったりするとかえってびっくりします。)

もちろん店長さんやお店に関わる人たちは気にならないわけがないでしょうが、古い店構え自体が「ネット?何それ」みたいな清々しい 雰囲気を醸し出しているのです。
こういうお店って本当に貴重だと思います。

羽二重団子は、いわゆる「根岸の里」の名物のひとつです。
前回紹介した笹乃雪があるのも、「剣客商売」に出て来る佐々木三冬の寮があるのもここ根岸。
駅前の喧騒を抜けると驚くほどの静かな通りに出ます。

お店の昔の様子を物語る一画があったり、絵が飾ってあったり、店内も落ち着いた装飾で、お店の人のさっぱりした態度も マニュアル尽くしに慣れてる身にはむしろ気持ちいい。
不思議なものです。
唯一苦手なのが、こちらでは餡と生醤油とセットで出してくれるんですが、私、みたらしが好きで、甘くない生醤油はそれほど食べないんです(涙)。
お店ではもちろん食べますが、家に持ち帰ると、生醤油は全部連れに食べてもらいます、もちろん餡は全部私(笑)。

羽二重団子は正岡子規が愛した店として有名で、外にも子規の句を描いた表示があります。
子規庵も近く、店員さんによると、子規庵を見学して、その後羽二重団子を食べにくるお客さんが多いとか。
他にも夏目漱石(「吾輩は猫である」)や司馬遼太郎(「坂の上の雲」)が作品内で取り上げていますね。
泉鏡花も書いていて、読んでみたいとは思っているのですが、難しくてなかなか手が付けられずにいます。

★「ひとりごと」でも写真を紹介しています。

★東京都荒川区東日暮里5-54-3

(2016年6月15日の日記)
7月1日 孤独のグルメ〜万かつサンド
秋葉原を歩いていると、時々橋にもたれかかるようにして、かつサンドを食べながら漫画を読んでいる 男性を見つける。
もしくは神田川を眺めながら、ただ黙々と食べてるサラリーマンの男性もいる。
「あっ、『孤独のグルメ』を読んでる人だな。」とすぐわかる。
すぐそばにある万世の、万かつサンドが登場するからだ。

ただ食べてるんじゃなく、「孤独のグルメ」を意識した後姿がなんかわかるんだよね。
私も読んだけど、あっ、この感性は男性ならではのものだなってすぐ思った。
カフェやファミレスはともかく、一人ご飯はめったにしないけど、たとえ1人でおいしい物食べてても、 女性は黙っていても、おいしいっ!て感情がもっと露わに出てる気がする(笑)。

だから嫌いな本ではないけど、あんまり読んではいない。
でも万世の万かつサンドは大好き。
もう削除してしまったが、当サイトの初期の頃は「一般の話題」ってコンテンツがあって、その中で 万世を絶賛した記憶がある。

未だにそうで、万世以外なら焼き肉食べなくてもいいやってくらい好き。
値段がどうとか、質がどうとかじゃなく、漬けダレの味に慣れてるんだろうなと思う。
上京した頃、たまたま近くに万世があって、デートでよく連れてってもらったから、その頃から万世の 味が刻み込まれているのかも(笑)。

そして万かつサンドももちろんおいしい。
かつの厚みも凄いし、ソースの甘さは、やはりこの味に慣れてて、他のかつサンドは食べなくてもいいくらい。
キャベツがないのも個人的に好き。

万世会員になると、ここ数年毎年スタンプカードが届いて、食事をするとドリンクサービス、デザートサービスの 他に万かつサンドプレゼントの月もあったりする。
この6月は弐万かつサンドをもらって、その食べごたえに晩御飯は一口も食べれなかったほど。
孤独でも孤独じゃなくても、間違いなくおいしい万世のお肉とサンド、お勧めです。 現在外装工事中だが、窓を絵でふさいで暗くし、ランチに行ってもディナーのような雰囲気を味わえる。
窓から秋葉原の街や総武線を眺めながら食事するのも楽しいが、風景を楽しめないならいっそここまで 潔くしてくれた方がかっこいい。

今1階にミニストップが入ったが、以前は万世の売店があって、時々万かつサンドを買うと、パンの耳 (ブログ参照)を山ほどくれた。
2人で行くと、万かつサンドは1個でも2パックくれたりして、これがまたおいしかったんだ。
でも現在そのサービスはなくなってしまって残念。

お店のキャラクターの牛や豚もまた可愛くて、「今日は万カツサンド日和ね」なんて絵を見つけた日には、 体が万世に吸い込まれてしまう(笑)。

★「ひとりごと」でも写真を紹介しています。

★東京都千代田区神田須田町2-21

(2016年7月1日の日記)
7月13日 日曜日の万年筆〜たいめいけん
お店の味だけじゃなく、雰囲気も含めて愛した池波さん。
デパートのイートインで食べるなんて聞いたら、眉をひそめられそう。
ところがあるんです、西武百貨店池袋本店に。
デパ地下の狭いスペースでありながら、しゃっきりして古風な感じのもてなしは、「本店も きっとこんなに違いない」と思わせてくれる静けさです。

本当は日本橋の本店に行きたい。
凧の博物館も見てみたい。
だけどどこか敷居の高さを感じてしまうのは、こっちが自意識過剰なせい。
ぶらぶら歩いててふと見つけたら、「あっ、ここかあ」なんてふらっと入ってしまうかも。

そういえば、たいめいけんも以前コンビニでお弁当出してたよね。
時代は変わった、ということなのかも。

でも西武池袋の狭いカウンターに座って、ミネストローネとコールスローのセットをつけたオムライス。
若い人はいなくて、結構年配の男性女性。
スマホいじってる人もいなくて、1人文庫本を読んでいる社長風な男性。
私も許可を頂いて写真を撮った後は、そっとスマホをバックにしまいました。

たいめいけんといえばオムライスですが、イートインとはいえメニューは意外と多く、制覇したくなります。
でもやっぱり好きなのはオムライス。
私、オムライスは大好きですが、作るのは下手で、私が作るとチキンライスのクレープ包みみたいになります(涙)。
それと洋食のお店に行っても、揚げ物系、デミグラスソース系はあまり食べないので、注文するのは いつもオムライス。

そんな私にはぴったりのお店、かな?
西武池袋のイートイン。

★東京都豊島区南池袋1−28−1西武池袋本店内

(2016年7月13日の日記)
7月26日 「男に生まれて 江戸鰹節商い始末」〜にんべん
「おいしい本をさがす道」もコージーから江戸から続く老舗に移行して来てますが、もちろんコージー系も たっぷり食してますので(笑)。
でも今回は「にんべん」です。

「男に生まれて〜」は私の大好きな作家の1人、荒俣宏さんが史実を物語に仕立てるという最高の手法で 作り上げた小説で、以前紹介した「虎屋 和菓子と歩んだ五百年」とは対極の立ち位置にある作品です。
「虎屋」は「虎屋」らしくあくまでまじめに静かに「虎屋」を語り、「にんべん」は「にんべん」らしく粋にいなせに「にんべん」を語る、 いいなあと思います。

さらに本作は「にんべん」の八代目当主高津伊兵衛だけでなく、 「越後屋」の三野村利左衛門、「榮太樓」の細田安兵衛、 「山本山」の山本嘉兵衛、「山本海苔店」の山本徳次郎らも登場するので、「にんべん」だけでなく、当時の日本橋を 知る上で恰好の資料とも言えます。

時代小説としても普通におもしろい。
荒俣節は読んでいてとても気持ちがいいので、作品にはずれなし、といっても実はそれほどたくさん読んでるわけではありません。
マニアックすぎるというか何というか、凡人には付いて行けない作品も多いです。
一度だけ会ってちょっとだけお話を聞いたことがありますが、文章での雄弁ぶりに比べてシャイな方?という印象を受けました。

土曜日夕方中井和哉さんのナレーション、荒俣さんレギュラーで放映していた「マサカメTV 」、終わったのは寂しかったな・・・。

さて「にんべん」は鰹節の老舗として有名です。
私、鰹節を自分で削るなんてことしないくせに、削り節のパックを「ちゃんとした出汁が出ないよね〜。」なんて馬鹿にしてたんですが、 これも「にんべん」の商品なんですよね、お恥ずかしいですね。
江戸から続く老舗でありながらこの仕様、よほど味と品質に自信があり、さらに使用にこだわらない柔軟さも持ち合わせているという 証拠なのでしょう。

本社はもちろん普通の会社なので、入ることはできませんし、所縁のある永倉新八(靖共隊)の貴重な資料も見ることはできません。
でも日本橋のCOREDO室町2に「日本橋だし場 はなれ」があって、食事ができるようになっています。
出汁を極めると、食材に出汁の色しかつかなくなるんですね、とにかく見た目は地味だけど、滋味に溢れた味わい。
濃い味に慣れた身にも、本当のおいしさというものがちゃんと伝わって来ます。

いつも混んでて、お客さんは年配の女性が多いのですが、確かに毎日これ食べてたら健康で長生きできるだろうなあと、しみじみ 思ってしまいました(笑)。
先日羽田空港に行ったら、羽田空港にもできてましたね。
軽食だけでなく、100円でお出汁そのものを飲むことができます、これがまたおいしい。

そういえば以前、本物の手作り味噌を頂いたことがあります。
ところが普通に使ったらしょっぱいばかりで全然おいしくない。
不思議に思ってたら、母が「調味料入りの味噌に慣れてるから・・・」とあきれ顔になって、きっちり出汁を取ってお味噌汁を作ってくれました。
そのおいしかったこと。

今はまた調味料入りのスーパーの味噌に戻って、ダシの素とか使ってますが、これって日本人として恥ずかしいような気がする・・・。
やはり江戸から続く老舗には、それなりの品格、歴史、力、そういったものがあるんだなあと思った次第です。

★ 東京都中央区日本橋室町2-3-1 COREDO室町2 1階

(2016年7月26日の日記)
8月2日 「容疑者たちの事情」〜サーモンステーキ
最近は老舗の和の料理が続いていましたが、コージーミステリに戻ります。
「容疑者たちの事情」は、以前「クリスマスに死体がふたつ〜コーニッシュパスティ」で紹介した ジェイニー・ボライソーのコーンウォールミステリの第一弾です。

表紙の奇麗さとタイトルのうまさと(シリーズ通していいタイトルです)、大人の女性ということで落ち着いた物語、 かなり気に入った記憶があります。
だんだんヒロインのローズを(女性の目で見て)めんどくさい人だなあと(笑)思うようになりましたが。
(そこが男性にはたまらなく魅力的に映るらしいです)
1作目だけにローズの性格がまだ確立していないのでかえって読みやすいのかも。

前にも書いたように、作者のボライソーさんが執筆半ばで亡くなってしまったので、このシリーズが 未完で終わったのは本当に残念です(特にジャックにとっては)。

でもこのシリーズ、男性よりも女性の方が個性がはっきりしていて魅力的ですね。
好きになれるかどうかは別として、書き分けがはっきりしています。
男性、老人になるとまたいい感じなのですが、恋愛の対象となるような男性がみんなステレオタイプで つまらない。

作者は女性を、さらに言えばローズを書きたかったんじゃないかなと思えるほど、ローズとコーンウォールの 風景描写に力を入れています。
その意味でこのシリーズは作者自身をモデルにした私小説と言えるかも。

さて、身なりもかまわず、自由気ままな生活をしているローズですが、いざ着飾れば誰もが目を奪われる 美人さんだし、料理をすればプロ並みだし、不器用な私としては、それちょっとずるくない?と突っ込みたくなるほど 完璧です。

今回おいしそうだったのがサーモンのステーキ。
ローズは実によく飲む人ですが、この時も料理しながらワインをちびちび飲んでいます。
おしゃれですね〜。

真似してみたいですが、最近はすっかり弱くなった私、料理しながらワインなんか飲んだら、めんどくさくなって 手抜きになりそうです、だからやらない(笑)。

サーモンステーキ、興味があったので巣鴨の「タカセ」で食べてみました。
おいしかったけどもそもそしてて大きすぎて途中で飽きちゃった。
タカセのは、そのままサンプルとして飾れるほど見た目が完璧ですが、ローズのはもっとダイナミックで油っこくて、 でもジューシーでおいしいのかも。

余談ですが、タカセといえばセットで思い出されるのが尾崎豊さん。
先日テレビで息子さんが歌ってましたが、あまりにも似ててびっくりしました。
亡くなってからもう24年になるんですね・・・。

★東京都豊島区 巣鴨3-20-16

(2016年8月2日の日記)
8月10日 「標的」〜カンノーロ(カンノーリ)
★パトリシア・コーンウェル著「標的」の詳しい感想は「 その他の話題を語る道」に書いてあります(ネタバレ注意!)。

先日、録画した「グレーテルのかまど」見ていたら、「ゴットファーザーのカンノーリ」が ありました。
映画「ゴッドファーザー」は見たのがあまりに昔で、何度か出てくるカンノーリの場面も 全然覚えていないのですが、「ん?この言葉最近目にしたような・・・。」と気になって、 山積みの本をひっくり返して見つけたのが「標的」でした。

イタリア系アメリカ人であるケイ・スカーペッタの誕生日プレゼントに、職場のスタッフが買って来てくれた イタリアのペストリー。
ただし本では「カンノーロ」と訳してあります。

小麦粉ベースのクレープを油で揚げて、リコッタチーズを使った甘いクリームを詰めたお菓子、なのだそうです。
本の中でジョージアが言うように、ほんとカロリーが高そう、でもおいしそう。
残念ながらケイは食べることなく終わってしまいますが、日本でもどんなにポピュラーではなさそう。
いつか見つけたら食べたいなあと思っていました。

そしたら先日所用で四谷に行った際、時間があったのでアトレ四谷でお茶でもしようかという事になり、 ぶらぶらしてたら見つけたのです!カフェアントニオ!
ここでは「カンノーリ!」(名前がややこしいですね、笑)。
ガラスのお皿にたくさん乗せて、やはりガラスのカバーをかけてディスプレイしてありました。

お昼を食べたばかりにもかかわらず、「これ食べる!これ食べたい!」と騒いで店内へ。
でもがっかりしたことに、現在は作っていませんとの事(涙)。
季節物だからですか?と聞いたらそうではなくて、いつ再開するかは未定とか。
がっかりです。

他にも置いてあるお店はあるかもしれませんが、未だに見つけていません。
ということで、「おいしい本をさがす道」で初めての「食べれなかったおいしい物」の登場です。
もちろんあきらめませんよ、いつかきっと!
その前に自分で作れよと言われてしまいましたが(笑)。

そう、オーブンも使わないし、私にも作れるはずなんです、理屈だけなら・・・。
結局写真だけ取らせてもらって出ましたけど、お店の人の対応は素敵でしたよ。
今度四谷に行ったらちゃんとランチでもしてみたいです。

★「カフェアントニオ」
東京都新宿区四谷1-5-25(JR四ッ谷駅)

(2016年8月10日の日記)
9月13日 「よろず占い処 陰陽屋へようこそ」〜石鍋久寿餅店
東京都北区王子の、王子駅から王子稲荷に行く途中に、「石鍋久寿餅(くずもち)店」があります。
初めて行ったのは3年前だったかな。
私は知らなかったのですが、たまたま「よろず占い処 陰陽屋へようこそ」ってドラマが放映されていた時期で、お店の 外にまで長蛇の列ができていたことを覚えています。
その後原作の天野頌子さんの原作も1冊目だけ読みました。

くず餅と言えば亀戸は船橋屋、のイメージでしたが、石鍋さんの素朴な味わいも捨てがたい。
何よりも「くずもち」なのに、原料が「葛」ではなく「小麦粉」でんぷんなのに驚きました。
そういえば船橋屋では「くず餅」だし、石鍋さんは「久寿餅」なんですね。

ちなみに葛から作る「葛餅」もちゃんとあって、それだと「水饅頭」「葛切」などに使われる、もっと透明で柔らかい物になるのだそうです。
もちろん葛餅も、きなこと黒蜜で食べることもありますが、小麦粉のくず餅(久寿餅)は、関東以外ではあまり見られない物だとか。
私が好きな信玄餅も、きなこと黒蜜かけて食べますが、あちらは求肥加工したお餅だそうです。
さらに求肥って何?

Wikipediaによると「粉にしたもち米に水と砂糖を足して火にかけて練ることで粘りを出した」物で、わいと高級感ある和菓子屋さんで時々見ますね。
とにかく黒蜜大好きな私(きなこはそうでもない、笑)、黒蜜溢れるくらいかけて食べるの大好きですが、意外と知らないこと多かったなあ。

石鍋さんの由来も古く、天保(1830〜1840年)の頃、偶然雨に濡れてしまった小麦粉を樽に入れて忘れていた「久兵衛」という江戸の人が、 翌年の飢饉の際にその小麦を思い出し、蒸して食べてみたのが始まりという。この「久兵衛」さんの「久」の一文字と無病長寿を祈願して 「久寿餅」と呼ばれるようになったのだとか。

なるほど船橋屋さんで「久寿餅」の字を使わないのはここに理由があったんですね。
船橋屋さんも歴史のあるお店、食べ比べてみるのも一興かも。
で、「よろず占い処 陰陽屋へようこそ」の感想ですが、この表紙、この文体、この内容、おもしろく読むには私はちょっと年上すぎるかな・・・?

ひとりごと」 にも写真を載せてあります。

★「石鍋久寿餅店」
東京都北区岸町1丁目5−10

(2016年9月13日の日記)

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